2019/05/21

1401【五輪便乗外苑再開発つづき】どうやら公園一部廃止するらしいがその元凶は文科省らしいな


五輪便乗再開発のつづき

戯造GIF





  
    神宮外苑を市街地再開発事業で再開発するのだとのニュースに、その事業手法に驚いて都市計画遊びを書いた。
 しかしどうも都市計画公園を再開発すると言う発想と、そんなことができるのかという制度が分らないので、あれこれと貧者の百科事典のネット検索していたら、これかよ~!って制度が分ったので、またダラダラと遊んでいる。(図は前のブログと重複する)


 東京都の都心地区限定の制度として、都市計画公園を廃止できる「公園まちづくり制度」があるのだ。それを読んでいたら、「神宮外苑地区における活用要件」なる項目があって、要するに神宮外苑再開発に適用するということ(らしいの)である。

 ▼東京都公園まちづくり制度
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/toshi_saisei/data/jinguu_kentou01_10.pdf
 制度の要点は、都市公園として都市計画してから50年ほど経っても、いまだに公園として市民に供用されていないならば、一定の条件で開発利用するなら公園指定を廃止してよいというのである。その条件は、その開発後に6割以上を都市公園なみの広場にして、それは地区計画で担保するのである。
 ようするに東京都心部の開発圧力を利用して、面積が6割になっても緑地や広場ができれば、実質的には都市公園ができたことにするのである。
 
 なんだ、初めからそうだったんだ、しかもこの制度を作ったのが2013年だから、例の新国立競技場の建設に関係して、「神宮外苑地区地区計画」を都市計画決定した年であった。つまり、神宮外苑再開発のために「公園まちづくり制度」を作った(らしい)のである。
 でも、制度の内容を見ると、新国立競技場建設には無関係である。それなのに一緒に地区計画を決めたのは、話題の新国立競技場のどさくさに隠れて、そっと便乗したのだろうか。

 わたしも新国立競技場に気をとられつつも、神宮外苑の都市計画公園に再開発等促進区を決めることに、なんとも不審をもっていたけど、どうやって公園の再開発をするのか見当がつかなかった。
 でもそのときは既に公園まちづくり制度ができていて、だから再開発等促進区だったのだが、気がつかなかったこちらが、都市計画専門家の端くれとしてはなんともドジだった。
 どうも公園制度には疎いが、あの時は立体公園制度の適用にあっけにとられれ、そちらに目が向いてしまった。

 この度の外苑地区再開発の地元地権者たちから出された再開発事業に関する環境アセスの内容を見ると、その建築計画は都市計画公園や風致地区に適合する内容でないものがあるので、これは都市計画公園の廃止を目論んでいることが明白だ。
 ではそれはどこを、どれくらいに規模で廃止するのか、明確にその範囲を推定することはできない。
 ところば公園まちづくり制度を使うのなら、都市計画公園指定してありながらも未供用区域があるなら、その未供用面積までなら公園廃止できるとある。
 その法的根拠は、都市公園法都市公園法第16条であり、そのために都市計画事業の市街地再開発事業であろう。

 ではその未供用区域とはどこか。
 都の資料を見ると、今回の再開発区域の内で未供用部分は、テピアとラグビー場用地であり、そのほかの神宮外苑用地は供用部分とある。
 テピアとラグビー場を合わせて広さは約4.8ヘクタールであるから、この広さまでは都市計画公園の廃止が可能であるとして、再開発事業に合わせて廃止するのだろう。
 再開発事業の区域が約17.4ha、その内の外苑通り沿いの伊藤忠本社ビル用地を除く範囲が現都市計画公園区域で約16.1haである。

東京都「神宮外苑地区における活用要件」より
つまり再開発区域16.1haの内の4.8ha、およそ30%の広さを公園廃止して都市開発活用することになる。その条件はその廃止用地面積の6割以上を公園なみの緑地等にして、地区計画の地区施設として担保することである。
 その都市計画公園指定を解除した面積の土地を、開発しやすい位置に入れ替え配置して、その都市計画を商業業務地なみに変更するのだろう(たぶん、複合棟A、球場併設ホテル棟、広場部分か)。北に入れ替えるラグビー場は、こんどは都市計画公園指定区域に入るのだろう(たぶん)。

 都市計画規制の緩和変更は、2013年に都市計画決定した地区計画のうちで、今回の事業区域となる再開発等促進区に決めてなかった地区整備計画に書きこむことになり、今後の地区計画の都市計画変更手続きに入るのだろう。
 同時に都市計画法及び都市公園法による都市公園の一部廃止手続き、更に都市再開発法による市街地再開発事業の都市計画決定も必要である。
 これらは一連のものとしてすすめるだろうが、それはいつだろうか。

 さて、制度は分かったが、何だかスッキリしないことがある。それは今回の都市計画公園廃止となる対象面積が、テピアとラグビー場という、どちらも公的な土地所有者であることだ。
 特に大部分の面積を占めるラグビー場は国有地であるから、国が公園として供用しないままでいたことには、なにか妙な感じがする。民有地の神宮外苑の野球場と似たような土地利用で、そちらは公園供用してきたのに、なぜラグビー場は未供用だったのだろうか、国有のスポーツ施設なのに不思議である。

