2015/05/15

1089【尻餅散人横臥戯録5】寝たきり事件発生から2週間、立ったきり生活試行を開始

尻餅散人横臥戯録4】からつづき
 
●突発寝たきり事件2週間目で直立試行へ

 医師によれば全治3か月の第4腰椎圧迫骨折事件から、今日で2週間になった。
 ベッド便所往復の外は、平臥専門の寝たきり老人をやってきた。でも、寝たきり生活にホトホト飽きた。そろそろ脱するかと模索中である。
 平臥姿勢と直立姿勢になっていて動かなければ、ほとんど痛むようなことはない。ということは、ここらあたりで直立生活も加えて、立ったきり老人も交えてみることにしようと考えた。
 立ったきりはできても、中腰とか腰曲げをできない。要するにお行儀良い姿勢を、わたしの身体が要求するのだ。

 まず、PCをどうやるか。はじめは横臥して半開きノートPCを横に立ていた。でも目が疲れるし、打ちにくい。
 そのうちに思いついて、PCを床に置いてベッドに腹ばいで身を乗り出してキイボード打ちをやっていた。これは胸が痛いし、垂れる頭を支えて首が疲れる。
 直立できるようになって、ようやくPCをもとの机の上に戻した。だが、椅子に座ると痛い、腰を曲げると痛い。机上にスツールを乗せ、その上にPCを置くとちょうどよい高さになった。
 今、これはそうやって使っている。楽である。脚が疲れるけど、この2週間ほとんど歩かなかったので、リハビリテーションである。

 この直立PC打ち姿勢を、枕元食事ケータリングの家人に発見されてしまった。これで寝たきり上げ膳据え膳の快楽は廃絶、せっかく寝たきり飲食文化を起そうとしたのに、やむを得ない。
 だが、食卓の椅子に腰掛ける姿勢は、右の腰回りが痛くてかなわない。椅子を引いて、直立して食事することにした。毎度の食事が立ち食い、立食パーティだ。まあ、これもよし。
 
 残る問題は、平臥と直立の両姿勢の間の移行を、いかに円滑に進めるかということである。痛い腰をかばってのヨロヨロ立ち上がり動作は、他人には見せられない。だがこれも、次第に上手になりつつある。赤ん坊の立ち上がり時期と同じだ。
 そしてもうひとの問題は、座位の時に発生する右尻腰痛にどう対処するかである。まあ、そのうちに治るんでしょう。待つしかない。

 でも、全治3か月との宣告を受けている身だから、あまり早く治癒しては、医師に失礼だろうと思う。早くても2カ月くらいにしないとなあ、って言ってもまだ先は長いなあ。
 そしてまた、わたしにはこれは実に貴重な体験だから、あまり早く元の身体に戻っては、なんだかもったいないと、思わないでもない。
 ユルユルと行こうと思う。

●雑踏の中で座り込んでいた事件発端尻餅の日のこと

 寝たきり生活2週間、ヒマだからあれこれ考える。まあ、脳だけは活性化しているんだろう。
 この突発寝たきり事件の発端は、商店街モールで自転車から降りようとして転んで、派手に尻餅を搗いたことである。その搗き方は、スットーン、模範演技であった。
 搗いたとたんに、あ、こりゃしばらく動けそうにないぞ、ヘンに立ち上がる努力して不様な格好になるよりも、しばらく尻餅姿勢を保つことにした。
こんな様子の都心商店街の雑踏に小一時間も座り込んでいた
土曜日の午後、目の前に地下道出入口があり、人通りの多い都心の繁華街の道の真ん中に、転んでいる自転車とへたりこんだ老人がいては邪魔だろう。
 でも、さっとは位置を変えられない。尻を地に着けたままズルズルと、転んだ自転車を引きずり、近くの街路樹のもとに匍匐前進移動、幹に寄りかかって一息。
 さて、このまま動けないとなると、転んだ自転車を前にして、どうしたものかと思案する。

 そうやって小一時間もすわっていたろうか、この間、誰もわたしに注意を払ってくださった人はいない。
 ま、こちらも若干見栄を張って、苦痛の顔でない努力もしていたのだが、。
 それに、ここの商店街にはけっこう年寄りの酔っ払いが、真昼間からベンチに座り込んでいるからなあ。風体からしてわたしがそれのひとりと見えてもしょうがない、決して横浜の人情が冷たいわけじゃない、、、。 

 例外的にひとりだけ、一部始終を見て、こちらを注視してくださっている人がいた。商店街に直行する車道に車を止めて客待ちしていた、タクシーの運転手である。
 あのタクシーに乗ってうちに戻ろうかなあ、それとも救急車を呼ぶかなあ、それとも歩けるようになるかなあ、などと、うじうじと考えていたら、タクシーは客を拾って行ってしまった。
 
 しょうがないから立ってみようかと、膝を付けて四つ這いから、ヨッコラショと何とか立ちあがった。背中や脚が猛烈に痛い。
 今から考えると火事場の馬鹿力だった。とにかく自転車に乗って自宅まで200mをイテテイテテと漕いで帰り着いた。今ならとてもできない。
 そのあとは寝たきりである。

 その時は気が付かなかったが、世の中はその日から5連続の休日で、医院も休診であったのが、つらかった。大型連休を発明した人を恨んだ。
 救急車を自宅に呼んで病院に行くべきか、このまま連休あけまで寝たきりか、もしかしたら手遅れでこんごは寝たきりになるかもなど、悶々と寝たきり週間をやった。
 そして思ったのは、あのときの3つの選択肢のうち、救急車を呼ぶのが正解だったようだ。
 まあ、連休明けの病院で、手遅れ宣告がなかったのには、正直にホッとした。(つづく

参照

・尻餅搗いて突発寝たきり老人になったが、、、2015/05/05~

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