2020/09/27

1491【コロナ禍の未来】覆面社会の到来を妄想する

 地球上で一向に収まらないコロナ禍、2020年9月末で地球全体で感染者累計約3300万人、死者約100万人、日本では感染者約9万人、死者約1600人。
 ヨーロッパでは再び上昇気味とか、アメリは勢いが衰えつつもまだ上昇中、南アメリカ諸国もなかなかすごい、そしてアフリカの状況がわかりにくいとか、ワクチン開発はまだらしいとか。

覆面・MASK・マスク・おもて・仮面

●マスク群衆社会の出現

 さすがパンデミックはすごいもんだ。わたしは今、世界の歴史的大事件に立ち会っているらしいが、長生きはするものである。いや、その逆か。
 とはいっても、実のところはわたしの身辺には、マスコミニュースはあれども具体的にそれらしいことは何もない。それはそれで結構なことだが、コロナの実感がわかなくて当惑する日々だ。
 とにかく目に見える何かが社会の起きてるだろうと、野次馬でちょくちょく都心風景見物に行き、一時の人出激減風景には驚いたが、今やコロナ禍前と大差ない風景である。でもコロナ禍最中であることは間違いないのに、、。

 これほどの大事件なのに世の動きが見えない。もちろんいろいろと企業経営は大変らしいが、目には見えない。かといって夜の街に探検に行くほどの、冒険心ももの好きでもない。
 しかし、そういうわたしにも見えるコロナによる大変化がある。それは、街行く人々のだれもかれもが、布マスク着けていることである。こんなにもマスク群衆社会は生まれて初めて出くわしている。
 これしか目に見えないから、とにかく目に見えるマスク群衆風景について、妄想を働かせているのである。マスクの歴史と将来について考える。と言っても一般的調査はしない。

 まずは自分の記憶だけの歴史として、昔はマスクはどうだったか思い出してみる。
 遠い昔の幼児の頃のわたしの記憶に、黒いマスクをつけた父の姿がある。黒いソフト帽をかぶり、黒いインバネスコートである。それが記憶にあるのは、子供心にもマスク姿が印象的だったのだろう。

 その父の黒マスクは、鼻から突き出した感じの立体的形態であり、黒いビロードに包まれていた。幼児のわたしが触っても型崩れしなかったから、金属あるいはセルロイド製の網で形状を作り、その上にビロード布を張っていたのだろう。着用時に顔面に当たる内側に布を沿えていた。それがそのころの一般のマスクであった。こんなことは、こんな事件がないと思い出すことはなかっただろう。

 もう一つの印象的なマスク姿は、1970年代の東京では、道行く人たちの多くが白い布マスクだった。そのころ主に自動車排気ガスを原因とするスモッグ公害があちこちで起きて、マスク姿が多かった。
 今のようにだれもがマスク姿ではなかったが、それでもそのころの東京でのマスク姿の多さを、外国の新聞が不思議で異常な風景として紹介する記事がでたと、日本の新聞が報じたことがあった。

●マスクの変容

 さて、日本では時にはマスク姿が出現したものだが、これほどにも長期にわたり、世界中に流行したことがあるのだろうか。100年前のスペイン風邪の時はどうだったのか。
 人間が身に着ける衣類は、気候風土や文化によって地域別の違いがあるだろう。それが半年ほどの間に、一気に同じ姿になったのは、さすが国際化時代である。
 しかも顔という人間の姿の核心ともいうべき位置を、ほとんど同形の衣料で覆い、世界中の人間が同じマスク姿になったのであるから、これは歴史的事件である。

 今はとにかくマスクをつけてないと、まるで異端者扱いで、店にも図書館にも入れてくれない。スカスカの布切れでも、とにかくマスクをつければ、世の中に通用するのである。
 これをマスク社会の到来と言いたいのだが、透明プラスチック板を顔の前に着けて覆う方式もあり,これは明らかに日本の伝統的なマスクではない。

 しかし、今の段階では透明板覆いよりも布マスクのほうが、はるかに優勢である。それは顔面を覆うのだが、プラスチック板で隙間なく覆うことがむつかしく、コロナ病原体防御がむつかしいらしい。特別な状況でないと有効でないらしいこと、コストが高いことから、布製(不織布性も)が優位らしい。ということで透明布製品が出るまでは、視覚的に隠蔽機能をマスクは持たざるを得ない状況にあるらしい。

 しかし、マスクがアベノマスクのように口と鼻さえ覆えばよい形から変って、鼻や口からの呼気や飛沫が出入りしないように大きく密着するように改良が進んできた。英語でmaskとはいわゆる覆面のことであり、マスカレイドの仮面とか神楽や能の面のように顔面を覆うものである。
 コロナ対策のマスクも多様な形態になりつつあり、口鼻覆いマスクというよりも覆面というほうが正確になってきた。ここでは覆面社会の到来ということにしよう。

