2025/05/18

1886【わが設計の父母旧宅】築60年木造モダン小住宅が今は古民家民泊施設として生き残るとは!

 久し振りに旅先に宿泊する長距離の旅に出てきた。本当はそんな気はないのだが、歳相応にこれが故郷見納めの旅というと、いかにも格好がよろしい。
 横浜ー三原ー備中高梁(2泊)ー岡山・庭瀬ー大阪駅ー横浜だった。予定通りに円滑に終えたのは、介護役の息子がいっしょに行ってくれたからだ。もう、一人旅は無理かもしれないと、浦島太郎気分でもあった。

 ちょっと面白かったのは、岡山市内のかつて父母が住んでいた家が、なんとまあ古民家民泊として今も生きていることだ。今回の旅のためにホテルをネット検索していて発見した。
 あの1966年にわたしが設計して建てたのだから、いまや古民家と言っても嘘ではない年代物だが、イメージとしては古民家ではない。その当時のモダン小住宅として設計したものを、幾分かの増築と改装がなされている。

父母の旧宅が民泊の広告としてフェイスブック登場

 この小住宅の顛末をこのブログに書いているから、ここに簡単に書く。
・1966年 高梁盆地内の神社宮司で高校職員だった父が退職、岡山市西郊に小住宅を建てて移り住んだ。その設計は駆け出し建築家の私だった。父は岡山市内の神社の権禰宜となった。
・1993年 老齢のために権禰宜を退職し、息子がいる大阪市内の共同住宅に移転、岡山の家は空き家となった。日本の高齢化と空き家問題の典型的事例となった。
・2015年 岡山の空き家を不動産業者に売却した。業者は取り壊さずに改装して賃貸住宅にしているようであった。
 
 今度の旅でこれを訪れる予定はなかったが、ネットで発見して急に興味が湧いて途中下車して、外観だけ見てきた。岡山西郊の駅から徒歩十分ほどの住宅地は、それなりに整備されてきており、大学もあって若い者たちも多く住む街の雰囲気だった。

 父母の旧宅は、細い路地を入ったところにある。路地手前の右側の家は建て替えられていたが、左側のアパートと住宅は昔のままだった。父母の旧宅は板張り外壁を黒く窓枠を白く塗った程度、庭の植栽がなくなった程度の変化で、その他は特に変わりはない。家の西側の水路もそのままである。

 こうすれば民泊としてネット宣伝になるものかと、ちょっと奇妙な気もする。路地に立って眺めていると玄関引き戸が開いて、幼い少女が出てきた。金髪の外国人のようだ。つづいて男児らしい赤んぼが這いながら出てきた。これは泊り客かしらとみていると、その子らの母親と思しき女性が出てきて這う子を抱き上げて、こちらにちょっと会釈して3人ともに中に入った。

 わたしたちも親子だが、その親子をあっけにとられてみていた。空いたままの玄関戸の向こうの板の間で、大きなおもちゃで幼女が遊んでいたし、庭には子供の洗濯物がたくさん干してあり、雰囲気としては旅行者ではなくて長期滞在者のようだった。もともと住宅だから、一戸貸しの民泊は長期滞在者には向いているだろう。なるほどそのような使われ方もあるのかと、何となく納得して引き返した。

 あの当時のモダン小住宅が、こうして今も使われているとは、それなりにわが設計が良かったからだと勝手に思うのである。わたしは当時の住宅金融公庫の木造住宅設計仕様に忠実に、基礎や木組みを設計しておいたのだ。
 建築当時に父が工事業者から、「高梁の方は基礎をこんなにも頑丈に作るんですね」と言われたという言葉を思い出す。更に、建って50年後にわたしが不動産業者に売った時にも、「この家は珍しくこんなに古くても傾いていませんねえ」と言われたことも思い出す。

 これがいまだに取り壊しも建て直しもされずに未だに建っている理由を、実はわたしは知っている。それはこの土地が狭い路地の奥の旗竿敷地だから、破却ゴミや建設資材を運ぶ自動車が直接に入れないため、人力運搬を余儀なくされるから、一般よりも余計に多くの費用がかかるからだ。壊さずに修理して使えるならその方が有利なのだ。

 それにしても外観の変わらなさと比べて、内部のプランの変わりようが興味深い。民泊にするにはこのような妙なプランが好まれるものなのかしら、面白い。

  現在の民泊の平面図(ネット広告から)    父母が住んでいた当時の平面図

1966年の建設当初の姿
2025年5月父母の旧宅は改装されて民泊に。玄関前に泊り客らしい幼児二人

路地入り口から見る

水路から眺める 両隣はどちらも建て替え済、左は戸建て住宅、右は2連戸2階建て住宅

 この地は近世の庭瀬城がすぐそばにある歴史的には古い町らしい。さすがに岡山駅まで2駅の山陽本線の駅前で便利な地だからだろうか、住宅地の整備が進んでいるようだ。特に何○○メゾンと名付ける低層共同住宅がたくさん建つ傾向だ。○○マンションと名付ける高層共同住宅ではないところが、こちらの流行だろうか。他にも古民家民泊があるのだろうか。
(20250418記)

ーこの住宅に関するこのブログの記事ー
・2025/04/263【西方への旅に】久しぶりにホテル宿泊を電話予約https://datey.blogspot.com/2025/04/1883.html
・2014/11/11いま日本中で起きている空き家問題にわが身が直面
・2015/05/01【父の家を売る】日本の空き家問題がひとつ解決かも https://datey.blogspot.com/2015/05/1083.html

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伊達美徳=まちもり散人
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