2019/09/14

1419【戦中の歌の記憶】わたしはなぜ「海行かば」の歌詞も曲も知っているのだろうか?

 敗戦記念日に野次馬で靖国神社見物に行ったら、いつものようにウヨクさんたちに出くわした。「♪うみ~ゆ~かば~♪」と大音響の車を先頭に日の丸の旗行列である。

   ふと思った、わたしはこの歌「海行かば」を、歌詞とメロディーの両方を知っているのだが、いったいどうして知っているのだろう???
   この歌をわたしが歌った記憶は全く無い。耳にするのはウヨク行進に出くわす1年に1回あるかどうかなのに、なぜだろう。われながら不気味でさえある。

 わたしは15年戦争さなかに生れ、敗戦の日は国民学校の児童だった。音楽を得意とする少年ではなし、音楽好き家庭でもなし、大人になっても昔の歌を歌い聞く“なつメロ”趣味はまったくなし、歌声喫茶もカラオケも大嫌いだから、これがわたしの頭に戦後に埋め込まれた歌ではないことは確かである。

 どう考えても戦中に覚えた、たぶん、学校行事で覚えさせられた、つまり自分が意識する出来事の記憶ではなく、ごく日常の中で脳裏に埋め込まれた記憶であるに違いない。
 そういえば、他にも戦中の歌をいくつか、同じように覚えているのも不思議である。

 そこで戦中しか歌わなかったその時世独特の忠君愛国戦意高揚の歌を、無理矢理に思い出すことにした。タイトルと思い出す歌詞の冒頭あるいは中途の一部を、出てくるままにアトランダムにリストアップする。これがわたしの戦中の歌の歌詞全部である。2番や3番は全然出てこない。

 ◎:出だしから1番の歌詞を全部歌える(3曲だけ)
 〇:出だしから1番の歌詞の途中まで歌える(14曲)
 △:歌詞のどこか一部を歌える(4曲)

◎1.海行かば「海行かば水漬くかばね山行かば草むすかばね大君のヘにこそ死なめかえりみはせじ」
2.紀元節の歌「雲に聳ゆる高千穂の高嶺おろしに草も木もなびきふしけん…?」
◎3.天長節の歌「今日のよき日はみ光の射し出給いしよきひなり」
△4.広瀬中佐の歌「?…船内くまなく尋ぬる三度…?」
5.紀元二六〇〇年の歌「金鵄輝く日本の…?紀元は二六〇〇年ああ一億の…?」
6.?「ここはお国を何百里離れて遠き満州の赤い夕陽に照らされて…?」
7.?「徐州徐州と人馬は進む徐州よいかすみよいか…?」
8.?「青葉繁れる櫻井の里のあたりの夕まぐれ木の下陰に駒とめて…?」
△9.?「…?今日も学校に行けるのは兵隊さんのおかげですお国のために戦った兵隊さんのおかげです」
△10.?「…?国民學校一年生」
◎11.日の丸の旗「白地に赤く日の丸染めてああ美しい日本の旗は」
12.?「煙も見えず雲もなく風も起こらず波立たず…?」
13.?「僕は軍人大好きよ今に大きくなったなら…?…お馬に乗ってはいどうどう」
14.?「見よ東海の空明けて旭日髙く輝けば…?…わが日本の誉れなる」
15.軍艦行進曲「守るも攻めるも鉄の浮かべる城ぞ頼みなる…?」
◎16.?「勝ってくるぞと勇ましく誓って国をでたからにゃ手柄たてずに死なりょうか進軍ラッパを聞くたびにまぶたに浮かぶ母の顔」
17.?「あああの顔であの声で手柄立て…?」
△18.予科練の歌「…?予科練の七つボタンは桜に錨…?」
(以下は後日に思い出して追記)
19.?「さらばラバウルよまた来る日までしばし別れの涙がにじむ…?」
20.?「父よあなたは強かった…?」
21.同期の桜「貴様と俺とは同期の桜…?」

 ここまで18番まで昨日から2日かかって頭を振り絞った結果の記憶だが、意外に多いのに驚いている。これはどうも毎日通う国民学校で覚えさせられたに違いない、そうでなければこうも出てこないだろう。家にラジオさえもなかったのだから。

 それにしても、幼い少年時に覚えさせられた歌を、ずっと忘れていたのに、今になってそのつもりになれば歌詞とメロディを思い出すことができるのは、軍国教育の一環として頭にしっかりと叩き込まれたのだろうか。
 年寄りは最近のことは忘れても、昔のことをよく覚えているものだと言われるが、これはその典型かしら。

 間違っているかもしれないが、自分の記憶調べだから、たぶん、you-tubeには全部載っているだろうが、あえて調べない。メロディも同時に歌詞よりも長く頭の中に出て来るが、楽譜を書けないので割愛する。
 なお、このほかに例えば「マサカリかついだ金太郎」とか「桃太郎さん桃太郎さん」のような童謡を思い出したが、それらは戦中独特の歌ではないのでリストアップしない。

  これらの歌に関連する出来事の思い出は全くなくて、懐かしい気持ちも全くおきないから、タイトルや歌詞をあらためて調べる気も起きない。自分の記憶なのに不思議で、不気味でさえある。
 これを読む同年代のお方たちはいかがだろうか?

