2015/11/09

1145【横浜ご近所探検隊が行く】ヨコハマ港名所「象の鼻パーク」に本格的空き家廃墟コンセプトの新名所ができたらしい

みなとヨコハマ名所「象の鼻パーク」、謎の新名所か

明るい港のそこだけ土地は草ぼうぼう、蔦がからまる木造2階建て、
屋根のセメント瓦は崩れ落ちそう、真っ赤に錆びた高いポール、
ちかごろ日本全国で評判の空き家廃墟をコンセプトにした
 新名所に違いない、これは面白そう、

行ってみようとて、近づけばますます本格的廃墟デザイン、
アンテナにカラスがとまっているところもニクイね、

振り返れば海にオドロオドロな龍がいたりして、
ますます雰囲気を盛り上げる。

 港側には入口がなさそうなので、
表にまわって大桟橋通り側から眺めると、
おお、入口両側にはレトロな街並みを従え、
後ろにランドマークタワーを控えさせて堂々たるものだ。


いよいよ路地を入って近づけば、
蔦のからまる壁にCLOSED、
あ、今日はお休みの日なのか残念、
レターポストの上に黒猫が眠っているのもニクイねえ、
ドアのガラス越しに見る室内は、いかにも廃屋っぽいインテリアで
壁は汚れ、床にはなにやかや散らばっていて、本格的雰囲気だ。

こんど開店しているときに来よう~ッと。

2015/11/06

1144【神宮外苑あたり徘徊③】なんだか懐かしい風景の霞ヶ丘都営住宅団地を消滅させる外苑都市計画提案は実は都住宅マスタープランに背反していたのでは?


●どこか懐かしい風景の霞ヶ丘都営住宅団地へ

 銀杏並木から消えた国立競技場そしてと体育館へと歩いてきて、消えた明治公園四季の庭に沿って外苑西通りを南へ、半分消えた明治公園霞が丘広場、そして霞ヶ丘都営住宅へとやってきた。

 この都営住宅はまだ建っているが、いずれ新国立競技場のトバッチリを受けて、消える運命にある。トバッチリ組の霞ヶ丘広場がここに移ってくるからである。都営住宅を地区内のどこかに建てるのかと思ったら、完全に消えるらしい

 なんとも懐かしい団地風景である。5階建てだけどエレベーターがなくて、階段で上り下りする。給水塔があるのも懐かしい。わたしは1970年代に10年ほど、このような団地に住んでいたことがある。
 庭には今、たくさんの果樹があり、柿やミカンや柚子等がたわわに熟している。いまどきのキレイに刈り込んだ造園ではなくて、草も繁っているのだが、なにやら懐かしく成熟感がある。


●建て替えられた北青山都営住宅団地

 実はここによる前に、外苑銀杏並木の東隣にある北青山1丁目都営住宅に寄ってきたのだ。
 そこはかつてはここと同じような低層棟が建ち並んでいたのだが、いまは高層住宅に建て替えられている。
 その周りはここと違って、いかにも造園デザインの風景で、キチンとしているのである。いまどきで言う高級マンションのようだ。立地条件も高級住宅地並である。
北青山1丁目都営住宅

 霞ヶ丘都営住宅だって、ほとんど同じ立地条件である。建て替えすれば、暮らしやすい良い住宅になるだろうに、なぜトバッチリで消滅させるのだろうか。
 代替の都営住宅として、JSC・日本青年館ビルに高層都営住宅を併設したってよさそうなものを、もったいないと思う。

 いま、空き家問題やマンション問題が起きている。大災害で住宅難民が大量に出ることが予想されている。東北地方では大震災後に大慌てで大量の公営住宅を建てている。
 そういうことから分るように、いまこそ公的賃貸住宅が重要な時なのである。遊びの場の競技場のトバッチリで、こんな良い立地の公的住宅が消えるなんて、なんともやりきれない。

●霞ヶ丘団地を消す地区計画提案は都マスタープラン違反

 そこでちょっと調べてみた。東京都や新宿区には都市マスタープランとか住宅マスタープランとか呼ばれる、まちづくりの基本計画がある。そこにこの霞ヶ丘住宅のことをどう書いてあるか。
 外苑地区計画を提案したときの書類「地区計画企画提案書」に引用してある「東京都住宅マスタープラン」には、「霞ヶ丘地区の都営住宅建て替え事業が特定促進地区として指定」と書いてある。新宿区の都市マスタープランにも同じことが書いてある。
 そして引用の図には『「低中層個別改善地区」地区の特色を考慮した良好な住環境へと改善するために地区計画等を活用して整備する』と記入がある。
 つまり霞ヶ丘団地も、北青山団地のように、建て替えをすることに決めてあったのだった。

ということは、ここの地区計画を提案内容には、もちろん霞ヶ丘都営住宅が競技場のトバッチリで消えるようになっているから、これは上位計画に背反している提案である。
 う~む、それを受け取った東京都は、自分のところで作ったマスタープランと違う内容なのに受理したのであったか。
 受けとってからマスタープランを変更したのかしら、行政裁量として適切だろうか。

参照
◆【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発瓢論集

2015/11/04

1143【神宮外苑あたり徘徊②】今日は祭神の誕生日の明治節、神社境内の外苑は祭礼の見世物小屋群で賑わっている

●自然を無理に仕立てる銀杏並木

 神宮外苑を訪れたのは、一昨年の秋に来て以来だ。また同じことを書きそうだが、あの時と違うのは、国立競技場が消えたことである。
 正面ゲートの青山通りから銀杏並木を入っていく。東京は暖かいから、未だ並木の銀杏は黄葉を迎えていない。
 葉張りが隙間があり過ぎるし、樹幹の先端あたりが妙に細く細く立ち上がっているのは、最近になって剪定をしたのだろう。


