2023/09/30

1706【外苑再開発長屋談議】見世物スポーツに興味ないタックスペイヤとしてはラグビー場に税金投入やめてよ

熊五郎:ご隠居、生きてますかあ。元気そうでよかった。

ご隠居:おや熊さんかい、久しぶりだねえ、うん、どうやらコロナから逃げおおせたようだね。ま、ビールでも飲もうよ。

:ありがてえ、では、乾杯っ、と。どうです、その後ボケは進みましたか。

:ごアイサツだね、うん、昔々仕事で都市計画やってたがね、その古い知識で現今の都市計画にいちゃもん付けるんだが面白いよ、これがボケ進行を少しは遅くしてるだろうよ。

:ハハ、他人が仕事でやる都市計画にケチ付けて、自分のボケ遅延策にするって、安あがりリハビリですねえ、で、今は何にケチ付けてるんですか。

:今というよりももう10年間もケチ付け続けているボケ対策良薬があるんだ、同じ都市計画なのにケチ種が次々と湧いてきてね、ボケてるヒマがない。

:そりゃ結構なことで、あ、分かった、それって神宮外苑再開発でしょ、森や並木が切り倒されるって騒がれてる。あんな洋風庭園に森なんてあったっけ?

:そうそう、オリンピックが来るってんで国立競技場の建て替え騒動があったろ、その2013年からだよ、もう10年もっ経つんだ、あのデカ過ぎ運動場ビルを建てるために都市計画変更をしたのはわかるが、それと関係ない外苑迄ひろげて変更した。

:10年も先のことをオリンピックと同時の様に錯覚させて、どさくさ紛れに都市計画変更に持ち込んだのですね。

:そこにいまの騒ぎの元がある。

:じゃあ開発構想を作ったのははそれより前でしょうから、10年以上もかけてなかなかの戦略ですねえ。そのころのご隠居のブログを読むと、今騒ぎになっている外苑再開発の骨格はもう決まっていたようで、それは当時の各種の公表資料を見れば、ご隠居にはわかったが一般には気づかれなかったようですね。

:世間が言うように今年になって初めて知ったなんてことはないね、昔から世間は都市計画に無関心なものなんだよ。わたしだって初めからよくわからなかったけど、沢山ブログ駄文を書いたのを読んでみると、まるで螺旋を描くように事実に近づいていれ、われながら面白い。


:都市計画で決めた道づくりや建物づくりが始まって、目に見える何かが起こってから騒ぎだすが、実はそれまでには法的手続きが終わっている。でも世間じゃあ、その手続きが秘密のうちに進んでいて、計画が公開されて意見を言う期間があっても、たったの2週間しかない、けしからん、と言ってますよ。

:そうだね、でもね、いきなり公開意見求むってのじゃなくて、それまでにも何度もその機会があるのだけどね、平素からネット公開されている都市計画情報を見るなんてしないものだよ、世間は何せ都市計画に無関心だから。

:ところでご隠居はこの前のブログに、外苑再開発は大赤字で540億円も国民負担だと、刺激的なタイトルで書いてますねえ、世間から大げさと怒られてませんか。

:そう、ちょっと赤新聞的で品がなかったね、怒られてはいないないけど、あの文章読んでもすぐには何か分からないだろうなあ、ちょっと都市計画プロ的なところもあるからね。

:その540億円も国民負担とはなんですか。

:外苑再開発をやるのは、民間の明治神宮、伊藤忠商事、三井不動産の3者と、国家機関の日本スポーツ振興センタ(JSC)だがね、民間事業者が儲けようと損しようと勝手にやってくれ、でもJSCには損しないどころか儲けてほしいと、タックスペイヤーとしては思うのは当然だろ。

:そうそう、それなのに540億円も新規負担するのが、大赤字というのですね。ラグビー場建ててタダとか、儲かるってあるんですか。

:そこが問題だ。そもそも一般的な市街地再開発事業で共同事業するなら、地権者はその土地を活用して新規支出無しで必要な建物が建つって仕組みなんだよ。だからラグビー場を市街地再開発事業で建てるというものだから、これはてっきり税金投入はないものと思っていたんだよ。だからこそめんどくさい市街地再開発事業にJSCは乗ったのだろうと思ていたんだよ。

この話のもとになる外苑市街地再開発事業の諸元
左の表の右上から4段目にある数字約54,359に注意

:でもね、そんな金出さないでラグビー場が建つなんて、ありうるんですか?

