2015/10/29

1140【歴史ミステリ】鹿鳴館の設計者はコンドルではなくて実はウォートルスであったという話をご存知ですか?

 鹿鳴館の設計は、ジョサイア・コンドルじゃなくて、銀座煉瓦街を作ったウォートルスだった、という話を読んだ。いや、なに、北森鴻著『暁英 贋説・鹿鳴館』って歴史ミステリ小説ですよ。
 明治政府お雇い外国人となってからのコンドルを主人公に、その弟子たちはもちろん、師匠の河鍋暁斎、お雇い外国人仲間のベルツ、井上馨、岩崎弥太郎などが登場し、ちょっと面白かった。なにが虚で、なにが実かわからない。

 ジャーディン・マセソン社という、中国でアヘン戦争、日本では戊辰戦争で悪辣な商売をしたイギリスの商社があったが、コンドルが実はその手先であったという設定である。コンドルの弟子の佐立七次郎もそうであるとしている。
 あれやこれやと事件があって、ウォートルスが描いた銀座煉瓦街の設計図をコンドルが手に入れるのだが、そのとき別のデザインの洋館設計図もついてきた。そして、その洋館設計図の通りに鹿鳴館を建てるのである。

 だから鹿鳴館は実はウォートルスの設計であるというのだ。ふむ、おもしろい。
 そのウォートルスは、藤森照信の「日本の近代建築」によれば、日本から香港に移り更にアメリカに渡ったとされているが、小説では日本で殺されたことになっている。
 そこには銀座煉瓦街で文明開化の景観を作りたかった明治政府の犯罪的陰謀が隠れており、この陰謀をジャーディンマセソンの手先のコンドルが探るという筋書きである。

 じゃあ、コンドルはなぜウォートルスの図面を自分の設計として鹿鳴館に使ったのか、裏にジャーディン・マセソン社の陰謀が絡んでいるらしいのだが、そこから先は実は分からないままに突然、この本は終わってしまう。
 尻切れトンボ小説である、だって、著者の北森鴻がそこまで書いて、死んだのだからしょうがない。もうちょっと書いてほしかった。

 読んでいて、残りページが少ないのに、ここまで広げたいろいろな伏線が、どうやって大団円に行くのかなあと心配しつつ読み進めて、最後に(未完)と出てきてガクッとした。
 どうりで話が途中で散らかり気味のままだった。雑誌連載ものだったらしいから、単行本にするときにうまくまとめるつもりだったのだろう。
 

 この本は、市立図書館で借りてきたのだが、そのときに同じ「キ」の棚で近くにあった北原亜以子の「化土記」もついでに借りてきた。久しぶりに北原の情緒ある時代物を読んでみたくなったのだ。
 ところが読んでいて、どうにもとっ散らかり過ぎて、北原亜以子ってこんな書き方だっけ、おかしいなあ、これも残りページ少ないのに、このとっ散らかりをどう収拾するのか。
 なんとまあ、これも未完のまま、作者が死んでしまった。北原が最近死んだことは知っていたけど(2013年と書いてある)、これが絶筆であるのか。知らなかった。

  というわけで、偶然にも図書館で借りてきた2冊の長編小説が、よりによって、どちらも著者の最後の著作で未完であった。北原よりも北森のほうができはよかったが、どちらも話がとっ散らかったままである。
 著者が再度目を通して手を入れることもなく、雑誌掲載時のままに単行本にするのは、出版社は著者の名前だけでも本は売れてよいだろうが、こんな内容では読者にとっては大いに不満だし、死んだ著者にとっても成仏しがたいだろう。

 死んだのではないが、ジェフリーアーチャーがこのところ4分冊(ペーパバックス)になっている小説を出しているが、わたしは出たばかりの1巻目を読んで、アレ、続き物かよ、しょうがないと2巻目が出るのを待って買って読み、これがまた続きなっていて騙されてからは、3冊目以降を買わないでいる。
 これからは本を読む前に最終ページを見て、未完となっていないと確認してからにしょう。

 長編小説で未完と知らないで読んで、それでも出来が良いと思った本を思い出した。隆 慶一郎著『花と火の帝』である。わたしはこれを読んで、後水尾上皇のつくった圓通寺庭園のことを書いたのであった。
 わたしの書く物は未完小説にはならないにしても、近いうちに絶筆になる可能性はある。絶筆がとっ散らかってるのも恥ずかしいような、いや、当人は死んでるんだからどうでもいいような。
 あ、こんな本を読んでると、うちにある未読本読破がますます遅延するなあ。

●参照 『京都:怨念の景観帝国ー円通寺と後水尾上皇の視線
https://sites.google.com/site/machimorig0/entsuji

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