2009/03/31

114【怪しいハイテク】電子レンジで蓋つき陶磁器の中のものまで温まる謎

 エレクトロニクスに弱いといっても、電子レンジくらいは使える。
 パンを焼いて朝のトースト、冷や飯を暖め、冷凍食品を解凍するくらいなことは20年以上やっている。

 数年前のこと、わたしの勤め先の協会のオフィスでパーティーをやることになり、女性職員が陶磁器を使って電子レンジで簡単な料理をしているのを見てびっくりした。陶磁器で蓋をしたままにレンジに入れているのだ。
 え、それじゃあ温まらないんじゃないのって言うと、怪訝な顔、だって電気は陶磁器は通らないんだもんと言うと、そんなことはない、ちゃんと料理できますよって、笑われてしまった。

 ふ~ん、そうなのかあ、それまでは陶磁器は電気の絶縁体だから、陶磁器の容器に入れて暖めるときは、蓋をしたら電子が通らないからダメなもんだとばかり思っていた。
 金属なら電気を通すから、アルミ鍋なら蓋をしてもよいのだろうと、漠然と思っていたが、あいにく金属の皿などは使っていないから電子レンジにいれたことはなかった。

 でも不思議である。
 昨日のこと、エンジニアの友人に、どうして蓋をした陶磁器でも中のものが暖まるのかと聞いたら、怪訝な顔をされた。
 これこれこうと、わが電気知識を披露すると、またもや笑われてしまった。
 きけば、電子レンジってのは、わたしが想像していたように電子を発射して食品のなかの水分を刺激して暖める装置ではないそうだ。

 あれはある波長の電磁波を発射する装置であって、その波長だと水の波長となんだか仲良くなって(その原理は聞いても分からない)発熱するのだそうである。で、その電波は陶磁器を通るのだそうだ。
 ふ~ん、要するに無線送信発熱器だな。となると、金属鍋に入れてチンしようたって、鉄の板は電波は通らないから、だめなんだな。

 そうなのかあ、なんだよ、それじゃあ電子レンジじゃなくて、電波レンジだぞ、そう言い替えなさいよ。
 もっとも、こっちはいまだに電子と電波の違いもわかってはいないのだ、え~と、電子は粉で電波は水みたいなものかしら、。

2009/03/27

113【世相戯評】自動車運転に関しては老人ボケ度を医者じゃなくを警察が判定するのかい

「認知機能検査は〈1〉年月日や曜日、時間を答える「時間の見当識」、〈2〉イラストを覚えた後、ヒントを見ながら思い出す「手がかり再生」、〈3〉時計の文字盤を描く「時計描画」―の3種類」
 これは今年6月1日から75歳以上で運転免許更新を希望する者に義務づけする「認知機能検査」だそうだ。
 要するに「ボケ度検査」である。
 ボケ度を警察が検査する時代になったのだ、コワイ。

 年寄りが世の中にイチャモンつけていると、「認知機能検査をしていただきます」って警察官がやって来たりしてね。
 でも、運転免許に関係ないけど、わたしも検査してみたいような気もする。だれか「自前認知機能検査ゲーム」ってのを売り出せば儲かるような、。

 年寄りが集まって、これでボケ度を競うのだ。歳に似合わずボケ度が高いなあとか、年代別ボケ度チャンピオン戦とか、やってみたいなあ、こわいなあ。
 ボケているヤツは75歳以上ばかりじゃないぞ、それ以下でも変な奴はいるから、どうせなら全員に義務付けてはどうか。

 自動車事故に高齢者が多くなったというのだが、そりゃそうだろう、高齢社会だから運転する人数のうちに占める高齢者が増えるのは統計的に当たり前である。
 問題は、超高齢者でも自動車運転しないと生活できないような、現代の生活の場にあるのだ。それを是正する政策をやらないと、いくらボケ度検査しても運転をやめられないだろう、だって生きていけないのだから。

