久しぶりに(2年ぶりくらいか)、外の映画館で映画を観た。近ごろ映画を見るのはユーチューブで自宅映画館でばかり。
観た映画は『ジェイン・ジェイコブス-ニューヨーク都市計画革命-』。
このタイトルの原題は『Citizen Jane: Battle for the City』、これって『市民ジェイン:ある都市への闘争』でしょ。
日本題名は、ジェイン・ジェイコブスを都市計画への革命家としてとらえたということなのかしら、う~ん、彼女はもうちょっと広いような、、まあ、いいか、。
都市計画関連の歴史映像をたくさん使って編集したドキュメンタリー映画だった。
映画をたくさん見ているのじゃないけど、ストーリーにはちょっと退屈して眠気も出た。悪役敵役の開発役人モーゼス対善玉闘志ジェインの図式が単純すぎるのである。
なんにも知らない人が見て、ジェインが単なる反対運動オバサンとしてのみとらえられることを恐れるし、一方のモーゼスについても同じである。
だからある程度知ってる者には、なんとも退屈になるのだ。むしろドラマ仕立てにしてくれる方がよかったような。
オーソン・ウェルズに『市民ケーン』って映画があったよなあ、『市民ジェイン』って映画にするといいな、もうちょっと奥行きがある映画になるだろう。
歴史資料映像は面白かった。Mies van der RoheとEdmund Norwood Baconがチラと顔を見せ、Le Corbusierがチラチラとでてきた。もちろんジェインおばさんの語りも多い。
モダニズム建築家たちが、敵役の仲間にされたらしいが、もうちょっと敵役への肩入れが足りないんだよなあ。日本メタボリズム連中も登場させてほしいなあ。
ロウアーマハッタン高速道路計画って、なんだか日本メタボリスム建築家たちの絵に似ていておかしかった。道路と建築の一体整備って先進的な計画だったんだ。
モーゼスのブルドーザ的やり方とあのデザインはともかくとしても、未だに上手くいかない土木と建築の融合事業の先行的成功事例になるとよかったのになあ。
あの有名なプルーイット・アイゴー団地の爆破のカラー映像があって、これは面白かったが、アレッ、あの団地はニューヨークにあったのかい、モーゼスのプロジェクトだったのかい?、違うだろ。
この爆破場面の豪快さを見ていて、2001年9月11日ニューヨークのWTCテロによる倒壊場面を連想した。
このTWCもプルーットアイゴー団地も、どちらもミノル・ヤマサキの設計であったのが、“モダニズム建築の終焉”も“アメリカ支配の終焉”も建築家のせいじゃないはずだけど、奇縁ではあるよなあ。
でも、プルーイットアイゴーが廃墟となって爆破されたのは、映画が言うようにモダニズムデザインのせいなんだろうか。そんなに建築デザインには力があるとは思えないよなあ。
そんなに力があるなら、建築家はもっと偉くなってるよ。少なくとも医者なみにね。
むしろ運営というか、あるいはアメリカ特有の人種差別と貧困の問題が大きく横たわっているだろうと思う。だって、日本にはあんな住宅団地はざらにあるよ、ちゃんと住みこなしてるよ、もちろん時代変化による問題はあるけど、爆破ってそりゃないでしょ。
それよりも都市開発の大問題のジェントリフィケイションに、映画が触れないのはどうしてなんだろうか。
タイトルもそうだが、字幕でなんだかそれでいいのかって言葉もいくつかあった。
ナレーションではアパートメントと言ってるのを、字幕じゃ日本製英語のマンションと書いてて、これじゃあ、話がずれてしまうよなあ。
『ジェイコブズ対モーゼス ニューヨーク都市計画をめぐる闘い』(アンソニー・フリント著)を読んだことがあり面白かったので、映画にも期待したけどヘタだった。
ジェインの『アメリカ大都市の死と生』って黒川紀章訳でずいぶん前に読んだので、もう忘れている。あれは部分訳だったらしいが、あんな早くにあれを翻訳した黒川の眼の効き方がすごい。再読しようと書棚を探すが見つからない。
うちの書棚にはジェインの『市場の倫理統治の倫理』もあったはずで、読みかけだったから探しているのだが、見つからない。どっちも終活処分で誰かにあげてしまったかな。なら、もう、いいや。
専門家として齧った知識を下敷きにして観るものだから、ついついあれこれケチつけたくなるけど、なんにも知らないで見ると、けっこう面白い善悪対決映画なんだろうなあ。
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