2019/11/03

1426【横浜ご近所探検徘徊:新港ハマーヘッド】新客船埠頭とて第2の大桟橋デザイン出現かと見に行ったが大空振り

正面は新港客船埠頭新ターミナル 左は接岸する巨大客船
ひろ~い殺風景な駐車場の中のショピングセンター?
横浜新港に大型客船埠頭をオープンしたと聞いて、新し物好き徘徊に行って見た。
 全体の名称を「横浜ハンマーヘッド」というそうだ。大きな鉄骨組み立ての金槌状のクレーンがあり、その形からハンマーヘッドというらしい。
 身もふたもない結論を先に言っちゃうけど、郊外にあるダダっ広い駐車場の中にオフィス乗っけたショッピングセンターみたい、アートテイスト皆無、つまんない、ま、広告がないだけまし、裏に隠された古鉄骨と古岸壁だけが素晴らしいけどね、特別の用事でもないかぎり行く気がしない。

まだ倉庫があった頃のハマーヘッドクレーンがある新港埠頭
2016年4月のハマーヘッド風景

2019年11月のハマーヘッド風景

 新港のこの埠頭には大きな倉庫が数棟あって、ここだけは昔の港の雰囲気を残していた。アートイベントで使われるときには何度か訪れたことがある。水際の荷役用の大きな鉄骨構造物(ハマーヘッドクレーン)を眺めたものだった。
 そこを大桟橋に並ぶ大型客船埠頭に改修して、ターミナル施設を作ったというのだ。つまり、あの有名な大桟橋のターミナルと同じ機能だろうから、あの驚嘆するデザインがまた登場したにちがいないと期待して見に行った。冒頭に書いたように大空振りだった。
近ごろ横浜の建築には珍しく花魁頭むき出し
もしかして屋上モダンアートミュージアム彫刻群かな?

 建築も凡庸な、いや堅実デザインだが、まわりの環境デザインもつまらない。まあ、へんにコテコテデザインするよりもあっさりしていてよろしいと言いたいのだが、水辺と建築の取り合いが全くないのが不思議なくらいだった。もしかして大桟橋で懲りて、普通の設計にしたのかかしら、設計者は空港デザインのベテラン梓設計だから、海港だって得意だろう。
 それのせいで、つまらないデザインと思っていた隣の「MARINE WALK YOKOHAMA」の水辺デザインが、比較的にちょっと素敵に見えてきた。
 そういえば、新港ではなんでもかんでも赤レンガ亜流デザインらしかったが、ここにはそれが全然見えないのは、もう卒業したのかな。
 大桟橋デザインの凄さが例外かもしれないが、それにしてももう少しは楽しませてくれるデザインをしてくれてもよかったろうにと思う。
新港埠頭新ターミナル全景 右にMARINE WALK
客船ダイアモンドプリンセスと埠頭新ターミナル

さて、ここの港湾の歴史を物語る遺産、ハマーヘッドクレーンを見に行こう。だが、新ビルの陰になってしまい、知っていないとそんなものがあることは、ほとんど分からないのだった。
 新ビルの横をトコトコ歩いて裏に回ると、殺風景な広い駐車場があり、そのむこうの水際に健在であった。お懐かしや、お元気ですかあ、いやもう死んでいるんだな。
 レンガを砕いた赤土舗装(?)の空き地に巨大な古鉄骨組物、これでもし錆びていたら、けっこういい雰囲気なのだが、残念にも?ピカピカにペンキ塗り修理してあった。

ハマーヘッドクレーンの勇姿
まわりの見物の人々はみんな客船を見上げているなかで、この無骨鈍重な姿の鉄を見上げているのはわたしだけ、変人と思われたかもなあ……。
 でも客船の姿は単なる横にバカデカい高層共同住宅で、特に面白くもないのにに人々はなぜしげしげと見上げるのか、ま、船旅する金持ち時持ちを羨むのは分かるけどね、そう、巨大客船には距離と時間とお金と人間が超圧縮されている。