 国有地が未供用だったおかげで、再開発区域の3割もの広さが公園指定が解除されて高度利用できるのだから、民間開発事業者にとってはじつに嬉しい未供用だった。
 いや、ウマイことをしたのはタナボタ結果ではなくて、もともとそうするように制度そのものを東京都と結託、いや相談し提案して作ったのだ(ろう)から、なかなかの作戦である。タナの下で待ち受ける口を狙ってボタモチを落すのだからね……。

    とすれば、ここで一人の納税者として事業施行者にお願いしたいのは、その国有地の未供用であったことの再開発事業への多大な貢献度を、権利変換計画において高く評価してほしいことである。
 つまり開発利益を民間事業者ではなく国民に正当に還元してほしいのである。もちろん認可する東京都知事もその辺を十分に留意してほしいものだ。(この件については追記を参照のこと)

 東京都の公園まちづくり制度の説明図に、未供用区域が建物が密集している市街地となっているように描いてあり、そこを公園廃止する制度適用としている。それは今さら公的買収して公園にするのがかなり難しい状況を示しているので、制度の意味が分からなくもない。
 しかし、ラグビー場もテピアもは、権利関係は簡単だし、公園内施設としてそのまま適合するから、既に供用にしてあっても、あるいはいますぐ供用にしても、何も法的な問題はないだろうと思う。もちろん、これでは再開発事業者は困るが、、。
 でもなあ、文科省管轄の国有地が都市公園の廃止に手を貸すのが、どうも何だかなあ、すっきりしないって、書いておく。

 なんにしろ、公園まちづくり制度が先にあって、それに合せて今回の外苑再開発計画が出て来たのではなく、この再開発計画に合せるように新制度を構築したらしく、まったく敬服に値する知恵者プランナーはいったいどなただろうか、都市計画設計研究所だろうか。:都市計画設計研究所の受注情報に、JSCから2012年と2013年に「国立霞ヶ丘競技場整備に係る基本計画策定調査」があり、東京都から2016、17、18年度に「神宮外苑地区まちづくり調査・検討等業務」がある    (2019/05/21記)                              

 2019/05/26追記
 この建設事業を都市再開発法の市街地再開発事業制度を使って行うとのことである。この制度は事業前の土地と建物の価格評価して、事業後にそれと同額の土地と建物に返還する手法である。つまり土地建物を等価交換するのである。

 国有地のラグビー場と民有地の神宮球場とを入れ替えるにあたって、土地の評価額が大きく異なることに留意する必要がある。国有地の方が断然高額なのである。土地評価はいろいろあるが、例えば2018年の固定資産税の路線価格では、神宮球場前が603000円/㎡で、ラグビー場前が148000円/㎡である。

 したがって、これらを土地だけで等価交換すると、ラグビー場の土地の面積は2.5倍に拡大する。それでは民有地が狭くなりすぎて、野球場を建てることができなくなる。
  環境アセスメント用に出された資料を閲覧すると、ラグビー場の土地の広さは、事業前と後ではほぼ同じ広さに見える。つまり移転先の土地価額は元の土地よりも半分以下になっているから、その減った土地分の価額は建物に変換した(普通に言えば土地面積を6割ほどを売ってラグビー場の建設資金に充てた)、つまり土地+建物等価交換であろう。
 したがって、ラグビー場の土地建物を持つJSC(国)は、この事業にあたって新たに負担をする必要はない。国民の新たな税負担はないことになる(はずである)。

 もちろんこれは事業の前後で等価になるとしてであるが、もしも事業後にこの規模のラグビー場を受け取っても、事業前と等価に届かなかった場合は、その差額を現金で受け取ることになる。
 逆に、等価を越えた場合は、国はその差額分を支払わなければならないが、これではラグビー場を再開発事業で建てなおす理由が希薄になる。今の場所で、空中権を売って(再開発事業制度としては一部転出)、そのカネで新ラグビー場を建てればよろしい(東京駅みたいに)。

 とにかく、文科省が東京の都市公園の減少の張本人になるという、あまりほめられないことをやるのだから、その名誉挽回として、新ラグビー場の建設には新たな国の財源つまり税負担が無いようにすることである。
 再び新国立競技場のようなドジをしないようにね、文科省は三井不動産(明治神宮の代理人らしい)にウマイことしてやられないようにうまく立ち回ってね、いいですね。

 この事業では国有地を種地にしてるのだから、つまりこれがないと再開発事業が成り立たないのだから、明治神宮や三井や伊藤忠の民間事業者に儲けさせるのじゃなくて、文科省の官側事業者がしっかり儲けてくださいよ、これは納税者のひとりとしてお願いです。

 あ、まさか三井が再開発事業施行者になるのじゃないでしょうね(たぶん組合施行にはできないだろうから)、国有財産を扱うのだから、せめてUR都市機構にやらせましょうよ。
つづく

▼これまでの一連の五輪騒動記事は下記

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