2019/09/17

1420【人と緑】桂木は鉄の沓を履かされて緑陰哀し伊勢佐木モール

 
中心商店街のモールの道を徘徊、ふと街路樹の根元に眼が行った。おお、鉄の沓を履いてるよ、この木は。
 木の根元に高さ10センチほどの八角形の鉄の蓋、幹の周りは丸く空いている。
 けっこうコブコブのある老樹のようだが、すごいなあ、商店街から逃げ出さないように、鉄の足枷を嵌めたのだな、がっちりと地中にコンクリと鉄ボルトで留めてあるのだろう。


 更に近寄って見ると、鉄の沓の継ぎ目から、木の根がはみ出そうとしている。ということは、この鉄の沓の中には、木の根がいっぱいに八角形に詰まっているのだろう。
もちろんこの沓を履かせてもらったときは、余裕があったのだろうが、沓の中でだんだんと根が育ってきたのだろうなあ、なんだか痛々しいなあ。

 鉄沓の上30センチほどの幹に、口のように横に裂けた穴の中に、なにやら銀色の歯並びのようなものが見える。いや、ステンレスの網の一部かなあ、上は幹に食い込んでいて下方は切断したらしく見える。
 樹木の幹が育ち膨れると、そばの金網や鉄棒を呑みこむことは、よく見るからそれだろう。

 近くの別の街路樹の根元にそれに相当するものがあるかもしれないと、見てまわったら、あった。幹の周りに設けたステンレスワイヤ製ベンチである。
 これに幹が成長とともに食い込んだのに気がついた道路管理者が、ベンチを取り外そうとしたら外せないので切断し撤去したのだろう。
 いや、桂の木がステンレスベンチを食いちぎったのだろうな。 

 それでも冒頭のカツラの木はかなり剪定されつつも緑の葉をなんとか茂らせており、暑いオープンモールに緑陰を作っているのが、なんともけなげであるよなあ。
 生態的には、幹のまわりは土にして低木や草本で覆われるべきなのだろうに、都会の樹木は足元をガチガチに鉄とコンクリで固められ、しかも下半身スッポンポンとはねえ。



その木の隣には、同じように鉄沓を履かせられたまま、地上1mほどでちょん切られたミイラが並んでいる。このミイラも鉄沓を踏み越える努力の跡があるし、ステンレスの歯を食いしばる口も見えて、痛々しい。
 みれば大きなキノコが生えていて、死後も生き物を育てているのが、いじらしい。
  
 桂木は鉄の沓を履かされて緑陰哀しき伊勢佐木モール


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