2009/08/29

173【横浜都計審】市民委員は審議会でまたもや独り相撲であった

 公募に応募して昨年11月から委員となった横浜都市計画審議会に、昨日はわが4回目の出席であった。
 議題は3つあったが、図らずも、またもや、わたし一人がしゃべったのだ。委員のみなさまどなたも、ご意見を出されなかったのであった。
 いつも寡黙なるわたしが、なぜに都市計画審議会では饒舌になってしまうのか、われながら不思議である。もちろん饒舌であるか否かは、他の委員との比較にすぎないのだが、。

 前回と同様に今回も廃棄物処理場の新設許可議案があった。前回はわたしは現地を見てきて、その周辺を住宅立地規制をする附帯決議を提案したのだが通らなかった。
 今回も現地を見てきて、前回のような混在可能な立地ではなかったし、環境アセスメントで審査会が専門的な注文をつけているので、内容的には特に異議はない。
 ただし、手続きおいて法的な疑問があったので、その指摘をしたのだ。これが今回の審議会の唯一といってよい審議であった。

 しかし、である。その法的解釈が実はわからなかったのであった。
 え、こんなこと、法に基づいて執行する行政庁が知らなかったのか。
 法学部教授の学識委員が解釈を披瀝されたが、それが定説というものでもないらしい。
 ふ~ん、そうなのか、法律を読めば誰もが疑問に思うはずと、そう思ったわたしは、どうも変な人らしい。 

参照→ ●横浜市都市計画審議会報告

2009/08/27

172【世相戯評】またもや翼賛選挙

 8月30日が衆議院選挙投票日とて、大勢の立候補者名の一覧が新聞に載っている。
 さて、年寄りがどの程度いるものかと、70歳以上を数えていったら、いるわいるわ、20名を越えたところであほらしくなってやめた。
 では80歳以上だ、いるのかしら、いた、81歳!、名前を見れば、おお、ドクトルナカマツだよ、あの、発明と選挙でいつも出てくる、あのお方である。そうかあ、さすがに80歳を越えたのか、なになに、あれ、幸福党なの?ふ~ん、まあ、お元気でね。
 もう少し見ていったら、いた、今度は85歳!!、全くもって後期高齢爺バンザイである。よくやるものだ。以上二人であった。

 まてよ、65歳から74歳までが前期高齢者とすれば、そこから先の10年の75歳から84歳までが後期高齢者かしら、ならば85歳からはなんというのか、末期高齢者か、その先は晩期とか、ああ、なんだか終期が見えてくるなあ、、。
<後日追記090831>選挙が終わった。ドクトル中松は落選、というよりも幸福党が泡沫党というか、全国で惨敗であった。   

 ◆◆

 今朝の朝日新聞には「民主320議席獲得も」なんて、予想記事が出ている。これがあたるかどうかは別にしても、なんだか民主党翼賛選挙ムードであるのが、いやな感じである。民主党がいやとかいいとかじゃなくて、翼賛選挙がいやなのだ。
 2005年の郵政解散(そういえば、今回の解散はなんというのかしら)のときに、こんなことを「まちもり通信」コラムに書いた。

 ===まちもりコラム2005・10月号===
●翼賛選挙でだいじょうぶかしら
 私が生まれて3年目の1940年、大政翼賛会なる組織ができて、政党はみな解散してこれに加わり、東亜新秩序建設に邁進、つまり戦争体制が整い、次の41年に戦火が始まった。
 2005年9月11日、戦後55年体制の総決算がされたようだ。自民公明民主大政翼賛政治が始まった。まさか戦争じゃないだろうが、何か不安でしょうがない。
 カウンター勢力かとおもっていた民主党の若旦那党首の言うことが、自公と大差ないように聞こえてきて、つまり翼賛選挙だったとわかった。
 最近はこういう状況を招いたことをポピュリズムというそうだが、昔は衆愚といった。 5年前の9月11日のニューヨークでの事件でも、衆愚が原因にも結果にも悲惨を招いている感がある。(051002)
  ============