:そこが市街地再開発事業だよ、他の地権者と共同してしかも今回の様に非地権者の三井不動産にも参加させて事業をやるんだがね、細かい手法はめんどうだから書かないが、要するに三井とか伊藤忠とか明治神宮という金持ちに金をださせるんだよ、それでラグビー場を建てる。

:JSCが他の民間事業者たちを強請るとか、寄付させるとか?

:まさかそんなことはしないよ、JSCの土地の一部を他の民間事業者に売ることにより、建設費を調達して建てるとの言い方が分かりやすいかな。それが都市再開発法による市街地再開発事業の仕組みなのだよ。ただでラグビー場が建つわけがない。

:では今回の再開発でも540億円国民負担で、これが赤字だとご隠居がいうのは、そのJSCの土地の一部を売ったのだけでは建築費に足りなかったのですか。

:そうらしいね、土地売った金だけではラグビー場全部76700㎡のうち52880㎡分が買うには足りなくて、540億円ほど税金から新規に投入する必要があるらしい。

:へえー、そうですか、ならばもっと土地を多く売ればいいでしょ。

:そうすると計画するラグビー場が土地に入らなくなるのだろうね。ラグビー場を狭くすればいいのかもな?

:競技の都合でそうもいかないのでしょうね。

:とにかくね、ラグビー場が新規投入税金が無くても建つように、事業の仕組みを考えてほしい。例えばラグビー場の土地をかなり高く評価するとかしてね、全員同意型市街地再開発事業では土地評価も同意すれば自由に決められるからね、540億円分を民間事業者から拠出してほしいね。

:そういえば、この外苑は全国各地からの寄付金と労力提供で国営神社を作ったそうですから、今度は国営ラグビー場をそうしてもらいましょうか。

:おおそうだね、昔、国営神社の一部として外苑を作る時に、全国の行政システムをフルに使って、献金とか奉仕の美名でヒト・モノ・カネを徴収して作ったんだね。それは当時の植民地も含めて日本各地への国家神道の布教と明治王権の普及の立派な活動だったろう。

:じゃあ、今回は国営ラグビー場を再開発事業の民間企業からの寄付と奉仕で作ることにしましょうか。それが今回の再開発に乗った民間企業のお役目と考えよう、なんてね。

:わたしは見世物スポーツを大嫌いでTVさえ見ないから、国営ラグビー場なんてどうでもいいんだよ。そもそもオリンピックでよく分かったように、見世物スポーツは完全に商業化されているだろ、なんで国営施設をつくる必要があるんだよ、戦前日本かよ。

:まあまあ、話がが横にそれますよ。

:だからさ、新規に税金負担がないならまあいいさ、JSCが市街地再開発事業に乗ったのはそれが無いからだろうと、わたしはてっきり思い込んでいたんだよ、それが540億円投入とはねえ。

:ではJSCが土地をもっと高く売ればいいのですね。

:そうそう、もしもラグビー場が動かなければ野球場は建たないのだから、そこのところを高く評価しろとね。ラグビー場は今の位置で困らない、移転させたいなら金か土地をもっとよこせってね。