 銀杏の木の自然の姿は、絶対にこのようにはならない。ばらけて四方に広がるのが自然なのに、ここではわざわざ剪定して不自然な円錘形の銀杏並木をつくるのである。
 それは絵画館(小林正紹デザイン)という明治日本帝国の記念碑に、一点透視で視線を集める仕掛けのひとつとして重要な造園景観なのだ。ヨーロッパに学んだ造園家・折下吉延のデザインである。

 ここではいわば絵画館が神殿であり、参道が銀杏並木である。
 明治天皇の後に立った大正天皇では、カリスマ性の形成がおぼつかないために、明治政府が一生懸命に作り上げた明治帝国という仕掛けが崩れかねない。そこで明治天皇を神に仕立てて明治神宮を作り、その境内地の外苑がここである。
 外苑の土地はほとんどが官有地だったが、土木、建築、造園等の整備の費用は、全国から寄付と人力奉仕を集めた。その方法は官僚機構を使って地方各地に割り当てが及ぶことで、明治国家の末端への浸透を意図する国家事業であり、明治神宮は国営施設であった。
 また、青年団活動を起して勤労奉仕も求めることで、その団体活動は強兵づくりの基礎となった。
 相撲場や競技場を作ったのも、青年たちが兵士として壮健な肉体を養う場としてであり、それはここの前身である青山練兵場の歴史を受け継ぐものである。

●祭神誕生日の祭礼で見世物小屋が立ち並ぶ境内

 さて、今日は、まさにその明治天皇が生れた「明治節」の11月3日、お祭りの日であろう。神社で祭りならば、境内に屋台や見世物が出てきて賑やかなはずである。
 おお、そのとおり、絵画館前広場にはたくさんのテント小屋が立ち並び、なにやら芸事の披露大会をやっているようだ。この賑わいこそが神社境内らしさなのだ。妙に気取った銀杏並木と絵画館のパースペクティブ景観なんて、お呼びでないのである。
 見れば絵画館の右後ろに、なんだか背が高い(名ばかり)マンションのようなビルが建っている。一点透視の焦点が乱れた。東京都都市景観計画の規制は、役に立たなかったのか。
 

 今日は仮設の小屋がたくさん出ているが、ここには常設の見世物小屋もたくさんある。絵画館、神宮球場、第2球場、そして国立競技場(いまは外苑施設ではないが、かつてはそうだった)、ラグビー場が5大見世物小屋である。
 それらはいずれも巨大すぎて、じつは都市計画の風致地区の高さ制限に違反しているのだが、いずれも風致地区指定(1970年)以前に建ったから、既得権がある。
 そのほかにも観客参加兼用見世物小屋として、水泳場、ゴルフ練習場、テニスコート、草野球場、バッティングセンタなどなど、神社境内らしく雑多に立ち並ぶ。

 肝心の絵画館も、その威容を見せるための周囲に階段や噴水や植え込みでデザインしたオープンスペースは、平らなところはどこもかしこも駐車スペースになっており、威容をいや増しに見せるどころか、これも雑多な神社境内風景らしくなった。
 
 この前来た時は、絵画館にむかって左に眼を転じたら、森の上に何やら鉄骨造りの無粋な代物がいくつも立っていて、それはこの境内で最大の見世物小屋だった国立競技場の夜間照明等であった。
 そして今日はそれが消えている。5年後にはまた立っているのだろうか。
2013年には向うに国立競技場の照明塔が見えていた

●外苑の聖なるモニュメントは駐車場扱い

 あまり知られていないようだが、絵画館の真後ろには、聖なるモニュメントがある。ここが神宮外苑となる前の青山練兵場で明治天皇の葬式を行った時に、その棺を安置した葬場殿跡を記念している場所である。
 そのモニュメントは、丸い石組の草の生えた基壇の上に、大きくその葉を茂らせている楠が一本立っているだけである。絵画館の裏庭の、しかも駐車場の中にあって、その雑多なる風景には聖なるモニュメントの風情はない。
 だが実は、外苑の銀杏並木から絵画館への真直ぐなる軸線上の頂点に位置するこここそが、明治神宮の祭神である明治天皇へのフォーカスポイントなのである。



 そこに神殿を設けずに常緑の大樹としたのは、いかにも日本的信仰の形らしい。これは外苑のプランナーであった建築家・佐野利器の考案であったという。
 そのモニュメント大樹のまん前にひろがる絵画館は、いわば絵馬を飾った拝殿みたいなものである。この拝殿は、いかにも西欧王権的な大仰さである。

●2020年再登場する外苑最大の見世物小屋は

 聖なるものは森の中に隠れて奥に居ますべきとする日本的信仰の姿(神宮内苑)と、西欧近代に追いつき追い越せの明治帝国を露骨にプレゼンテイションする姿との間のギャップが、秋の日の外苑の見世物小屋群の喧騒なる風景に見事に現れていて、妙に面白かった。

 さて、2010年に再び姿を現すはずの巨大見世物小屋は、どんな形を見せるのだろうか。ザハ・ハディド案の未来宇宙船が没になったからには、日本の神社境内にふさわしいとして、檜皮ぶき屋根が乗っていて玉垣に囲われて登場するのだろうか、まさか。 
これはわたしの戯作
 しかし、見世物小屋はしょせん見世物小屋、伝統的なテントやヨシズ張りの小屋掛けがいちばん似合う。そんな軽~いデザインを伊東豊雄か隈研吾(どちらもただ今ゼネコンとグルになって準備中)が見せてくれるだろう。
 あ、そうだ思い出した、1964年オリンピックに、神宮内苑の脇に建った代々木の国立体育館(丹下健三デザイン)は、まさにサーカステント見世物小屋そのものであった。
代々木国立体育館

