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2024/01/27

1786【神宮外苑再開発】20年前策定の再開発構想は進行中の現再開発計画とはどう違うのか

 今朝(2024/01/27)の東京新聞に、近ごろ東京で話題の明治神宮外苑再開発について、新発見資料の存在を伝えている。曰く「緑の外苑守る「幻」構想』ー20年前 専門家ら取りまとめ」と題して、2003年に明治神宮が専門家たちに依頼して作った外苑再開発構想があったというのである。

 今日の新聞記述を読むと、どうやらそちらの構想の方が現再開発計画よりも優れている、という論調らしい。これからこれを基にして(かどうか知らないが)、外苑再開発を検証する連載を始めるとのことで、オリンピック国立競技場騒動以来の外苑騒動野次馬としては楽しみである。

 ところでこの構想があったことについて、わたしは2015年にこのブログに既に二つの記事を書いている。なお、これらは競技場騒動のの都市計画家不在(に見えること)へのイチャモンブログだが、現在の外苑再開発騒動では大西隆さんと大方潤一郎さんという学系都市計画家が二人登場している。

●参照1:2015/09/29・1129【新国立競技場騒動】神宮外苑地区に十数年も前から関わり国際コンペの企画や技術支援やら都市計画の変更など本質的なことを担当してきた都市計画家の重い存在

●参照2:2015/12/29・1160【五輪騒動】建築家はあれこれやかましいが都市計画家は新国立競技場や神宮外苑の都市計画に何にも言わないのは何故か https://datey.blogspot.com/2015/12/1160.html

 この2003再開発構想は、明治神宮が日本地域開発センターに委託し、都市計画家の伊藤滋東大名誉教授を委員長として数名の学識専門家による委員会が策定した。だから明治神宮が作った構想である。この時の計画策定作業を担当した委員は、都市計画家は今井孝之(都市設計研究所)である。

 昔ある人からこの構想を見せてもらったが、部外秘と言われたので、上の二つのブログ記事にも簡単にしか触れていない。わたしはこれを見たこともその内容も、歳のせいでほとんど忘れていたので、今朝の新聞記事でアッと思った。

 あの構想にも神宮外苑用地内の公園指定区域内に、超高層ビルが2本もあったことを思い出した。そこで今朝の新聞記事の写真にある構想図を拡大してしげしげと眺めた。
 構想外となっているラグビー場と銀杏並木の間に、高層あるいは超高層ビルらしい建築が2本並んで建っている。その2本のビルの影が地上の落ちている長さから見て、これは超高層ビルにちがいない。思い出したのはここだけだ。

2003外苑構想新聞写真の一部拡大

 構想図全体を見ると、このほかにも外苑外の土地に、超高層(高層か)のビルが4本立つのが見える。そのうちの2本は、都営霞ヶ丘住宅団地の建て替えの住宅ビルのようである。現実としては国立競技場のはみだしのせいで、今は建て替えもされずに消えてしまった都営住宅である。
 さて、東京新聞が詳しく書くであろう今後の記事で、これら超高層ビル構想をどう評価するのだろうか。

(2024/01/27記)

(20240210追記)東京新聞の蒸気の記事について、個人的資料として連載全部をまとめてストックしておいた。→「202401外苑再開発連載東京新聞

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●当ブログの関連記事一覧
 【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html

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2024/01/18

1782【ザハ・ハディド登場】芥川賞小説に没になった新国立競技場ザハ案登場とて懐かしや

 

 今期の芥川賞と直木賞の受賞作が決まったとのニュースの、芥川賞の紹介文を読んでビックリした。なんと、建築家ザハ・ハディド女史設計による新国立競技場が実現した世界という小説だそうだ。


 これって、2020年(実は2021年に延期)東京オリンピック主会場の新国立競技場のことである。2013年にUKの建築家ザハ・ハディドの応募案が国際コンペで一等になったのだが、なんだかんだとケチが付いて反対運動が起きたりした。時の安倍首相の白紙撤回命令により、没になった事件があった。それを下敷きにした小説とは面白い。

華々しく登場し没になったザハ案
 芥川賞の小説にこの幻のザハ案が登場したことに、ちょっと驚きつつ喜んでいる。もっとも、その小説を全く読んでいないから、ぬか喜びかもしれない。
 わたしはザハ案の実現をある考え(後述する)から期待していたので、没になった後でもザハ案をブログには再登場させる遊びをやっていた。思い出してブログを読み返して、そのあたりをここに載せることにした。もちろん芥川賞に対抗ではなくて、遊びとしてなかなか面白いからだ。
 そもそもザハ案騒動について書き始めたのは、2013年10月のことだった。ザハ案に建築家の槙文彦氏が反対ののろしを上げたのである。その時のブログは【五輪騒動】なぜ今頃になって建築家は新国立競技場の計画案に異議申し立てなのかというのであった。建築家の態度への批評であった。そしてこのころからパロディ遊びのザハ案登場をやっていた。
ザハ案を絵画館の位置に建てたら、、2013年10月

 そして2015年7月に、時の安倍晋三首相がちゃぶ台返し白紙撤回をして、ザハ案を白紙撤回の没にしたのだった。表向きはコンペ条件になっている工事費とは大幅に高額な見積り額となったことだったが、裏ではそのデザインが「生牡蠣ドロリ」と言い放った大ボスの森喜朗氏へのおもねり対応であったろう。

 ザハ案に代わる新案募集が決定的になったのは21015年末であった。2015年12月のわたしのブログにザハ案評価をこう書いている。

 庶民がお好みの銀杏並木から絵画館への風景全部が、日本帝国主義を象徴する作りこんだ西洋流の帝冠洋式なんだね。わたしはそれが嫌いでねえ、だからザハ・ハディド案の新国立競技場が、20世紀半ばまで日本を支配した国家主義の風景をぶち壊してくれるって期待してたんだよ。惜しかったよなあ。

 そして新案が立ちあがろうとしている頃の2019年5月のブログにこんな戯画文を書いた。ザハ案を私は戯画で、今回の芥川受賞小説が文章でそれぞれ再登場させたのだ。

隠居:ワハハ、実は昨夜の夢に死んだザハ・ハディド女史が出てきてね、「ウラメシヤ~、没にしたわたしの案を新国立ラグビー場に建ててほしいよ~、、、」と……で、これだよ。

熊五郎:ウワ、あのカオで幽霊になるとコワイ……、そう言えば最近になって秩父宮ラグビー場と神宮第二球場を入れ替える再開発をやるって、計画の環境アセスメント手続きが始まったそうで、ご隠居はまた野次馬やってるんですね。

:そうそう、つまりラグビー場を新国立競技場の隣りに引っ越しするってね、また格好の暇つぶしだからね、あの新国立競技場騒動からあれこれ思い出して考えてたもんだから、ザハ幽霊が夢に出てきた。

:そこで彼女の願い通りに描いてみたのか~、なんだかウマく納まってるような、第2新国立競技場ですね、まあ、あの騒ぎの中で急死だから成仏してないでしょうけど、これで供養になります。

:わたしは彼女のファんじゃないけど、コンペ当選案の肉感的な姿を見た時から、あの場所だからこそあの姿で建ってほしいと思っていたよ。

 2019年2月のこと、埼玉県立美術館で「インポシブル建築展」という、計画はあったが実現しなかった有名建築の写真図面模型の展覧会があった。ザハ案は、膨大な実施設計図面と模型で登場していた。わたしはブログにこんなことを書いた

 これはザハ・ハディド「新国立競技場案」への厳粛なるオマージュ展であるな、ってことだ。累々たるインポ建築のミイラの最後に登場したなのが、この一昨年に死んだばかりの生な死骸の「新国立競技場案」だった。これがあることで、この展覧会がインポを越えてポシブルへと橋が架かった。そこまで観てきた累々たる死骸が、ここで生き生きとした死骸になった。フィクションをリアルへとつないで見せたと言ってもよいだろう。
  あのもう見慣れた巨大な背割れ亀模型もすごいが、なんといっても圧巻は膨大な実施設計図書の展示である。折り込み縮刷A4版製本して何十冊ものあの量だから、実物の図面や書類ならば展示してある小間にいれたら、部屋に一杯で天井までも積みあがるくらいはあるのだろう。さすがに大規模建築にふさわしいすごい量だ。 それが実は既にできていたのに、土壇場でインポになったのだから驚くばかりだ。現実はインポでもフィクションでもないのだった。
 この最後の小間に至る前までの模型や図はすべて、まるきり建とうともせず建ちもしなかったものだが、これだけは実は建つ寸前クライマックスまで行って突然に脳溢血で(じゃなくて時の首相に寝首を掻かれて)腹上(下)死インポ化であった。その無念さが、あの膨大な何千枚もの実施設計図書の展示に込められている。
  わたしはこのザハ・ハディド案で建ってほしかったと考えていたことは、あの騒ぎが始まった頃にこのブログlに書いているが、それはその異教徒的な怪しさが、あの明治神宮外苑の持つ19世紀的帝国主義王権の男性原理的景観を、21世紀の今ぶち壊してくれることを期待したからだった。
 それがこうなった今では、どこかにこれを建ててインポからポシブル建築にしてやって、この建築インポ騒動のせいで死んだ(のかもしれない)ザハ・ハディドを供養しなければなるまい。隈・大成による実現新国立競技場の竣工の日に、ザハ・ハディドの白拍子姿の幽霊が登場して、釣鐘に見立てた新競技場に舞い込んだとたん、9.11のごとくに崩落する幻想を抱く。

  このころに書いた別のブログ記事には、築地市場後再開発に登場させたザハ案を、隣の浜離宮から眺める戯画をつくった。ザハの怨念景観である。

浜離宮から見る築地市場跡地にザハ案が、、2019年2月

 2019年12月28日ブログに、ザハ案評価のまとめをこんな戯作文にして書いて、これでもうおしまいにしたのであった。 

 わたしはザハ・ハディド案で建てばいいなあと期待していた、その建つ位置がなんと明治神宮外苑絵画館という外苑心臓部の隣なんだからすごい、その姿と言ったら、石造どっしり大胡坐の真ん中に
四角な包茎に●頭を覗かせた男性原理も露わな太く短いチン■コ建築だよ、その隣に曲面うねり流れパックリ割れて女性原理も露わなドロリ生ガキ建築だよ、見ようによっては絶好のコンビだけど、実は女が巨大すぎて男が呑まれそう、これでは保守派にとっては明治王権を汚す不埒不届不敬者だと言いたかろう、だってそもそも明治神宮ってのは、明治政府が新統治体制のために京の都から拉致してきた貴族トップ雲上人を、近代統治機構のカリスマ王権に改造育て上げたけれどのに、その死後の後継者が脳の病でカリスマ性皆無、困った政府は死せるカリスマを神に祀るべしとて全国総動員体制で造営したのだからね、その内苑は日本的に森の奥深く隠れる宮とし、外苑は西欧的に視覚に訴える権威的表現とし、合せて王権カリスマ賛美装置、外苑銀杏並木の透視景観の焦点に男性原理建築の明治大帝聖徳記念絵画館、並べて建てようとしたのが女性原理建築の新国立競技場、完成したら明治王権呪縛景観をザハ・ハディド流テロ爆弾で文明批評建築になり得ただろうに、惜しかったなあ、惜しかったと言えば騒動最中にザハ・ハディド急死、世界の建築界に新デザイン潮流を巻き起こしたバグダッド出身の天才建築家は、日本のドタバタ騒ぎで魔女殺しに遭ったのかも。 

 このザハ案の華々しい登場からメタメタの白紙撤回、この騒動最中にザハ・ハディド女史の急逝、そして今の真っ白ベーグル建築登場までの新国立競技場事件は、実は近ごろなんだかやかましい明治神宮外苑再開発計画の前半戦であったのだ。外苑の辺りはそのころから10年以上もやかましいのだ。

 わたしはこの事件が面白くて、せっせとブログに瓢論を書いていた。今は外苑再開発についても、ちょっとは楽しんでいる。さてこちらも白紙撤回になるのかしら?、あ、もしかして女史の亡霊が外苑あたりをさまよっているのかも、、。

 こうして没になったザハ案を登場させて面白がるブログを書いてきたが、まさか小説に書いている人がいるとは思わなかった。確かのその方が自由に想像を広げることができる。負けた。久しぶりに本を買いに行こうかな。