:そうですね、ゴネるのですね、金ないから再開発に乗るのや~めたっ、なんてね。

:まだあるよ、そもそもラグビー場が元凶となる都市計画公園の一部廃止ができたからこそ、明治神宮の土地に三井の高層ビルを建てることができる、この事業の最大貢献者だ。

:あ、そうですね、ラグビー場が公園未共用なので一部廃止できた、そこに三井はビルを建てる、これがこの再開発のキモですもんね。JSCは国の機関でありながら、都市の公園を減少させる原因者・元凶になるとは実にけしからんと非難され、大いに評判を落としている上に、また税金投入するなんて、ますます評判落とすばかりだ。これもゴネ種にしますかね。

:ごねると言えば、ラグビー場が移転先で建国記念の森を破壊すると市民から非難されてている、気の毒にね、そんな森の土地なんか要らないから、もう少し南に敷地を拡げてよこせとごねりゃいいのに、野球場が頑張ってできないんだろうね。

:へえ、建国記念の森なんて、あそこで神武即位があったんですか、知らなかったなあ、そうですか、ラグビー場は踏んだり蹴ったりで、再開発に参加しなきゃよかったかも。

:他の3者から貢献への見返りと非難への補償を受けるべきだよね、それにはラグビー場の保留床処分金の540億円を伊藤忠・三井・明治神宮に乗せ換えて、ラグビー場全部を権利床にすればよいのだ、そういう権利変換に修正してもらいなさい、金持ちばかりの全員同意意型再開だからケンカせずにできるだろ。JSCの再開発コンサルを受託しているらしいURはがんばれ。

:だんだん踏み込みますねえ、ご隠居の与太話は大丈夫ですかあ、まあ、JSCは再開発にうまうまと乗せられたドジなのか、それとも乗らなきゃならない何か政治的な事情があるのか、とにかくタックスペイヤーにとっては、まことに不採算な市街地再開発事業であるってことですな。

:あ、そうだ、どうだろ、また国立競技場みたいに、国立ラグビー場も「白紙撤回」してもらっては、。

:ハハハ、そうきたか、でもムリヤリ白紙のアベチャンがいなくなったしなあ、キシダさんはオリコウサンみたいだからこんなハシタガネって、やらないでしょ。

:そうかもな、まあ、わたしとしてはまだまだ揉めて、ボケ進行遅延特効薬になってほしい。

:え~、その薬代として540億円いただきます。

(2023/09/30記、2023/10/01補綴)

●最近の外苑再開発瓢論4部作(伊達の眼鏡ブログ)

2023/10/05・ラグビー場はPFI入札ダンピングで新規国費投入抑制か

2023/10/02・国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

2023/09/30・見世物スポーツのためにラグビー場に多額税金投入やめよ

2023/09/25・意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

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【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集

2023/09/25

1705【神宮外苑再開発は不採算事業】意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

●外苑再開発は不採算事業

 いま反対運動であれこれ取りざたされる東京の明治神宮外苑再開発事業について、事業採算の基本となる資料の一部を知ったので、忘れないうちにコメントを書く。
 2023年9月24日に岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャーがあった。岩見氏をわたしは知らないが、昨今の都市開発事業(たとえば土地区画整理事業や市街地再開発事業)について批判的な立場にあるらしい。神宮再開発について初めて登場した市街地再開発事業に関する専門家と言ってよいだろう。そのレクチャー内容についてわたしは論評しない。

 そのレクチャー資料の一部に事業資金計画等があり、この事業は市街地再開発事業一般としては権利者にとって大赤字の採算割れ事業であることを知った。ここで言う赤字とは、市街地再開発事業の中で権利者の収支が完結しないで、権利者たちが土地のほかに資金投入をして長期回収する必要があるという意味である。零細な権利者にはできない事業である。

 ここですこしだけ基本を解説する。都市再開発法の適用による市街地再開発事業の一般的な方法は、地権者たちが土地建物を持ち寄って、共同して新たなビルを建てる。そのうちの権利者たちの再開発前の資産に相当する床(権利床)部分を受け取り、その他の床(保留床)を第3者に売却する。この保留床売却金を建設事業費に充てることで、権利者は権利床を無償で取得することができる。(後日補足:なお、ここで無償と書いたが、実は事業の中で金銭支出しないで取得する意味であり、実際には保留床に対応する土地の売却金を権利床取得に充てる)