キグレサーカス

(つづく)
参照
◆【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発瓢論集


2015/11/03

1142【神宮外苑あたり徘徊①】消えている今だからこそ見える束の間の風景を探しに消えた国立競技場を観に行く

●東京体育館と絵画館が呼応する期間限定風景

 秋晴れの日、東京ひとり徘徊は、神宮外苑あたりへ、消えた国立競技場を観に行った。
 消えたものは見えないが、消えたからこそ観える風景、5年先には変ってしまうから今でなければ観ることができない束の間の風景を探しに行ってきた。

 まずはこの風景はいかがですか。向うに見える坊主頭は、言わずと知れた神宮絵画館、手前左に大きくかぶさる丸がいくつも重なる建築は、これまた言わずと知れた東京体育館である。傾いている四角な箱は、ゲージツらしい。

 もう少し引いてみるとこうなる。

  東京体育館と神宮外苑絵画館の位置関係はこうである。

●渋谷川の明治公園が消えた

  東京体育館を背にして、消えた国立競技場を観るとこうなる。絵画館の坊主頭から神宮球場まで見える。この風景は、今でなければ見ることはできない。
 つい半年ほど前までは、この向うに国立競技場が立っていて、この風景ではなかったはずである。残念ながらそのころの写真を撮っていない。
 体育館との間には渋谷川が流れている谷間に、明治公園四季の庭があるはずだが、いまや白い板囲いの中の工事現場になっていて樹木を撤去しつつあるようだ。川はどうなるのだろうか。

 この写真に見える黒い庇や階段は、もちろん体育館である。向うの坊主頭の手前の大きな空き地が、消えた国立競技場である。2020年には、ここに新国立競技場が建っていることであろう。

 上の写真を撮っている位置は、下の写真(google street)の外苑西通り左のコンクリート壁上にある東京体育館の裏出入口から右を見おろしている。
 こうやってみると渋谷川の谷間に擁壁を立てたという地形的なせいもあって、体育館も実際にはかなり高い建物になっている。


●現れた懐かしい未来都市のような期間限定風景

 では逆に、坊主頭絵画館の側から東京体育館を見るとどう見えるか。
 絵画館を背にして、競技場撤去工事の板囲いにある透明プラスチック板を通して覗き込んだ。
 おお、消えた国立競技場の跡地の向うに、今だからこそ観えるのは、ロケットと宇宙船そして高層ビルが林立する未来都市だよ~、、、これって、わたしが少年時代の雑誌で観たデジャビュ感のある風景だなあ。
 今や幻となった新国立競技場ザハ・ハディド案も未来型宇宙船であったが、東京体育館は既に地球に降り立った前世期型宇宙船というところか。
 
NTTのタワーとの取り合いが絶妙で、ヘンに懐かしいような。

では、ちょっと悪戯して


●没になったザハ・ハディド案は東京体育館に良く似合う

次は、東京体育館の正面にまわって、千駄ヶ谷駅前の側から眺めると、ふむふむ、こちらから見るともうちょっと近代的宇宙船かもしれない。
 宇宙船つの体育館を大いに意識して、一義的にはこちらとの調和を求めたのであったらしい。
 一方、クラシックな絵画館との関係は、むしろ極端に対比することで記念性をさらに高揚させようと考えたのであろうと、いまさらながら確認したのである。
 実はこのことは、神宮外苑地区地区計画の企画評価書に、それらしいことを記してある。その評価書は、都市計画家の関口太一が書いたのであろう。

これが幻のザハ・ハディド案と東京体育館の並ぶ模型写真
よく似た仲良し母娘みたい

 つぎは、絵画館の方にもいってみよう。(つづく)

参照
◆【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発瓢論集

2015/11/01

1141中央アジアのキルギス共和国で活動する国連機関ユニセフ現地事務所代表の杢尾雪絵さんによる現地報告を興味深く聴いた

●中央アジア・キルギス共和国

 中央アジアのキルギス共和国で活動する、国連機関ユニセフ現地事務所代表の杢尾雪絵さんによる現地報告『若者を戦いに行かせないために』を、10月30日に東京のユニセフハウスで聴いた。
 2010年の民族紛争を経て中央アジアで初めての民主主義共和国を築いたが、貧困差別と国境をまたぐ民族紛争の中で、青少年を平和へとどう育成するか、心を砕きつつ活動をしている。

 この日本列島には、地続きで接する他の民族の国はないし、各種多様な民族が住んでいるわけでもないことで、民族紛争や国境紛争は無い。もっとも、国境紛争がない譯ではなく、千島列島の一部と日本海の孤島をめぐって線の引き方で諍いはあるが、人が死ぬような紛争はない。
 ところが、ユーラシア大陸では多民族がつばぜり合いしながら住む地域や国がいくつもあり、紛争が絶えない。中央アジアのキルギス共和国もそのひとつである。
キルギス共和国の位置
キルギス共和国と紛争地のフェルガナ盆地
 杢尾雪絵さんは、キルギスで国連機関のユニセフ事務所の代表として昨年から赴任している。その前はウクライナ代表だったが去年転任した。
もう20年も各国の国連機関で仕事をしている国際活動家である。
 転任直前の去年4月にも、一時帰国して紛争真っ只中のウクライナで、子どもの被害の状況といかにして救うかという現地報告を聴いた。
 そして今年、こんどはキルギスでの活動報告である。この貧困で多民族の国における、子どもや青少年の課題とユニセフができることを語った。