 実は本がたまりすぎて遺品処分に困るので、もう買わない宣言をして10年くらいになる。しかし書店にはしょっちゅう行って立ち見(読まない)するので、ごくたまにはつい買うのである。芥川賞になったから書店にザハの亡霊がいるかもしれない、楽しみだ。

(20240108記)

このブログのザハ騒動などの記事一覧

◆【五輪外苑騒動】国立競技場改築+神宮外苑再開発両騒動瓢論集https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html

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2023/11/10

1735【神宮外苑再開発】市民側都市計画家二人目が登場して新た問題を指摘

 東京の明治神宮外苑と隣の国有地や民有地と合わせて、巨大なビル群を壊してまた建て直す計画が進行中である。東京のあたりではちょっとした評判である。

●二つの大きな問題

 とくにまわりの市街地と比べて樹木が多く繁っているのを、この建設事業のために切り倒し移植し捕植するという緑空間大変更への異論が、緑に飢える都心市民たちから多い。市民側に立つ緑の専門家が、それを理論構築している。

 そしてもうひとつは、都市計画で公園に指定されているのに、再開発で超高層ビルが建つことになったという都市風景大転換への異論の声も市民から大きい。これにも市民側にたつ都市計画の専門家たちが登場して、理論構築している。

 事業者はこれら異論に耳を貸すことなく、これで行くのだと粛々と進める気配である。事業者側にもそれらの専門家がいるはずだが、今のところ全く姿を見せない。どうも、事業者側の専門家が逃げ回っている気配も感じる。
 事業者側の専門家と市民側の専門家とが、直接に専門的な論をかわすことなく進んでいるのは、かつて都市計画家の端くれにいたわたしとしては、なんとも居心地が悪い。

 市民側の緑の専門家としてはランドスケープアーキテクトの石川幹子さんが論陣を張って、一歩も引かないでいる。だが事業者は知らんぷりを決め込んでいる。
 もうひとつの専門領域として都市計画が、実は重要な問題をはらんでいる。都市計画という法定行為の進め方に矛盾が露呈してきたようにわたしは思っている。

 市民側の都市計画家は、大方潤一郎さんと大西隆さんという、斯界の大御所が二人も登場した。どちらも大学人である。大方さんは登場してもうい1年くらい経つだろうか。ネットでお話を聞いていると都市計画の講義を受けている感である。

 最近になって大西隆さんが登場した。外苑再開発騒動はもう2013年頃からやっているのだが、当初の新国立競技場騒動の段階では、市民側の専門家に建築家が多く登場したが、都市計画家はまったく登場しなかった。ここにきて都市計画家が二人も登場とは嬉しい。

●大西隆さんから新たな問題提起

 つい先日、大西さんのレクチャーを初めてネットで視聴した。その中で、この事業への都市計画上の問題点として、これまで誰も指摘しなかったことを挙げておられたので、ここに書いておきたい。
 それはこの事業が憲法に抵触する恐れがあるとの指摘である。わたしが理解した大西さんの外苑再開発憲法抵触論は次のとおりである。

 この再開発のために、明治神宮の土地に定めてあった都市計画を変更した。その決定権者は東京都知事である。その変更において、外苑の所有する土地の都市計画の容積率の一部を、他の土地に移転して利用させることにした。そしてその移転による対価を移転先から得て、再開発事業を行うことを可能にさせた。その事業の認可権者も東京都知事である。
 うまり、これは東京都知事が宗教法人明治神宮に特別の利益供与を与えたことになるので、憲法20条に抵触の恐れがある。

 わたしにはこの大西さんの論を判断する能力はない。だが、直ぐに思いついた実例がある。まずは東京の「永田町二丁目地区再開発計画」といわれる日枝神社と隣地開発である。
 その日枝神社は、所有する土地の容積率を隣の民有地に移転して対価を得て境内地の整備を行い、隣地では受け取った容積率と自分の土地の容積率を加え更に地区計画で容積割り増しを受けて、巨大超高層ビルを建設したのである。これも東京都知事が定める都市計画の変更であり、宗教法人日枝神社の土地への都市計画の特例措置と言えるだろう。
 どうでもよいのだが、ここの超高層の土地って、昔々のことだが乗っ取り騒ぎやら大火災やらがあった変なホテルの跡地だよなあ。有名な山王ホテルもあったな。

日枝神社と容積移転先の巨大超高層

 もうひとつ思いついたのは、東京日本橋の福徳神社関連再開発である。日本橋室町東地区再開発と言うらしいが、これは低容積神社部分と隣地の高容積超高層という組み合わせで、特定街区で容積移転を行った。これも東京都知事決定である。
 どうでもよいのだが、もう10年近く日本橋に行ってないが、あのあたりはなんとなく江戸の街の雰囲気があったけど、もう全く風景が変わってるだろうなあ。

 日本にはほかにも神社とか寺院を再開発区域に含む再開発事業はたくさんある。それぞれ異なる事情だから一概には言えないが、基本的には神社仏閣の宗教行事用建築は低層であるから、その上空の未利用容積率を宗教活動以外に使うように事業を構築するはずだ。そしてこの時に容積率等の移転や割り増しという特例措置を、ほぼ必ず生じさせている。

 大西さんの容積移転憲法抵触発言をわたしが正しく理解したかどうか自信はない。大西さんのお考えはもっと複雑かもしれない。
 だが、神宮外苑再開発において行おうとしている容積移転による特例措置は、既に実態として神社仏閣において幾つも行われてしまっている。それらをどう考えようか。

 なお、ネット検索していたら、神宮外苑の近くでは愛宕山とその麓で行う再開発が、外苑と似たようなことらしい。愛宕山は芝公園の愛宕地区として都市計画公園に指定されているのだ。都市計画愛宕地区地区計画と愛宕地区第一種市街地再開発事業である。
 どうでもよいことだが、あの講談で有名な愛宕神社男坂の急階段をわたしはもう登る能力を失ったな、麓にNPOオフィスがあったから花見時によく登ったなあ、そういえばこの辺りは森蛭の領分だ、そのオフィスも蛭の餌食になって消えた。愛宕神社宮司は能のワキ方で有名な人でよく能楽堂で見たなあ。

 そしてまた、その増上寺のある芝公園では外苑に適用して物議の種になっている「公園まちづくり」制度を使って再開発を行おうとしているようだ。

 今日はこれくらいにしておこう。

(20231110記)

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2023/10/05

1708【外苑再開発談議】新ラグビー場はPFI入札ダンピングで新規国費投入額抑制されても巨額負担らしい。

熊五郎:ご隠居の9月25日ブログ記事で、神宮再開発の金勘定のことがおぼろげにわかりましたよ。それから9月30日ご隠居談議で、ちょっと脱線気味ながらラグビー場のドジぶりも分かりました。

ご隠居:熊さんにはそれでもよく分からんだろうから、10月2日のブログラグビー場はこの再開発に参加するなって、納税者として書いておいたよ。

●ラグビー場はPFIで81億円で建つ?

:でもねえ、ご隠居、ある人からこんな話を聞きましたよ。実は新しいラグビー場を建てるのに、JSCが入札したらドドーンと安く取った業者が現れて契約したとかするとかってね、それがご隠居のいう540億円どころか、なんと81億円だそうですよ。ご存知でしたか。本当にそうなら再開発やった方が得でしょ。

:それは新ラグー場の建設と運営管理をPFI入札したことだろ、もちろん知ってるよ。

:じゃあ、事実なんですね。なんです、PFIって。

Private-Finance-Initiativeの略称だがね、公共の箱モノを民間事業者に建てさせて運営もさせることを言うのだよ。国立のラグビー場をそれでやろうってんだよ。

:つまり国は土地だけ持っていて、ラグビー場の新建物は民間企業に売ってしまうんですか?

:いやいやそうじゃなくて、新ラグビー場を民間企業の金で建ててもらい、その代わり30年間の運営管理を任せるので、その収益で建設費用を賄ってくれ、という仕掛けだよ。今要る建設費と将来入る予定の収益の差額が、ほれ、熊さんが聞いた81億円だよ。全額を賄いきれなくて81億円赤字になるから、その分をJSCが払うとなったんだね。

(図1)出所はJSC広報

:30年分の未来に入る予定の金を差し引いたら赤字が81億円になる、ということですか、では建てる費用だけならいくらかかるのですかねえ。

:それはJSCが公表しているよ、この施設整備費約489億円と、ちゃんと書いてある、81億円じゃないよ。(図1の最下段の表)

:ふむふむ、この運営対価の412億円ほどが将来収益なんですね、へえ、これをさし引くから81億円かあ、もしもこれが489億円なら差し引きゼロ円ですね、なーんだ、わかりました。

:だからね、捕らぬ狸の皮算用も入っている、そういうリスクを負っているらしい。そこは落札企業を信用するしかない。

:あるいは施設整備費をもう81億円安くしてくれるのでもいいね。まあ、再開発やめてPFIやるとそんなに安くなるのかって勘違いしてました。

●PFI入札でダンピングがあったのか?

:それにしても入札した3者の中で、落札したグループの81億円とはダントツ安さで、他の入札者の金額が225億円とか357億円とかで、あまりに差が大きすぎる、公共事業の入札では、あまり安すぎる金額を入れると失格になる制度がありますよね。

:そうそう、それでねJSCサイト見ていたら、PFIにはそれを適用しなくてもよいのだと書いてあった、いくらダンピングしても失格無しらしい。それは多分、落札者が運営管理もするから。建物があまりに安かろう悪かろうだと自分に跳ね返ることからだろうね。

:あそうですか、失格はないなら安心して大安値を入れたんですね。入札したのは3組だけで、落札したのは鹿島というゼネコンが代表、鹿島は現在のラグビー場の建設をしているから、意地でもこれを落札したかったんでしょうね。

:そういえば、国立競技場は大成建設だった、あれも元の建物をやったゼネコンだね、では野球場と伊藤忠ビルも同様だろうね、ゼネコン業界の鉄の掟があるのかもなあ。

:まあ、それで良いものが安くできるなら、納税者としては歓迎しましょうよ。でも何が原因で、入札額にこれほど差が出たのですかね、JSCサイトを見ても詳しくは分からない。

:ウ~ム、難しいけど、落札者の金額の大内訳の施設整備費、博物館維持管理費、運営対価が公表されているが、このうちであれほど大差が出るのはどれかねえ、維持管理費では大差ないだろうし、運営対価ってのもラグビーやイベントで大儲ける運営なんてないだろうしなあ、やはりこれはゼネコンのお得意の建設費、つまい施設整備費でダンピングしてるような気がするね。

:ということは、他の2者は建設費が140~270億円も億も高額だったのですかねえ、凄いなあ。

:まあ、それでも建設に490億円ほどかかるんだけどね、81億円じゃないよ、いいね。

:はいはいわかりました。ですがね、ご隠居、じゃあ聞きますがね、

:お、いきなり改まってなんだい。はい、聞きましょ。

●再開発とPFIの関係は?

:ここで施設整備費が約489億円と分かりましたよね、ところがご隠居は先回には市街地再開発事業のラグビー場建設には540億円の新規税金投入が必要となる、と言ったでしょ。これら二つの数字の違いは何ですか。

(図2)出所は2023年9月24日岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャー

:おお、ラグビー場の権利変換で、権利床だけでは床面積が3分の一ほどしか手に入らない、残り3分の2の床面積を得るためにはそれを保留床として足して作り、それを自らを買い増しする金額が540億円、これで新ラグビー場全部が取得できるのだね。つまり540億円で建設すると同じことだ、こういうことだよね。(図2の表A赤枠部分

:そうですよ、PFIでは489億円で全部建つ(図1)のに、再開発では540億円かけても建つのは保留床分だけ、全体の3分の2しか届かない(図2表A赤枠)ってのは、おかしいでしょ。

:そうなんだね、わたしもこれには弱ったね、これはどちらかが違っていると考えるしかないね。まだ事業にかかっていないからどちらも不正確だろうが、どちらがより正確かを考えよう。

:え、そうか、間違っているのか、それらの数字の出どころはどこですか。

:PFIの数字は、20220年8月22日付JSC広報室が発表した「PFI方式による「新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営事業等」の民間事業者をせんてしました」(図1)というものだよ。

:再開発の数字はどこからなんですか。

:それは「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業規約」の中の「別表1 保留床の概要及び保留床処分金の額」(図2表A)にあるもので、この表は2023年9月24日に岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャーから引用したが、作成日付は分からない。わたしの推測では、これの作成日はPFIよりも古いように思う。


:では、ラグビー場に関する数字を確かめましょうかね。まずは再開発後の新ラグビー場の敷地規模ですが、JSC資料を見たところ43466㎡とありましたが、岩見資料(図2表C)だと43480㎡です。

:まあ、誤差の範囲だな。

:次は新ラグビー場の床面積です。JSC資料だと70349㎡ですが、岩見資料(図2表A)だと76700㎡です。

:これは誤差の範囲ではない、岩見資料が初期計画数値だろう、それよりも近年のJSC資料を信用したい。

:次は建設費です。JSC資料では施設整備費が489億円です(図1)。一方岩見資料では保留床部分51880㎡で543億円ですから、全床面積78700㎡では床価額は806億円になります(図2表A )。489億と806億とではあまりに違いすぎます。

:延べ床面積の違いもあるが、それにしても違い過ぎるのは、やはりダンピングかねえ。

:たぶん、岩見資料の規約がラグビー場PFI入札よりも前の古い資料なんでしょう、だからラグビー場の床価額の見積もりが甘いのと、予期せぬダンピングのせいでしょうね。

:なるほど、そう考えるしかないねえ。そのうちの権利床価額つまり土地売却金額はそのままだとすれば、806億円から543億円を差し引いて263億円になる。権利床が占める割合が増えて保留床が減ることになる。

:え、ダンピングで543億円の保留床は263億円になる、ということは、ご隠居がこれまで言っていたラグビー場は超高額新規負担で採算が悪いとの説は取り下げですか?