(追記2019/09/18)
 学校同期の友人たちからたくさんのコメントをもらった。幼少時の記憶だから、その頃の1年の差が大きいと分かって面白い。
 記憶を並べてみて気がついたのは、これらはすべてメロディと一緒に出てくることである。歌詞だけでは全然出てこない。歌詞が出なくてもメロディだけが出てくる。

 幼いころの記憶にメロディがたたき込まれ、ついでに歌詞があるらしい。ふ~む、それなら算数の九九とか教育勅語も、メロディ付けて覚えさせれば、ずいぶん教育効果が上がったろうにと思う。

 なお、この文章を読んでくださって、わたしの軍歌博識薀蓄披露と誤解した人がいて、ちょっと困ったの付記しておく。
 まったくその逆で、幼少時のおぼろげな記憶断片を今になって初めて拾い集めて並べてみただけである。わたしは戦中の歌を歌った記憶がないのに、どうしてこんなにも記憶の底からでてくるのか、その不思議さ不気味さを書いたのである。

(追記2019/09/21)
 同年の知人のHさんから、こんなメールが来て、わたしの絞り出した記憶を、同じようにご自分の記憶で題名と歌詞を補ってくださったので、参考までに引用しておく。
 赤太字部分がわたしの記憶欠落部分のHさんによる補追。
 ―――――(Hさんメール)――‐―
 私の記憶をたどって、カンニングなしで追記します。間違えて覚えているところも多いと思いますが、何しろ意味は分からないまま覚え、大人になってから多分こうだろうと勝手に意味づけしたのだから。
 主に「…?」の部分だけ書きます。
1.海行かば「海行かば水漬くかばね山行かば草むすかばね大君のヘにこそ死なめかえりみはせじ」
2.紀元節の歌「雲に聳ゆる高千穂の高嶺おろしに草も木もなびきふしけん大御世を仰ぐ今日こそ楽しけれ
3.天長節の歌今日の良き日は大君の生まれ給いし良き日なり今日のよき日はみ光の射し出給いしよきひなり」
4.広瀬中佐の歌「轟く筒音飛びくる弾丸荒波洗うデッキの上に闇を貫く中佐の叫び杉野はいずこ杉野は居ずや船内くまなく尋ぬる三度」
5.紀元二六〇〇年の歌「金鵄輝く日本の栄えある光身に受けて今こそ祝えこの朝紀元は二六〇〇年ああ一億の胸は鳴る
6.戦友「ここはお国を何百里離れて遠き満州の赤い夕陽に照らされて勇士はここに眠れるか
7.?「徐州徐州と人馬は進む徐州よいかすみよいか洒落た文句に振り返りゃお国訛りのおけさ節兵は徐州へ戦線へ
8.櫻井の別れ「青葉繁れる櫻井の里のあたりの夕まぐれ木の下陰に駒とめて世の行く末をつくづくとしのぶ鎧の袖のへに散るは涙かはた露か
9.?「肩を並べて兄さんと今日も学校に行けるのは兵隊さんのおかげですお国のためにお国のために戦った兵隊さんのおかげです」
10.?「みんなで勉強うれしいな国民學校一年生」
11.日の丸の旗「白地に赤く日の丸染めてああ美しい日本の旗は」
12.?「煙も見えず雲もなく風も起こらず波立たず鏡のごとき黄海は曇りそめたり時の間に
13.?「僕は軍人大好きよ今に大きくなったなら勲章下げて剣吊ってお馬に乗ってはいどうどう」
14.?「見よ東海の空明けて旭日高く輝けば天地の精気はつらつと希望は昇る大八洲おお晴朗の朝雲にそびゆる富士の姿こそ金甌無欠揺るぎなきわが日本の誉れなる」
15.軍艦行進曲「守るも攻めるも鉄の浮かべる城ぞ頼みなる浮かべるこの城日の本の御国の四方を守るべし
16.?「勝ってくるぞと勇ましく誓って国をでたからにゃ手柄たてずに死なりょうか進軍ラッパを聞くたびにまぶたに浮かぶ母の顔」
17.?「あああの顔であの声で手柄頼むと妻や子が千切れるほどの振った旗遠い雲間にまた浮かぶ
18.予科練の歌「若い血潮の予科練の七つボタンは桜に錨今日も飛ぶ飛ぶ霞ケ浦にゃでっかい希望の雲が湧く
19.ラバウル小唄「さらばラバウルよまた来る日までしばし別れの涙がにじむ恋し懐かしあの島見れば椰子の葉陰に十字星
20.?「父よあなたは強かった兜も焦がす炎熱に三日も
21.同期の桜「貴様と俺とは同期の桜同じ兵学校の庭に咲く咲いた花なら散るのは覚悟見事散ります国のため
 ーーーー(Hさんメール終り)-----
 なお、二人とも幼時の記憶だけで書いたから誤りがあるだろう。しかし、前述のように歌詞やメロディの調査が目的ではなく、脳中の幼児期のナマな記憶拾い出しが目的だから、正確な題名や歌詞を調べる気は全くない。
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