3年前にこんなニュースがあった。
「東京電力福島第1原発事故で立ち入り禁止となった地域で豚舎から逃げたブタと、野生のイノシシが交配して生まれたとみられるイノブタの目撃情報が、原発周辺地域で相次ぎ、福島県が今月下旬から実態調査を行うことが16日、県への取材で分かった。(産経ニュース 2013.1.16 08:44)」
わたしはこれを読んで、このブログに福島核毒の森に生きるイノブタのことを書いた。
http://datey.blogspot.jp/2013/01/708.html
「おやおや、がんばって生きてますねえ、ブタとイノシシが協力して子孫を残そうって、涙ぐましいなあ。東電原発から降り注いだ核毒にまみれながら、ちゃんとやることやってるんだ。どっちが雄でどっちが雌なんだろうか、どちらの組み合わせも再生産可能なんだろうか。
でもこのニュースの続きには、増えすぎると農地を荒らすので、駆除するのだそうだ。可哀そうだなあ、その努力は虚しいんだ。鉄砲で撃っても、核毒にまみれているから、福島名物イノブタ鍋ってわけにもいかないしなあ。ウシもヤギもイヌも核毒の地をさまよっているから、ヤギウシとかウシイヌとかできるって、それはないか。ウナギイヌはどうか。」
そのイノブタは今どうしているだろうかと、TV番組「被曝の森~原発事故5年目の記録~」(NHK)を見た。福島核毒の地に生きる動物たちの今をレポートしてくれた。その宣伝文句は次の通り。
「福島第一原発事故によって、今なお7万人もの住民が避難して生まれた広大な無人地帯。5年の歳月で、世界に類を見ない生態系の激変が起きている。
植物が街や農地を覆いつくすほどに成長。イノシシの群れが白昼堂々と街を歩き、ネズミやアライグマが無人の家に侵入して荒らすなど「野生の王国」化が進む。
降り注いだ放射性物質は、特に“森”に多く残留していることが判明。食物連鎖を通じて放射性物質が動植物に取り込まれている実態も明らかになっている。“被曝の森”で何が起きているのか。世界中の科学者が地道な調査を続けている。」
●元家畜は野生動物にはなり得ないらしい
でもTV映像には、野生化したブタもイノブタも登場しなかった。
その一方で、イノシシはたくさん登場した。人が絶えた集落や田畑が草地へ森林へと還っていく核毒の地に、5頭もの子を連れた夫婦イノシシが、放棄された住宅を棲家にして、昼日中の道や畑をうろうろと走り回っている。
もともと野生のイノシシは生き残っても、元家畜のブタが生きるには困難な環境なのであろう。
それにしてもイノシシたちだって、かつては人間の作物を横取りすることで生きていた面が大きかったはずだから、田畑が放棄された今、木の芽や草や虫を食って生きるのだろうか。
そういえば2年くらい前までは、ブタに限らずウシやヤギや飼犬も放棄されて、無人の地を放浪していたニュースがあったが、彼らにも野生になることはできない環境なのだろう。それらの死体は他の逞しい野生動物の餌になったのだろうか。
他に登場してきた動物は、サル、ネズミ、ハクビシン、アライグマなどだった。これらは人間に寄生しなくとも、野にあっても生きることができるのだろう。
野生で一般によくいるはずのタヌキ、キツネ、ウサギ、イタチなどはどうしているのだろうか。
●高濃度放射線で野生動物ジュラシックパークか
ところで、一度は高度の放射線を浴びたし、また高度の放射性物質を含む野山の果実や草木を食している彼らには、異常はないのだろうか。
そう、ゴジラのように異常成長したイノシシは居ないのか、アナコンダのように巨大化したマムシはどうか、不謹慎ながらジュラシックパークを期待したが、そんなことはなかった。
動物の異常を調査する学者たちの研究も紹介されたが、捕まえた動物の内臓等を調べると、高濃度の放射性物質が蓄積されつつあるという。だだし、5年くらいの短期間ではまだどう影響するのか分らないらしい。
チェルノブイリでもいろいろ調査されているらしいが、ニホンザルはあちらにはいないし、人にいちばん近い動物だから、福島でのサルの調査は貴重なものになるらしい。
ツバメの二つに分かれる尾羽の形が、左右でアンバランスになる異常が多く見られるとする動物学者もいる。植物学者によると、アカマツの枝の成長には明確に異常が見えるという。これらはどちらもチェルノブイリで見られる異常に似ているそうだ。
映像の作り方が、動物相という地域の生態系に目を向けていなくて、特定の種の特定の個体の行動を追っているで、全体像が分からない。植物相についても、核毒地の植生調査をしている学者はいないのだろうか。
生態系がどう変化しつつあるのか、その変化が異常なのか一般的なのか、その辺のことを知りたいものだ。もっとも、核毒まみれで調査するってのも、無理なお願いですね。
●野生の王国化した核毒の地は人間の地に戻る時が来るか
さて、核毒の地に生きる動物たちの生活圏は、森林のある産地ではなくて、人間が放棄した住宅や田畑のある平地であることが分かったそうだ。それは捕まえたイノシシに発振器やカメラをつけてまた放して、行動圏を調べたのだ。
そのイノシシが撮ってくれた映像に、除染をしている人間が写っているから、イノシシは人間を避ける必要がもうないとして、近寄って好奇心いっぱいで眺めているらしい。夜中に畑に出てくる動物ではなくなっている。
空き家にはイノシシもハクビシンやアライグマも棲んでいる。たしかに野生とはいっても、地下の洞穴や木の洞に棲むよりも、チャンと屋根があったほうがいいだろう。
こうやって集落は次第に野生動物の森になっていく。人間が田畑を作り住みつく前は、彼らの棲家だったのだから、還っていくと言った方がただしいかもしれない。
一昨年秋に浪江町で見た核毒で放棄された田畑が自然植生に覆われていく風景 |
果たしてそういう時が来るのだろうか。
参照 地震津波核毒おろおろ日録
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