2019/05/28

1402【神宮外苑再開発幻想】新国立秩父宮ラグビー場建設はこうやって、競技場大ドジからの名誉挽回と急死故ザハ・ハディドの供養だあ~

熊五郎:暑くなったけど元気ですか、ご隠居。
ご隠居:おお、熊さんかい、元気だよ、まあおあがりよ、ちょうど見てほしいものがあるんだよ。
:はいはい、なんですか、アッ、これ?、
:たった今、わたしが作ったばかりのGIF画像だよ。
:ハハン、また例の戯造画像でしょ、え~と見たことあるような、どこだっけ?
新国立競技場と明治神宮外苑だよ。
:あ、そうそう、例のスッタモンダの後でようやく建ち上ってきたのが、この左上の剥げかけベーグルですね、
:そうそう、もうすぐ完成らしい。
:でも、この右の紐かけ亀の甲は、え~っと、見たことあるような、アッそうだ、これってスッタモンダ元凶のザハ・ハディド案新国立競技場でしょ、えっ、ここに建つの、本当?、あれは消えたんでしょ、
:うん、そう、新秩父宮ラグビー場をそのデザインで建てたんだよ。
:え、まさか、、。
:ワハハ、実は昨夜の夢に死んだザハ・ハディド女史が出てきてね、「ウラメシヤ~、没にしたわたしの案を新国立ラグビー場に建ててほしいよ~、、、」と……で、これだよ。
:ウワ、あのカオで幽霊になるとコワイ……、そう言えば最近になって秩父宮ラグビー場と神宮第二球場を入れ替える再開発をやるって、計画の環境アセスメント手続きが始まったそうで、ご隠居はまた野次馬やってるんですね。

:そうそう、つまりラグビー場を新国立競技場の隣りに引っ越しするってね、また格好の暇つぶしだからね、あの新国立競技場騒動からあれこれ思い出して考えてたもんだから、ザハ幽霊が夢に出てきた。
:そこで彼女の願い通りに描いてみたのか~、なんだかウマく納まってるような、第2新国立競技場だね、まあ、あの騒ぎの中で急死だから成仏してないでしょうけど、これで供養になりますね。
:わたしは彼女のファんじゃないけど、コンペ当選案の肉感的な姿を見た時から、あの場所だからこそあの姿で建ってほしいと思っていて、ブログにも書いてるよ。
男と女
:ボロクソに言っていた世間とは逆ですねえ、だから彼女が夢枕に立ってお告げってことかな。
:いつだったか「インポ建築展」でザハ・ハディド案による完成設計図書を見て、新国立競技場竣工式にザハ幽霊が出て来るぞって書いてたからね。
:考えてみるとこれは合理的ですねえ、なにしろもう設計図は完了してるんだから、それを手直しすれば使えるでしょ、たぶん。
:そうそう、こちらのラグビー場も新国立競技場と同じ文科省が建てるのだから、どうせならある物をリユース、リサイクルすれば、これもエコロジーだね。

:そうですよ、あの没になったザハ・ハディド案にいくらカネかけたのでしょうね。
:あのザハ案を首相が白紙撤回したときまでに、既に支払ったカネと契約で支払うべき
カネが、デザイン監修料でザハ・ハディド・アーキテクツに約15億円、設計料で日建設計・梓設計・日本設計・アラップ設計共同体に約36億円、つまり設計費用だけで約51億円だよ、そのほか国際コンペやらなにやら経費を入れるとざっと60億円。
:へえ~、髙い白紙撤回料だったな~、原資は税金だから納税者としてはちょっとは取り返したいですね。あ、文科省はまたもやドジをしないでもらいたいですね。
:まあ、その設計図をそのままでは使えないから、設計変更が必要だけどね。
:また設計費やら移転新築工事費やらカネがかかるなあ。
:ところがね、こんどは一文もかけないで建てるらしいよ。
:エッ、だれか寄付してくれるんですか。
:いや、わたしが今回発表されたアセス書類の中にある図面を見てて、どうもそうらしいと気がついたんだよ。つまりね、どうやら今のラグビー場の土地を売ったカネで新国立競技場の隣りの土地に引っ越すらしいのだよ。
:そうしたって、土地はできるとしても、建物の建設費がかかるでしょ。