:いやいや、再開発事業規約で見ると(図2資料A)540億円の保留床取得金を新規国費投入計画だが、JSC発表資料で見ると(図1)PFIダンピングで260億に変える必要があるらしいってことだよ、これだって巨額新規税投入には違いないよ。(注:この項の下線部20232008補綴)

:う~む、ほんとうかなあ、そのうちに詳しく分かるのでしょうかね。

:そのうちに出てくるだろう権利変換計画書を見ればわかるよ。

:そんな重要な計画書が表に出るでしょうか、出てこないと思いますよ。

:いやいや、国有地の処分に関する重要な資料だから、当然に公表されるはずだよ。

●野球場がラグビー場から買った土地は?

:その権利床ってのは、現ラグビー場の土地の一部を、野球場に売却した金額に相当するものですよね、現ラグビー場土地は41100㎡で新ラグビー場では43466㎡ですから土地面積が増えているのに、一部を売却したとはどういうことです?、まちがいですかね。

:いや、間違っていないよ。ラグビー場の土地単価は、ラグビー場のそれよりもかなり高いのだよ、固定資産税の路線価を見ても現は新の倍くらい高い。だから現が新に移ると等価交換なら2倍くらいの広さを確保しその一方で野球場の土地は半分くらいに狭くなる。となると野球場を建てる広さを確保するためには、JSCから土地の一部を買う必要があるんだね。それを買ってもまだ等価交換後のラグビー場の土地面積が広い、だから増えているのだろうね。

:その売却金額が260億円ですかねえ、売った土地面積はいくらなんでしょうね。

:それはJSCサイトを見ても分からない、実際の土地評価額はどこにも出ていない。いろいろあちこち見て計算すれば分るかもしれない。

:その計算をやってみましょうか。

:もういいよ、うちに帰ってやっておくれ、歳とって計算に弱くなってしまい、数字いじりしているとむしろボケが進むような気がするんだ。

:はいはい、ご隠居はもともとこのいちゃもんを、自分のボケ防止のためにやっているんですからね、与太話はともかくとしても、これがもとでボケては困ります。

(20231005記、20231008補綴)

●最近の外苑再開発瓢論4部作(伊達の眼鏡ブログ)

2023/10/05・ラグビー場はPFI入札ダンピングで国費新規投入抑制か

2023/10/02・国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

2023/09/30・見世物スポーツのためにラグビー場に多額税金投入やめよ

2023/09/25・意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

●関連するわたしのブログ記事

【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集


2023/10/02

1707【外苑再開発いちゃもん】国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

・いま環境破壊と悪評判の外苑再開発(正式名は都市再開発法による「神宮外苑地区個人施行第1種市街地再開発事業」)について、わたしはタックスペイヤ―として考えてみた。結論は、国立ラグビー場は再開発に参加するべきではない。

・現在この事業に対する世間の批判の目は、それによる土地利用の改変が緑の環境と都市公園の景観を毀損するものとして向けられているが、事業の採算性つまり損得についてまったく目が向いていないので、わたしはここでラグビー場のそれについて意見を言う。

・この再開発の権利者のひとりであるJSCのラグビー場は国立施設であり、土地も建物も国有財産である。つまり国税を納める者として、わたしもここにラグビー場に限って反対意見を述べる権利がある。他の民間事業者には言及しない。


・現ラグビー場は再開発事業によりその土地を明治神宮野球場と交換するが(正しくは権利変換による)、その結果でラグビー場は543.5億円もの新規支出(事業損)をするそうである。

・ラグビー場が再開発後に取得する土地の位置は、土地平面形状が不整形であり、保全森林を含むし、青山通りの商業地から遠ざかるので、固定資産税や相続税の路線評価額(固定資産税評価は6割以上も安い)を見てもわかるように、現土地と比べて単価が大きく下がる。

・その実金額は正確には分からないが、かなり安価になるはずだ。土地価格が安価になればそれに反比例して、再開発後に取得するラグビー場の土地面積は現在地よりも広くなるはずである。

神宮外苑再開発地区あたりのの固定資産税評価路額(8千円/㎡)

・ところが再開発後のラグビー場の土地は、6割増加どころか僅か6%弱しか増えていない(表C赤囲み参照)。その差分は、多分、他の民間事業者に売って権利床建設費に充てるのだろうが、それでもなお540億円の税金の持ち出し(保留床買い増し=事業損)をしないと、新ラグビー場を取得できない(表A赤囲み参照)。これは本当に等価交換(適正な権利変換)だろうか?

これらの表は2023年9月24日岩見良太郎氏公開ZOOMレクチャーから引用

・ラグビー場が再開発後に取得する(権利変換)土地には、外苑で唯一の自然植生(に近い)と言われる「建国記念文庫の森」を含むが、土地全体形状が不整形でしかもラグビー場建築には面積が不足していて、森を毀損せざるを得ない状況にあるために、世間から非難されている。狭い使いにくい土地と交換したのが間違いである。

・この建国記念文庫の森はその由緒の名称(ここで神武即位があったのか?)からして明治神宮に帰属すべき森であり、ラグビー場には不要で邪魔だから、ラグビー場との交換(権利変換)対象の土地とすべきでない。もし交換したいならこの森は除外して、その南に整形で利用しやすい面積を取得(権利変換)するべきである。

・要するに再開発によって取得する新ラグビー場は、利用しにくい土地を、不十分な面積で押し付けられて、更に540億円もの税金投入をし、しかも環境破壊と非難される羽目になっている。タックスペイヤーとしては看過できない。

・更なる不満としては、現ラグビー場の国有地が東京の都市計画公園削除の元凶であることっだ。これがあるから公園まちづくりを適用して公園削除ができた。というより、これを狙って公園まちづくり制度を作り、見事に悪用したのだろう。政府機関が環境悪化に加担するどころか元凶になることを、タックスペイイヤーとして哀しむ。

・この再開発で他の民間事業者はそれぞれ不動産投資事業として成功するかも知れないが(損しても一向にかまわないが)、国有財産は投資対象すべきものではないだろうし、一方的に毀損されるばかりの結果になり、しかも多額の国税負担を必要とするするならば、これにはタックスペイヤーとして反対せざるを得ない。

・外苑再開発をやりたいなら、ラグビー場(ここは外苑の外)を除外して、その他のやりたい民間事業者でおやりください。

・あるいはまた、見世物スポーツ嫌いのわたしだから言うが、ラグビー場は国営施設としては不要だから、現在の土地全部を他の権利者たちにできるだけ高額に売却してはどうか(市街地再開発事業では転出という)、いくらか知らないが国庫収入にはなる。そこに民間事業者がどうラグビー場を建てようが建てまいが、わたしには関心がない。ただし、公園削除したJSCつまり文科省つまり政府には、「なんという馬鹿なことをしてくれたのだ」と恨みは残る。

(2023/10/02記)

●最近の外苑再開発瓢論4部作(伊達の眼鏡ブログ)

2023/10/05・ラグビー場はPFI入札ダンピングで国費新規投入抑制か

2023/10/02・国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

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2023/09/30

1706【外苑再開発長屋談議】見世物スポーツに興味ないタックスペイヤとしてはラグビー場に税金投入やめてよ

熊五郎:ご隠居、生きてますかあ。元気そうでよかった。

ご隠居:おや熊さんかい、久しぶりだねえ、うん、どうやらコロナから逃げおおせたようだね。ま、ビールでも飲もうよ。

:ありがてえ、では、乾杯っ、と。どうです、その後ボケは進みましたか。

:ごアイサツだね、うん、昔々仕事で都市計画やってたがね、その古い知識で現今の都市計画にいちゃもん付けるんだが面白いよ、これがボケ進行を少しは遅くしてるだろうよ。

:ハハ、他人が仕事でやる都市計画にケチ付けて、自分のボケ遅延策にするって、安あがりリハビリですねえ、で、今は何にケチ付けてるんですか。

:今というよりももう10年間もケチ付け続けているボケ対策良薬があるんだ、同じ都市計画なのにケチ種が次々と湧いてきてね、ボケてるヒマがない。

:そりゃ結構なことで、あ、分かった、それって神宮外苑再開発でしょ、森や並木が切り倒されるって騒がれてる。あんな洋風庭園に森なんてあったっけ?

:そうそう、オリンピックが来るってんで国立競技場の建て替え騒動があったろ、その2013年からだよ、もう10年もっ経つんだ、あのデカ過ぎ運動場ビルを建てるために都市計画変更をしたのはわかるが、それと関係ない外苑迄ひろげて変更した。

:10年も先のことをオリンピックと同時の様に錯覚させて、どさくさ紛れに都市計画変更に持ち込んだのですね。

:そこにいまの騒ぎの元がある。

:じゃあ開発構想を作ったのははそれより前でしょうから、10年以上もかけてなかなかの戦略ですねえ。そのころのご隠居のブログを読むと、今騒ぎになっている外苑再開発の骨格はもう決まっていたようで、それは当時の各種の公表資料を見れば、ご隠居にはわかったが一般には気づかれなかったようですね。

:世間が言うように今年になって初めて知ったなんてことはないね、昔から世間は都市計画に無関心なものなんだよ。わたしだって初めからよくわからなかったけど、沢山ブログ駄文を書いたのを読んでみると、まるで螺旋を描くように事実に近づいていれ、われながら面白い。


:都市計画で決めた道づくりや建物づくりが始まって、目に見える何かが起こってから騒ぎだすが、実はそれまでには法的手続きが終わっている。でも世間じゃあ、その手続きが秘密のうちに進んでいて、計画が公開されて意見を言う期間があっても、たったの2週間しかない、けしからん、と言ってますよ。

:そうだね、でもね、いきなり公開意見求むってのじゃなくて、それまでにも何度もその機会があるのだけどね、平素からネット公開されている都市計画情報を見るなんてしないものだよ、世間は何せ都市計画に無関心だから。

:ところでご隠居はこの前のブログに、外苑再開発は大赤字で540億円も国民負担だと、刺激的なタイトルで書いてますねえ、世間から大げさと怒られてませんか。

:そう、ちょっと赤新聞的で品がなかったね、怒られてはいないないけど、あの文章読んでもすぐには何か分からないだろうなあ、ちょっと都市計画プロ的なところもあるからね。

:その540億円も国民負担とはなんですか。

:外苑再開発をやるのは、民間の明治神宮、伊藤忠商事、三井不動産の3者と、国家機関の日本スポーツ振興センタ(JSC)だがね、民間事業者が儲けようと損しようと勝手にやってくれ、でもJSCには損しないどころか儲けてほしいと、タックスペイヤーとしては思うのは当然だろ。

:そうそう、それなのに540億円も新規負担するのが、大赤字というのですね。ラグビー場建ててタダとか、儲かるってあるんですか。

:そこが問題だ。そもそも一般的な市街地再開発事業で共同事業するなら、地権者はその土地を活用して新規支出無しで必要な建物が建つって仕組みなんだよ。だからラグビー場を市街地再開発事業で建てるというものだから、これはてっきり税金投入はないものと思っていたんだよ。だからこそめんどくさい市街地再開発事業にJSCは乗ったのだろうと思ていたんだよ。

この話のもとになる外苑市街地再開発事業の諸元
左の表の右上から4段目にある数字約54,359に注意

:でもね、そんな金出さないでラグビー場が建つなんて、ありうるんですか?