 ところで最近、身元確認で「免許証」を見せろと言われることが多い。おお、持っているとも、一級建築士と技術士の免許証を見せてやろうか、、。

2009/03/25

112【世相戯評】新聞の野球の記事がなんだか変である

 プロスポーツに興味がない。野球は小学生の頃、阪神(藤村とか土井垣とかいたなあ)ファンだったことがあるくらいでとっくに卒業した。
 日本国代表(なんだろうなあ)の野球チームが韓国代表のチームと試合して勝ったと、今日の朝日新聞の1面と社会面にある。

 5回試合して日3勝韓2勝だったとかで、いつも見ないスポーツ欄をみたら、韓チームとばかりじゃなくてアメリカやキューバのチームともやっているのだ。 日韓野球試合だけではないのか。
 よく分からないのだが、記事の前後の様子では、どうも韓チームとなにか因縁があるらしい。北京オリンピックでは韓チームが勝ったらしく、こんどはその復讐のようなものなのか。

 まあ、スポーツだからよいけど、どこか奇妙な加熱した様子も読み取れる。そのはっきりと読み取れない書きかたに、なにか裏があるのだろうか。それともわたしだけが知らないスポーツ界の常識があるのだろうか。
 記事が何か変なのは、韓チームのことはほとんど書いてなくて、日本チームの活躍ばかり書いてあることだ。相手が居てこそ試合だろうに。
 韓チーム選手の活躍とか、社会面の巷の話もソウルではどうなのか書いてもよさそうなものだろう。

 これって、かつての大本営発表そっくりである。なんだか気味が悪い。いまちょうど必要あって、戦時中のことを勉強しているのだ。
 スポーツに国旗が登場するのも、気味が悪い。日本国旗が翻る観客席の写真があるし、記事では韓国チームが勝ったときには、韓国旗がグランドに立ったとか。
 オリンピックでも、いつだったかめったに見ないTV中継を見ていたら、マラソンでトップ選手が国旗をまとってグランドを回った。
 オリンピックは個人をたたえるものだろうに、国旗と国歌が登場するのも解せない。

 そういえば、高校野球の開会式に、君が代を歌うのだそうだ(たまたま放送に故障があったことが社会面記事にあって知った)。
 なぜ? 大相撲で歌うからか、あれも外国籍力士がこれだけ多いのに、ヘンである。
 スポーツが戦いであるだけに、個人の技を競うことに偏狭なナショナリズムを加担させるのはかなり危険な感じもするが、一方では代理戦争として本物戦争を回避しているのだろうかとも思う。

 プロもしくはそれに近いスポーツに無関心、というよりも嫌いなのは、そのあたりに原因がある。
 イチローなる選手が活躍したとあるが、おなじ紙面にこちらのオザワイチロー選手は、秘書が起訴されて、あの仏頂面でべそをかいているのが、おかしい。
 野球のイチローはなんという姓かしら、野茂イチローってか?

2009/03/22

111【各地の風景】京都風景あげあしとり:貴船道、岩倉圓通寺、智積院

 関東のこちらに比べると、京都はさすがに景観政策が行き届いていると思う。
 特に屋外広告物は、そのときは気がつかないが、こちらに戻ってきてから、ああ、そういえば京都ではこんな看板類をみなかったなあと気がついて、悔しい。
 そのままでは癪だから、いくつか京都風景あげあしとりをすることにした。

 貴船への道は水の流れ、木立ち、街並みに風情があるのだが、突然に看板だらけのところに出くわした。
 なぜここだけにこれほども集まって立っているのだろうか。案内図、工事看板、交通安全表示など、どれも公共的な看板ばかりで、民間の商業的なものはない。不思議な風景であった。

 岩倉の円通寺は、なるほど庭は風雅であるが、その庭の外にまわって円通寺を臨む所に来ると、あれまあ、こちらは安っぽい景色なんですねえ。参考→怨念の景観帝国

 名刹智積院には、智積院会館というコンクリートの建物が境内にある。京都の建築家増田友也の設計だったように記憶しているが、いかにも"コルビジュエのシャンデガール庁舎をコピーしました”ってデザインであるのが時代を反映している。
 なんでここにインドなんだよ、ああそうか、仏教伝来の地だからか。
 これがどうも上半身と下半身がチグハグのように見える。おお、下のほうにいかにも和風の瓦屋根の下屋が増築されているのだった、う~む。