:それがね、土地の単価が引っ越し先の第二球場跡地よりも、今のラグビー場のほうが2倍半くらい髙いんだよ、だから引っ越し先で今と同じくらいの広さの土地を買っても、なおカネが余るからそれで建物を建てる、だからカネがかからない、どうもそうらしい。
:え~っ、ホントですかあ、騙されてるんじゃないのかなあ、そんなウマイことをあの不器用ドジ文科省ができるわけがない。
:うん、いや、都市再開発法の市街地再開発事業でやるそうだから、事業の筋書を推察するとそうなるはずなんだな、もちろん昔都市計画家今野次馬探偵勝手推理だけどね。
:まあ、ご隠居が言う通りなら、いいですねえ、この前は60億も無駄遣いしたけど、こんどは一文も使わないなんて、眉唾だけど、。
ラグビー場引っ越し計画
:そこでね、ラグビー場跡地をできるだけ高く明治神宮や三井や伊藤忠など民間事業者に売りつけて、新ラグビー場を作ってもおカネが余って、ぜひ国民に還元するようにしてもらいたいねえ。
:わたしたちは単なる野次馬だから何もできないけど、せいぜい今後の都市計画の動きを、納税者として観察しましょうかね。
:神宮外苑の都市公園や都市計画に意見を言う立場にある東京都民の人たちは、動きに注意してくださいよ。
:もしもザハ案がこうやって生き返ると、あのときに無念の内に死んだザハ・ハディドも浮かばれるし、国際コンペ結果不履行で大恥かいた日本もちょっとは名誉挽回になるでしょうね。
:天才ザハ・ハディドへのオマージュになるね、妄想だけど……。

●もっと神宮外苑都市計画駄文を読みたいお方は下記参照

●もっとオリンピック嫌い駄文読みたいお方はこちらをどうぞ
 【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発・2020五輪運動会騒動瓢論集


2019/05/21

1401【五輪便乗外苑再開発つづき】どうやら公園一部廃止するらしいがその元凶は文科省らしいな


五輪便乗再開発のつづき

戯造GIF





  
    神宮外苑を市街地再開発事業で再開発するのだとのニュースに、その事業手法に驚いて都市計画遊びを書いた。
 しかしどうも都市計画公園を再開発すると言う発想と、そんなことができるのかという制度が分らないので、あれこれと貧者の百科事典のネット検索していたら、これかよ~!って制度が分ったので、またダラダラと遊んでいる。(図は前のブログと重複する)


 東京都の都心地区限定の制度として、都市計画公園を廃止できる「公園まちづくり制度」があるのだ。それを読んでいたら、「神宮外苑地区における活用要件」なる項目があって、要するに神宮外苑再開発に適用するということ(らしいの)である。

 ▼東京都公園まちづくり制度
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/toshi_saisei/data/jinguu_kentou01_10.pdf
 制度の要点は、都市公園として都市計画してから50年ほど経っても、いまだに公園として市民に供用されていないならば、一定の条件で開発利用するなら公園指定を廃止してよいというのである。その条件は、その開発後に6割以上を都市公園なみの広場にして、それは地区計画で担保するのである。
 ようするに東京都心部の開発圧力を利用して、面積が6割になっても緑地や広場ができれば、実質的には都市公園ができたことにするのである。
 