 これが市街地再開発事業の仕組みの基本であり、その建築規模が巨大になればなるほど保留床売却収入が大きくなり、事業採算性がよくなる。これが市街地再開発事業で建設する建築物がが巨大になる原因である。逆に言えば、だから事業に取り掛かる前に、事業区域の都市計画を変更して事業用地の容積率を上昇させておくのである。外苑再開発では再開発等促進区の地区計画がそれである。

 もちろん事業はそれぞれ事情が異なるから、この基本に忠実である必要はない。低層建築でも、赤字でも、権利者や事業関係者それぞれの判断である。金持ち権利者ならば保留床を他人に売らないで自分が買い取る投資をするだろうし、零細権利者ならば保留床を他へ売却できないならば事業を見合わせるだろう。

●事業費の7割は権利者たちの持ち出し

 では神宮外苑地区第1種個人施行市街地再開発事業(以後、「外苑再開発事業」という)の事業採算はどうか。
 結論から言えば、権利者たちにとっては採算割れが著しい大赤字事業である。何しろ権利者たちの持ち出しがものすごい。普通ならば事業をしないだろうが、金持ちばかりのメンバーだからできるのだろう。

この記事は岩見レク資料の内のここに引用した3件の表をもとに書いた

 全事業費は約3千5百億円(349,053,566千円)である。その全部を保留床処分金で賄うのだが、実はそのうちの7割近くは権利者たちが自己負担しており、非地権者で参加してきた三井不動産が負担するのは3割余である。つまり権利者たち(JSC、明治神宮、伊藤忠等)が、事業費の7割を持ち出しで行うのである。

 金持ちの民間事業者がどのような採算割れをする事業をやってもわたしには関係ないから、それらについては金銭的にはどうぞご勝手にというばかりである。
 せめて思うのは、通常の市街地再開発事業では国と都から多額の補助金が入ってくるものだが、この金持ち事業ではそれが一切ないのが、タックスペイヤーとしては幸いである。それは非都市計画の市街地再開発事業だからだが、それを選んだ権利者たちの金持ちぶりを表している。

ラグビー場建設にも新規巨額国費投入

 しかしJSCは文科省所管の特殊法人である。つまり国家機関であり、税金で運営している。わたしも納税者の端くれとしてひとこと言う権利があるので、その事業採算性についてコメントする。

 そのラグビー場の建設費用であるが、市街地再開発事業だから権利床として取得するので新たな支出はないものと思っていた。つまり第3者等床(多分、三井不動産と伊藤忠)に売却する保留処分金収入でラグビー場は建ち、新たな税金からの支出はないものと思っていた。最初に解説したように、それが市街地再開発事業の常識である。

 ところが岩見さんのレクチャーで見た資料によれば、ラグビー場の建設のためにJSCは、約540億円の支出をするのである。え、なんだこれは?、そもそもこのラグビー場建設を面倒な市街地再開発事業に仕立てるのは、保留床処分金を充てることで新たな支出を回避するためであると思っていたが、違ったか?、しないどころか540億円も支出するのである。

 ついでに書けば、明治神宮は新たに約240億円の支出(投資か)、伊藤忠は約1670億円の支出(投資)である。第3者の保留床取得者として登場する三井不動産の投資支出は約1070億円である。これら民間権利者がいくら投資支出しようとどうぞご自由にである。明治神宮は意外に金持ちなんだなあ、事業後の運営や三井からの地代で回収するのであろう。

 だが国有財産であるラグビー場については、約540億円も支出するのは合点がいかない。タックスペイヤーとしては、それだけの金を出すなら、現ラグビー場の改修費用の方が安いだろうに、とも思う。なんにしてもこの建て替えで約540億円の国民負担を必要とする。