 参考→怨念の景観帝国
 →104この世とあの世は同じ景観
 →100京都の街並み本物偽物? 
 →099能幻想の清水寺

2009/03/21

110【くたばれ乗用車】高速道路休日1000円のバカ

 自動車運転しないから興味なかったが、昨日から高速道路の一部が休日は1000円に大値下げだそうだ。
 これっておかしいぞ。 第1に、排ガスやら炭素排出規制しようって時代に、なんで自動車走行増加策をやるのか? せっかくオイルが高くなったリ不景気で、走る車が減って空気がよくなろうとしているのに、。
 第2に、これで一番儲かるのは郊外ショッピングセンターで、ますます中心市街地は疲弊するぞ。そういえば昨日、イオンが新聞全面に安売り広告を出していたのは、実はこれと連動していたのだと、今わかった。
 ついでにいうが、民主党が高速道路全面無料にせよと唱えているが、あれはイオン岡田社長の弟(元党首)がいるからだろうって、下世話の話題である。それはともかくとしても、少なくともアンチ地球環境保全政策であることは確かだ。
 第3に、こういう入場料金のようなものは、普通ならお客が少ない平日に値下げして呼び込むもんだろうに、これは休日に値下げなんてどういう計算なのかしら。ってことは、休日も利用者がいないような道路をつくっているってことだな、バカヤロ。
 第4に、値下げするってのは、儲かったから還元するのかと思ったら、なんと税金を投入するのだそうだ。オイッ、それじゃあオレの金も使ってイオンを儲けさせるってのか、この大バカ政策ヤロウ~。
 こういうバカ政策を喜ぶ庶民が一番イケナイな。

2009/03/19

109【世相戯評】あのイオンが反省するんだって?ウソでしょ

安売り量販店(スーパーマーケット)屋のイオンが、今日の全国紙に「イオンの反省」と題して、1ページ分の広告を載せている。

 おお、やっと自分の罪に気がついたかと読んでみれば、全然そうじゃない、ただの惹き文句であった。
 よくあるような、美味いと書くところをわざと不味いと書く、あれだよ、目を惹けばよいのだ。

 これまでさんざんに街を壊してきて、この百年に一度の不景気で、イオンが壊してきた街はもう立ち直れないかもしれないのに、その反省はなくて、ただの安売り広告である。
 いままで高いもの売りつけていたが、反省してこんどは安物にするんだなんて、買いたい気が起こるもんかしら。

 もともと私は、あのどこに行っても同じような、田畑を壊し緑のない(そのくせ万里の長城あたりで木を植えているんだから笑える)殺風景な派手派手倉庫みたいな建物が立ち並んで、ほんとに汚らしい風景のイオンモールとやら言うショッピングセンターを大嫌い、まあ、向うもわたしなんぞ相手にしてないけどね。

 じゃあきれいにしたらいくかというと、もちろん行かない。
 あんな田舎の田んぼの中にまでわざわざ安物を買いに行くなんて、気が知れないよ。買い物は街の中でやるのが一番、、。

 こんな方便広告で反省なら、サルだって反省するぞ。いやいや、反省がなっとらん、オレと一緒にしてくれるなって、サルが怒るか。

 反省するなら、これまで人々が暮らす街を壊して悪かった、これからは暮らしの場を大切にする商売をいたしますって、言ってもらいたいもんだ。
 安かろう、売れて儲かりさえすれば、街が壊れてもいいのだなんて、反省ではないぞ。

