じつは昨日の真昼、寒さに震えていた。場所は県民ホールのなか、冷風が当らないように、半そでシャツから腕を引きぬいて中にいれ、前をしっかり締めても寒い。
でも、もうすぐ終わるから我慢だと、がんばった。
オペラ「アイーダ」のライブビュー上映を見ていたのだ。パルマ歌劇場での録画を、映画にしている。実はこの手の舞台映画を見たのは初めてだ。
それは毎年見ている県民ホールプロデュースオペラの、今年の公演「アイーダ」を見たかったのだが、気がついたら、わたしの財布に見合う席が売り切れ、しょうがないのでこちらにしたのだ。
でも、よかった、なかなかの『愛~だ』だったな。オペラを観たい貧乏人向きだ。でも、小ホール客席の入りは3分の2くらい、世にオペ見物貧乏人は少数らしい。
実舞台のオペラを見ていると、いつも全体とその部分とを構造的に眺めているのだが、映画は全体と部分とが別々に切り替わりつつ登場するので、観はじめはなんだか違和感があった。映画作ったやつに観方を制限されている、おれの好きな様に見させてくれ。
でも次第にそれに慣れてきて、本物舞台ではありえない出演者の大写しを楽しんだ。もっとも、ホールの遠くから見る本物の出演者はいつも美しいが、このような大写しになると、あれこれボディとかアラが気になって気が散る。
イタリアから見ると、エジプトやエチオピアはどれほどの異国なんだろうか。日本ほどではないだろうが、見ているとやはり異国オリエンタリズム趣味にブラックアフリカ気分がないまぜになっているようだ。まあ、見世物だからそれでいいのかな。
大写しになる出演者の肌を見ていると、実物のネグロイド系もいるようだが、多くのコーカソイド系も薄ネズミ色あるいは薄青い化粧をしているのは、異国趣味だろうか。
その典型として大写しになるアムネリスが、ちょっと気の毒な感じだった。
とにかく、実物はどうか知らないが、古代エジプトらしい雰囲気の様式の装置と衣装を楽しむのも、ヨーロッパ的な異国情緒趣味だろう。
オペラ「アイーダ」というと、有名な凱旋の場に象や馬が出てくると聞いているのだが、今回それを期待したが、動物は出なかった。野外でやる時に出るのだろうか。
それにしても大勢が登場するものだ、300人もいそうな。まさにおおがかりな見世物である。
お話は、戦争する二つの国の、敵と味方の関係にある男ひとりと女ふたり、つまり三角関係だが、これに権力がからむから面白いのだろう。
敵味方関係の男女の恋物語は、ロメオとジュリエットにみるように、珍しいテーマではない。ロメオたちも最後は墓場で心中だが、このアイーダとラダメスも同じだなあ。ストーリーがよく似ているのは、ウェストサイドストーリーと同じで、シェークスピアはエライなあ。
ストーリーや芝居の細部では、なんだかつじつまが合わないところもあるが、まあ、なにがなんでもと強引に愛を死に昇華させて、
”愛~だっ!”
(これを言いたかっただけ)
本物オペラ見るのはこの数年はいつも天井桟敷、昨日のライブビューでは一番前かぶりつき席、料金は天井桟敷よりも安い。寒さを別にすれば、また観たいなと思った。
でもホントのオペラ舞台なら中間に休憩があるのに、ライブビューでは2時間半休憩なし、寒さに震え、終りの方では尿意にも震えた。
ここで県民ホールの中ホールに苦言を呈しておく。
まずは、上に述べた冷房問題である。わたしの周りの人たちも、ごそごそと羽織るものをとり出したりしていたから、わたしだけ寒かったのではない。
最後のカーテンコール場面は、実物がいないのに見ても意味がないので途中で立ち、寒さから脱出してロビーに出ることにしたのだが、ホールからロビーに降りる階段が真っ暗なのには大いに困った。足元灯を階段につけよ。
せっかく初めてのライブビューに思いがけなく感激しつつも、一方では難行苦行になったのであった。
そして外に出ると真夏の焦熱、よろよろと山下公園の木陰に避難、先ほどの極寒のエジプトは夢だったにちがいない。
〇データ
「アイーダ」
スザンナ・ブランキーニ(S アイーダ)
ワルテル・フラッカーロ(T ラダメス)
マリアーナ・ペンチェヴァ(Ms アムネリス)、ほか
アントーニオ・フォリアーニ(指揮)パルマ王立歌劇場管弦楽団、合唱団
ジョゼフ・フランコーニ・リー(演出)
収録:2012年2月、パルマ王立歌劇場 (154分)
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