●ラグビー場と野球場の土地交換について

 更に問題があることを見つけた。JSCはラグビー場を再開発前の位置から神宮第2球場の位置に移転して建てる。つまり外苑と土地の交換をすることになる。事業の仕組みとしては交換と言わないで権利変換というが、実は交換と同じである。当然のことに等価交換である。

 そしてこのレクチャーで新たに知った資料の中に、再開発前と後のそれぞれの土地面積があった。現ラグビー場の土地面積は41100㎡であるが、神宮第2球場がある位置に移ると43480㎡となり、事業後は2380㎡増加している。

 ところで事業前つまり現在のラグビー場の土地価格と、事業後の土地つまり現野球場の土地の価格を比べてみよう。正確には専門家による鑑定が必要だが、ここでは相続税路線価を比べてみる(ネットで知ることができる)。

 路線価を見ると、ラグビー場の前の道(外苑西通り)は2010千円/㎡である。一方、野球場の前は1490千円/㎡(国立競技場との間の道では960千円/㎡)である。これだけで土地総額は分からないが、両方の土地の単価の比は想像できる。現ラグビー場の土地は現野球場の土地よりも6割ほど高いのである。(当初3割と書いたが6割に修正した20231002、下図参照)


 ということは、現ラグビー場の土地が野球場の場所に移れば、いまよりも倍以上の広さになるはずである。だがこのレクチャーでの資料を見るとわずかに6パーセント弱の面積増加に過ぎない。とすればその差分の土地価額は建物建設費に変換(権利床)されるのであろうが、それでも建設費には届かないので約540億円の支出をすることになる(のであろう)。

 一方でに入れ替わって建つ神宮球場の移転先の土地(現ラグビー場の位置)は3割ほど面積が減るはずだが、そうはなっていない。減らすと野球場が入らないからそうはいかないのだろう。土地全体の広さは変わりようはないのだから、結果的には野球場(明治神宮)がラグビー場の土地(国有地)を買ったことになり、そのカネはラグビー場の建設費の一部になるのだろう。このような権利変換だろうが、要するに結果的にJSCは土地の一部を売ってラグビー場の建設費の一部に充てるのだ。

 この概略推測計算がどれほど正しいか自信ないが、どうもすっきりしない。権利変換計画書を見れば明確にわかるが、国有地処分にかかることだからいずれ公表するのだろう。

 高額な土地と安価な土地を交換するのだから、広すぎる土地の一部を売却すれば(一部転出補償金)、国民負担はないどころかうまくすればもうかるかもしれないとの、タックスぺーやーとしての考えは甘いのか
 市街地再開発事業だから権利者負担はないものと思いこんでいたのが間違い、ということになる。なぜ国民負担が必要な再開発なのか、もっと国民にとって採算をよくしてはどうか。

●JSCはもっとがんばれ

 JSCは権利交渉でもっと頑張ってもらい。自分が使う建築を自分で買い取り、つまり保留床買取をしなくてもよい方法にしなさいよ。せっかく市街地再開発事業に乗ったのだから常識的に行きましょうよ。
 全員同意型事業なのだから、権利変換で権利証として全取得できるように、三井不動産や明治神宮と談判交渉してほしい。このラグビー場建設事業を委託されているらしいUR都市機構には、再開発プロとしてもっとガンバレと言いたい。

 この再開発ができるようにした、つまり公園廃止をした原因者(元凶)であるJSCは、事業者の中で一番の貢献者であるのだから、もっと強い立場で権利交渉してはどうか。下世話に言えばゴネルのである、町場の再開発によくあるようにね、勿論冗談。
 JSCはこんな赤字再開発事業に乗った(乗せられた)のが間違いだったかもなあ、今のところで建て替えるか修復する方がよいのかもなあ。

 以上は、初めて見た基本資料だけで、年取った今も多少は覚えているプロ的な知識で考えたことであり、詳細なことを知らないヒマな老人のピンボケヒマツブシたわごとである。
 まだしばらくボケ進行遅延策に外苑再開発を利用することができそうで、うれしい。