:そこが市街地再開発事業だよ、他の地権者と共同してしかも今回の様に非地権者の三井不動産にも参加させて事業をやるんだがね、細かい手法はめんどうだから書かないが、要するに三井とか伊藤忠とか明治神宮という金持ちに金をださせるんだよ、それでラグビー場を建てる。

:JSCが他の民間事業者たちを強請るとか、寄付させるとか?

:まさかそんなことはしないよ、JSCの土地の一部を他の民間事業者に売ることにより、建設費を調達して建てるとの言い方が分かりやすいかな。それが都市再開発法による市街地再開発事業の仕組みなのだよ。ただでラグビー場が建つわけがない。

:では今回の再開発でも540億円国民負担で、これが赤字だとご隠居がいうのは、そのJSCの土地の一部を売ったのだけでは建築費に足りなかったのですか。

:そうらしいね、土地売った金だけではラグビー場全部76700㎡のうち52880㎡分が買うには足りなくて、540億円ほど税金から新規に投入する必要があるらしい。

:へえー、そうですか、ならばもっと土地を多く売ればいいでしょ。

:そうすると計画するラグビー場が土地に入らなくなるのだろうね。ラグビー場を狭くすればいいのかもな?

:競技の都合でそうもいかないのでしょうね。

:とにかくね、ラグビー場が新規投入税金が無くても建つように、事業の仕組みを考えてほしい。例えばラグビー場の土地をかなり高く評価するとかしてね、全員同意型市街地再開発事業では土地評価も同意すれば自由に決められるからね、540億円分を民間事業者から拠出してほしいね。

:そういえば、この外苑は全国各地からの寄付金と労力提供で国営神社を作ったそうですから、今度は国営ラグビー場をそうしてもらいましょうか。

:おおそうだね、昔、国営神社の一部として外苑を作る時に、全国の行政システムをフルに使って、献金とか奉仕の美名でヒト・モノ・カネを徴収して作ったんだね。それは当時の植民地も含めて日本各地への国家神道の布教と明治王権の普及の立派な活動だったろう。

:じゃあ、今回は国営ラグビー場を再開発事業の民間企業からの寄付と奉仕で作ることにしましょうか。それが今回の再開発に乗った民間企業のお役目と考えよう、なんてね。

:わたしは見世物スポーツを大嫌いでTVさえ見ないから、国営ラグビー場なんてどうでもいいんだよ。そもそもオリンピックでよく分かったように、見世物スポーツは完全に商業化されているだろ、なんで国営施設をつくる必要があるんだよ、戦前日本かよ。

:まあまあ、話がが横にそれますよ。

:だからさ、新規に税金負担がないならまあいいさ、JSCが市街地再開発事業に乗ったのはそれが無いからだろうと、わたしはてっきり思い込んでいたんだよ、それが540億円投入とはねえ。

:ではJSCが土地をもっと高く売ればいいのですね。

:そうそう、もしもラグビー場が動かなければ野球場は建たないのだから、そこのところを高く評価しろとね。ラグビー場は今の位置で困らない、移転させたいなら金か土地をもっとよこせってね。

:そうですね、ゴネるのですね、金ないから再開発に乗るのや~めたっ、なんてね。

:まだあるよ、そもそもラグビー場が元凶となる都市計画公園の一部廃止ができたからこそ、明治神宮の土地に三井の高層ビルを建てることができる、この事業の最大貢献者だ。

:あ、そうですね、ラグビー場が公園未共用なので一部廃止できた、そこに三井はビルを建てる、これがこの再開発のキモですもんね。JSCは国の機関でありながら、都市の公園を減少させる原因者・元凶になるとは実にけしからんと非難され、大いに評判を落としている上に、また税金投入するなんて、ますます評判落とすばかりだ。これもゴネ種にしますかね。

:ごねると言えば、ラグビー場が移転先で建国記念の森を破壊すると市民から非難されてている、気の毒にね、そんな森の土地なんか要らないから、もう少し南に敷地を拡げてよこせとごねりゃいいのに、野球場が頑張ってできないんだろうね。

:へえ、建国記念の森なんて、あそこで神武即位があったんですか、知らなかったなあ、そうですか、ラグビー場は踏んだり蹴ったりで、再開発に参加しなきゃよかったかも。

:他の3者から貢献への見返りと非難への補償を受けるべきだよね、それにはラグビー場の保留床処分金の540億円を伊藤忠・三井・明治神宮に乗せ換えて、ラグビー場全部を権利床にすればよいのだ、そういう権利変換に修正してもらいなさい、金持ちばかりの全員同意意型再開だからケンカせずにできるだろ。JSCの再開発コンサルを受託しているらしいURはがんばれ。

:だんだん踏み込みますねえ、ご隠居の与太話は大丈夫ですかあ、まあ、JSCは再開発にうまうまと乗せられたドジなのか、それとも乗らなきゃならない何か政治的な事情があるのか、とにかくタックスペイヤーにとっては、まことに不採算な市街地再開発事業であるってことですな。

:あ、そうだ、どうだろ、また国立競技場みたいに、国立ラグビー場も「白紙撤回」してもらっては、。

:ハハハ、そうきたか、でもムリヤリ白紙のアベチャンがいなくなったしなあ、キシダさんはオリコウサンみたいだからこんなハシタガネって、やらないでしょ。

:そうかもな、まあ、わたしとしてはまだまだ揉めて、ボケ進行遅延特効薬になってほしい。

:え~、その薬代として540億円いただきます。

(2023/09/30記、2023/10/01補綴)

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2023/09/25

1705【神宮外苑再開発は不採算事業】意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

●外苑再開発は不採算事業

 いま反対運動であれこれ取りざたされる東京の明治神宮外苑再開発事業について、事業採算の基本となる資料の一部を知ったので、忘れないうちにコメントを書く。
 2023年9月24日に岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャーがあった。岩見氏をわたしは知らないが、昨今の都市開発事業(たとえば土地区画整理事業や市街地再開発事業)について批判的な立場にあるらしい。神宮再開発について初めて登場した市街地再開発事業に関する専門家と言ってよいだろう。そのレクチャー内容についてわたしは論評しない。

 そのレクチャー資料の一部に事業資金計画等があり、この事業は市街地再開発事業一般としては権利者にとって大赤字の採算割れ事業であることを知った。ここで言う赤字とは、市街地再開発事業の中で権利者の収支が完結しないで、権利者たちが土地のほかに資金投入をして長期回収する必要があるという意味である。零細な権利者にはできない事業である。

 ここですこしだけ基本を解説する。都市再開発法の適用による市街地再開発事業の一般的な方法は、地権者たちが土地建物を持ち寄って、共同して新たなビルを建てる。そのうちの権利者たちの再開発前の資産に相当する床(権利床)部分を受け取り、その他の床(保留床)を第3者に売却する。この保留床売却金を建設事業費に充てることで、権利者は権利床を無償で取得することができる。(後日補足:なお、ここで無償と書いたが、実は事業の中で金銭支出しないで取得する意味であり、実際には保留床に対応する土地の売却金を権利床取得に充てる)

 これが市街地再開発事業の仕組みの基本であり、その建築規模が巨大になればなるほど保留床売却収入が大きくなり、事業採算性がよくなる。これが市街地再開発事業で建設する建築物がが巨大になる原因である。逆に言えば、だから事業に取り掛かる前に、事業区域の都市計画を変更して事業用地の容積率を上昇させておくのである。外苑再開発では再開発等促進区の地区計画がそれである。

 もちろん事業はそれぞれ事情が異なるから、この基本に忠実である必要はない。低層建築でも、赤字でも、権利者や事業関係者それぞれの判断である。金持ち権利者ならば保留床を他人に売らないで自分が買い取る投資をするだろうし、零細権利者ならば保留床を他へ売却できないならば事業を見合わせるだろう。

●事業費の7割は権利者たちの持ち出し

 では神宮外苑地区第1種個人施行市街地再開発事業(以後、「外苑再開発事業」という)の事業採算はどうか。
 結論から言えば、権利者たちにとっては採算割れが著しい大赤字事業である。何しろ権利者たちの持ち出しがものすごい。普通ならば事業をしないだろうが、金持ちばかりのメンバーだからできるのだろう。

この記事は岩見レク資料の内のここに引用した3件の表をもとに書いた

 全事業費は約3千5百億円(349,053,566千円)である。その全部を保留床処分金で賄うのだが、実はそのうちの7割近くは権利者たちが自己負担しており、非地権者で参加してきた三井不動産が負担するのは3割余である。つまり権利者たち(JSC、明治神宮、伊藤忠等)が、事業費の7割を持ち出しで行うのである。

 金持ちの民間事業者がどのような採算割れをする事業をやってもわたしには関係ないから、それらについては金銭的にはどうぞご勝手にというばかりである。
 せめて思うのは、通常の市街地再開発事業では国と都から多額の補助金が入ってくるものだが、この金持ち事業ではそれが一切ないのが、タックスペイヤーとしては幸いである。それは非都市計画の市街地再開発事業だからだが、それを選んだ権利者たちの金持ちぶりを表している。

ラグビー場建設にも新規巨額国費投入

 しかしJSCは文科省所管の特殊法人である。つまり国家機関であり、税金で運営している。わたしも納税者の端くれとしてひとこと言う権利があるので、その事業採算性についてコメントする。

 そのラグビー場の建設費用であるが、市街地再開発事業だから権利床として取得するので新たな支出はないものと思っていた。つまり第3者等床(多分、三井不動産と伊藤忠)に売却する保留処分金収入でラグビー場は建ち、新たな税金からの支出はないものと思っていた。最初に解説したように、それが市街地再開発事業の常識である。

 ところが岩見さんのレクチャーで見た資料によれば、ラグビー場の建設のためにJSCは、約540億円の支出をするのである。え、なんだこれは?、そもそもこのラグビー場建設を面倒な市街地再開発事業に仕立てるのは、保留床処分金を充てることで新たな支出を回避するためであると思っていたが、違ったか?、しないどころか540億円も支出するのである。

 ついでに書けば、明治神宮は新たに約240億円の支出(投資か)、伊藤忠は約1670億円の支出(投資)である。第3者の保留床取得者として登場する三井不動産の投資支出は約1070億円である。これら民間権利者がいくら投資支出しようとどうぞご自由にである。明治神宮は意外に金持ちなんだなあ、事業後の運営や三井からの地代で回収するのであろう。

 だが国有財産であるラグビー場については、約540億円も支出するのは合点がいかない。タックスペイヤーとしては、それだけの金を出すなら、現ラグビー場の改修費用の方が安いだろうに、とも思う。なんにしてもこの建て替えで約540億円の国民負担を必要とする。

●ラグビー場と野球場の土地交換について

 更に問題があることを見つけた。JSCはラグビー場を再開発前の位置から神宮第2球場の位置に移転して建てる。つまり外苑と土地の交換をすることになる。事業の仕組みとしては交換と言わないで権利変換というが、実は交換と同じである。当然のことに等価交換である。

 そしてこのレクチャーで新たに知った資料の中に、再開発前と後のそれぞれの土地面積があった。現ラグビー場の土地面積は41100㎡であるが、神宮第2球場がある位置に移ると43480㎡となり、事業後は2380㎡増加している。

 ところで事業前つまり現在のラグビー場の土地価格と、事業後の土地つまり現野球場の土地の価格を比べてみよう。正確には専門家による鑑定が必要だが、ここでは相続税路線価を比べてみる(ネットで知ることができる)。

 路線価を見ると、ラグビー場の前の道(外苑西通り)は2010千円/㎡である。一方、野球場の前は1490千円/㎡(国立競技場との間の道では960千円/㎡)である。これだけで土地総額は分からないが、両方の土地の単価の比は想像できる。現ラグビー場の土地は現野球場の土地よりも6割ほど高いのである。(当初3割と書いたが6割に修正した20231002、下図参照)


 ということは、現ラグビー場の土地が野球場の場所に移れば、いまよりも倍以上の広さになるはずである。だがこのレクチャーでの資料を見るとわずかに6パーセント弱の面積増加に過ぎない。とすればその差分の土地価額は建物建設費に変換(権利床)されるのであろうが、それでも建設費には届かないので約540億円の支出をすることになる(のであろう)。