●覆面文化の到来

 こうして覆面社会は着々と普及して、その地位を高めつつある。あらためて覆面の目的を考えてみる。その第1は、防寒や防塵のように気候に対する衣料としての役割である。
 その第2は、覆面者の行為を他から見られてもそれが誰であるかを判別しがたくするためであり、犯罪者がそうである。あるいは遊びの仮面舞踏会もそうである。
 その第3は、口や鼻からの呼吸や飛沫による病原体感染防止のためで、今回のコロナ禍マスクはこれである。その第4は、宗教的なしきたりで、キリスト教信者の教会でのベールとか、イスラム信者のへジャブがある。
 その第5は、顔の何らかの障害等の医療のために覆うことである。時には全面を覆い、一部を覆う眼帯や絆創膏もこれにあたる。これは特殊な状況といえよう。

 この覆面時代がいつまで続くのか。あと1年くらいのうちにコロナが急激に収まると、一気に日常の覆面も姿を消して、コロナ前のように上記第1と第2が主となるだろう。
 しかしもしも、コロナがさらに延々と長期に続くと、覆面姿日常として定着してしまい、素顔は非日常となる。
 そうなると、マスクは多様な形態を持って発展し、覆面姿は地域によりその発展形は異なるものになるだろう。こうして覆面文化は人間の21世紀から始まった文明文化として、地球上に定着することであろう。

 顔の口と鼻を隠す文化が行き渡ると、人々の心に変化が出てくるにちがいない。
 覆面の下に隠されている肉体は、元のコロナ防疫のための部分という意味を脱却して、そこは秘すべき隠すべき部位に昇格するだろう。
 現在の腰回り陰部とともに、鼻と口は陰部秘所になるのだ。したがて口髭花髭は陰毛である。うっかり鼻や口を露出して公衆の面前に出ると、猥褻物陳列罪に問われることになる。

 覆面用具のマスクは、本来のマスクを超えてファッションショーにおける服装アイテムとなる。マスクは覆う領域を広げて、その姿を次々と展開してゆくだろう。美しい覆面ファッションが時代の流行柄で登場するだろう。
 あの簡単な耳掛けの布切れからもっと大きく複雑な形に、例えば帽子や衣服と一体となった衣服一体マスクファッションも登場するだろう。
 一方で、逆に小さく縮める方向も出るだろう。あのビキニ水着のように、鼻孔と口唇だけを覆うお色気ビキニマスクも登場するだろう。
 この両極端の間に、数々の覆面ファッションが生まれる。

 そして覆面には文化的表現が付与されるだろう。その例がすでにあり、プロテニスプレーヤーの大阪なおみが、BLM運動の自家製マスクをつけて覆面で競技場に登場した。
 多様な模様のある覆面用具(マスク)ばかりでなく、覆面の姿が人々の意見主張し、立場を表現するのである。これは文化である。

 ところで、ここまで書いたような覆面放任主義とは全く反対の方向として、覆面規制主義が起きるだろう。のほうづに覆面がはびこると、防疫にもならないし、犯罪も容易になるとして、顔面を覆う姿を厳密に法令で定める国家が出てくるだろう。
 マスク全体主義というか、マスク階級主義というか、マスキズムMaskismというか、そういう思想が台頭するだろう。この話は面白そうなのでまた別に考えたい。

●覆面技術の進歩

 当然のことにマスクにもデジタル技術がもたらされるだろう。マスク型スマートフォンが登場して、会話を肉声でなくてネットでやるようになる。マスクの表面が表示画面となって、言語に替わる会話の手段に使われる時が来る。

 マスクを外さなくても飲み食いできる機能が付くだろう。覆面であってもAIカメラ技術で素顔を作成できる技術が出るだろうし、逆にそれを防ぐ技術も出るだろう。
 いろいろと技術的覆面術が進歩するに違いない。そのたびに生物としての人間の肉体が後退する。いや、もしかしてそれがコロナによる人間の突然変異出現を促すものかもしれない。突然の進化の時が来る。

 いま最も気になっていることは、覆面文化到来を容認するかどうかという、覆面派人類とアンチ覆面派人類の戦争になるかもしれないとの思いである。
 現に、国や地域によっては、コロナ感染防止のために覆面義務付けが法的に強制されるところもある一方で、治安に不安がある地域や国では覆面禁止法令が出されている。広く見れば両派の戦いはすでに起きている。

 コロナは、政治と文化と技術の三つ巴の中で21世紀文化を作り上げるのだろう。これからどうなるのか、コロナがもたらす身近な風俗文化闘争が始まりつつある。
 さてこの話はどこまでもだらだらと尽きないし、自分でもこれが底が浅いお遊びの俗論と分っているから、この辺でやめたいのだが、くだらない面白さがあるので、そのうちにまた続きを書きたい。

20200927)

参照:コロナ大戦おろおろ日録2020/01/24~ 継続中http://datey.blogspot.com/p/corona.html

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