(20230925記)

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2023/09/11

1704 【組踊を観る】横浜能楽堂で4年ぶりに琉球芸能を見て妙なことを連想

 昨023年9月10日の午後、横浜能楽堂で沖縄の組踊などを観た。このまえ組踊を見たのは2019年(「執心鐘入」と「道成寺」https://datey.blogspot.com/2019/02/1185.html)あったから4年ぶりである。野の能楽堂に来たのは6月の能「二人静」以来である。コロナが引いてようやく能楽堂も満員のようであった。


 わたしが芸能を見るのは能との比較が目的だから組踊「万歳敵討」(ばんざいてぃちうち)さえ見ればよいのだが、その他に踊りや独唱もあった。初めて聴いた独唱は「二揚仲風節」(にあぎなかふうぶし)、歌い手は西江喜春というかなりの高齢者であったが、高音を使い分けて上手であったと思うがよく分からない。しかしちょっと能楽堂の屋根から異界のものが下りてくる気配を感じた。

組踊「万歳敵討」

 「万歳敵討」は仇討ちものだが、プログラムに概要の筋が書いてあるものの、言葉をほとんど理解できなくて、字幕表示を欲しかった。能からの翻案ものならば、元の能を知っていれば類推できるのだが、それもないと会話場面の前場はお手上げである。

 組踊の演技をどう観るのかもわからないが、とくに勉強する気にもならない。だが今回あらためて思ったのは、若い女や若い男の装束と顔の化粧である。若い女はともかくとしても、若い男(若衆)の女に近い衣装と顔化粧の、あまりに美しすぎることである。男と女の区別がほとんどつかない。なお、舞台上に居る人たちは、地謡(歌と音楽担当)には女性がいるが、役者はすべて男性である。


 特に思ったのは、若衆の化粧の特別の美しさであ、あの化粧の目で舞台上から見つめられると、女性はボ~ッとするかも、いや男もそうかももしれない、なんて思っていて、突然に連想したのは今世間で妙に話題となっているジャニーズとかいう芸能タレント事務所の前社長(男性、故人)が、実はお抱え芸人少年専門の強姦魔であった事件である。

若衆徳牛節  若衆の扮装

 要するに近世までは普通であった男色行為が、現代では不同意性行為として犯罪となった(はずの)事件である。芸能界では東西を限らずこの類のことがしょっちゅうある(あった)らしいが、わたしはTV観ず、週刊誌も読まず、芸もゲイも知らぬことばかり。

 それで、もしかしたら組踊の役者たちもかつては、琉球貴人たちの男色の相手であったのかもしれないと、能の世阿弥のことに思い至り、ふと連想が働いた。
 時代は14世紀、時の将軍・足利義満(弱冠16歳)があるとき能を観た時に演じた夜叉若(弱冠11歳)という美少年を気に入り、すぐさま側において寵童とした。これが後の世阿弥である。

 そして世阿弥は時の独裁的権力者の庇護のもとにその天才を発揮して、いまにつづく能楽を大成させたのであった。他の能役者が一般的に貴人の男色の対象者であったどうか知らない。それが時代が近世になって武家の社会での衆道であり、町人の社会では歌舞伎役者や陰間がそうであったようだ。

 そしし話が琉球沖縄に戻れば、その王府における芸能であった組踊は、近世初めに朝貢していた明国からの使者たちを接待するために日本の能を参考にして創作したのだから、その芸能者は男色相手であったかもしれない。これは類推である。
 薩摩の侵攻によって支配を受けるようになった近世からは、薩摩からの支配者の接待があるとすれば、有名な薩摩の男色が持ち込まれたかもしれない。これも類推に過ぎない。