●キルギスの貧しさと日本の豊かさ貧しさ

 キルギス共和国の2014年の人口は583万4000人、人口一人当たりGDPは1299$であり、一人当たり1000$以下とされる低所得国をようやく抜け出して中低所得国になった。これは世界国別比較で158位に位置し、近隣諸国と比較して見る。
アフガニスタン    650$ 174位
・タジキスタン    1113$ 159位
・キルギス      1299$ 158位
・パキスタン     1343$ 152位
・ウズベキスタン  2046$ 136位
・中国         7589$  80位
・トルクメニスタン  8270$  73位
・カザフスタン   12183$  60位
(日本        36332$  27位)

 日本人の1人当たりGDPはキルギスの30倍、それほどに日本は豊かな国なのである。日本の子どもは豊かなんだろうと思う。
 ところが、2014年の子ども貧困率を比較すると、キルギスでは45%の高率であるが、日本でも16%と意外に髙いのである。
 しかも日本の子ども貧困率は、1985年の11%からしだいに上昇している。つまりどんどん貧乏になっている。アベノミクスとかって浮かれているのは、どこのことなのだろうか。

 ソ連崩壊まではその一員のキルギス・ソビエト社会主義共和国であったが、1991年の独立後はキルギスタン共和国となり、ロシアとは独立国家共同体 (CIS) の集団安全保障条約のもとにある。
 2005年のチューリップ革命、2010年の反政府運動の大騒乱を経て、今は国会が主導権を握る議院内閣制となり、大統領は象徴的な地位になっている。
 中央アジアの近隣諸国が大統領による独裁制の中で、この民主主義体制は珍しいという。
 だが、産業がないこの国の最大の産業は、ロシアへの出稼ぎだそうだ。国民所得の3割に相当するくらいの基幹産業とか。

●貧困格差がまねく民族紛争の中で

 貧困が格差と差別を生み、それが民族間の争いになり、歪んだナショナリズムを生み出す。
 かつてソ連時代は、各民族は平等にという国家政策だったが、ソ連崩壊後に起きた混乱と貧困が民族対立を生み出し、それが民族間紛争を招いている。
 キルギス南部のウズぺキスタンとの複雑な国境地帯にあって民族が入り乱れるフェルガナ盆地あたりでは紛争が絶えない。

 それに近ごろは宗教過激派が青少年をリクルートすることも多くなり、穏健なキルギスのイスラムも原理主義へと染まる傾向もあって、紛争は国際化する。国際紛争も伴う民族間紛争は、いったん起きてしまえば憎悪が憎悪を生む悪循環構造となる。
 そのような中で、国連機関のユニセフの活動は、次の世代に民族間紛争が起きないように、子ども、少年、青年たちを教育することが最も大切なことと考え、大きく動くよりも小さなできることを地域ごとに、たくさん積み重ねていく方針でやっているという。

 例えば、紛争国境を挟んだ両方の地区に同じ教育施設をつくって、両方で同じような活動をすることで、教育を受けた若者たちが次の平和を築くことを期待する。
 そのために、国連ユニセフのキルギス事務所代表としての杢尾さんが、直接に折衝し連携する今の政府の教育担当閣僚は、若いやる気のある女性であり、期待できるという。

●いくつもの紛争国で仕事してきた国際人の杢尾さん
 
報告会の会場には、100名くらいの聴衆が来ており、若い人たちも多くいて、積極的に質問している姿をみて、杢尾さんの後を追う世代があることを頼もしく思った。
 そして、わたしの仕事仲間だった彼女が、こうして今、中央アジアの貧しい国で子どもの幸福のために、平和のために活動していることを、わたしは誇りに思い、嬉しいことである。
 彼女がわたしの仕事場から、湾岸戦争のクルド族難民キャンプ支援にトルコのUNHCRへ飛んで行ってから、アメリカ留学を経て国連へ、あれからもう四半世紀にもなるだろうか、月日は早く経つ。

 これまでトルコ、モンゴル、コソボ、モンテネグロ、タジキスタン、ウクライナなどの国情が複雑で、時には戦火が及ぼうとする地域で活動する彼女は、なにしろ若いころはスカイダイビングなんて空を飛んでいたくらいだから、やっぱり肝っ玉姐御だからできるのだろう。今は可愛い娘もやさしい夫もいるから、肝っ玉母さんか。
 わたしは何もできないが、北部の首都ビシュケクに住みながらも、紛争地域の南部にも月に2,3回は行くという彼女の身に、危ないことが起きないようにただ祈るだけである。 (2015/11/01)
杢尾さんが赴任した国々

ユニセフによる杢尾雪絵(もくお ゆきえ)さんのプロフィル
 ユニセフ・キルギス共和国事務所代表。
 大学卒業後、都市計画建築コンサルタントとして就職後、青年海外協力隊員(JOCV)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の国連ボランティア(UNV)を経て、1991年から1994年末まで米コーネル大学地域計画学科に留学。
 国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部インターンを経て、1995年にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)としてユニセフ・モンゴル事務所に勤務。ユニセフ・コソボ事務所長(1997年~)、モンテネグロ事務所長(1999~2001年)、タジキスタン事務所代表(2001~2008年)、ウクライナ事務所代表(2009~2014年)を務めた後、2014年7月より現職。

参照:
タジキスタンで活躍するユニセフ杢尾雪絵さん(2002)
https://sites.google.com/site/matimorig2x/mokuoyukie-tajik
紛争地ウクライナの国連機関ユニセフで活動する杢尾雪絵さん(2014)
http://datey.blogspot.jp/2014/04/918.html


外部関連ページ
◆いつも心に青空を ユニセフ タジキスタン代表・杢尾雪絵(NHKオンライン)
http://www.nhk.or.jp/professional/2006/1130/

2015/10/29

1140【歴史ミステリ】鹿鳴館の設計者はコンドルではなくて実はウォートルスであったという話をご存知ですか?