 なんだ、初めからそうだったんだ、しかもこの制度を作ったのが2013年だから、例の新国立競技場の建設に関係して、「神宮外苑地区地区計画」を都市計画決定した年であった。つまり、神宮外苑再開発のために「公園まちづくり制度」を作った(らしい)のである。
 でも、制度の内容を見ると、新国立競技場建設には無関係である。それなのに一緒に地区計画を決めたのは、話題の新国立競技場のどさくさに隠れて、そっと便乗したのだろうか。

 わたしも新国立競技場に気をとられつつも、神宮外苑の都市計画公園に再開発等促進区を決めることに、なんとも不審をもっていたけど、どうやって公園の再開発をするのか見当がつかなかった。
 でもそのときは既に公園まちづくり制度ができていて、だから再開発等促進区だったのだが、気がつかなかったこちらが、都市計画専門家の端くれとしてはなんともドジだった。
 どうも公園制度には疎いが、あの時は立体公園制度の適用にあっけにとられれ、そちらに目が向いてしまった。

 この度の外苑地区再開発の地元地権者たちから出された再開発事業に関する環境アセスの内容を見ると、その建築計画は都市計画公園や風致地区に適合する内容でないものがあるので、これは都市計画公園の廃止を目論んでいることが明白だ。
 ではそれはどこを、どれくらいに規模で廃止するのか、明確にその範囲を推定することはできない。
 ところば公園まちづくり制度を使うのなら、都市計画公園指定してありながらも未供用区域があるなら、その未供用面積までなら公園廃止できるとある。
 その法的根拠は、都市公園法都市公園法第16条であり、そのために都市計画事業の市街地再開発事業であろう。

 ではその未供用区域とはどこか。
 都の資料を見ると、今回の再開発区域の内で未供用部分は、テピアとラグビー場用地であり、そのほかの神宮外苑用地は供用部分とある。
 テピアとラグビー場を合わせて広さは約4.8ヘクタールであるから、この広さまでは都市計画公園の廃止が可能であるとして、再開発事業に合わせて廃止するのだろう。
 再開発事業の区域が約17.4ha、その内の外苑通り沿いの伊藤忠本社ビル用地を除く範囲が現都市計画公園区域で約16.1haである。

東京都「神宮外苑地区における活用要件」より
つまり再開発区域16.1haの内の4.8ha、およそ30%の広さを公園廃止して都市開発活用することになる。その条件はその廃止用地面積の6割以上を公園なみの緑地等にして、地区計画の地区施設として担保することである。
 その都市計画公園指定を解除した面積の土地を、開発しやすい位置に入れ替え配置して、その都市計画を商業業務地なみに変更するのだろう(たぶん、複合棟A、球場併設ホテル棟、広場部分か)。北に入れ替えるラグビー場は、こんどは都市計画公園指定区域に入るのだろう(たぶん)。

 都市計画規制の緩和変更は、2013年に都市計画決定した地区計画のうちで、今回の事業区域となる再開発等促進区に決めてなかった地区整備計画に書きこむことになり、今後の地区計画の都市計画変更手続きに入るのだろう。
 同時に都市計画法及び都市公園法による都市公園の一部廃止手続き、更に都市再開発法による市街地再開発事業の都市計画決定も必要である。
 これらは一連のものとしてすすめるだろうが、それはいつだろうか。

 さて、制度は分かったが、何だかスッキリしないことがある。それは今回の都市計画公園廃止となる対象面積が、テピアとラグビー場という、どちらも公的な土地所有者であることだ。
 特に大部分の面積を占めるラグビー場は国有地であるから、国が公園として供用しないままでいたことには、なにか妙な感じがする。民有地の神宮外苑の野球場と似たような土地利用で、そちらは公園供用してきたのに、なぜラグビー場は未供用だったのだろうか、国有のスポーツ施設なのに不思議である。

 国有地が未供用だったおかげで、再開発区域の3割もの広さが公園指定が解除されて高度利用できるのだから、民間開発事業者にとってはじつに嬉しい未供用だった。
 いや、ウマイことをしたのはタナボタ結果ではなくて、もともとそうするように制度そのものを東京都と結託、いや相談し提案して作ったのだ(ろう)から、なかなかの作戦である。タナの下で待ち受ける口を狙ってボタモチを落すのだからね……。