 留意することは、日本では中世・近世において貴族支配階級においても町人階級でも男色は普通のことであったらしいのである。
 中世の説話集「今昔物語」の諸所に男色の話が出てきて、これはなんだと思ったことがある。近世の「東海道中膝栗毛」にも弥次喜多コンビが実は男色コンビであることが出だしあたりに書いてあるの発見して驚いたこともある。

 近世以前の日本では性に対する考えが、近代以後とは違っていたらしい。多分、近代になって外国から入ってきたキリスト教文化が男色を排除したのだろうか。
 三島由紀夫や釈超空のそれを、わたしでも知るように語られるのはこの30年くらいの内か。

 少年強姦事件の社長は、死ぬまでそれが犯罪とは思っていなかっただろう。どんな天才芸能者のを育てたのかしらないが、たぶん、現代の足利義満のつもりだったのだろう。
 時代のもたらす人権と性に関する文化の変化がそれを犯罪に仕立てたが、その時は肝心の当人は死んでいて、これはある文化過渡期の矛盾現象なのだろうか。

 それにしても能楽堂の舞台に現れた美少年(若衆=元服前))・美青年(二才=15~25歳男子)の化粧した舞台顔は、どれも同じように見えるのだが面ではなくて本物の顔だからそれなりに個性がある。能では能面があるから、そうはならない。
 一方、わたしはTV見ないから事件被害者美少年たちを一人も知らないが、たまに新聞の広告面に美少年芸人集団公演とかで全員の並ぶ寫眞が登場するので、彼らなのだろう。
 それがどれもこれも同じ髪形と目付きをしていて、なるほどこれが今流行りの顔なのか、そうか、見ようによれば美少女と紙一重の感、フムフム、これが現代の人気男の顔なのか、へえ~。

ネットで拾った芸人グループ写真

 ついでに地球上世界のLGBTXへの容認度合いの地図がったのでのせておく。概してイスラム世界が不寛容らしい。
性的指向に関する世界地図(東京新聞20230910)

 話が組踊と関係ない方向になってしまった。(20230910記)

ーーーーーーーーー資料ーーーーーーーーー

●開館25年謝恩 横浜能楽堂「中締め」特別公演
第2回「琉球芸能600年」 2023年9月9日午後一時開演

【第1部】
王府おもろ「あおりやへが節」「しよりゑと節」  安仁屋眞昭

若衆踊「若衆特牛節」 佐喜眞一輝 知花令磨

二才踊「麾」 田口博章

組踊「万歳敵討」 謝名の子:東江裕吉、慶雲:新垣悟、高平良御鎖:川満香多、
 高平良妻:佐辺良和、高平良娘:伊波心、列女1:佐喜眞一輝、列女2:髙井賢太郎
 供1:金城真次、供2:上原崇弘
 道行人:嘉手苅林一、 きやうちやこ持:下地心一郎

独唱「二揚仲風節」 西江喜春

女踊「瓦屋節」 田口博章  

歌三線:西江喜春

地謡
歌三線:仲嶺伸吾、照喜名朝國、仲嶺良盛 
箏:名嘉ヨシ子
笛:大湾清之 
胡弓:森田夏子 
太鼓:比嘉聰

ーーーーーーーーーーーー

●これまでの組踊鑑賞記録(まちもり散人著)

怖く哀し女ストーカー「執心鐘入」と能「道成寺」2019/02/10
琉球古典芸能の組踊をみて現代の沖縄問題考える2015/01/19
横浜能楽堂で琉球のゆったり時間を過ごすぜいたく2011/06

●関連「趣味の能楽等鑑賞記録」(まちもり散人著)

●まちもり散人ブログ 「伊達の眼鏡」 「まちもり通信


2023/09/01

1703【百年目の日に想う】次の巨大地震は巨大津波に加えて巨大核毒を伴って現れるはず

 昨日、久しぶりに映画を見てきた。「キャメラをもって男たちー関東大震災を撮るー」と題して、撮影者に焦点を当てた映画であった。その道の人たちには面白そうだが、被害の様相を見たいと思って行った私には生煮えであった。そのせいもあり、明日は震災中に起きた朝鮮人虐殺「福田村事件」を見に行ってこようと思う。 