参考→◆怖いぞ、郊外開発は生活圏を破壊する
    ●日本全国醜い風景アルバム

2009/03/18

108【世相戯評】焚き火の想い出

 由布市で山焼きしていて焼死者が出たという。大草原を焼くのは壮大で気持ちよさそうだからやってみたいと思っていたが、危険なものでもあるようだ。

 焚き火を大好きである。生まれ育ったのが神社だから、広大な境内には落ち葉がすぐにたまるから、しょっちゅう掃き集める必要があった。
 冬の朝はそれを盛大に焚き火して、温まってから学校に行くのが習慣だったことから、焚き火大好き人間となった。ただし落ち葉掃除は嫌いだったが、。

 高校のときに、運動会の後で運動場で盛大に焚き火してファイアーストームをしたことがある。だんだんと盛り上がって木製サッカーゴールを引き倒して燃やし、教師に大いにしかられたことを思い出した。
 都会に住むようになって焚き火から縁が切れたが、鎌倉に家を建てたとき、これでまた焚き火ができると楽しみにした。

 狭い庭でも落ち葉は積もるしゴミも出るから、焚き火を楽しんでいた。ところが、狭い敷地だから、隣近所から煙に文句が出たのである。
 そうか、世の中は焚き火の嫌いな人も居るのだと、はじめて気がついた。転居2ヶ月くらいで、あえなく挫折し、法的に焚き火禁止であることも知って、がっかりした。
 近所の人たちは、剪定した庭木とか掃き寄せた落ち葉とかを、ビニール袋に入れて焼却ゴミに出しているが、どうも納得がいかない。私は庭に積んでおいて腐らせるようにしていた。

 今はまた都会住まいで焚き火に縁が遠い。中越の山村に行くと焚き火をしたくなり、ときどき楽しんでいる。 集落の行事である小正月の賽の神は、巨大な焚き火をするから嬉しい。
 先日の日曜日は、韮崎の友人宅の畑で、枯れ枝など久しぶりに盛大なる焚き火をした。実にせいせいした。 

2009/03/09

107【怪しいハイテク】フィリップス製電動髭剃り器をもう20年も使っている

 男なら誰でも髭剃りの面倒さが毎日のようにある。
 宮仕えのサラリーマンではないフリーランスだったから、髭を伸ばそうかとも思って試したこともある。
 だが、半島系だろうかわたしはそれが薄いので、やってみると、鼻の下は左右がどうしてもつながらなくて貧相だ。あごの下は何とかなるようだが、ヤギ髭のそれだけだとジジむさく見える。

 髭剃り用具も、はじめは片刃かみそりから、両刃、ローラー式、そして電動髭剃り器と進化してきた。電動髭剃り器も、何台も買い換えた。
 ところが、今の電動髭剃り器は、実にもう20年くらいも使っている優れものである。オランダのフィリップス製品である。
 電池の能力がちょっと弱ってきているが、まったく故障もしたこともないし、刃の入れ替えもしていない。
 この間に、持ち歩き用に小さな日本製もいくつか買ったが壊れて、結局このオランダ製が一番よいのである。

 最近、カタログから自分で選択する方式の香典返しがあり、電動髭剃りを手に入れた。でも、これの性能が悪いのである。どうしても剃り残しがでる。箱を捨てたので分からないのだが、おかしなことに製品にメーカー名が書いてない。
 これと比較してフィリップス製の剃り具合の優秀さがよく分かった。

 それにしても電器製品で20年も使い続けるなんて、うちにはほかにラヂオがひとつだけあるが、普通はありそうにない。
 オランダは電子工学のハイテクに頼らないローテクの技術が、今もすごいのだろう。 

2009/03/07

106【東京駅復原反対】江戸初春飛脚屋苦虫(えどのはつはるゆうびんやのにがむし)

  (えどのはつはるゆうびんやのにがむし)
 江戸城の丸の内に駕篭屋の元締めがいる。そこに赤れんが姐さんと呼ばれている大姉御がいる。赤いレンガ色のおべべが、この姐さんのトレードマークである。
 近頃、姐さんはちょっと足腰が弱り、若い頃の火傷もうずきだし、色香が薄れてきた。
 姐さんはこの辺で起死回生若返りとて、大胆な方法で昔の色香を取り戻すことにした。