    とすれば、ここで一人の納税者として事業施行者にお願いしたいのは、その国有地の未供用であったことの再開発事業への多大な貢献度を、権利変換計画において高く評価してほしいことである。
 つまり開発利益を民間事業者ではなく国民に正当に還元してほしいのである。もちろん認可する東京都知事もその辺を十分に留意してほしいものだ。(この件については追記を参照のこと)

 東京都の公園まちづくり制度の説明図に、未供用区域が建物が密集している市街地となっているように描いてあり、そこを公園廃止する制度適用としている。それは今さら公的買収して公園にするのがかなり難しい状況を示しているので、制度の意味が分からなくもない。
 しかし、ラグビー場もテピアもは、権利関係は簡単だし、公園内施設としてそのまま適合するから、既に供用にしてあっても、あるいはいますぐ供用にしても、何も法的な問題はないだろうと思う。もちろん、これでは再開発事業者は困るが、、。
 でもなあ、文科省管轄の国有地が都市公園の廃止に手を貸すのが、どうも何だかなあ、すっきりしないって、書いておく。

 なんにしろ、公園まちづくり制度が先にあって、それに合せて今回の外苑再開発計画が出て来たのではなく、この再開発計画に合せるように新制度を構築したらしく、まったく敬服に値する知恵者プランナーはいったいどなただろうか、都市計画設計研究所だろうか。:都市計画設計研究所の受注情報に、JSCから2012年と2013年に「国立霞ヶ丘競技場整備に係る基本計画策定調査」があり、東京都から2016、17、18年度に「神宮外苑地区まちづくり調査・検討等業務」がある    (2019/05/21記)                              

 2019/05/26追記
 この建設事業を都市再開発法の市街地再開発事業制度を使って行うとのことである。この制度は事業前の土地と建物の価格評価して、事業後にそれと同額の土地と建物に返還する手法である。つまり土地建物を等価交換するのである。

 国有地のラグビー場と民有地の神宮球場とを入れ替えるにあたって、土地の評価額が大きく異なることに留意する必要がある。国有地の方が断然高額なのである。土地評価はいろいろあるが、例えば2018年の固定資産税の路線価格では、神宮球場前が603000円/㎡で、ラグビー場前が148000円/㎡である。

 したがって、これらを土地だけで等価交換すると、ラグビー場の土地の面積は2.5倍に拡大する。それでは民有地が狭くなりすぎて、野球場を建てることができなくなる。
  環境アセスメント用に出された資料を閲覧すると、ラグビー場の土地の広さは、事業前と後ではほぼ同じ広さに見える。つまり移転先の土地価額は元の土地よりも半分以下になっているから、その減った土地分の価額は建物に変換した(普通に言えば土地面積を6割ほどを売ってラグビー場の建設資金に充てた)、つまり土地+建物等価交換であろう。
 したがって、ラグビー場の土地建物を持つJSC(国)は、この事業にあたって新たに負担をする必要はない。国民の新たな税負担はないことになる(はずである)。

 もちろんこれは事業の前後で等価になるとしてであるが、もしも事業後にこの規模のラグビー場を受け取っても、事業前と等価に届かなかった場合は、その差額を現金で受け取ることになる。
 逆に、等価を越えた場合は、国はその差額分を支払わなければならないが、これではラグビー場を再開発事業で建てなおす理由が希薄になる。今の場所で、空中権を売って(再開発事業制度としては一部転出)、そのカネで新ラグビー場を建てればよろしい(東京駅みたいに)。

