2013/07/12

806【東京路地徘徊:麻布我善坊谷・1】谷底に緑に覆われた家々がひっそりと立ち並ぶ東京の秘境か

 建物をツタの葉で覆い尽くした建物に、街でときどき起き出くわす。なかなか恰好が良い。
実はわたしも鎌倉の谷戸の奥に住んでいた頃、自分の家をそうしたことがある。格好良いと悦にっていたら、実はこの蔦に木造建物を浸食されて、腐食しつつあることに気が付いて、あわててはエイヤッベリベリと引きはがしたら、外壁に貼った板壁ごと倒れてきたのには驚いた。

 さて、先日徘徊した街は、その緑の家の宝庫であった。これほども出会う秘境は少ないだろう。まずはその一部を公開して、この街を徘徊した話に入る。






1.東京麻布の谷間の街の興味深い現在から過去と未来へ

 健康のためというよりも、好奇心で街なか徘徊をよくやっている。
 基本的にはご近所での街なかを、ふらふら適当にやる。時に遠くに用事があって出かける場合は、用事のある目的地にまっすぐに至らないで、ちょっと離れた場所から、おおざっぱに見当つけて、徘徊寄り道して着くようにする。
 要するに、好奇心と有り余る暇とを同時に消費し、無い金を消費しないという、一応は合理的な行動のつもりである。

 この時、わざわざ徘徊する距離と時間が、事前の検討課題となる(大げさに言えば)。
 10年くらい前までは、仕事などで忙しくて時間のないことが問題だった。いまは時間はいっぱいあって、これは問題はきれいに解消した(きれいすぎてヒマすぎるという問題が発生た)。
 ところが距離については、かつてはかなりの距離を歩いても平気だったが(65歳の時、1日に30km歩いたことがある)、いまは肉体的衰えが持続歩行距離をどんどん縮めていくのらしい。今や2、3時間でへこたれるのが、なんともなさけない。
 つまり、時間と空間は反比例するという、物理学ならぬ生物学の新法則をわたしは発見したのである。

 そこで最近は、目的場所の3キロ程度手前の鉄道駅から歩くことにして、その徘徊路線を地図をにらんで考える。
 その路線選定基準は、以前によく知っているところで、長らくご無沙汰しているところがよい。その後の変化を見て、浦島太郎気分を味わうのである。乙姫の連れがいないのがキズだが。
 あるいは、まったく知らなくて、しかもゴチャゴチャグネグネしている街である。土地区画整理事業やら近頃の大規模再開発やらがされていないところである。そこでは、もしかしたら昔の日本の街の姿を見ることができるかもしれないと、老人らしく懐かしむ楽しみがある。

 そうやって選んだはじめて行く知らないところでも、ただ地図をにらむだけで決める。
 今ではインタネットで大方の場所について詳しい情報を事前に得られるのだが、ぶっつけで行く方が面白い。時には期待が空振りもするが、どうせ遊びだから、それでよい。

 今回の最終目的地は東京は港区の愛宕山の麓である。そこで夕方から飲み会がある。
 六本木あたりから出発が良かろうと、地図でゴチャゴチャグネグネ街を探したら、見つかった。麻布台一丁目あたりである。東京や横浜でこういうところは、たいていは尾根筋か谷筋かである。
 ここを中心にして前後によく知っているがご無沙汰の地の、六本木駅あたり、アークヒルズ付近、神谷町元パストラルホテル付近、虎ノ門環状2号線工事中あたり、愛宕下路地などをルートに組み込んで、その地図をプリントした。準備はここまでである。

 これから書くことは、いかにも知ったかぶりの記述をするが、現地写真のほかは、実は帰宅後にインタネットや図書館で調べた結果である。
 こういう徘徊はしょっちゅうやっているのだが、収穫があることは少ない。面白いことがあれば、このわたしの主宰する「まちもり通信」サイトや「伊達の眼鏡」ブログに載せることにしている。

 今回ここに載せるのは、知らないないままに入り込んだ谷間の街が、どうもアヤシク変だったからである。異界のごとき感じにおおいに興味がわいて、ここに記録に残すことにした。
 インタネットには、この街ことを書いたのページがたくさん出てくる。だがどれも踏み込みがない記事ばかりで隔靴掻痒の感がある。
 そこで自分で靴の中に手を突っ込んで痒い水虫を掻いて踏み込むことにした。ヒマなな徘徊老人のお遊びレポートである。

 とりあえず、これが徘徊した道筋である。青線が1回目、緑線が2回目。
   出発の六本木駅から目的地の愛宕までは、普通に歩けば30分くらいだろうが、ここを3時間もかけて歩いた。まんなかあたりに狙いの港区麻布台1丁目がある

 帰宅後に調べたら、この谷は「我善坊谷」というらしい、江戸時代は下級武士の与力同心の社宅地だったらしい、永井荷風正宗白鳥など文士が居たらしい、どうやら近いうちに消える街らしい、などなどを知った。
 そこで、興味がわいて、見落としたところを見に、もう一度行ってみた。この熱中症になりそうな猛暑の真昼間を、ふらふら2回も徘徊するわたしに、なにやってんだいと自分で言いつつ。                   (つづく


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伊達美徳=まちもり散人
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