 一方でに入れ替わって建つ神宮球場の移転先の土地(現ラグビー場の位置)は3割ほど面積が減るはずだが、そうはなっていない。減らすと野球場が入らないからそうはいかないのだろう。土地全体の広さは変わりようはないのだから、結果的には野球場(明治神宮)がラグビー場の土地(国有地)を買ったことになり、そのカネはラグビー場の建設費の一部になるのだろう。このような権利変換だろうが、要するに結果的にJSCは土地の一部を売ってラグビー場の建設費の一部に充てるのだ。

 この概略推測計算がどれほど正しいか自信ないが、どうもすっきりしない。権利変換計画書を見れば明確にわかるが、国有地処分にかかることだからいずれ公表するのだろう。

 高額な土地と安価な土地を交換するのだから、広すぎる土地の一部を売却すれば(一部転出補償金)、国民負担はないどころかうまくすればもうかるかもしれないとの、タックスぺーやーとしての考えは甘いのか
 市街地再開発事業だから権利者負担はないものと思いこんでいたのが間違い、ということになる。なぜ国民負担が必要な再開発なのか、もっと国民にとって採算をよくしてはどうか。

●JSCはもっとがんばれ

 JSCは権利交渉でもっと頑張ってもらい。自分が使う建築を自分で買い取り、つまり保留床買取をしなくてもよい方法にしなさいよ。せっかく市街地再開発事業に乗ったのだから常識的に行きましょうよ。
 全員同意型事業なのだから、権利変換で権利証として全取得できるように、三井不動産や明治神宮と談判交渉してほしい。このラグビー場建設事業を委託されているらしいUR都市機構には、再開発プロとしてもっとガンバレと言いたい。

 この再開発ができるようにした、つまり公園廃止をした原因者(元凶)であるJSCは、事業者の中で一番の貢献者であるのだから、もっと強い立場で権利交渉してはどうか。下世話に言えばゴネルのである、町場の再開発によくあるようにね、勿論冗談。
 JSCはこんな赤字再開発事業に乗った(乗せられた)のが間違いだったかもなあ、今のところで建て替えるか修復する方がよいのかもなあ。

 以上は、初めて見た基本資料だけで、年取った今も多少は覚えているプロ的な知識で考えたことであり、詳細なことを知らないヒマな老人のピンボケヒマツブシたわごとである。
 まだしばらくボケ進行遅延策に外苑再開発を利用することができそうで、うれしい。

(20230925記)

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2023/06/26

1693【外苑再開発騒動】イチョウ並木に導かれる視線の向こうにあるもの

 ●外苑イチョウ並木は不自然だ

 ここに二つの並木道の写真がある。これら両側に並ぶ街路樹はどちらもイチョウである。同じ樹種なのに、こうも姿が異なる。

東京の神宮外苑イチョウ並木 先端が鋭く立ち上がる人工的円錐形
視線の先の記念館に向けて一つに集中する消失点の一点透視図法の配置設計

横浜の日本大通りイチョウ並木 こんもりと繁る自然な姿
これと比べると外苑イチョウ並木の人工性がよく分かる

 街路樹はもちろん植物だから、その生態的に定まっている姿で育つ。枝葉の張り方による外形が最もそれをよく表現するものであり、そのままならばそれぞれ本来の葉張りの形態に育つものである。
 ところが人間はえてして自分の好みの形の葉張りを要求する。そのためには枝葉を切りそこれを剪定して人間が望む姿にする。上のふたつの写真のイチョウの木の姿は、どちらが本来の姿でどちらが人間がつくった姿であろうか。もちろん上が人口の姿、下が自然(に近い)の姿である。

 わたしの生家は神社の森の中にあった。森の一部を切り開いた広場にイチョウの巨樹があった。大人3人が手をつないで抱えるほどの太さで、高さは30mもあったろうか、大きく広く枝葉が繁っていた。秋には金色の実と葉が境内地に舞い散り落ちていた。少年のころのある日、地面を打つ大音響とともに切り倒された(参照:大銀杏が死んだ日:伊達美徳)。
 そのイチョウの大木の姿を思い出せば、あまりの巨樹で剪定しようもなかったから、というよりも広い境内で剪定の必要がなかったろうが、枝葉は自由に左右に空に向かって広がっていた。上の写真の日本大通りのイチョウの姿に近く、外苑のそれではなかった。

 今、神宮外苑再開発事業に伴ってイチョウ並木が枯れるかもしれないと、「あの美しい緑の自然環境を傷つける再開発」のような言説が、世間(といっても東京あたりだけだが)でやかましい状況にある。
 あのイチョウ並木は自然環境であろうか。あの円錐形の姿で行儀よく並び、しかも絵画館に近いほど背が低くなるように先手して、パースペクティブを効かせた姿は、自然とは到底言えない。そうなるには4年ごとに人間が手を入れて枝葉を切り刻んであの形に仕立てる剪定を行うるからである(明治神宮のネット記事)。自然環境には直線は存在しない。

 ちょっと大げさに言えば、あの姿は不自然そのものの表現である。この街路樹群は最初から傷つけられて育つ運命にあるのだ。だからあのイチョウ並木が枯れてもよいのだと、わたしは言っているのではない。街路樹はもともと自然環境ではない。人工で作り出す疑似自然であり、むしろ文化の所産というべきものだ。つまり生態学的な自然とは峻別して、造園学的な人工自然として対応すべきというのだ。

 それに対して内苑の森は、当初の疑似自然から植生遷移を経て、本来の生態的な自然に限りなく近づいているので、外苑の緑とは当然に対応が異なるものである。(参照【神宮外苑あたり徘徊②】2015伊達美徳)

 余談になるが、自然な樹形として円錐形の並木にしたかったのならば、メタセコイヤ並木にすればよかったのである。横浜の大通公園にはその並木道がある。だが、折下吉延がこのデザインをしたころは、造園界にはメタセコイヤが未発見だったから仕方がない。

横浜大通公園のメタセコイヤ並木 自然な姿の円錐形

●外苑イチョウ並木景観を嫌い

 明治神宮外苑といえば、そのイチョウ並木が名所とされてまるで主役の様に言われることが多いようだ。だがそれは寺社で言えば参道であり、その到達目的が本堂や本殿であるように、ここでも明治天皇事績を描く絵画館が主役であり、参道はそこに至る経路に過ぎない。

 その両側並木の形態と配列に導かれる視線の先には絵画館の坊主頭、これはもっとも簡単な一点透視図法の設計であり、誰にも分かりやすい景観が登場して、人々に印象を深く与えるのであろう。この消失点に向かってわき目も振らずに人々を向かわせようとする基盤には、明治国家とその天皇制があることに留意しなければならない。

 わたしはこの一点に集中させる景観の仕掛けが、実は国家と天皇の権威付けのために作られた仕組みであることに嫌悪を持つのである。権威そのものの景観に嫌気がさしてくるのだ。正に国家の掌に乗せられている空間演出である。

 京都から拉致してきた天皇を中心に据えてカリスマ性を与えて王権国家の樹立に成功した明治政府は、明治天皇の死に次いで登場した後継者が全くカリスマ性を持ちえないことに愕然としたに違いない。
 そこであらためて王権の確認を国民にさせるために、王権から神権の樹立へと格上げをしようと明治神宮造営に政府は動き出した。そして内苑と外苑の神権景観が登場した。

 やがて明治神宮や伊勢神宮を頂点とする国家神道は、戦争駆動装置として日本列島の津々浦々まで、そして植民地にも働くことになる。頂点の明治神宮での著名な戦争駆動イベントに1943年の外苑競技場の学徒出陣壮行会があった。
 わたしは小さな町の神社で生まれ少年期までを過ごした体験からも、こういう手に載せられるのをどうにも好きになれない。だが、東京には王権景観を賛美する場所があちこちにあり、それを行政として維持する仕掛けもある(参照【東京は権威主義景観が好き】2014伊達美徳)。

  わたしは国家や戦争に結びついている外苑の景観を嫌いなことを、2013年からたびたびここに書いてきた(参照:【五輪騒動】神社の境内だから・・2013伊達美徳)。ちかごろ似たようなことを言う人をようやくネットで見つけた(参照:「戦前の勤労奉仕がSDGs」という問題発言を考える 2022古市憲寿)

 もうひとつ気になっていることは、「神宮外苑を国民の自主的な任意の献金と勤労奉仕でつくった」との賛美の言説である。国営の神社建設事業が本当にそうであったのか、調べてみたいと思っている。

(20230626記)

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2023/04/30

1682【神宮外苑騒動】10年ぶりに神宮外苑あたりが騒がしいが再開発・都市・建築・植生の専門家はどうした?

外苑騒動戯像2013年作 ザハ競技場出現図

●10年ぶりに神宮外苑あたりが騒がしい

 東京の明治神宮外苑再開発について、世間が、と言うよりもネット空間が騒がしい。
 三井不動産を施行者とする市街地再開発事業に仕立てて、東京都知事による事業施行認可が今年の2月16日におりて、事業に着工したとのこと。

 その一方で、この市街地再開発事業に関する環境影響評価の審議が、都環境影響審議会で行われてきて、これはまだ審議が終わっていないようだ。施工認可が先になっても、アセスは事業が進むうちに審議も継続してもよいらしい。

 事業者が公表する事業内容の絵がネットに出たから、世間も興味を持つようになったらし。とくに外苑名所の公孫樹並木が再開発で切られるとか枯れるとか、だれもが分かりやすい問題があるとの情報がネット上にながれるようになった。

 そこに緑地に関する専門家の石川幹子さんが、イコモスの委員会の名で植生計画ついて問題提起と、独自開発計画案を提示した。
 それから「再開発で伐り倒される樹木が10000本」と数字があるだした。わかりやすい数字になると世間も話に乗りやすいのは、かつて国立競技場の建物の高さで、次いで工事費の高さで反対運動が高揚したことに似ている。今年になって次第に「樹を伐るな」テーマの運動がいくつか起きてきた。

 そして事業者が審議会に提出した「環境影響評価書」が公表されると、石川さんは植生学専門家として、評価書の植生調査に多くの問題を含むので、調査をやり直せ、アセス審議会をやりなおせと提案をしたのだった。

 調査方法がおかしい、間違い調査だ、記述間違いがあるなど多くの項目で環境影響審議会で説明させよと提案した。だが、東京都側はそれをうけることなく環境影響評価審議会開催、そして事業者側はそれに対して間違いも無いし、調査方法もこれでよし、と回答した。こうして今年も4カ月が過ぎた。

 その間、次第にばらばらの市民たちによる再開発反対運動が起きてきて、今の時代らしくネット活用による情報流通で、活動は次第に櫃のネット空間にまとまろうとして、熱を帯びてきている様子である。この面のリーダらしい人たちも登場している。
 わたしは知らないが、著名な音楽家やタレントが反対運動に加わっているようで、盛り上がりに関係しているのだろう。

 10年前の国立競技場騒動のころは、都市計画家が反対運動に登場することはなかったが、今回は珍しくも都市計画家の大方潤一郎さんがこれに加担なさっている。大方さんは10年前も専門家として事情をよくご存知のはすで、国立大学を退職なさったからだろうか。
 ところで競技場騒動では多くの建築家が登場したが、今回もいるのかしら。

 さて外苑再開発事業は、市街地再開発事業としての施行認可で法的にGOサインが出てしまったし、アセス審議会も事業進行中に適宜審査継続するとウヤムヤ通過しそうだ。どうなるおろうか。
 これから外苑再開発は本格的に動き出すようで、現場はもう板囲いに囲まれて、工事中雰囲気に満ち満ちているようだ。

●五輪外苑騒動史わが10年前妄想予測は当ったか

 このところ外苑前再開発について何やら騒がしい。あの有名人が反対してるからとか、あのいちょう並木が切られるとか、卑俗なレベルになって、急に世に知られるようになったらしい。と言っても世間的には東京あたりの人に限られるのであろう。

 そしてこれまでこの再開発計画は、10年前から立案が行政と事業者たちだけで密かに進められてきた、なんて、隠某論みたいなことを言う人も出てきた。
 それはそれで社会現象として面白いのだが、わたしに言わせると、実は不十分ながらも基10年前には基本的なことは公表されていたので、そこから今日の現象をある程度予想することもできたのだ。