 とにかく、文科省が東京の都市公園の減少の張本人になるという、あまりほめられないことをやるのだから、その名誉挽回として、新ラグビー場の建設には新たな国の財源つまり税負担が無いようにすることである。
 再び新国立競技場のようなドジをしないようにね、文科省は三井不動産(明治神宮の代理人らしい)にウマイことしてやられないようにうまく立ち回ってね、いいですね。

 この事業では国有地を種地にしてるのだから、つまりこれがないと再開発事業が成り立たないのだから、明治神宮や三井や伊藤忠の民間事業者に儲けさせるのじゃなくて、文科省の官側事業者がしっかり儲けてくださいよ、これは納税者のひとりとしてお願いです。

 あ、まさか三井が再開発事業施行者になるのじゃないでしょうね(たぶん組合施行にはできないだろうから)、国有財産を扱うのだから、せめてUR都市機構にやらせましょうよ。
つづく

▼これまでの一連の五輪騒動記事は下記

2019/05/16

1400【五輪便乗再開発】都市公園としての明治神宮外苑は東京の都市開発圧力に耐えることができるか

久しぶりにオリンピックがらみ記事、つまり新国立競技場騒ぎのつづきを書く。
▼これまでの記事は下記

2019年5月9日に建設業界の新聞に、新国立競技場の南にある、神宮球場とラグビー場更にその南に隣接する民間ビルのある土地について、用地入れ替えと建物の建て替えに関して、環境アセスメントをやることになったと、ネット記事が登場した。
▼建設通信新聞(2019年5月9日)

 そうか、ついに動き出したか。なんとまあ、都市公園指定の土地で、野球場とラグビー場の建て替えついでに、超高層の商業やオフィスなどのビルを、市街地再開発事業制度を使って建てるとのことだ。いやはや面白いことになってきた。
 この計画に関してのわたしの一番の興味は、「都市公園」対「都市再開発」の駆け引きである。つまり、オープンスペースとして公開するべき都市公園指定の土地を、建築敷地としてプライベートに高度に活用する、その手練手管である。そこには法制度をいかにうまく活用するか、あるいはいかにうまく法規制をかいくぐるか、それが問われる。
 これは都市計画のなんともクロート過ぎる、いや邪道とも言うべき手法が登場してくる面白さがある。それを勝手に予想して勘繰り遊びをするのである。

 これについては2013年にその序の口をここに書いているが、
そこでは単純に公園内から公園外に容積移転であろうと思っていて、最後にまさかと思う強引な手法もあると少しだけ書いておいた。それはじつは市街地再開発事業のことである。新聞報道では、本当にこの事業手法を使うとあるから、それで公園指定に対してなにができるのか考えてみよう。

 この件の出だしは、新国立競技場の建て替えのために、その敷地の国有地と隣接する公園や公営住宅の都有地の都市計画及び都市公園の変更をしたが、どういうわけか新国立競技場に関係のない周辺の共同住宅やオフィスビルや宗教法人等の民有地も、これに合せて都市計画変更したのであった。
▼神宮外苑地区地区計画(計画書・計画図)(PDFファイル11,882KB)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/toshi_saisei/data/jinguu_keikaku.pdf

 そこに見えるのは、宗教法人とディベロッパーが共謀して、新国立競技場の都市計画変更に便乗して、広大な都市公園指定用地を高度利用都市開発しようとする動き、策略である。
 現にオリンピックの後に取り掛かる事業というから、どうみても新国立競技場とは無関係のエリアだし、オリンピックのための新国立競技場の都市計画変更時にこちらまでも変更を行う理由はなかった。なぜ便乗を急いでおこなったのか。
▼明治神宮外苑はドサクサ新国立競技場大急ぎ都市計画変更に便乗
http://datey.blogspot.com/2015/11/1149.html

