2015/10/18

1134『いまなお原爆と向き合ってー原爆を落とせし国でー』大竹幾久子著

 本棚がいっぱいだし、もう読んでいる人生の時間がないし、カネもないので、これからは本を買わない、本棚にある未読本を読む、そこにない読みたい本は近くの図書館で読む、と決めて4年目だが、ついつい買ってしまった。

いまなお原爆と向き合って
―原爆を落とせし国でー
 大竹幾久子著 本の泉社 
          2015年8月発行

 戦争が終わって70年、終わるために大きな犠牲を払ったのが、アメリカが日本で爆発させた核爆弾であった。当時3歳の大竹幾久子さんは、爆心から1.7kmの自宅で、母子4人もろとも重症瀕死の被爆をした。
 医療もほとんどない中で、試練を超えてようやくに生を取り戻したら、10月になっていた。爆心近くで兵役の父は帰らないまま、残された母の戦後は更に壮烈だった。

 その大竹幾久子さんが、この夏に原爆を糾弾する本を出した。今はカリフォルニアに住むアメリカ人となっているのだが、その地で訴えているからこそ、迫力がある。
 一緒に被爆した母の証言の叙事詩のような言葉を、そのままに書き取ったオーラルヒストリ―が、じわじわとした迫力で胸に迫ってくる。
 これは英語版も添えてあるから、アメリカ人も読むだろう。その地獄絵の描写の一部を掲げる。


 Some were completely red, with raw flesh burns.

 The scorched skin slipped from their bodies,
 And hung in loose strips, like paper streamers.
 And their faces!
 Eyes,noses,mouths,ears had all melted down.
 And the hair...the hair...
 Had burned away from the scalps.

 A man's arms and legs...were almost torn away...

 We saw his bones protruding like bloody skewers.

 And One...

 Had a gaping hole in his chest...his ribs were exposed

 And One...

 His belly was split open,
 And oh,he was holding his bowels in place!

 And one...

 His skull was smashed open...
 One eye dangled down on his cheek,

 And Another...

 His head was split so badly...
 l couldn't tell which side his face was on.

 All were streaked with blood and dirt.

 The lucky ones still wore shreds of pants、
 Scorched and tattered though they were.
 But most wore no clothes at all.
 Their garments were shorn away
 Or burned off by the bomb's searing blast.

 l saw masses of naked, bloodied,burned flesh,gasping faces so disfigured

 That l could not tell the men from the women.
 This one...that one...
 l had never seen such horror!
 Were they truly human beings?

 l once saw a painting of hell.

 But l swear this sight was more nightmarish than that



 アメリカで歌詠みとなった著者は、原爆のことから原発のことへと、切ない思いをくり広げて詠う。


 被爆後に小二で我は主婦となり作りし夕餉は毎日目玉焼き

 爆心地で死にたる父はアメリカに帰化せし我を許し給うや

 体内に残留放射能もつ不安 押し込めて生きしこの七〇年


 戦後70年とは、原爆被害70年であるのだが、それは戦争という大きな渦巻で見るだけではなく、その渦の中の一人一人の人間がいることを忘れてはならないと、これを読んでおもいなおしたのであった。
 核毒問題がフクシマであらためて襲ってきながらも、この実に身近な核毒恐怖さえも、もう忘れて核発電の再開をする日本という国家、そして核爆弾の恐怖は、いまも更に地球を覆い尽くしつつあって、大竹幾久子さんの静かな怒りは続く。
 わが身に潜む70年の恐怖を、こう裏返して見せるのである。


  おめでたい話

 あれから70年以上も生き延びて
 めでたく もう古希も過ぎた

 近ごろ ときどき こんなことを考える

 放射線は細胞に突然変異を起こさせるという
 ひょっとして わたしの細胞は放射線の好影響を受けて
 老化せず

 わたしは世界一の長寿者になるのではないかと


なお、著者の夫も兄も、わたしの大学時代からの親友である。





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