 鹿鳴館の設計は、ジョサイア・コンドルじゃなくて、銀座煉瓦街を作ったウォートルスだった、という話を読んだ。いや、なに、北森鴻著『暁英 贋説・鹿鳴館』って歴史ミステリ小説ですよ。
 明治政府お雇い外国人となってからのコンドルを主人公に、その弟子たちはもちろん、師匠の河鍋暁斎、お雇い外国人仲間のベルツ、井上馨、岩崎弥太郎などが登場し、ちょっと面白かった。なにが虚で、なにが実かわからない。

 ジャーディン・マセソン社という、中国でアヘン戦争、日本では戊辰戦争で悪辣な商売をしたイギリスの商社があったが、コンドルが実はその手先であったという設定である。コンドルの弟子の佐立七次郎もそうであるとしている。
 あれやこれやと事件があって、ウォートルスが描いた銀座煉瓦街の設計図をコンドルが手に入れるのだが、そのとき別のデザインの洋館設計図もついてきた。そして、その洋館設計図の通りに鹿鳴館を建てるのである。

 だから鹿鳴館は実はウォートルスの設計であるというのだ。ふむ、おもしろい。
 そのウォートルスは、藤森照信の「日本の近代建築」によれば、日本から香港に移り更にアメリカに渡ったとされているが、小説では日本で殺されたことになっている。
 そこには銀座煉瓦街で文明開化の景観を作りたかった明治政府の犯罪的陰謀が隠れており、この陰謀をジャーディンマセソンの手先のコンドルが探るという筋書きである。

 じゃあ、コンドルはなぜウォートルスの図面を自分の設計として鹿鳴館に使ったのか、裏にジャーディン・マセソン社の陰謀が絡んでいるらしいのだが、そこから先は実は分からないままに突然、この本は終わってしまう。
 尻切れトンボ小説である、だって、著者の北森鴻がそこまで書いて、死んだのだからしょうがない。もうちょっと書いてほしかった。

 読んでいて、残りページが少ないのに、ここまで広げたいろいろな伏線が、どうやって大団円に行くのかなあと心配しつつ読み進めて、最後に(未完)と出てきてガクッとした。
 どうりで話が途中で散らかり気味のままだった。雑誌連載ものだったらしいから、単行本にするときにうまくまとめるつもりだったのだろう。
 

 この本は、市立図書館で借りてきたのだが、そのときに同じ「キ」の棚で近くにあった北原亜以子の「化土記」もついでに借りてきた。久しぶりに北原の情緒ある時代物を読んでみたくなったのだ。
 ところが読んでいて、どうにもとっ散らかり過ぎて、北原亜以子ってこんな書き方だっけ、おかしいなあ、これも残りページ少ないのに、このとっ散らかりをどう収拾するのか。
 なんとまあ、これも未完のまま、作者が死んでしまった。北原が最近死んだことは知っていたけど(2013年と書いてある)、これが絶筆であるのか。知らなかった。

  というわけで、偶然にも図書館で借りてきた2冊の長編小説が、よりによって、どちらも著者の最後の著作で未完であった。北原よりも北森のほうができはよかったが、どちらも話がとっ散らかったままである。
 著者が再度目を通して手を入れることもなく、雑誌掲載時のままに単行本にするのは、出版社は著者の名前だけでも本は売れてよいだろうが、こんな内容では読者にとっては大いに不満だし、死んだ著者にとっても成仏しがたいだろう。

 死んだのではないが、ジェフリーアーチャーがこのところ4分冊(ペーパバックス)になっている小説を出しているが、わたしは出たばかりの1巻目を読んで、アレ、続き物かよ、しょうがないと2巻目が出るのを待って買って読み、これがまた続きなっていて騙されてからは、3冊目以降を買わないでいる。
 これからは本を読む前に最終ページを見て、未完となっていないと確認してからにしょう。

 長編小説で未完と知らないで読んで、それでも出来が良いと思った本を思い出した。隆 慶一郎著『花と火の帝』である。わたしはこれを読んで、後水尾上皇のつくった圓通寺庭園のことを書いたのであった。
 わたしの書く物は未完小説にはならないにしても、近いうちに絶筆になる可能性はある。絶筆がとっ散らかってるのも恥ずかしいような、いや、当人は死んでるんだからどうでもいいような。
 あ、こんな本を読んでると、うちにある未読本読破がますます遅延するなあ。

●参照 『京都:怨念の景観帝国ー円通寺と後水尾上皇の視線
https://sites.google.com/site/machimorig0/entsuji

2015/10/27

1139【横浜名ばかりマンション傾き事件】真犯人は設計も監理も施工もグルでやった三井住友建設とようやくわかったぞ

1136【横浜名ばかりマンション傾き事件】の続き
http://datey.blogspot.jp/2015/10/1136_22.html

●横浜傾きマンション設計監理者は三井住友建設だった
熊五郎:ご隠居、分りましたよッ、ほれ、これこれ、。
ご隠居:おや熊さん、騒々しいねえ、なにごとだよ。
:ほれ、例の傾いたマンションのことで、、、
:あ、またその話かい、わたしゃもう飽きたよ。
:まあ、そう言わないで聞いてくださいよ。この前に話した時、設計者が分らないと言ってたでしょ。それがネット探ししてたら、わかったんですよ。
:おやそうかい、だれだった?
:ほれ、ここに設計施工三井住友建設って書いてあるでしょ。これは事業主の三井不動産の発表資料ですから確かでしょうよ、10年も前だから、始まる時なんでしょうね。
:そうか、やっぱり、設計は三井住友建設だったのか。で、工事監理者は誰だい?
:そりゃ書いていないですね。いないのかなあ。
:法律で決まってるから、いないことはないだろう。一般には設計者と監理者は同じにするから、それも三井住友建設だな。
:ということは、三井不動産は、設計も監理も工事も全部まとめて三井住友建設と契約したんですね。設計監理料をケチって工事費に一切を含めたのかな。