 そのためにはお金がいるが、手元にない。頭をひねった末に、しょうがないので蓄えた身代の一部を、隣近所の土地成金長者たちに切り売りを始めた。
 買った成金長者たちは、それを元手にしてうまく稼いで、それぞれ豪華で大きな屋敷を普請するものだから、駕篭屋の姐さんの家は次第に日陰になってきた。

 赤れんが姐さんは、今は足腰の手術中だが、これから豊胸や美容整形、それが済んだら辰野風芸者島田の鬘をあつらえ、緋の衣装を仕立て、紅つけ化粧したり、あれこれやらなければならない。
 でも問題は、まだまだ身代を売らないと金が足りないのに、若い頃そっくりの晴れ姿になる頃には、すっかり周りを高い塀と屋敷でとり囲まれちまって、文字通りに日陰者になりそうである。
 こんな筈じゃなかったと、姐さんは憂鬱である。

 最近、お隣の飛脚屋にも身代の一部を売ってやることにした。
 飛脚屋の西川爺さんは、オールドミスになった自分の娘に洋服と化粧品を買ってやり、背の高い婿もとるつもりになって、うれしくてあちこちに吹聴した。
 そうしたら、娘に横恋慕している文京あたりのお大名の鳩山総務守様が、2回も自ら足を運んで怒鳴り込んできた。
  「洋服など着せては相成らんぞ、背の高い婿とりも破談にせい、もってのほかじゃ、取り消せ~いッ」

 これを聞いた口さがない江戸っ子は囃したり笑ったり、ついでに大阪の飛脚屋にもそういってくれというワル乗りもいる。
 西川爺さんは苦りきっている。なにしろ、鳩から豆鉄砲を食らったのだから。

   ◆

 3月6日、東京中央郵便局の部分保全して超高層を継ぎ足す再開発計画に関して、その敷地の都市計画変更を東京都が告示した。要するにやっても良いよって、都知事がGOサインを出したってこと。
 この都市再生特別地区の都市計画内容を見ると、一番の大きな点は容積率1300パーセントを1630パーセントまで、大サービスしたことだ。

 よく見たら「特例容積率の限度の指定が行われない場合又は取り消された場合は10分の141とする」と、注意書きがついている。
 これの意味は、補修して3階建てで保全する東京駅赤れんが駅舎から、その余っている容積をJR東日本から買い取って、こちらに乗せる下話がついているのだが、もしその話がおじゃんになったら1410パーセントに下げるぞってことらしい。
 つまり220パーセント分の容積率は、JRから買う下約束があるらしい(あるいはJRが床を乗せるのかも)。

 この東京駅からの容積移転は既に、新東京ビル、新丸ビル、丸の内OAZO,丸の内パークビル、2棟のグラントウキョウビル、住友信託・UFJビル、パレスホテルに行っているので、これで9ヶ所になる(ほかにもあるかもしれない)。コマギレに移転していることが分かる。
 東京駅を3階建てに復原する工事も始まっているから、3階建てのままで保全するために発明された特例容積率適用地区制度という劇薬は、それなりに効果を発揮していることが分かる。

   ◆

 だが、ここで奇妙なジレンマが見えてきた。
 もしも中央郵便局が重要文化財となって全面保存することになったら、東京駅の余剰容積率はここに移転できないことになる。
 そうなったら東京駅の復原保全の資金が不足する(実際にそうかどうか知らないが)。

 そればかりか、今度は中央郵便局もどこかに余剰容積を切り売りすることになる。 いっぺんに一ヶ所に売るには大きすぎるから、ちょろちょろあちこちに移転しなければならないのだ。
 そんなにたくさん売れる開発先があるのどうか知らないが、なんにしても東京駅と販売競争することになる。 JR東日本は、どうやって容積セールス営業をしているのか、聞いてみたい気がする。

