ところが、この30冊の中でわたしが読んだのは、たったの9冊である。世の識者なる人々とわたしは3割しか共通しない、つまりわたしは3割識者とわかった。なるほど、そうか、そうか、まあ、どうでもよいが。
そしてまた、識者が選ぶトップから7番目の本まで、わたしは読んだことがないのである。なるほど、そうか、まあ、どうでもよいが。
その識者たちをだれである知らないし、平成という区切りになんの意味もないが、この30年間とみれば、それはそれで、地球的には冷戦時代が終ったし、日本的にはバブル経済パンク低成長時代だし、私的にはフリーランスになって以来だし、それなりに意味がある様な気もする。
でも、それが識者が選ぶ本の傾向に影響し、自分が読んだ本とどう関係しているだろうか、と考えようとしたが、どうもぜんぜん関係ない羅列であるような気がする。
1位の村上春樹「IQ84」を読んでないどころか、彼の著書を読んだことがない。好き嫌いではなくて、発売されるたびにあまりに評判になるので、そのたびにへそが曲るという単純な理由である。
2位のカズオ・イシグロについては、ノーベル賞で評判になって、はてなんだか聞いたような名だがウチの本棚にもあったようなと探したら、ペーパバックの「When We Were Orphans」があったので、読みだしたが途中で投げ出したままだ。
3位の町田康、4位の東浩紀、桐野夏生については、名だけしか知らない。
4位の宮部みゆきの「火車」を読んではいないが、ほかにはけっこうたくさん読んでいる。エンターテインメント語り手として実にウマイ。
7位のジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」については、読みたいと思って忘れていた本なので、図書館で借りてこよう。
8位の小川洋子の「博士の愛した数式」は、小川の本でこれだけを読んだことがある。図書館でなんとなく借りて暇つぶしによんだ。面白い様なつまらないような。
9位の小熊英二のこの本は力作である。名著と思う。じつは発売と同時に買ったのだが、ボツボツ読み続けていまだに読み終えていない。未読本のなかの横綱格である。
ベストテンからあとは飛ばしコメント。
「蒼穹の昴」の浅田次郎は、エンターテインメント語り手として、宮部さえも足元にも及ばない。この清朝、満州ものシリーズの奥深く幅広いことと言ったら、この分野をエンタテイメント小説にするその力量に感服する。
辻邦生「西行花伝」を買っているのは、趣味の能に関する本だったからだったからか、忘れた。もう一度読んでみよう。
半藤一利の「昭和史」も「幕末史」も買っている。歴史を語って読ませるのは、さすがに編集者出身だからウマイものだ。このひとの荷風ものも面白い。
山室信一「キメラ」については、幾冊か買っている満州もの本の一つだが、それらを買ったのは、実父と叔父の戦場について調べた時のことだった。父は満州、日中、太平洋の三つ戦争に出かけて無事に戻って、叔父は太平洋戦争で南の島に果てた。そして「父の十五年戦争」(まちもり叢書第1号)という自著をつくって、親戚に配った。
渡辺京二「逝きし世の面影」を買ったのはいつだったか、あるときふと気がつくと本棚にこの本が2冊あったから、興味を持ちつつも忙しいのでいつか読むと買っておいたのを忘れて、また買ったのだろうが、じつはそのような本が10冊くらいはあった。
わたしは30年前にフリーランスになり、個人事務所を東京に持ってスペース的にも金銭的にも本を買う余裕がでたので、嬉しくて勢いがついて買いこんだものだった。
都市や建築の専門書はもちろんだが、興味ある本は今は読まなくてもいつかは読むのだと買い込んだ。数えたことはないが、自宅とオフィスを合わせると、最大期には5千冊以上はあったようにおもう。オフィス撤収のときにかなり処分した。
そして今は「終活」とて専門書からはじめて、どんどん若い知人たちに貰っていただいて、数百冊にしてしまった。興味深い未読本を残しており、ヒマにまかせて死ぬまでに読み尽すのだ。
もちろん、本を買うことを一切やめると自分自身に言い聞かせて、もう5年以上のような気がする。ウチの未読本攻略が先だし、金もないからである。
ただし減らしすぎると、やがてくる大地震に雪崩落ちてくる本に埋もれて圧死窒息死する本好きに至高の願望が叶わなくなるから、その点に留意している。
3・11のときは外出していたから当てが外れたが、帰宅するとわたしの部屋だけ被害があり、本棚が倒れて邪魔でドアが開かずに部屋に入れない。わずかな戸の隙間から鋸を入れて本棚を切断した。
でも、ウチの未読本とネットだけを読む生活ではどうも刺激が薄くて、近くにある市立や県立の中央図書館によく行くようになった。そこで読まなくてもよいような本をついつい借りて来るものだから、自宅の未読本はいっこうに減らない。
その上、徘徊中についつい書店にも足が向くから、うっかりというか、自分自身に内緒だよと言い聞かせて、新刊本を買うこともあるから、なおいけない。一昨日は松山恵「都市空間の明治維新」(ちくま新書)を買った。
更にいけないのは、「まちもり叢書」シリーズと題する、卓上自家出版をやっていることである。本を作るのが趣味で、自分で執筆、自分で編集、自分でデザイン、自分で印刷、自分で製本するのである。
今のところ本シリーズ22巻のほかに、別冊シリーズもあるし、ほかに他人様の執筆と共同著書とか、ときには完全に他人様の著書とかも頼まれたり、こちらから提案してつくることもある。
ただし、これはオンデマンドでプリント製本するから、全冊が本棚を占領することはないが、それでも10冊くらいはストックができる。
参照:まちもり叢書シリーズ
本を減らすために趣味禁止ってのも無粋すぎるし、外から持ちこみ禁止措置として図書館本屋徘徊禁止って決めたなら、出歩く理由が健康のためだけなる。それだけでは出歩く気にならないよなあ。あ、医者通いすればよいのか、なにか病気か怪我かしようかなあ。
3割識者には3割識者なりの悩みがある。
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