この4月から週1回、横浜国立大学に外部評価モニターとして受講に通っている。
横浜国大を訪れるのは30年ぶりぐらいだろうか、1973年に設立された環境科学研究センターの宮脇昭研究室(植生学)に、個人的に植生学を学びたかったり、林地開発のプロジェクトに助言を受けたくて数年間にわたって出入りしていた。
その頃から見ると、キャンパスにはしっかりと環境保全林が育っていて立派な森の中の学園となった。
元はゴルフ場だったから森はなかったし、キャンパスとして整地工事で赤禿げになっていたものである。 そのころまで宮脇昭さんが研究を進めていた潜在自然植生理論に基づく植生学を、1970年頃から工場緑化で実地に現場に適用を始めていた。
それは公害を発生する工場の周りを、密に植えてとりかこむ森の「境界環境保全林」づくりであった。当然にこのキャンパスも実験台にしたである。
その後、日本全国ばかりか諸外国まで広めた宮脇方式といわれる「ふるさとの森」づくりとなったが、その成功例のひとつをキャンパスにも見ることができる。
横浜国大の常緑樹の森は、主に境界環境保全林なのでキャンパスの周囲や建物群のまわりを帯状に取り囲んでいるから、全体的には森の中のキャンパス景観であるが、ひとつひとつの森そのものは、実はそれほど広くはない。
それににもかかわらず森の中にいるように見えるのは、まさに周りを取り囲むように配置する境界環境保全の役割を果たしているといえよう。
境界を守っている森は、その中に入って散策するものではない。林床には落ち葉が厚く積もり、枯れ枝が散らばる。密植した苗木が競争して育って、いまや高さ20メートルを超えて空を覆うから、草本や低木類は林縁にしか生えていない。
シラカシ、タブ、スダジイなどの常緑樹の幹は、30年たっても意外に細いのは、競争の結果であろう。宮脇昭説では、生物は互いに競争しあいながら、互いに我慢しあって生きるのが、実は生存の最適条件だと実験から分かっているという。その現場であろう。
高木の常緑樹林の外周部の足元周りには、サツキなどの花咲くマント群落を設けて目に優しくまた林床の落ち葉が道にあふれ出ないようにしている。
しかし、そこかしこに足元が裸のところもあって、今は春の落葉の季節だから落ち葉が広場にも舞っている。それを自然が豊かで良いとするか、掃除が行き届いていないと見るか、人それぞれだろうが、大学キャンパスでは落ち葉が舞っていても良いだろう。
スダジイ、タブノキ、クスノキなどの常緑樹は、宮脇さんの唱える「ふるさとの森」として、この地域では風土に最も適した樹種で、緑の葉を一年中つけている。
常緑樹について笑い話がある。街路樹を植えるときに、沿道の住民にどんな樹種が良いかと聞くと、ケヤキのような落葉樹は葉が落ちて掃除に困るから、葉の落ちない常緑樹にせよと要求されることが よくあると、行政の人から聞いたことがある。
ホンコンフラワーじゃあるまいし、葉の落ちない木なんてあるはずもなく、世の人々は意外に木を見ていないのである。落葉樹が秋なら、常緑樹は春に葉が落ちるのだ。だから横浜国大のキャンパス は、今が落葉の季節である。
●参考リンク先→国際生態学センター →宮脇昭
●関連ページ →緑の生態的景観 →現代の意志の道
●制作者サイト→まちもり通信
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