 2013年に内容が決まらないままに再開発等促進区型地区計画の都市計画決定は、その制度から言っても奇妙であり、不審なことであった。いま環境アセスメントにかけると言うから、ようやく内容がきまったのだろう。とすれば、その都市計画変更は今になって独立して行うべきだった。
 勘ぐれば、新国立競技場騒ぎの時にその陰に隠れてこちらの変更をすれば、注目されないだろうと言う密かな陰謀であったのかもしれない、勘ぐれば、。
 なにしろ公園内に超高層建築を建てようというのだから、世の緑好きおば様たちが目の色を変えて抗議に来ることは、目に見えているのだから。

 さて、今回の計画内容を、新聞記事だけをもとにあれこれ考える。
▼日刊建設工業新聞(2019年5月9日)https://www.decn.co.jp/?p=107128
この計画区域の事務所棟(伊藤忠本社)の敷地のほかはすべて都市公園指定されていて、風致地区がかかっているので、そのままでは大きな髙い建物や公園に適する特定用途外の建物は規制されている。それをどうクリアして巨大開発するのか、興味を持っているのである。
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 今回の新聞記事だけでスッカリ分るのではないが、現都市公園指定区域内に風致地区や都市公園の規制範囲を超える高さの超高層建築計画あるようだ。またオフィスの様な公園内には不適合の用途も書いてある。さて、これをどう考えようか。
  ひとつは風致地区も都市公園も特別に法的緩和を謀ることだが、これだけでは難しそうだから、もうひとつは都市公園と風致地区の指定を一部もしくは全部解除してしまうことだ。
国有地のラグビー場と明治神宮外苑の神宮球場を土地交換
複合棟Aはオフィスと商業、複合棟Bはホテルとスポーツ施設、

新神宮球場の上に超高層ホテルが建つ(らしい)
並木東棟は商業、事務所棟は伊藤忠(と三井不動産らしい)
事務所棟のほかはすべて都市公園指定区域
新聞記事を読めば、事業手法は都市再開発法による市街地再開発事業とあるが、都市公園地区内でこれを適用するとは、はて、この法が予想していただろうか。
 そもそも市街地再開発事業は、土地利用の現状が建物が密集していたり、木造で火災が起きやすいとか、耐震でないビルが多いとか、都心などで容積率は高い指定なのに一部しか利用していないとか、公園や道路が足りないとか、とにかく都市環境が不良な地区に適用するものである(都市再開発法第3条)。
 だが、ここは不良地区だろうか。

 この制度の適用には、例えば、土地が細分化されていることが不良とする条件のひとつだが、ここではラグビー場、明治神宮外苑、伊藤忠等、いすれも大規模な敷地であるから、これに当てはまらない。。
 あるいはまた、現に建っている建物の床面積の合計が、指定容積率の3分の1未満の地区に適用するのだが、青山通り沿いの民有地はしっかり高層ビルが建っているから適用できない。
 ラグビー場敷地や野球場敷地は今の200パーセント指定の3分の1以下のように思えるが、これは施設の性格から言って当然であり、しかも都市公園指定の土地だから、当然の土地利用であり、決して不良ではあるまい。たぶん、青山通り沿いの民有地の高容積率建築と合算しても指定容積率の3分の1に届かないのだろう。

 なお、外苑地区計画の再開発等促進区には、伊藤忠ビル西隣のオフィスビル(青山OMスクエア)も含んでいるが、今回の再開発事業区域から外してあるのは、新しい建築なので建て直しをしないことにしたのであろうか。またテピア(槙文彦設計)も外したのは、これを建て直しするというと、また槙一家に殴りこまれるオソレあるから、かな?、。
 神宮球場もラグビー場も伊藤忠本社ビルも、土地の現状用途は不良ではない。しいて言えば耐用年数を越えているとか、耐震問題があるとかで、不良とは言える。

 どうも私の知識が古すぎて、どうやらいまでは地区計画でとにもかくにも再開発等促進区にしていしてしまえば、都市公園だろうと、良好都市環境だろうと、新建築ばかりだろうと、空き地ばかりだろうと、どんなところでも市街地再開発事業やっていいよって、法がルーズなことに変ったらしい。
 ふ~ん、そうかあ、もう10年も都市計画現場に関わらないからなあ。