 さて2009年8月である。あのときの衆愚の結果が自民党にお任せ政治をさせてしまい、今の世相に至り、今度は民主党にお任せ衆愚になるんじゃあるまいか。
 あの時に自民党お任せ政治にさせてさすがにこれはいけないなと、衆愚も若干は「衆賢」を取り戻したのが、参議院選挙の結果で、いわゆネジレ国会で自民党チェック体制を作り出したのであった。
 さて、こんどは衆議院でも民主党にボロ勝ちさせたら、もう本当に翼賛選挙になっちまうぞ。高速道路タダなんてアホな政策が通って、地方都市は疲弊するぞ、。
 適当に勝たせた方がいいですよ、。
<後日追記090831>選挙が終わった。まったくもって、この前も今回も翼賛選挙そのもの、ちょうど自民と民社を裏返しにしただけである。これからの政治も、これまでと同じになるのだろうか。新人と女性の頑張りが通じるか、、。

2009/08/25

171【世相戯評】日の丸・軍旗・御真影

 なんでも民主党のどこかの会で、あの赤だるまみたいな党マークをつくるのに、日の丸の旗布二枚を切り張りして使った。
 そうしたらTVの党首討論会で、自民党の麻生さんが「国旗を切り刻むとは何事か」って噛み付いて、民主党の鳩山さんが謝ったのだそうだ。

 これで連想するのは、戦時中の御真影(天皇の写真)と軍旗である。
 政府が各学校に配布して拝ませた御真影を、火事から助けだそうとして校長が焼死したのが美談であったし、軍旗はそれこそ戦場だから命と引き換えた兵士が無数にいた。 どちらも天皇の分身として、文字通りに死んでも守らなければならなかった。
 抽象的シンボルが具象的物件に偶像化して取り替わり、人の命までも奪った時代が、私がこの世にいるときにさえあったのだ。
 星条旗模様グッズが下着まである垂れ流し的偶像文化のあちらと、党首討論の政治争いの種にまでなる不可侵偶像文化のこちらと、その文化の違いが興味深い。

 御真影で思い出したが、小学校(国民学校といった)にそれを格納する奉安殿なるものがつくってあり、朝礼では「奉安殿に敬礼!」と号令がかかった。ワルガキどもは「オオアンゴウにケツレイ」と言って無邪気に遊んだ(アンゴウとは阿呆の方言)。
 この記憶によれば「御真影に敬礼」ではないから、偶像化は写真から容れ物に移っていたことになる。そう、偶像は目に見えてこそ偶像なのである。

 わたしはこの日の丸合成事件で、おお、民主党赤だるまマークは実は日の丸のアレンジだったのか、ふ~ん、そうだったのか、と、麻生さんとはまるで正反対のことに気がついたのであった。
 偶像崇拝化が進み、民主党マークもダイエーのそれも偶像損壊と目の仇にされる時代が来るかもしれない、赤い水玉模様も、、、あ、日の丸弁当もか、いやこれは戦時中は推奨されたなあ、?、、。

2009/08/24

170【各地の風景】はるかなるベルリン

 偶然にTV放送の女性マラソン中継放送に行き当たり、ベルリンを走るらしいので見た。もちろん目的はマラソンじゃなくて、ベルリンの街並みを見たかったのだから、音を消している。

 なるほどベルリンの街はこうだったかなあ、と思いつつ見ても、何しろ行ったのは1973年だから、おおいに風景は変っているし、それよりも全く覚えていないのである。
 それとわかった建物は国会議事堂だけだった。例のドームをくっつけたヤツである。

 もちろんそのときには見ていないが廃墟だったはずだ。そのリニューアルの姿を雑誌で見て、これはすごいと思った。
 なにしろ国会をガラスの上から、一般の見物客がのぞくのだそうである。
 ついでに思い出したが、ブラジリアに行ったときも、あの国会議事堂の丸い屋根まですたすたと屋上を行けるのだから驚いた。日本だったらたちまちに逮捕である。話が逸れた。