 あちらてればこちらがたず、とはこのことで、保存と開発はジレンマに陥ることになる。これって例の囚人のジレンマみたいですな。
 さて、どうなるのか。

   ◆

 劇薬だから副作用も大きい。
 なにしろ容積移転した先のビルは、周りと比べてとてつもなく大容積率だからにょきにょき高い超高層ビルとなって、べたっと横座りする芸者島田の東京駅を見下ろして取り囲むのだ。

 先日しばらくぶりで丸の内を歩いてきたら、ちょっと息苦しくなってきて八重洲側に回って、昔このあたりに職場があって懐かしい京橋の、昔からたいして変わらぬごたごたした街の姿を見たら、ほっとしたほどだ。
 元をただせば東京駅を低くするために作り出したギャップの風景である。そのうちに慣れっこになるだろうか。
 保存手法が生み出しつつあるこのジレンマは、この先どうするのか。中央郵便局はそのジレンマを一身で抱え込む羽目になっている。

東京駅復元反対論集(伊達美徳「まちもり通信」内)
まちもり通信(伊達美徳アーカイブズ)
 

2009/03/06

105【東京駅復原反対】中央郵便局再開発と都市計画

 東京中央郵便局の建て替えを巡って、部分保全再開発派(以下「部再派」という)と、重要文化財指定全面保存派(「重全派」)との争いが、マスメディアを賑わわせている。
 2008年6月に郵政会社が現建物を一部保全して超高層再開発する計画を発表したのに対して、建築家や市民や国会議員たちが、重要文化財に指定して現在のままに保存せよと再開発反対を唱えているところに、総務大臣がオレにも一枚かませろって割込んできた図式である。
 郵政民営化問題が絡んでいるから、政治的に複雑である。
   ◆
 ところでこの事業の建設のための法手続きはどこまで来ているのかと、東京都WEBサイトを見た。
 なんとまあ、区決定の地区計画も都決定の容積率も、今年2月はじめの都市計画審議会で、郵政の案を前提とする都市計画変更を議決してしまっているのだ。
 つまり、都知事は都市計画決定権者として再開発にGOサインを出し、千代区長も同じくGOサインを出した。もっとも、千代田区は議会は郵政に全面保存の要望書を出しているから、区長と議会とは異なる立場にあることになる。
   ◆
 そういうことか、でも、審議会はもめにもめたのだろうなあ。
 と、都の議事録を見れば、あれ、24対1の圧倒的多数の賛成で原案通りに可決しているのだった。なんだよ~。
 郵政会社がつくった私的な検討委員会では全面保存派が圧倒的多数だったとマスコミ報道があるが、法に基づく審議会ではまったくその逆である。これは、いったいどういうわけ?
 こういうのはマスコミは報道しないのはどうして?
 わたしは(かならずしもがつくが)部再派ではないが、なんだかおかしいのである。
   ◆
 え、それなら、この都市計画変更案の縦覧(2008年11日28日から2週間)して一般からの意見書を求めたことに対しては、さぞや重全派の人たちはたくさんの反対意見書を提出したのだろうなあ。
 と思ったのだが、都市計画審議会の議事録にはなにも書いてない。もし反対意見書があれば、どう対応したかかならず報告があるはずだ。
 え、意見書を出さなかったの? それとも出したけどうまくはねつけられたの? その内容を知りたい。
 また、反対意見を公述するための公聴会開催の要望をしたのかしら?
 都市計画手続きを知らなかったとは言わせないぞ、だって重全派にはたくさんの建築家がいるのだから、当然に都市計画もご専門でしょうに。
 これらの法に則った運動はやらないで、政治的な運動はやる方針なのかしら、それってなんだかおかしいと思うよ。 (090307一部訂正)
参照→101東京中央郵便局と保存帝国主義
    ・東京中央郵便局保全を考える

東京駅復元反対論集(伊達美徳「まちもり通信」内)
まちもり通信(伊達美徳アーカイブズ)