 それなのに秘密裏に関係者だけでで進めたと世間が言うのは、要するに世間では都市計画なる公共的な空間計画制度にほとんど関心がなくて、知ろうとしなかっただけなのである。
 都市計画は身の回りの生活空間の将来像を示しているのだが世間は無関心であり、その都市計画が目に見える事業になってようやく気がついて、俺は知らなかったとか、秘密に進めたとかいうのである。

 10年前には外苑再開発の概略が分かっていた証拠として、2013年に書いたわたしのブログ記事がある。そのころにおきた外苑地区の地区計画という都市計画について、あれやこれやと指摘をしていたのだ。

 わたしはかつてフリーランスの都市計画家だったが、2013年には仕事の現役をしりぞいてしまい、ただの隠居老人だった。だから仕事を通じて特別に外苑地区計画を知っているのではなくて、ネット空間徘徊で素人でも知りうる情報により、批評やオチョクリや妄想やらを書いていたのだ。

 いまごろになり急にネット空間に外苑再開発がなんだかんだ登場するので、思い出して2013年のブログ記事を読み返してみた。
 おお、そうだったよなあ、今ごろ起きている問題をあの頃にもう予想もしているなあ、当たり外れもあるけど、われながら面白いなあ、フムフムと読んだのであった。

 これをお読みのあなたも、お暇なら長文だけどお読みくださいませ。

2013年12月【五輪騒動)神宮外苑都市計画談議1~10
http://datey.blogspot.com/2013/12/866.html

2013年~2023年【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集http://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html

●神宮外苑再開発コンサルタントは答えよ

 いまイコモスの石川幹子さんから指摘されている環境アセスメントの問題だが、このアセスコンサルも日建設計だろうか。間違いだ虚偽だレベル低いなどと、石川さんにあれほど言われても表に出て答えないのは、答えられない事情があるのかしら?、専門家としてさぞや苦しいだろう、お気の毒になあ。

 神宮外苑再開発は誰がやっているのかしら、いわば雇われ事業者の三井不動産ばかりがやり玉に挙がっている感がある。
 しかし、本当の事業主は大地主の宗教法人「明治神宮」と独立行政法人「日本スポーツ振興センター」(JSC)であることは明白。三井不動産は再開発事業の権利者ではないようだから、都市再開発法が許す形式上の事業主である。それはそれでよい。

 だが、本当に事業主は土地所有トップの権利者は明治神宮である。第2の権利者はJSCである。第3、第4がいるが弱小権利である。ところが事実上の事業者の明治神宮と第2のそれのJSCがまったく表に出てこない。
 つまり、雇われマダム(マスター)の三井ばかりが表に出てくるから、反対運動者たちもこの目くらまし陽動作戦に誘導されて、三井ばかりをやり玉に挙げている。もちろん三井は忠実に役目を果たしているのだろう。

 ところで、世間の反対運動者たちは、どうして三井の雇い主である明治神宮やJSCを相手にしないのだろうか。直接に文句言うのは何か不都合があるのだろうか、あるいは作戦か。
 例えば最大権利者の宗教法人明治神宮にアピールするには、その本拠の神宮内苑にも行くべきだろう、初詣デモとか、、。
 あるいはJSCに文句言うのは、その親分の居る文科省にデモかけるとか、、。そもそも都市公園の計画決定を外したから可能になったこの事業の元凶は、文科省の子分のJSCなのだ。

 更にこの騒動の当事者として登場するべきなのは、それにこの市街地再開発事業にかかわるその専門家たちである。この再開発の計画から事業に至るには、都市計画家や建築家などの専門家が大きな役割をしているはずだが、どうして世間はやり玉にあげないないのだろうか?

 その専門家はどなたでしょうか?、少なくとも日建設計が関わっていることは確実ですよね、市街地再開発事業コンサルタント、都市計画家、ランドスケープアーキテクト、建築家など、全部の役割を請け負っているのかしら、ほかにも下請けの専門家も多くいるだろう。

 今話題のアセスについては、石川幹子さんから植生調査について論争を挑まれているのだから、その調査担当の植生専門家は堂々と名乗り出て、石川さんとの論争を受けて立ってはいかがすか、それが専門家というものでしょ。

 神宮再開発についての公的発表は下記にある。
●神宮外苑地区におけるまちづくりファクトシート(東京都都市整備局)https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/data/jinguu_factsheet03.pdf?230224=

神宮外苑地区のまちづくり(東京都都市整備局)https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei07.htm

(20230430記)

2022/11/22

1657【外苑再開発長屋無責任談議】近現代都市歴史資産群の生存競争現場を面白がって妄想する

外苑スピリチュアルスポット

熊五郎:こんちわ、ご隠居、生きてますかあ。

ご隠居:おや熊さん、まあお上がりよ、歳相応に元気だよ、熊さんはどうだい?。

●外苑再開発に都市計画家が初めて発言

:ええ、元気でちゃんと勉強してますよ、つい先日もね、東京あたりで話題になってる、明治神宮外苑の再開発のこと、都市計画の専門家が市民の立場で話すのをYOU-TUBEで見ましたよ。再開発反対というか批判の立場のようです。これですよ。https://www.youtube.com/watch?v=6ik5j2RvKus

:おや、勉強したしたのかい、わたしもみたいけど長時間で眠っちまいそうだ、かいつまんで教えておくれ。

:明治大学の大方潤一郎さんと言う方ですよ。

:そうかい、これまで批判的な専門家による公開の意見は、ICOMOSの団体名で緑地計画の石川さんと、新建築家技術者集団の団体名、環境アセスの原科さんだけで、いつになったら都市計画家登場かと待ってたんだよ。

:大方さんてどういう方です?

:大方さんは東大都市工学科で都市計画の教授やっていたはず、法制度が専門かな、定年退職で明治に移ったのだね。これまで都市計画関係で反対運動に関わるような人だったかなあ?

:外苑再開発反対運動の活動家らしいRochelle Koppさんという方が企画したセミナーでの講演ですよ。だから都市計画への批判的立場でしょうね。

:外苑再開発論争にようやく都市計画家が登場か、都市計画法制度の解説だけじゃなくて、批判とか反対とか新提案とか話てるかい?

:え~と、いろいろ解説をして批判もなさっているようだけど、これまでに世に言われたことばかりで、特に新提案はないようです、いまのところ都市計画的理論武装担当ですかね。でもね、話を聞いてて、いくつか面白いなあと気が付かされたことがあった。

:ほう、聞かせておくれ。

●TEPIAのせいで公孫樹が枯れる?

:まずね、石川さんが問題提起した、新球場がでかくて例の銀杏並木に近づき過ぎて建つから、樹が枯れるかもしれないってことについてですがね。

:そうそう、並木の根に十分に地中の水が回らなくなる恐れありってんだよね、近くの実例調査でもって説得力ある話だね、さすがだ。

大方さんの解説では、そうなるのは新球場の敷地の東西幅が狭いからだ、その狭い理由はTEPIAが事業に参加していないからだ、とのこと。ほれこの図ですよ。

:どれどれ、おお、図面を見ればその通りで、TEPIAが無ければ、というか事業参加していれば、野球場の敷地が東西に広がり、もっと西に寄せて建てられる、野球場と並木との間に十分に余裕ができる、そううすると石川さんの説によれば、並木への影響はないことになるのかね。

TEPIA(左の赤色敷地)を上方に移転して建物を曳家すれば
野球場は左に寄り銀杏並木との間に余裕ができるはず

:ということは、この地区で共同再開発事業としてTEPIAが抜けているのが、野球場建設に無理ができている、つまり地権者たちの共同事業化の失敗が原因ですかねえ、それじゃあTEPIAが事業に参加すれば解決するのですかね、そうしなさいよって簡単なことかしら、なにか話が違うような気がする。

:うん、事業者たちも最初はTEPIA敷地も入れて構想していたようだから、こうも窮屈じゃなかったのだね、それがいつのころからか仲間割れして、TEPIAが事業仲間から抜けたんだろうね、面白い。

:でもねえ、そもそも、TEPIAはなぜ共同再開発事業に不参加ですかねえ。野球場が入らなくなって困るとわかってるでしょうにねえ。セミナーでの一般質問にもでてました。

:大方さんはなんて回答してた?

:TEPIAに聞かなきゃわからないけど噂では、と前置きして、あの建物を設計した建築家が反対してるからだろう、とかって、。

:ワハハ、槇文彦さんだね、ほら、新国立競技場コンペの後で、弟子たちと一緒になって、ザハ・ハディドの当選案に大反対キャンペーンを張った建築家だよ、こちらでもあれこれ反対もありそうでなさそうで、面白い噂だなあ。

:ああ、あの方ですか、う~む、日本で建築家がそれほど権威があるとは思えないけど、槇さんてそれほど偉い人ですか。でもあのキャンペーンの結果はハディド案の替りに大成梓隈案のベーグルお化け、これには反対キャンペーンなさらないから良いのでしょうね。

:つまらん形だよねえ、わたしはあの異形の女性原理ハディド案を見たかったなあ、残念だよ。

:それはともかく、そのTEPIAって通産省系の団体ですよ、再開発のような儲け話には敏いような感じがあるけど、なぜ逃げたのかなあ。

:ワハハ、それに対して明治神宮もJSCも文科省系の団体なのに、こちらの方が利に敏いとは、これいかに。

:わははは、文科省宗務課は例のカルト問題のほかに、もうひとつこの厄介事を抱えるのかしら。

:はは、まさかね、よくある密集市街地の共同再開発では、ひとりになっても絶対反対を唱える頑固地権者がえてしているもんだが、ここでもTEPIAがそうなのかねえ。

:はじめは一緒にやろうとしていたのになにかで抜けた、TEPIAのせいであの並木が枯れるってことになるのかしら。

:う~む、ちょっとちがうけど、風と桶屋よりは関係あるかもなあ、これで事業が暗礁に乗り上げたら、その犯人はTEPIAだってことになるのかねえ。

:いや逆に、TEPIAのおかげで事業が暗礁に乗り上げたと、喜ぶ反対派市民もいるかもね。

●TEPIA建築を保全するには

TEPIA 設計:槇文彦
:あのね、公孫樹並木の保全とTEPIA建築の両方を保全できる方法を思いついたぞ、再開発に巻き込まれて、あの建物を壊したくないと槇一家がごねるのなら、どこか近くに曳き家すればいいだろ。

:え、あんな大きな建築を引っ張るんですか、できるんですか。

:ああ、できるさ、近頃は曳き家しないけど、70年代頃までは珍しくなかったね、わたしが見た最大の曳家は9階建てのオフィスビルで、しかも普通に使いながらね。

:そうか、曳き家で事業協力ならば槇一家も文句言わないかも、どこに持って行くか。

:う~んと、まあ、これだけ広い土地だからどこでもあるさ。例えばこの文化交流施設棟ってところはどうだい。

:あ、ぴったりですね。これで新野球場は西に寄せて、並木との間にたっぷりと緑地を確保できるな。

:気になるのは、あの建築はあそこになくちゃいけないのだ、槙さんが設計したあの場所でなくちゃいやだと、槇一家の建築家たちがごねるかもね、わはは。

:でもねえ、TEPIAって何だか変ですよ、なぜあそこにあるのでしょうかね、スポーツクラスターに無関係でしょ、あそこでなければならない意味が分からない。

:うん、ちょっとヘンなのは、事業には参加しないが、都市計画公園指定はちゃっかりと解除してもらってるんだね。さすがに通産系団体らしく実は最も利に長けているんだ。

:なるほど、今後、建物の用途を変えたり、建て直しの時に公園内用途に限る必要がなくなり、規制が少なくなった、じゃあ地価評価も上がるでしょうね。つまり何もしないが隣の再開発のおかげで開発利益だけは入ってくるわけ。

:でも、TEPIAに言わせると、それは明治神宮とJSCが勝手にやることで、こちらがお願いしてるのではないって、怒るだろうね。

:そう、勝手にそう妄想されては困るって、ご隠居もお叱り受けますね。

:考えてみると、歴史的都市東京の近現代都市資産を、時代の変化に対応してどのように保全し更新していくか、いろいろな方法の典型的現場が、この外苑再開発に見ることができるね。一番古い公孫樹並木と一番新しいTEPIA現地保全し、それらの中間にある野球場とラグビー場は移転更新する、それらが互いにせめぎあい生存競争に、伊藤忠とか三井不動産という外部民間資本が武器援助参戦、これは都市戦場だね。

:大方レクチャーを聞いて気になった面白いヒマツブシ話題が、ほかにもありますよ、容積率問題とか、市民参加問題とか、市街再開発事業制度問題とか、。

:うん、あるだろうね。あ、そうだ、念のために言っておくが、ここでの話は無関係な年寄りが面白がって妄想しているだけで、現実とは何の関係もないからね、間違わないでね。