 ●今日は関東大震災百年目

 今日2023年9月1日は、ちょうど百年前の今日1923年9月1日の昼、神奈川県を震源とする巨大地震が発生した日である。「関東大震災百年」とて特別なイベントがあちこちであるようだ。

 その発生ゆえに多くの人間が死んだからとて、その日から地球が太陽を百周回したとて、生物的にあるいは物理的には何の意味もあるまい。
 だが文化を持つ人間の側では、覚えやすい日に意味づけをする。初七日とか誕生日とかも同じことらしい。多くの人間が死んだことがなんと言ってもその日を100年間とかの節目に思い出すことになる。「関東大震災」で死んだ人間は約10万5000人だそうである。

 ではその「関東大震災」なるものは、地球上の人間のどれほどに影響を与えたのか。地球全体の人類から言えばそれによって影響の度合いはどの程度か。
 その頃の地球人口は約20億人だったから、105千人の死は誤差範囲である。一方、日本人口は約5800万人だから0.18%となる。このように大局的な数字で見るのは意味がなさそうだ。つまり、人間の側が思うほどには地球の側には大したことではなさそうだ。

●近現代日本巨大震災の比較

 では人間側の問題として見ることにして、近現代の日本での大地震による被害を比べてみよう。この表を見て、死者数と被害額(GDP比、GNP比)では、関東大震災がダントツにもの凄い事件であったと分る。

 こうやって比べると記憶に新しい東日本大震災被害額が、意外にランクが低いものだと不思議である。被災区域の広さでは多分ダントツに広かったであろうが、大都市を含まないとこのように評価されるのかと、興味深い。

 ということは、今話題になる次の関東大震災は、この100年で東京一極集中より富が集中しているから、これまでと比較にならない巨額の被害になるだろう。
 その一方で100年前の関東大震災よりも死者は少なく見積もられているのは、100年前と比べて都市人口は増えたが、耐震耐火建築が多くを占めているということなのだろう。

●震災とは地震+津波+核毒

 ただし、ひとつだけこれまでの大震災とは決定的に違うことが起きそうなのは、核問題である。12年前の福島原発事故が今も国際的な問題を引き起こしているように、次の地震でどこかでも同様なこと、あるいはそれ以上のことが起きると、復興は実に複雑なことになる。

 巨大地震が振動による被害だけでなく、巨大津波を伴う水害を引き起すが、これに加えてもうひとつの引き起こす巨大災害に核毒拡散があることをわれわれは知った。
 振動や津波被災は国内で済むが、核毒拡散は海外にも広がるし、その被害発生時間が一時的なものではなくて、人間の生命を超える時間を要することに、われわれは対処できるのだろうか。

 現に最近になって起きた国際問題は、フクイチの核毒汚染処理水の海洋放出に対して、大陸やオセアニアの諸国が懸念や反対を示していることである。とくにチャイナは日本の海産物輸入禁止に至って、経済問題から外交問題へとことは広がりつつある。

 ということは、日本国内時だけじゃなくて、大陸や半島諸国にある核施設において巨大震災が起きると、日本が被災国になる恐れが十分ありうる時代が来ているということだ。
 次の巨大地震でもこの新たな核毒問題が起きることを前提に考えなければならない。さて、それを考えて対策があるのだろうか。これはもうお手上げのような気がしている。

 おもえば100年前の関東大震災も、28年前の阪神大震災も、12年前の東日本大震災もその時は絶望的な被害だったが、なんとか復興しているのだから、人間は偉いものである。
 だから、つぎの関東大震災が来ても何とかなるのだろうと思う、というか、そう思うしかないのである。ただし、その時はこのわたしはもうこの世にいないはずである、というか、そう思いたいのである。            (20230901記)

参照:地震津波核毒おろおろ日録