客船ダイアモンドプリンセスと対峙するハマーヘッドクレーン

右にハマーヘッドクレーン、向うに増築した客船埠頭

煉瓦を砕いたらしい舗装はなかなかの情緒
 
これから公園として整備するらしいのだが、願わくばヘンにコテコテ造園デザインしないで、むしろ荷役埠頭の雰囲気を出す廃墟感をだして、、あ、そうだ、ハマーヘッドクレーンも錆色剥げ剥げ古色だして塗っていはいかが? 
 廃墟感と言えば、クレーン傍にいかにも廃墟の姿で海に突き出す土木構築物がある。かつての埠頭岸壁の一部だろうが、これと赤さびクレーンの取り合いは、絵になるなあ。
旧岸壁の一部なのだろうか迫力ある土木造型遺産

 もうひとつ気になっていた新港の歴史を示すもの、この新港桟橋入口に以前から立っていた一対の門柱である。
 探したらターミナルビル入り口あたり(元の位置だろうか)にあったが、邪魔だが路傍に残しておこうのデザインで、通る人たちの誰も注目することはないのだった。もっと積極的に生かす方法を考えなかったのか、惜しい。
かつて入り口にあった門柱

 ふと見ると向う隣の岸壁に格好良い船が着いている。船のことはよく知らないが、映画に出てくるようなお金持ちが持っている豪華クルーザーなんだろうなあ、いかにも舟らしいスマートで優美なデザインである。船名は「BIKINI」と書いてあって、あの水爆実験を連想させて不気味、いやいや例の水着を連想すべきか、。
 この船を見ていてふと思ったのは、港の陸上施設のデザインは、船のデザインの引き立て役であるべきとすれば、このハマーヘッドターミナルビルもMARINE WALKも、実に正しいデザインであるのだろう。でも船からの来訪客にはつまらないだろうなあ。
BIKINIという名の豪華クルーザーは隣の埠頭

 というわけで、わたしの眼には単なるショッピングセンターなので、まわりをぐるりと見ただけで脚が疲れて退散した。ケチつけた言い訳すれば、わたしは山男なので海に関心が薄く、このような施設の見方がわからないのだ。
 大桟橋ターミナルビルには時にはふらりと行って見たくなるのだが、ここにはもう一度だけハマーヘッドクレーン公園整備ができた頃にくれば、それで十分だ。

 とはいうものの、最後にちょっと褒めておく。
 このような国際的な客を迎える空間の建築は、えてして新興国ほど妙に頑張る傾向があるのは、今の中国やら東南アジア、あるいは中東諸国にその例は多い。
 横浜港はまさにそのような日本が新興国として、来訪外国人に背伸びを見せる場所であったので、赤レンガの西欧近代建築手法で建築を整えていった。だがその洋式真似事は、日本固有の災害である関東大震災で壊滅したのである。
新港埠頭の当初計画図 赤色がレンガ建築
関東大震災から復興直後の新港埠頭
  
そしてこの横浜港の建築は、新進表現の思想を歴史表現の思想に変えて、レンガ色に固執しつつ耐震建築にする。その一方で、折り紙の大桟橋ターミナルやスイカのインタコンチホテルのように、新興国らしく要所には奇抜な形態も配置することもわすれない。
 しかし今や新興を越えて成熟した段階のデザイン時代に来たらしく、今回の新客船ターミナルのように、要所にありながらもまことに凡庸かつ手堅い現代建築に落ち着いてくるのだろう。ようやくその段階に来たというべきかもしれない。それは例の新国立競技場が、鬼才建築家の案を廃棄して、堅実ゼネコン案を採用したことに符合する。そういえばこの埠頭ターミナル設計者は、あの凡庸なるデザインの新国立競技場の設計者の一員でもある。

 なお、横浜新港地区の建築に関しては、いままでにこんなことを書いている。
・(2012/06/20)横浜港景観事件(8)赤レンガ建築建ち並ぶ出島だと思っていたら実は
https://datey.blogspot.com/2012/06/632.html
・(2012/07/27)横浜港景観事件(10)横浜の景観行政の凄腕を新港地区に見に行く
https://datey.blogspot.com/2012/07/646.html


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