:はいはい、よーく分かってますよ、年寄りの暇つぶしでしょ、この続きを次に来たときにやりましょう。今日はこれでさいなら。

(20221122記)(つづく


2022/07/20

1634【明治神宮外苑再開発騒動】石川提案に続きようやく建築家からも「見解と提案」公開で喜ばしいが、

 

都体育館から外苑絵画館坊主頭が見えたころ 2015年

 東京の明治神宮外苑再開発計画は、その地区計画(2013年)の変更都市計画は事業者の提案通りの姿に決定(2022年)したのだが、環境アセスメントの手続きにおいて、その環境影響評価審議会から待ったをかけられて、行政手続きが停滞しているようだ。その理由は、主に現存植生の保全に関しての方針に疑義を呈されたようである。

 これは行政手続きではかなり珍しいことであろう。都市計画や環境アセスメントについては、それらの審議会を自治体や事業者からの原案通りに了承するのがふつうである。待ったをかけるようなことはないとことはないが、稀である。その稀なことが明治神宮外苑再開発で起きた。

●ランドスケープアーキテクトからの代替案

 その背景には外苑の隣の国立競技場建設時において発生した諸問題について、市民たちに負の記憶があり、その延長上の開発計画として警戒し、再開発反対運動も起きつつあった。そこにはあの有名な銀杏並木が危ないらしいとの、都市の緑保存運動の底流がある。

 これを力づけたのが、緑地計画学者のランドスケープアーキテクト石川幹子さんである。イコモスの委員会で当該再開発計画を検討して、現存樹木が1000本も伐採されるという調査をして、伐採樹木はほぼゼロの代替再開発計画の提案をしたのであった。なお、石川さんは国立競技場建設に関しても、その立体公園計画について異議を唱え、日本学術会議の委員として代替案提案をされていた。

 外苑再開発計画案には、歴史的環境、都市景観、都市計画、事業手法、将来運営維持など、それぞれの課題対応がある。そのなかのもっとも一般市民が分かりやすい既存の大木の保全に焦点があつまり、「1000本大木伐採」が再開発の最大の問題のような様相を呈してきた。

 かつて隣接地の国立競技場が、その建物が高すぎるという高さの数値に焦点が集まり、これも一般市民に分かりやすい数値攻撃になった。そのうちに工事費が高すぎるという金額に焦点が集まり、これも一般市民に分かりやすい数値攻撃になった。
 今回の再開発においても、伐採大木1000本という実に分かりやすい数字攻撃になっている。もちろん新築建物の高さや景観も内容も問題にされているが、樹木1000本とは多くの市民を巻き込むにはなかなかにうまい戦術である。

 樹木のことは事業者側も心得て、銀杏並木の保全にはそれなりに対応する計画だが、全体の既存樹木伐採本数を人質に取られるとは意外な戦術だったのだろうか。いや分かっていて、植え替えや植え増しで対応する作戦だったのが、アセス対応でドジったらしい。
 さてこれから環境アセスの審議会がどう動くのか、その決定権者の東京都知事が政治的にどう動くのか、興味深いことになってはいる。

●ようやく出てきた建築家からの提案

 そんな時に、新建築家技術者集団(新建)の東京支部が、イコモス石川提案の向こうを張ってかどうか知らないが、神宮外苑再開発問題「見解と提案」なるものを公開した。これを書いたのは東京支部とはあるが担当の建築家個人名がない、誰だろうか。

 ようやく建築の専門家の声が聞こえるようになった。国立競技場の時の建て替えに至るどさくさの端緒は、建築家の槇文彦さんの問題提起であったが、今回はむしろ一般市民からの問題提起が先行した感がある。
 だが、わたしから見ればそれはずいぶん遅い動きであった。そのずっと以前の2015年地区計画から問題をはらんでいた事業であるが、都市計画の専門家の他にはわかりにくかったのだろう。

 なお、わたしはずいぶん前からブログで問題を指摘しているが、それとて専門家以外には分かりにくいことであったのだろう。もっとも、わたしの書きぶりは真正面からでなくて、皮肉と諧謔あるいはわたしもよく分からない法解釈論などだから、分かりにくい。

 新建の建築家としての「見解と提案」に対して、わたしは賛意も反対の意も述べる気はない。現状保全の意志を強く読み取って、新築するばかりが建築家じゃない時代が、ようやく日本の建築家の世界にも来たのだなあと、興味深く読んだ。

 わたしは事業と何の関係もないので、この再開発事業の資料類は、ネットt公開されたものを見るしかない。新建の建築家は何か非公開資料をご存知かもしれない。

●新建提案で気になったこと

 「見解と提案」を読んで、下記の部分が気になった。

2 再開発計画による外苑の大改造から伝統ある環境を守る 
2) 容積率の緩和と移転による不動産収益とその行方
 再開発の事業計画が明らかにされていませんが、球場とラグビー場の建替えは移転した容積率に対応したもので、いわば自腹を切っての等価交換だと考えられます。とすると、不動産収益は超高層ビルの新たな床(保留床)に集められ、その所有者が手にすることになります。

 これを読むと権利者である明治神宮とJSCは、野球場とラグビー場の建て替えのために、「自腹を切っての等価交換」とある。自腹とは権利者が再開発事業の外から資金調達して、各自の建設事業に投入するという意味であろうか。

 つまりこの市街地再開発事業においては、施設建築物権利床だけではなくて、十分に巨大な保留床がありながら、その保留床処分金を権利床建設等に充てないという、市街地再開発事業では異例のことなのであろう。本当にそうだろうか。

 この再開発をわざわざ法定の市街地開発事業としながら、そのような権利者に不利な権利変換をするものだろうか。もちろん全員同意型権利変換だろうから、それもありうる。
 新建の建築家は事業者から権利変換計画書(案)を見せてもらい、そのように書いてあったので、このようにお書きなのだろうか。

 そうだとすれば、明治神宮とJSCはよほどの金持ちなのだろうし、なぜ市街地再開発事業にするのか、わたしには理解できない。明治神宮は祈祷料でも賽銭でも原資にして自腹をご自由にきればよい。
 だが、JSCがそれでは納税者としては困る。JSCの自腹とは税金を原資とする国費を投入になるのだ。せっかく事業の収入金である保留床処分金をあててもらいたい。そして権利床をできるだけ広く獲得してもらいたい。この事業を市街地再開発事業にする意義はそこにあるはずだから。

 普通に考えると、市街地再開発事業の保留床処分金収入は、権利者の明治神宮とJSCにも従前権利額に応じて権利床に変換して配分されるから、自腹を切らなくても新球場とラグビー場を手に入れることができるから、この事業に加わっているに違いない。
 再開発ビルなどの事業費を外部から調達するために、再開発事業地区内の容積率UPをして権利床のほかに巨大な保留床を生み出してこれを売って保留床処分金という収入を調達する。必然的に巨大高層ビル建設となるのが市街地再開発事業の仕組みである。

 また、「不動産収益は超高層ビルの新たな床(保留床)に集められ、その所有者が手にする」ともある。この意味がよく分からないが、保留床を青山通りに面する超高層ビルに集約する、という意味だろう。

 一般的にはできあがる再開発ビルの権利床と保留床の配置は、権利変換計画書(案)を見て初めて分かる。新建の方はご覧になったのだろうか。
 そういえば、この再開発事業のコンサルタントは日建設計らしい。建築設計も当然に日建設計だろう。

●前代未聞の単純市街地再開発事業の真の目的は

 さてこの市街地再開発事業は、権利者がわずかに4者だから個人施行になり、施行者は三井不動産だろう。あるいはほかに隠し権利者がいるなら組合施行も可能。
 市街地再開発事業としては、稀に見るほど権利者数は少ないし、稀に見るほど権利関係は単純だし、稀に見るほど広大な土地で計画自由度は大きい。この条件が全部そろう市街地再開発事業は前代未聞だろう。

 大勢の零細権利者も含む一般的な市街地再開発事業につきものの、権利関係をめぐるもめごとなどはありえない順調事業だろう。事業の都市計画決定という法的担保を不要として非都市計画事業にするかもしれない(個人施行の場合)。
 市街地再開発事業としてはあまりに単純すぎて(つまり都市問題がほとんど無い)、これが都市再開発法が定義する市街地再開発事業に相応するのかと、わたしは疑問に思う。まあ、都市再開発法第3条2項ロ号適用で違法ではないだろうが。

左右に明治神宮内苑と外苑だが、再開発すべき地区は内外苑以外であろう

 JSCは非課税団体だろうが、民間権利者3者(特に明治神宮)の意図は、市街地再開発事業とすることで不動産の交換売買に関する税逃れにあるようだ。これはわたしの邪推だろうか、違法ではないが釈然としない。認可権者の東京都知事の判断によるしかない。
  この前代未聞の単純市街地再開発事業でも一般会計補助対象になるのだろうか?
 密集市街地再生とか被災地復興とかという都市再開発王道で苦労している事業と同じ扱いなのかしら?

 ところでランドスケープアーキテクトと建築家の意見は登場したが、都市計画家の意見はどうなのだろうか、未だに聞こえない。

 わたしはこれまでこの都市計画と再開発事業について散々書いてきたので、改めてここで繰り返さない。とにかくようやく事業の全体像が分かってきた。(20220720記)

参照:【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発騒動瓢論集
   コロナ大戦おろおろ日録
   
伊達の眼鏡ブログ
   
まちもりブログ


2022/02/13

1608【神宮外苑再開発長屋談義】東京都心部に都市公園ゼントリフィケイション時代が来たらしい

熊五郎:ご隠居、こんちわあ、生きてますね、はいこれ、一緒に飲みましょ。

ご隠居:おお、熊さん、まあおあがりよ、なになにワインかい、うれしいね、今どき一緒に飲んでくれるなんてこりゃ涙がこぼれるよ。

:全くね、こうもコロナ蟄居が続くと心が苦しくなる、これもコロナ病ですね、さあ、乾杯しましょ。

:うん、ありがとう、美味いねえ、ネットバーチャル談議ばかりやってると人間は頭が変になるね、こうやって飲みつつ話そうかね。


:もうコロナの話は飽きたから今日は違う話をしましょうよ。東京青山に明治神宮外苑って野球の神宮球場があるの知ってるでしょ。

:わたしは球場なんて見世物小屋のスポーツ嫌いだけど、それくらいは知ってる。

●明治神宮外苑で都市公園の大規模削除とは

:その神宮外苑全体と隣のラグビー場は都市計画公園なんですが、現在の野球場やラグビー場が古くなったので建て替えるために公園を大規模にやめて、ついでに超高層ビルも建ててるそうですよ。

:えッ、公園をやめるのかい、そりゃできないだろ、都市計画当局が許さないだろ。

:いやそれができるのですよ、つい先日のこと東京都都市計画がそれをOKしたのですよ、そして公園内の樹木が1000本も伐り倒されるんだそうです、石川幹子先生によるとね。

:そりゃ石川さんが激怒するだろうあ、まさか公園の中にビル建てるために公園やめるって、そりゃできないよ。できたとしても削減面積と同等以上の公園を近くに新設するのが常識、そうしないと住民が許さない。

:だから今日は昔の都市計画家のご隠居に聞きに来たんですよ、それでいいのかなって。

:ホントかい、ちょっとネットで調べるかな、ほーほー、そういうことか、公園削減都市計画変更案案を2月4日に東京都市計画審議会で承認してる、う~む、世の中が変わったなあ、もう昔の都市計画家はついていけない。

:ね、都市計画で樹木のことは書いてないけど、かなり広く公園面積を削除してるでしょ、だから木も伐るのかと。

:そうだねえ、昔も今も都市計画で決めた公園を減らすのは、よほどの理由じゃないとやらないものだが、神宮外苑のような広い公園にビル建てたいから一部の公園を減らしたなんて時代が変ったんだねえ、渋谷の宮下公園の有様と言い、フン、そうしたいなら公園でも道でも川でもつぶしてビル建てればいいでしょ、どんどんやりなさいよ、。

:おやおや、ご隠居は人間が丸くなったか、あ、違うか、もともとあの神宮外苑そのものを嫌いだから、どうでもいいのですね。

:うん、まあ、そんなところだな、見世物小屋だらけだし、あんな権威主義そのもの公園なんて、わたしは好かないね、あ、そうだ、樹木伐るならあの銀杏並木を伐りたおしてしまいなさいッ。