 でも、なぜわざわざ面倒な手続きが必要な法定の市街地再開発事業にするのだろうか。大きな土地ばかり、大企業と大法人ばかり、権利関係は明解だろうし、やることは分かっているのだから、常識的には任意事業でやるところだ。
 都市再開発法による市街地再開発事業は、原則として都市計画事業(建築を都市計画事業で建てる)であるが、実はここにその大きな理由がありそうだ。この都市計画で容積率の割増しがあるとか、事業になったら国と都から補助金が出るとか、税制優遇があるとか、いろいろ面倒でもいろいろメリットはあるが、本命は次の件にあるような気がする。

 都市公園法第16条に、「都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合」は、都市公園の一部又は全部を廃止できるとある。
 これを適用するのだろうか。もし全部を廃止して、青山通り沿いと同じ用途容積に変更すると、もうどんなデカいものでもどんな用途でも建築可能となる。伊藤忠三井不動産はもちろん、明治神宮もウハウハ儲かることになる。が、まさか、。

 これまで神宮外苑はいずれは順に開園して都市公園となることを前提にしてこれまでの土地利用が進められてきた(らしい)から、不良な土地利用ではない。
 都有地部分だけが一部開園されているが、明治神宮外苑用地ではどこも開園されていない。今後どのように明治公園を開園していくのだろうか。後楽園や芝公園のように、特許公園とするのだろうか。
 ▼神宮外苑は特許公園で再開発だろうか 
 

 あるいは「公園まちづくり制度」をつかうのだろうか。これが本命らしい。
 わたしは都市公園制度のことをよく知らないが、東京都心部にある未供用の都市計画公園に限っての開発利用の緩和制度らしい。この制度は2013年に作られていて、しかも再開発等促進区の区域に適用するとあるから、2013年に神宮外苑地区計画指定と共に作られたようで、つまり神宮外苑再開発のために作られた制度であるらしい。(神宮外苑まちづくり指針
 そうだとすれば、さて、どこを都市公園廃止するのだろうか。たぶん、、ふ~む、、なるほどそういう陰謀であったかあ、フンフン、これを利用するとについては、現在の外苑都市計画公園の内、未供用の4.8ヘクタール分を公園指定解除できて、その6割を緑地等の広場にすれば、大規模再開発ができる、らしい、すごい。
 あの時に新国立競技場ばかりに気をとられて、その関連の立体公園制度に驚いたが、それよりももっとすごい都市公園制度の根幹にかかわるような、ドカンと公園廃止手法が作られたことに気がつかなったなあ、でもなあ、世の公園屋さんたちはそれでいいのかしら。(これについてはここに詳しく書いたので参照)

まちづくり公園制度解説図(東京都)

 公園になることを前提にした土地利用を進めてきた地区を、市街地再開発事業を適用して公園解除するとすれば、それは都市再開発法が本来予想していなかったことだろう。
都市再開発法第4条には、「道路、公園、下水道その他の施設に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合するように定めること」とある。
 もっともこれは、公園を廃止してはいけないという意味ではなく、廃止したいなら都市再開発決定よりも前に廃止しておけということである。法の裏を読むのである。現にそのような事例はある。

 まさか今の都市公園指定を全部廃止することはあるまいとは思う。
 たぶん、高層ビルを建てる敷地を限定してそこだけ公園指定を解除か、いや、再開発事業区域の全部について公園指定を解除するのかもしれない。
 その区域では容積率を使いきれないが、使い切って大儲けしたいから青山通り沿いの伊藤忠本社の用地にも移転するのであろう。