●もしかして設計ミスを握りつぶしたのかも
:あ、そうだ、もしかしたら、問題の基礎杭も設計ミスで短くて、支持地盤に届かないものだったのかもしれないね。
:ということは、杭工事をした孫請けの旭化成建材は、設計通りに仕事をしたってことになりますね。ちっとも悪くない。
:そうとも言えないがね、現場で杭が支持地盤に達しているかいないか確かめないままに、ボンクラ工事したんだろうな、それはそれで違反行為なんっだよ。設計通りにするとおかしい、と気が付いたら報告する義務があるね、そして指示を受ける。
:誰に報告するんです?
:日立ナントカってところにね、そこから元請けの三井住友建設に報告し、そこから設計監理者に報告して設計変更の指示を受けるんだな。指示はその逆ルートで伝わる。ここでは旭、日立、三井という3段階だな。
:じゃあ、三井住友建設は設計監理も工事も一緒だから、工事現場監督が設計監理もやってたんでしょうね。
:そうだろうね、ところが工事現場監督に報告された基礎杭データを見ても、設計ミスだってことに気が付かなかったんだろうな。
:もしかしたら、気が付いたけど自分ところのミスだから、握りつぶしてデータの偽装をさせたのかもしれませんね。
:おお、その可能性が大きいね。設計監理者と施工者がグルになってりゃ、設計ミスが分らないか、分っても無視って不正が起きるかもなあ。
:そうか、設計監理と工事と別々にやるなんて、めんどうなことと思ってましたけど、実はそうやって、立場の違うものがチェックしてミスや不正を防ぐようにするシステムなんですね。それが同じ会社の者じゃあ、甘くなるのは当然ですね。
:だから、設計監理者と施工者とを分けて、厳しいチェックの目を入れる必要があるよ。

●設計施工グル方式新国立競技場も傾くか
:あれ、ここにデザイン監修IMNNPACT DESIGN INC.って書いてありますよ。ここが設計じゃないんですか。
:そこは、たぶん、三井住友建設の下請けで、外観とか玄関ホールの内装デザインとかをしたんだろうな。
:それって、三井じゃデザインが下手なんで、見た目の格好をつける役目ですかね。
:まあ、そうなのかもなあ、超高額商品だから見た目の良さが大切なんだな。
:ところが実は見た目はよくてもすぐ壊れる商品、マンションてのも誇大広告用語だし、建て直しはほとんど無理だし、文字通り「名ばかりマンション」ですねえ。
:世間は末端業者の杭工事屋ばかりおっかけて、大元の設計監理施工した三井住友建設の責任を追及しない何故かねえ、ここが設計施工した名ばかりマンション全国調査をしろって、なぜ言わないのかねえ。
:それに設計監理者と施工者が同じでよいのか悪いのかって、その基本的な問題も誰も言いませんね。
:そういや、あのやり直しになった新国立競技場コンペも、設計者と施行者が一応は別だけど、最初から談合してグルになって応募せよって新条件だよ。大丈夫かね、傾くんじゃないかねえ。
:競技トラックが坂道になったりしてね。そうしたらご隠居は、また張り切ってイチャモン書んでしょ。
:うん、ありがたいことだよ、世の中いろいろ揉めてくれるから、年取ってもボケてるヒマがないね。

(追記20151112)今朝に新聞に、三井住友建設が初めて謝罪したとの記事が出ている、いまごのになってかよ~。


2015/10/25

1138【横浜名ばかりマンション傾き事件】根本問題は基礎杭の欠陥工事じゃなくて「マンション」という区分所有方式共同住宅という欠陥システムにあるんだけどなあ

●とにかく名ばかりマンションを買わないことが一番
 今朝の新聞には、「うちの杭は大丈夫か、誰に聞けば、マンション相次ぐ相談」とかって、「マンション購入、注意すべき点は」なんて記事もある。
あのねえ、杭のことなんか、誰に聞いてもわかんないよ、だって土の中の深~くで、だれも見てないんだからね。杭じゃなくてもコンクリートだってほじくってみても分らないよ。
 そんなこと心配するんじゃなくて、そもそもマンションという危険な商品を買うのを、おやめさないよ。それが一番よろしい。
 共同住宅ビルに住みたいなら、1棟まるまる賃貸借共同住宅の中の1戸を借りなさいよ。
それなら傾こうが倒れようが、あなたの懐は痛みません。その家主さんが建てなおすでしょ。

 新聞屋さんも、こんな末端杭屋さんを追っかける記事ばかりじゃなくて、そもそもマンションなるものがいかに危険な商品かを報道しなさいよ。
 その危険なることは、20年前の神戸大震災で十分に知ったはずなのに、もう忘れたのかい。
 え、不動産屋さんが新聞広告を出してくれなくなるからできないって、、、おお、しょうがないなあ、まったく。