●秩父宮ラグビー場を公園から除外する仕掛け

:まあまあ、わたしの話も聞いてくださいよ。神宮外苑用地は全部が都市計画公園だけど、今回のビルを建てるあたりは外苑用地隣のラグビー場用地なんですよ。

:そこはたしか国有地だよね、国の機関のJSCが管理してるけどね、そこも都市計画公園指定してあるよ、おかしいね、結構広いけど、そこを公園から外したのかい。

:そうなんですよ、でそこに超高層ビルを建てるようですよ。そこでちょっと調べたんですよ、どうしてそんな芸当ができるのかね。

:ほお、熊さんも都市計画に興味持ってきたな、いいことだよ、で、分ったのかい。

、えへん、ご隠居に都市計画を教えますよ、それはね「公園まちづくり制度」ってのを東京都が作っていて、それに適合するなら公園を削ってもいいよとなるんですね。

:なんだよ、公園を削ってよいと堂々と行政が言うようでは、もう世も末だね、いや、こっちが時代遅れかな。

:でね、その制度適用の都市計画公園の条件は「未供用区域のままで50年以上未整備状態が続き、公園機能が発揮されていないし、建築制限等により市街地の更新が進まない」ところだって。

:ふうん、そうかい。都市計画だけ決めていつまでも事業実施しないでいる弊害を取り除こうという制度で、法律じゃないけど法の運用だね、そういう制度も必要だろうがね。

:外苑用地は公園として供用してるけど、ラグビー場は未供用区域だかららしいのです。でもね、それがどうもおかしい、現実は長期間ラグビー場であって、公園機能を十分に発揮しているし、市街地の更新が進んでない場所どころか、ラグビー場しか無いのだからもともと市街地でもないから、条件が合いませんよ。

:おお、そうだねえ、ラグビー場のところは、戦中までは女子学習院という学校だったけど、戦災で焼けて移転してその跡地にラグビー場を建てた。

:ラグビー場は外苑用地の公園内に建つ野球場と同じくスポーツ施設だから、公園に適する施設でしょ。今すぐ供用指定可能なのになぜ未供用だったのですか。

:そりゃ単に供用手続きを怠っていたからだろうね。

:あるいはラグビー場地主の文科省が、東京都の供用要請を拒否したのかもね。

:どっちにしても供用して当然だったところだが行政の不作為で未供用のままだった、そこをつかれて「まちづくり公園制度」を適用して、ラグビー場を公園から外してしまう都市計画提案がじもとから出てきて今回OKした、う~む、頭の良い奴がいたもんだねえ。この制度が無かったらできなかったね。

:ところがどうも気になるのは、この制度はこのラグビー場を公園から外すために、ここに宛てて作った制度のような気がするんですよ。

:なんだいそりゃ、。

:だってね公園まちづくり制度制定と、神宮外苑の最初の地区計画の都市計画決定とは同じ年にできているのです。つまりその時には既に今回の公園削除して再開発できるように仕組んでたような気がする。地区計画はその地区の権利者の提案ですが、提案の裏にはそんな取引があったのかもしれないと思わせます。

:う~む、ありうるかもね、違法じゃないけど裏口入学臭いね。でも事情通にでも聞かないと分らないね、それにしてもこれは国の機関のJSCが率先して公園を削除した、つまり政府が公園を減らしたんだよ、いっぽうの民間の明治神宮は減らしてないんだね、今どきはそういう世の中かい、まあ、わたしは世間から遅れてしまって、もうどーでもいいけどね

●過密でも市街地でもないのに市街地再開発事業とは

:またそう言う、しょうがないね、じゃあ次の質問ですよ。この再開発計画を発表したのは、三井不動産を代表として、JSC,明治神宮、伊藤忠の4者で、事業名称を(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業としているんですよ。これってどう思いますか。

:おお、それは都市再開発法によっる方法で事業を行うってことだね、ほお、公園を法定再開発するのは珍しいねえ、法が予想してないよ、そもそも再開発するほど過密じゃないのが公園だからね、すごいこと発明というかひねり出す奴がいるもんだ。

:そうでしょ、そこでどうして市街地再開発事業を行うのかを調べたら国交省のサイトに「市街地再開発事業の目的:都市再開発法に基づき、市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地の統合、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行うことにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用都市機能の更新を図る」と書いてあります。でも、この外苑地区再開発ではこれらのどれひとつにも当てはまらない、だって既に整備されている優良なる環境ですよ。

:おうおう、修復や建て替えは必要かもしれないが、いまさら市街地再開発事業事業なんて大げさにして大改造する必要はないな。都市再開発法の適用条件に合うのかなあ、都知事から認可されるのかなあ。再開発やるなら外苑前交差点北東の建て混んだ三角地こそとりこむべきなのにわざわざ除外して、やりやすいところだけやるとは筋が悪い。

:そうでしょ、それぞれ大きな土地を持っているのだから、それそれが建て直せばいいでしょ。なぜ市街地再開発事業って共同事業にするのでしょうか、いろいろ面倒な手続きがあるんでしょ、何かメリットあるんですか。

:この事業手法でやると国や都から補助金をもらえたり、不動産開発にかかわるいろいろな税の減免措置もあり、一般に行政的支援など受けられるメリットがある。

:みな大企業だしJSCは国の機関ですよ、補助金や税逃れ目当てに市街地再開発事業にするんですかねえ、みみっちい。

:いやまあ、その辺はまた別の意図もあるのかもしれないね、わからんなあ。


●実は国有地を民間に売り渡す事業であるとは

:あそうだ、ラグビー場と神宮球場を土地を入れ替えて建て替えるから、それに法的な裏付けある事業制度が必要なのかも。

:おお、そうかい、民有地と国有地の交換分合があるんだね、そのへんで法定再開発とする公的担保が求められるのかなあ、わからんなあ。

:ラグビー場の土地と明治神宮の土地を等価交換するのでしょうね。

:あ、そうだ、その入れ替えで国有地の一部をを神宮外苑に売り渡すのだねえ、そうかそうか、そういうことか、国民の財産だから、がっぽりと高く売って儲けてほしいものだね。

:なにを言ってるんですか、交換するって言ってますよ、国有地で儲けるなんてどうしてですか?

:いいかい、よくお聞きよ、今度の都市計画変更で今のラグビー場の土地は、公園から除外されて土地利用規制が緩和され容積率も上昇したから、土地価格も大きく上昇したはずだよ。そうでなくてももともと神宮球場の土地よりもラグビー場の地価は路線価で2倍半くらい高い、今回の都市計画変更でそれがもっと差がつくはずだよ。

:計画図を見ると、交換移転後のラグビー場用地の広さは、現在とあまり変わらないようですねど、いいのですか。

:計画図のように野球場とラグビー場の同じ面積で交換すると、地価が高いラグビー場が損することになる、だからラグビー場は土地価額で損しないように差額を金銭で受け取るね、つまり国有地の一部を明治神宮に売却することになるんだね。

:あ、そうか、もしも等価の土地面積で交換すると、ラグビー場用地が広くなりすぎて、野球場のほうは土地が狭くなって困りますね、なるほど。

:その差額で受け取る金、つまり土地の一部売却金をラグビ-場建設費にあてるのだろうね、だから国民としてはここで国有地を種にがっぽりと儲けてほしいというのだよ。

:こりゃいいね、つまり再開発利益を納税者の国民にしっかり還元してほしい、ハハ。

:でね、ここで市街地再開発事業がでてくるのだけど、事業の施行者は三井不動産という民間会社だよ、つまり国有地の売買の手続きをやるのは国じゃなくて、不動産屋なんだね。

:おお、JSCは手練れの不動産屋に手玉に取られる心配があるなあ、う~む、この前の国立競技場建設のときには少なくとも60億円を国民に損させた大ドジをやったけど、またドジやって大赤字を出すかな。

:まあ、市街地再開発事業は法定事業として、それなりに公正に事業が進む担保があるという面では、適切な事業手法選択と言えるかもしれないね。でもねえ、それは通常の売買じゃなくて権利変換という複雑な特殊な手法でやるのがこの事業の特徴だから、JSCはちゃんと理解できるのかなあ。考えようによっては、国有地売買手続きを市街地再開発事業というブラックボックスに入れて国民の目から見えなくしてしまう恐れもあるな。

:JSCは今回の仕事は、ラグビー場の建設事業だけじゃなくて、国有地の移転にともなう不動産事業もあるから、都市再開発法をしっかり勉強してほしいですね。

●神宮外苑再開発は猥雑な門前町づくり

:おい、熊さんや、ワインでいい気持ちになってきたぞ、もっと飲ませろ。

:なんだか目がすわってきたな、このあたりで本音を聞くかな、それにしても、ご隠居はこの神宮外苑地区の再開発の過程と結果の姿をどう見ますか。

:うん、もうどうでもいいよ。あんな明治王権国家丸出し戦争駆動装置の残影景観なんて、公園削除の毒を食らったからもう皿まで食らえばいいよ、並木も林も伐り倒して超高層ビルでも見世物小屋でも林立させて丸の内と日比谷に対抗するってどうだい、明治神宮は内苑だけに森があれば、外苑はもうどうでもいいよ。

:おや、酔っぱらいのたわごとかな、本気ですかい。

:そもそもだな、競技場やラグビー場も含めて、当初から神宮外苑ってのは神社の縁日の賑わいの場なんだな、昔はどこの神社でもお祭りの日は、境内に屋台や小屋掛けがたくさん登場して香具師が啖呵バイやってたり、怪しげな見世物があったり、駄菓子やおもちゃの店が並び、露店茶店が出て来たものだよ。参道の前の門前町には土産屋や宿屋があったりして、神社の外回りは本来は猥雑なもんだよ。

:そうそう、今でもその雰囲気は浅草にはありますけど、外苑ではないですよ。

:だからね、その屋台やサーカス小屋が一年中あるようになっちまったのが野球場や競技場やラグビー場だよ、現実としてはあの絵画館もそのひとつだね。

:サーカスや見世物じゃないでしょスポーツ施設ですよ、あ、そうか、今じゃあスポーツ競技場は見世物小屋ですか、そういえばそうだなあ。

:それが運動体育の施設であるのはどうしてかというと、近代日本が富国強兵国家として壮健なる青壮年を育てるのがここでの目的だったのだよ、元が練兵場という軍事施設だったしね、象徴的な事件は1943年の神宮競技場での学徒出陣壮行会だよ、外苑はそれを引きずってるいるんだな。

:大勢集まる参拝客ならぬ見物客には、昔の門前町のように土産物屋や宿屋もいる、だから再開発でホテルやら商業施設を建てる、つまり日本の歴史文化的には正しい方向なのですか、本当かなあ、でも公園がそれでいいのですか。

:公園と言ったってあそこは民間施設だよ、たまたま宗教法人だけど、野球場やテニス場の賃貸業やってるれっきとした民間業者だよ、布教活動じゃないから収益事業として税金も納めてる、後楽園と同じだよ。

:じゃあ、経営的にここらで再開発しなけりゃ困るって事情でもあるのかしら。

:そうだなあ、明治神宮にも伊藤忠にも三井不動産にもなにか事情があるんでしょ、ここで無理矢理公園再開発やらないとコロナで破産するとか、、ね。

:でもラグビー場は国の機関のJSC経営だから、民間事業者とは違うでしょ、普通に建て直せばいいでしょ。

:うん、そうなんだけどね、ここを取り込んで外苑と一緒に広く市街地再開発事業にすれば、不動産事業としてうまいことできるとの民間知恵者がいたんだろ、で、神社の縁日の日常化計画に持ち込んだね、あ、知ったかぶりで言ってるけど、もちろん実情ぜんぜん知らないよ、わたしは単に面白がって妄想してるだけだよ。そろそろ酔っぱらってきたな。

:でも、ご隠居、都市計画公園を減らす計画なんてことが、これを前例にこれから次々と起きてきますよ、いいんですか。

:もう眠いけど、今後の都市計画のためにいろいろ言いたいことあるし、都市公園についてもいろいろ思うことある、暇つぶしにしゃべるかね、もっとワインを飲ませろよ。

:意外に酒癖悪いね、じゃあ焼酎をどうぞ、では聞きましょうかね。

:では、さてさて、公園にもゼントリフィケイションの時代が来た、、フワア、スヤスヤ、ZZZ、、。

(2022/02/14記)


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 【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発・2020五輪運動会騒動瓢論集