2014/12/21

1040東京駅開業百年赤レンガ駅舎復元に浮かれて戦災遺構消滅問題をだれも問わない

 今日の新聞(2014年12月21日朝日新聞東京版)のふたつ並ぶ記事に注目する。
 記事のひとつは、「赤い駅舎守った愛」なんておセンチな見出しで、赤レンガの東京駅が開業から100年目を迎えたこと、その建物が戦災で当初とは変わっていた姿を昔に復元したことである。復元を賛美している調子である。

 もうひとつは、{宮城・岩手 大型遺構は取り壊しも」とのみだしで、東北の街に散在する東日本大震災の大きな災厄を記念する遺構や遺物を、どのようにして保存をどうするか現地ではいろいろと動きがあるが、大型の建物の類はほとんど壊されつつあるというのである。

 この二つの記事は別ページながら隣り合わせに載っていて、新聞屋は意図としなかったかもしれないが、読みようによっては重要な関係がある。
 一方は戦前の有名建築を市民たちが努力して保存復元に持ち込んだとするものだが、もう一方の方は、あれから3年余でもうその災害遺構を壊しているとして、対照的な態度であることの記事である。
 
 だが、わたしが読めば、どちらの記事も災害遺構の扱いについて、どうも冷淡で災害を忘れたがる日本人たちについての記事である。
 というと、たいていの人は、東日本大震災の遺構については災害のことだけど、赤レンガの東京駅がどうして災害遺構に冷淡な日本人の話なんだよ、と思うだろう。
 実は、復元前の赤レンガ東京駅舎は、日本に2つしかない第2次世界大戦の壮大なる災害遺構建築だったのである。それを復元によって事実上の取り壊してしまった。

 二つしかないと書いたが、そのもうひとつは広島の原爆ドームである。あちらは幸いにして復元されないで、原爆の悲惨さをそのままに今も建っている。
 東京駅は1945年5月にアメリカ軍の空爆によって炎上し、レンガとコンクリートの骨だけになったものを、あの物資のない時代に2年がかりで修復した、あの不幸な時代の記念的建築であった。
 日本の戦争の悲劇ばかりか、そこからの復興への歩み出しを体現する、実に貴重な建築だったのだ。日本人のほとんどが一度くらいはここを利用したことがある有名建築だった。

 いまからちょうど百年前の1914年開業から、1945年空爆炎上までの存続期間は31年だった。そして修復開業した戦後の姿が出現した1947年から、復元工事で消え去る2007年までの期間は60年間だった。戦前の姿よりも戦後の方が、2倍も存続していたのだ。
 わたしたちが知っている戦後復興の東京駅は、復元という美名に聞こえる義挙(偽挙)で、戦争という大災害遺構を消滅させてしまった。

 ここに至る間に、原爆ドームの様に戦争の悲劇の記念碑としての保存価値を論じた気配はない。
 1947年よりも1914年の方が昔だから、なんでもかんでも昔の方が良いという今の世の昔帰りの風潮は政治のトップに典型的だが、庶民も今回の衆議院翼賛選挙で見る様にそうらしいばかりか、建築史学者も建築家たちもそうらしい。
 戦争で被災した建築なんか見たくもない、でも新建築の建て替えるのも時代の風潮からダメらしいから、この際ちょうどよいから容積率を売った金で、昔の姿に建て直そうってことにしたのかもしれない。

 そうやって出現した金ピカ東京駅は、ディズニーランドさながらのミーハー的姿で、まさにミーハーにもてはやされている。
 今日のニュースによれば、記念の特別デザイン乗車カードを買う人たちが何千人も集まってきて混乱大騒ぎになったとか、まさにミーハーテーマパーク化は成功した証拠である。
 それにしても、なんで大勢の大人たちがこんな子供じみた騒ぎを起こすのか、私には世の中を理解不能になってしまった。

 建築を文化として保存することに意味を忘れてしまったらしい。単に懐古趣味の成金の産物に成り果てたようだ。
 文化人類学で文化とは、人間の行為の総体をいうから、戦争という人間の最悪の行為も文化である。福島の核毒事故(原発事故のこと)も文化である。そしていずれも忘れないように記念遺跡を後世に伝えることも文化の行為である。
 したがって、金ぴか復元建築も新たな歴史文化に踏みだしたことになるのだ。また30年後に起きる戦争で焼けることになり、それを修復復興してから60年目にまた昔の昔の姿に復元する、なんてことを繰り返すのであろう。それもまた人間の文化であり、歴史である。

 さて、東北の被災地に横たわる被災建築遺構は、どのような思想をもって後世に伝えることができるのか、あるいはできないのか、なかなか興味深いことである。
 なかでも人災として戦争にもひとしい大災厄の原発事故による核毒被災遺構をどう扱うか、これには最も注目していきたい。
 わたしは福島原発を世界文化遺産と世界記録遺産に登録するように唱えているんだが、だれも注目してくれない。

再び唱える「福島原発を世界遺産に」
http://datey.blogspot.jp/p/2011321-httpdatey.html
 

◆「東京駅復元反対論」(まちもり散人サイト)については下記を参照
https://sites.google.com/site/machimorig0/#tokyoeki


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