●「マンション」って大邸宅とか豪邸のことなんだけど
 このところ「マンション」という不思議な言葉で、マスメディアもネットスズメも賑やかなことである。横浜都筑区でマンションが基礎杭の欠陥工事で傾いた事件である。
 ニュースを見てるとマンションとは、高層の共同住宅ビルのことを言うらしいが、特に各戸が別々の所有者になっている区分所有タイプの建築を言うらしい。
 だから2階建ての賃貸アパートはマンションとは言わないらしい。高層の賃貸共同住宅ビルはマンションなんだろうか。

 マンションとは和製英語らしいが、本場英語の意味は大邸宅とか豪邸とかで、分りやすく言えばハリウッドの大スターの邸宅とか、アメリカ大統領が住んでいるホワイトハウスのような豪邸を言うのだそうである。
 それなのに日本では、ちっとも大邸宅でも豪邸でもないのに、どうしてマンションというのか。
 和製英語マンションに英語で近い意味と思われるのはコンドミニアムだが、そう言わないのはなぜだろうか。

●不動産屋の誇大宣伝広告用語「マンション」
 法律はどうなっているんだろうと探すと、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」というのがあった。その第2条にマンション定義が「二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものをいう」と書いてある。
 え、じゃあ、木造2階建て住宅の1階をわたしが、2階を弟がそれぞれ所有したら、これもマンションなんだ。超高層の1000戸もある共同住宅もマンションだ。へえ~。

 では、法律がそうだから、共同住宅ビルをマンションというようになったのか。いやいや、法律は2002年にできたけれど、そのずっと昔からマンションと言っていた。
 どうやら、不動産業者がアパートメントハウスと言うべきところを、都市にはびこった木造2階建てアパートと差別化するために、マンションと誇大広告的命名をして売り出したのが始まりらしい。
 その誇大広告用語をそのまま法律に持ち込んだらしいが、庶民には分りやすような、誤解を招くような困った法律である。
 最近、新聞のマンション広告に戸数の表現を、例えば100邸と書いている。の漢字が土地につかない空中楼閣にもつかうのは、マンションと同じく誇大広告用語だけど、そのうちに法律にも書かれるかもしれない。
 
 というわけで、マンションとは高級な邸宅を言うものだと、庶民はこの誇大広告にすっかり騙されて買うようになったらしい。
 どうも誇大広告用語を使うのがバカみたいなので、わたしは名づけてこう言っている。
「名ばかりマンション」


●実は珍しくもない名ばかりマンション建て替え紛争
 そして、この事件である。しかし、この事件は決して珍しいことではない。去年7月に横浜で住友不動産が売った「名ばかりマンション」で全く同じような事件の報道がある。
 ずっと前には耐震偽装事件という地震に弱い名ばかりマンションが、その前には阪神淡路地震被災した名ばかりマンションが、どれもその後の建て直しで、とんでもない大苦労をしている。

 その苦労は、区分所有ビルであるということが原因である。上に書いた法律ができたのが2002年であるように、いろいろな事件で壊れても倒れても、その建て替えをめぐってはなんだかんだと紛争が起きるために、なんとかしなければなるまいとできた法律である。
 紛争の根本は、壊すにも建て替えるにも、所有権利者たちの同意がいるのだが、これが簡単ではないからだ。分りやすく言えば貧乏人と金持ち、年寄りと若者、外国人と日本人、などなど100人いれば100通りの違いがある。その権利者数が多くなれば幾何級数的に難題が増える。

 今評判の横浜都筑区の名ばかりマンションでは、4棟で全700戸もあるのをデベロッパーは全部建替え補償すると言っているそうだが、700通りの事情に加えて各棟ごとの事情があるから、同意を取るのは超難関であろう。
 このようなことは、1995年の神戸でその難しさをたっぷりと経験したのに、売るほうも、建てる方も、買う方も、だれもかれもがすっかり忘れてしまっている。
 そうしてこのような事件に出くわしたのである。全くどうかしているとしか思えない。

●名ばかりマンションがもたらす大震災後の難民問題
 TVを見ないから知らないが、新聞やネットのマスメディアの報道には、末端業者の犯罪事件としての視点しかないらしい。しかし、根本問題は名ばかりマンションというシステムにあるのだ。
 次の大震災が来たら、名ばかりマンションの多くは被災するだろう。倒れなくても、大修繕が必要な壊れ方をするだろう。そして修繕の同意が得られない名ばかりマンションは立ち腐れ廃墟になる。
 倒壊してしまって公費で撤去されても、跡地は細分化されたままの共有地だから、この再利用も同意を簡単にはとれないから、草ぼうぼうの空き地が増えるばかり。
 大地震が来なくても、人口減少で空き家が出てくると管理できなくなって、お化け名ばかりマンションがあちこちに登場するだろう。名ばかりマンション難民は、もう戻ることができない。

 というわけで、共同住宅ビルは区分所有の名ばかりマンション方式を、今すぐさま禁止するべきである。今やめておけば、これ以上の被害者を出さなくて済む。
 共同住宅ビルは区分所有名ばかりマンション方式ではなくて、1棟の全戸が賃貸借住宅の、しかも単純所有方式にするべきである。その所有者は団体(企業、組合等)でも個人でもよいが、とにかく単純にしておけば、建て直しは比較的容易であるはずだ。
 また、建物の管理や運営が、組合という寄合世帯ではないから、空き家対策もやりやすいだろう。

●人口減と大震災に備えてマンション禁止と賃貸住宅促進を
 現在の政府の住宅政策は、このような現実から眼を逸らして、持ち家を進めているから、賃貸住区には冷たい。
 ところが、先般の東日本大震災被災者への住宅供給が、珍しくも災害復興公営住宅という賃貸住宅を大量に建設している。つまりこれまでのような持ち家政策のままでは、社会的な大事件が起きた場合には対応できなくなったことを、まざまざと示している。
 その公的賃貸住宅の建設をするのに困ったのは、どこの被災自治体でもながらくその建設をしていないので、ノウハウが失われてしまっていたことだった。全国の自治体のその専門職員を派遣してもらって建設をしている有様であるが、遅れに遅れている。