 ではなぜ公園から容積移転するのか。公園指定区域は、ラグビー場は国有地だがそのほかはすべて明治神宮の土地で、宗教法人だから民有地である。公園指定外の土地に容積移転するとは、いわば土地の利用権の一部を売り払うと同じことであり、東京駅赤レンガ駅舎がやった様に、その売却収入で神宮球場の建て替え費用を稼ぐのであろう。
 つまりそこにも明治神宮が都市開発のプロである伊藤忠や三井不動産とともに市街地再開発事業に取り組む理由がある。
 ラグビー場用地は国有地だから、他の民有地に容積移転するとその権利関係の発生が国有財産法に抵触する(だろう)から、容積移転をしないだろう。

 では、なぜラグビー場と神宮球場とを入れ替えるのか。
 これはたぶん、国有地のラグビー場を民有地と合せて一つの施設建築物敷地にして再開発事業に乗せるには、国有財産のあつかいが国有財産法によってあれこれと面倒な手続きがあるし、政治的なちょっかいも入りやすいので、双方で避けたいことなのだろう。そのためには神宮球場用地と青山通り沿い民有地とを隣り合わせにしたいのだろう。
 ラグビー場を北端に寄せて、この部分は再開発事業では土地の入れ替えまで(土地土地権利変換)として、入れ替え後のラグビー場用地の建物は、独立して特定建築者制度をつかって建てるのであろう。
 ただし、民有地側には入れ替えによって大きなメリットがあるが、国有地側にそのメリットがあるのだろうか。入れ替え時にラグビー場を一時閉鎖しなくても済むのだろうか。
建替え段階計画(建設通信新聞から引用)

さてこの後はどのタイミングかわからないが、都市計画の新決定と変更及び都市公園の変更の法的手続きがある。
 都市計画法関連では、明治神宮外苑地区地区計画の変更として今回の再開発区域の地区整備計画を定めること、風致地区を変更すること、そして市街地再開発事業に関する都市計画を新たに定めること、そして都市公園法関連では明治神宮外苑都市計画公園の変更である。
 これらが一連のものとして登場したときに初めて、世間は全貌を知ることができるはずである。

 しかし、当初のこの地区計画の決定手続き時に、その内容のあまりの曖昧さのままに手続きを進めて決めてしまったことからして、今回もあいまいなまま、例えば目に見える完成予想図がないままに都市計画及び都市公園の審議会を通過するかもしれない。
 そしてその審議会に行く前に、世間に内容を問う案の縦覧に対して市民・区民・都民が何も関心を示さず意見提出公聴会もなかったという前回と同じように、この変更にも関心を示さないまま、審議会もあいまいな審議をして、簡単に決まるかもしれない。
 都民が関心を示さなかったのは、曖昧すぎる内容で何もわからなかったからとすれば、事業者の作戦成功であり、今回もそうかもしれない。

 それならそれで仕方ない?のだが、ひとつだけ注意を喚起しておきたいのは、もともとは明治神宮の内苑も外苑も国家神道としての国有地であったが、戦後の政治宗教分離政策施行時に、内苑は無償で外苑は市価の半額で宗教法人明治神宮の所有になったものだということである。つまり土地財産としては国民のものだったのだ。
 そこに民有地でありながら都市公園としての指定の意味があることに、市民も宗教法人も留意するべきだろう。都民の都市公園が東京の都市開発圧力にどこまで耐えることができるか、なかなかの見ものである。

 ここまで駄文を読んでいただいて感謝をするのだが、これを読んだ人は、都市計画素人には何を言っているのかほぼ分らないだろうし、都市計画玄人ならば古い制度の知識を錆びついた頭で書いてピントがオカシイと哂うかもしれない。
 わたしとしては分ってもらわなくても哂われてもよいのである、年寄りのヒマツブシとボケ防止で、思いつくままにグダグダ書いて描いて遊んでいるだけだから。

▼これまでの一連の五輪騒動記事は下記
https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html
(2019/05/16、2019/05/20「公園まちづくり制度」を加筆)