2009/03/05

104【各地の風景】この世とあの世は同じ景観:京都の鳥辺野墓地と横浜の久保山墓地

 京都の東山にある鳥辺野は、古代からの都の墓所であった。
 久しぶりに京都をたずねて、鞍馬。貴船にも行ってきたが、帰る日は毎度定番の清水寺に、鳥辺山を抜けて行くことにした。
 大谷本廟の北の細い道をだらだらと登ると、そこが鳥辺野の墓地である。尾根ひとつがそっくり林立する石塔で覆われる。
 わたしは現実主義者で、墓地が気味悪いくもないし、有名人だれそれの墓を訪ねる趣味は全くない。さすがに歴史がすごいだけに、この墓所の石塔は風雪の年季が入っているようだ。
 振り返ると京都の街が一目で見える。
 鎌倉の中世の墓地も山の上に作られていたが、京都でもそうだとすると、葬送は死者が生きていたときの世界を見下ろす高いところにあることに意味があるのか、それとも単に死体の捨て場所として街では困ったからか。
 京都駅のあたりを墓地を通して眺めると、お灯明の京都タワーが建っていて、その前あたりには京都駅ビルが灰色に立ち並ぶ墓石群である。この世とあの世の景観が見事に合体する。


 横浜でも同じような経験をしたことがある。久保山墓地から「みなとみらい21地区」の超高層建築群が、こちらの墓地の墓石群と見事にシンクロナイズしているのである。
現物の大きさには違いはあるとしても、ある一定のプロポーションによる建ちかたは、ビルと墓石は同じなのである。だから鳥辺山も久保山も墓地も街も同じ景観になるのは当然のことである。
 そういえば超高層建築の建て方に、低層部の10階くらいまでは広く、その上に細い縦長に乗る形になるものが多く、それはそっくり墓石の形そのものである。それが群をなす街の縮小版が墓地である。 街は高層建築が増えていくたびに、あの世の景観の拡大版になっていく。
 墓地は死者のための特別の空間と思っていても、しょせん人間が作る景観はそんなものである。(090302)

関連→099能幻想の清水寺  →100京都の街並み本物偽物? 

2009/03/04

103【東京駅復原反対】三菱1号館コピー出現:文化財を壊して造るコピー建築

東京・丸の内の場と先通りと大名小路の角に、レンガ造り3階建てのえらくクラシックな建物が建った。
 実はこれは、ここにあった三菱1号館の原寸大模型というかコピー建築なのである。それは19世紀末の昔昔に建った、日本で初めての洋風貸事務所であった。
   ◆   
 丸の内は19世紀末以来営々とオフィス街の経営として、何度も建てては建て直してきた。
 20世紀半ば、丸の内の高層建て替えがすすみだして、三菱1号館も1968年に壊された。
 もちろん当時すでに重要文化財級の建物として、文化財保護委員会(後に文化庁)も学会も、その指定をして保存をするべきと考えていた。
 所有する三菱地所に要望して保存策を検討していたが、まとまらないままに、1968年3月23日(土曜日)、三菱地所は取り壊し工事を強行してしまった。理由は耐震的に危ないからということだった。
 三菱地所社史によると、どこかに移築するかもしれないとの考えもあったので、解体部材を三菱開東閣(これは重要文化財となっている)に保存したが、移築先がなくてほとんど廃棄されてしまい、ほんの一部が残っていたそうだ。
 跡には15階建ての普通のオフィスビル・三菱商事ビルが建った。
   ◆
 そして21世紀はじめ、この15階建て三菱商事ビルのほかに、9階建ての古河ビル、8階建ての丸の内八重洲ビルをまとめて壊して、丸の内パークビルという超高層ビルが建った。
 なんとその足元には、三菱1号館の原寸大模型が、もとあった位置に建っているのである。
 残していた一部の部材も使って、内外のデザインも工法も昔の図面通りに(基礎はそうはいかないが)再現したそうである。
   ◆
 これはどう考えるのか?
 第一の問題は、これにともなって壊した丸の内八重洲ビルは、1928年建設でそれなりに重要文化財級であったということだ。かつて文化財級と分かっていながら1号館を壊したことを、再度行ったように思うのである。
 第二の問題は、このコピー再現建築(レプリカ)は、果たして文化財なのかということである。京都三条通りにあるみずほ銀行の建物が外観を再現して建て直したが、どうもこれは文化財とは認めない風潮のようだ。今後文化庁は新1号館をどう判断するのか見物である。
   ◆
 第三は、景観としては新旧のギャップをどう見るのかということである。
 丸の内で歴史的な建物としてなんらかの保全的再開発をしたものは、第1生命、明治生命、銀行協会、工業倶楽部、東京駅であり、現在時点で取り掛かろうとしているのは中央郵便局である。丸の内は歴史的建築ばかりの街だったから、このほかは全部なくなったといえる。
 ところが、ここに来て、一度なくなった景観が一部に復活してきたのである。
 だが、それが消えていた40年の間に、あたりの景観は激変している。
 ひとつだけぽつんといまさらの出戻り浦島1号館は、頭の上にかぶさる超高層を見上げつつ、かつての壮麗な赤レンガ1丁ロンドンを思い出してため息をついているのだろう。
 わたしも、その40年の長き不在に、その景観を忘れてしまっていて、あれッ、ディズニーランドの出先がここにできたのかい?、なんて思うのである。
   ◆
 さて、これは東京中央郵便局の現下の問題に、何か教訓になるでしょうか。
 そういえば、東京駅赤レンガ駅舎保存問題が起きたときも、国鉄民営化と大いに関係していたなあ。