 住宅を社会政策ではなくて、民間投資の経済景気対策にしてきたツケである。公的賃貸住宅を日ごろからきちんと供給していれば、震災後にこれほども困ることはなかったはずである。
 それなのに、次の大震災に備えて、被災するかもしれない自治体において、公的賃貸住宅の供給を進めているかと言えば、そういうことを全く聞かないのは、いったいどういうことなんだろうか。むしろ名ばかりマンションばかりが増えて、住宅難民候補者を増加させている。

 その結果が今の空き家大量発生問題である。この国の政府には住宅政策がないと前々から言っているのだ、いまだになにも見通しが無くて、マンション問題も空き家問題も、まるでまるでモグラたたきの目先小手先対策しかしない。
  そもそも基本的人権である住むということについて、ほとんどの国民が一生かかって返済するような借金漬け人生を送らなければならないような政策自体が、根本的に間違っている。
 わたしはもう30年くらいそういっているが、蟷螂の斧だし、もうすぐ死ぬから、知ったことではないのだが、あまりバカバカしい事件が起きるもんで、こんなことを書いてヒマツブシとローカボーシに活用している。ありがたいことだ。

(追記20151026)
 今朝の新聞に週刊現代の広告。あのフューザー社長が、わたしと同じこと言っているらしい。あの耐震偽装騒ぎで騒ぎで、悪名が髙かった本職が言うんだから、わたしの言よりも確かだろう。

●参照:「くたばれマンション」
https://sites.google.com/site/machimorig0/#tosikyoju

2015/10/24

1137【横浜名ばかりマンション基礎杭インチキ事件】これって特定犯人捜しよりも建設業界と建築設計業界の根深い問題を追及するべきとと思うけどなあ

 
建設業界の構造的問題としてなんとも興味深いことなので、またもや横浜都筑区の共同住宅(名ばかりマンション)基礎杭インチキ事件について書くのだ。ホント言えば、ヒマツブシ、ボケボーシにやってるんだけどね。

 新聞にデカデカと「杭偽装の責任者」って出てる。でもね、特定の犯人を捜すのも結構だけど、これって真犯人はそこじゃないんだよなあ。
だってね、基礎杭のインチキなんて、もしかしたらどこの建物の工事でも、技術者の誰でもやってるのかもしれないよ。あなたが住む名ばかりマンションだって、安心できませんよ、ホント。
 たまたま傾いたからバレタけど、これからの地震で簡単に傾くヤツだってあるかもよ。そうなったら原因が地震か、インチキ杭かわからないね、どうします?

 これは建設業界の構造的問題なんだよ。
 問題の根源は元請けゼネコンの三井住友建設にあるってことを、世間様というかマスメディアはお忘れのようですね。
 下請けの日立ナントカや孫請けの旭化成ナントカに、工事を任せっぱなしで何も管理監督しないで、請負金の上前だけピンハネした元請けの三井住友建設、ここがいちばん悪いんだけどなあ、なんでニュースには出てこないんだろ?

 あのね、だからね、旭化成ナントカの杭打ちした建築を調べるのもいいけど、いいかげんなゼネコン三井住友建設が工事した建物を全国調査するべきでしょうに、なにしてるんだかねえ~。
 いい加減な管理監督の企業だから、基礎杭ばかりじゃなくて、ほかもインチキあるかもしれないよ。大丈夫ですか、三井住友建設さんよ。

 いや、そればかりじゃないよ、こうなりゃ、三井ナントカとか旭なんとばっかりじゃなくて、基礎が杭打ちになっている建物を全部を調べるべきですよ、、おお、こりゃたいへんだあ~。大手ゼネコン中小ゼネコンに限らず全部調べて、ぞくぞくとインチキが出てきたら、どうします?
 だからね、えへん、これは建設業界の構造的な問題なんですよ、多分。
 下請けや孫請けにまかせっきりで、現場を見ない元請けゼネコン、これで建築は大丈夫なんでしょうか、大丈夫じゃないからこういう事件が起きたんでしょ、どうするんですか?
 そのあたりを、なんで世間では言わないのかなあ?

 あ、そうだ、建築設計業界の建築家にとっても大問題ですよ、だってさ、やるべき監理をさぼってインチキ基礎杭を見逃した工事監理者の一級建築士は、いったいどなたですか、いるんですか、いないんですか、法律で決められているから、いないってことはないでしょ、出てきなさいよ。
 普通ならこの建築の設計者でしょうが、雲隠れですか?
 このあたりを、なんで世間では言わないのかなあ?


 とにかく、みなさま、名ばかりマンションだけはおやめください。
 悔いのない住宅選びをしましょうね。

 去年7月にも、ほぼ同じ事件が起きて、こんなことを書いています。世の中は全然反省してませんねえ。
968だから言ってるでしょ、名ばかりマンション区分所有共同住宅ビルをやめろって
http://datey.blogspot.jp/2014/07/968.html


(追記20151026:設計者は施工と同じ三井住友建設(の一級建築士)とようやく分かった。工事監理者も三井住友建設の一級建築士だろう。つまり、同じ企業内でグルだから、なんのチェックも働かなかったのだ。そして下請け孫請けまかせだったに違いない)
 参照:http://mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2005/1130/index.html

(追記20151112)今朝に新聞に、三井住友建設が初めて謝罪したとの記事が出ている、いまごのになってかよ~。