2010/06/21

279【世相戯評・言葉の酔時記】二つの大企業の新聞広告を批評する

 今朝(2010年6月21日)の朝日新聞に、二つの全面広告がある。それがなんだかおかしいのである。
 ひとつはIBM世界で、日本で、スマートな都市が生まれつつあります
 コンピューターグラフィックらしい「スマートな都市」の絵が大きく載っているのだが、これのどこがスマートなのか? どうみても立体スラムにしか見えない。
 広告ってのは、どこか現実から少し乖離したあたりを示して、それに憧れ、あるいは羨ましく思わせるものと思うのだが、この絵はへたくそというか、現実そのものを絵にしただけである。
 形容詞のスマートsmartの意味を辞書(英辞郎)で見ると、
「利口な、賢明な、賢い、頭が切れる、頭の回転が速い、(機器が)高性能の、コンピュータを用いた、コンピュータ化された、ハイテクの、気が利く、(外見などが)格好いい、おしゃれな、洗練された、小粋な、ハイカラの、最新流行の、(人や店などが)上流社会の、粋な、高級な、(人の動作や物事の動きが)きびきびした、活発な、急激な、(人の言動が)生意気な、こしゃくな、抜け目のない、〈和製英語〉スマートな(やせている)」
 この広告がどの意味なのか分からないが、視覚的にはとてもスマートな広告ではない。
     ◆
 二つ目は、イオン命あふれる森を、未来のこどもたちへ
 まず、「子どもたちへ」は言葉としておかしい。「子供」は子の複数形だから、さらに複数を意味する「達」をつけてはヘン。
 写真は、中国の万里の長城あたりである。ここに苗木を植えて森にするプロジェクトをずいぶん前から続けている。それは高い評価をしたい。

 問題は、そのイオンが、日本では森をつぶしてきていることだ。郊外の田畑や森林をつぶして巨大なショッピングセンターをつくり続けてきている。
それは緑をつぶすばかりか、その近隣の歴史的な街の商業をつぶして、街を壊してもいる。そして市場が飽和あるいは縮小すればさっさと撤退していく。いわゆる焼畑商業である。跡は廃墟となったままであるから、「跡は野となれ山となれ」よりももっと始末が悪い。

 どうもこの中国植樹プロジェクトは、日本で緑壊しをしてきた罪滅ぼしでもしているように見えるのは、わたしの僻目である。
 僻目ついでに言えば、これでイオンは中国でのイメージを上げておいて、これからは中国各地の都市郊外で巨大ショッピングセンター開発を容易にする基礎づくりをしたので、焼畑商業を輸出するのであろうか。

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