関連→
東京駅復元反対論集(伊達美徳「まちもり通信」内)
まちもり通信(伊達美徳アーカイブズ)

2009/03/02

102【世相戯評】重要文化財よりも世界遺産が格が上なら宇宙遺産はもっと格が上なのか

 今朝の朝日新聞折込の「GROBE」は、世界遺産特集である。
 面白かったのは、昨年だったか登録された「石見銀山」は登録が危なかったが、かなり政治的な裏技をやって通したらしい。
 そしてそれが、なにやら後に続く登録を難しくしたらしいことが読めるのである。

 それぞれの言い分はあるだろうが、国際的な委員会でやることだから、当然にそのようなことはありうると思う。 オリンピック開催地選定と同じで、特に観光収入が増えるとあれば、なおさらである。
 そうまでして日本での世界遺産登録は必要なのだろうかと思う。
 

 例えば鎌倉である。
 もう、十分にその価値は日本人はよく知っているし、観光客は人口18万人に対してその100倍も年間に訪れている。
 世界遺産登録すれば何が起きるのか、市民の合意を固めるためのシンポジウムやワークショップを繰り返しているので、これ自体が街づくり運動となっている。

 昨年から、鎌倉の旧鎌倉と呼ばれる歴史的地域のほとんどで、建物の高さ制限をして高層ビルは建てられなくなった。これは長い間の鎌倉の都市計画の懸案でもあったが、世界遺産登録への運動として稔ったとも言える。
 あまり早く登録されるよりも、この登録運動を長く続けることが、よい都市を作る運動そのものであるかもしれないと、外部のものとして勝手なことを思っている。

 ケルンの大聖堂の隣の鉄道ヤード跡地再開発で景観が乱れそうになり、世界遺産登録を取り消すとかいう騒ぎがあったと聞いたことがあるが、実際に取り消しとなった世界遺産登録地もあることを知った。登録地の自然保護か、資源発掘の石油開発かとなって、石油開発を選んだ途上j国のことであった。
 この次は観光開発が登録を取り消す原因になることが起きるかもしれない。

 国指定文化財よりも世界指定遺産と言う権威のお墨付きがほしいなら、次は「宇宙遺産」だな。さしずめ月到着の最初の人間の足跡なんて、その文化遺産第1号か。
 でもずいぶん宇宙ゴミが地球の周りを飛んでいるらしいから、富士山と同じでまずはその清掃が先に求められそうである。
 参照→世界遺産とはなんだろうか(2008) 
     ◆山並み眺望をついに守りとおした鎌倉(2008)