2013/12/05

868【五輪騒動】都市計画談議(その3)立体公園という奥の手が登場した

  <(その2)からの続き>

新国立競技場建て替えがらみでこのあたり一帯にかけた「神宮外苑地区計画」の全体を眺めていると、いまに明治神宮外苑は建物だらけにする仕掛けが施されたのかと妄想がはたらく。
だが、その全体妄想話はあとにして、先ずはこの都市計画の震源地である国立霞ヶ丘競技場のあたり(A-2地区)から妄想していこう。
国際コンペ当選のザハ・ハディド女史デザインの競技場建築の良し悪しの話は、ここではさておく。もっぱら敷地と都市計画の問題を考える。

建物を建て替えるとき、計画する新建物が大きすぎたら普通はどうするか。ひとつは、今の敷地に入るように計画変更する。ふたつめは、他のところに条件に合う土地を見つけて引っ越す。三つ目は、まわりの土地を地上げして敷地を広くする。
新競技場はこの三つ目を採用したのだが、臨海部など広い土地はいっぱいあるのに、どうしてこの場所に拘泥して動かないのか、そこのところはいろいろと政治的なことがあったのだろうが、わたしの妄想能力を超えるので、言及しない。

ではどこを地上げするか。周りを見ると、東は絵画館だからこれは不可能だが、南東の三角地は何とかなるだろう。西と南は明治公園だから、この公園を廃止して取り込めばよさそうだ。
日本青年館もなんとかなるだろう。北にはある外苑のアイススケート場もよさそうだ。
こう考えただろう、たぶん。

で、結局は、東と北の明治神宮の土地はダメで、都の公園と日本青年館が地上げ対処となった。日本青年館はどこか別のところに建てればよいとしても、公園を廃止するのはいまどき問題になるだろう。
では、既に開設している明治公園を移設するにはどうするか。
南の公園(霞丘広場)のさらに南に都営霞ヶ丘住宅があるが、かなり老朽化しているからこれを地上げして、ここに公園を移すことにしよう。
そして日本青年館と東京都とに話をつけた、と、まあ、こんなことだったのだろう、たぶん、妄想は広がる。


としても、公園を取り込んだり道路を変えたり廃止したりするのは、民有地を地上げするのとは違って、都市計画の変更だからその手続きがいる。
変更手続きついでに、容積率や高さの制限も緩和させてしまおう。てなことになったのだろう。
ということで、ここから都市計画屋の登場である。

こういう時にお役にたつ都市計画の手法は何であるか、専門家だから知っているだろう。
はい、それはもうなんといっても地区計画でございましょう。地区計画は比較的限定的なエリアで都市計画を決めることができますが、とくに再開発等促進区の地区計画がここでは適してますな。

でも、あまり狭い範囲だと身勝手エゴ都市計画になりますので、広く網をかけてもっともらしい大きな方針を書いておいて、その一部に地区整備計画として本当にやりたいこと、つまり、容積率や高さとかの緩和やら、道路の付け替えなんかを書きこめばよろしい、、、てなことが話されたかもしれない、たぶん。

さて、問題は公園の地上げである。今の公園面積を減少させては、いくらなんでも市民からたたかれるだろうから、なにがなんでも同面積以上にする必要がある。玉突きで都営住宅をどかせた跡地を明治公園にするだけでは、どうも広さが足りない。
それに、ここの公園(四季の庭)を無くしたら、明治公園が連続しなくなってしまう。困った。


そこでウルトラC(ちょっと古いか、オリンピックがくるから勘弁)の手法登場、なんと西側の明治公園(四季の庭)を、都体育館との間の道路の上空と、競技場建築敷地の中の2階とに移すのである。道路や建物と2段重ねになった公園をつくってもよろしいという、立体公園制度の適用である。

これで公園の下にもぐりこんで、公園のエリアも含めて敷地に使うことができる。だから一階から地下にも競技場施設をつくることができるし、セットバックも公園の床下でもよいという奥の手である。
早く言えば、国立競技場が四季の庭にせり出してきて、2階の上に押し上げてしまった、ということである。
なんともはや、姑息なことであるが、でもまあ、これで公園のネットワークは、デッキレベルだけど保つことができた。

上の都市公園の変更図にみるように、この西側のデッキ上の公園(新四季の庭というべきか)の微妙なカーブが面白い。これは多分、コンペ1等当選のザハ・ハディドデザインの新競技場のカーブをなぞっているのだろう。都市計画は、建築計画の忠実な従僕である。
といっても、この立体公園計画を今年になって初めて考え出したのではなく、一連の都市計画全部が、たぶん、2年くらいも前から考えられていて、コンペで新競技場の建築計画案が決まったので表に出して手続したのだろう。
当然のことに、たくさんの関係者に事前に了解を得ているはずだから、けっこう早くから始めていたにちがいない。

現在この四季の庭の下には、新宿御苑あたりを源流とする渋谷川が暗渠になって埋められているが、これはどこかに切り替えるのだろうか。
渋谷川は暗渠で下流にながれて渋谷駅を過ぎたあたりで地上に顔を見せる。下水道化される東京の都市河川の典型だろう。
この立体公園となっては、ここではもう渋谷川が地上に姿を現すことはできなくなってしまった。もしかしたらデッキ上公園に、水道水の流れる似非渋谷川ができるのかもしれない。

さて、もうひとつの都営霞ヶ丘住宅跡地に移る霞丘広場の公園は、玉突き問題はないのだろうか?(つづく

参照◆新国立競技場に関する瓢論と弧乱夢と似非言い
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html

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