 さてマラソン放送のマラソンのバックの風景を見ていたら、同じ風景が何度も出てくるのである。どうも同じところを何回もぐるぐる周るコースらしい。
 考えてみればそのほうがコース設定も進行運営も楽になるはずだ。ドイツ的合理主義か。もっとも、一周遅れなんてのが出てきたらこんがらかるだろうが、。

 だから終わりのほうは風景見物に飽きて、マラソンを見たら、なんと日本・中国・エチオピアの3女性がデッドヒートで、結局は一位は中国の女性であった。その名は白雪、おお、白雪姫がマラソンする時代になったのだ。
 この人が勝つだろうと思っていた最も体格もスタイルも良いエチオピア女性は3位だった。 日本女性が10歩のところを5歩で走る長い脚である。
    ◆◆
 今から36年前のベルリンは、まだ冷戦まっただなかの時代で、東西に分かれていて、その間を壁が厳しく隔てていた。
 壁の西側に接して見物のタワーが建っていて、そこから東を覗き込むと、壁の向うにもうひとつ壁があり、壁と壁の間に2重にバリケードがあり、その向うに鉄砲を構えた警備兵がいる。
 東西境界の川に沿う金網に花輪が掛けてあって、ガイドの説明でそれは最近に東から西に脱出しようとして、東の警備兵に討たれて死んだ人のためだという。
 西から東に観光バスで見物に行ったが、検問所の厳しさに驚いた。写真を撮ると討たれるとガイドに脅されるし、兵隊はバスの下の車の間に鏡を入れてそこに越境者が隠れていないか調べているし、そこらにいる兵隊はみんな銃を構えているし、国境とはこういうのなのかと信じられない思いだった。
 その検問所「チェックポイントチャーリー」(東側では「フリードリヒ通り検問所」と言ったそうだ)は、ル・カレのエスピオナージュ小説にも出てくるところである。
 東ベルリンでは、ソ連がナチスドイツに勝った記念施設ばかり見せられてうんざりした。
 とにもかくにも、マラソンなんて平和なことが、ブランデンブルグ門をゴールにして行なわれる時代になってよかった。
 参照→032オリンピックマラソンの風景

2009/08/21

169【都市政策】的はずれ緊急住宅対策

 今日の朝日新聞夕刊に「持ち家支援、利用4割 補正2600億円、大半残る」という見出しの記事がある。
 緊急経済対策のために「住宅金融支援機構」から住宅ローンを借りやすいように、09年度補正予算に盛り込んだ住宅取得支援策が、実際は4割しか効果を発揮していない。緊急対策になっていないのだ。
 あいかわらぬ持家政策偏重で、住宅政策を景気対策の経済政策にしていている。

 そもそも不景気な時代そしてこれからの低成長時代に、個人に巨大借金を奨励する政策が誤っている。今借りている住宅の借金返済ができなくて、住宅難民が出ている時代である。
 住宅を単に戸数だけで見ると足りているが、地域偏重、高額価格などで、実際は居住需要状況とマッチしていないのだ。住宅づくりが社会政策ではなくて経済政策だった誤りが出た。

 誰にでも必要な居住という権利の基本となる住宅を、西欧のように社会政策としてしない日本がおかしい。住宅建設という物的な経済政策であって、居住政策といわないところからいて間違っている。
 公営住宅を建てず、住宅公社を廃止し、都市機構の賃貸住宅を民間に移行しようとか、とにかく住宅賃貸住宅政策をないがしろにして、大借金国民を増やすのが景気対策なのか。

   ◆◆

 このところ新聞をにぎわす賃借人「追い出し屋」なんて商売が成り立つのも、賃貸借住宅が少ないから、つまり政策がないままに市場任せだからである。
 わたしの住む県公社賃借住宅は、追い出し屋はなさそうだが、それまがいのことがある。3年くらいごとに家賃改定、つまり値上げをするのである。
 その言い分は、周りの賃貸住宅が上がったからこちらも上げるというだけある。

 その根拠資料を示せと言いに行ったら、なんと「入居者には見せないことになっている」と回答。こちらは大いに腹を立てて情報公開請求をしたのだが、こんどは資料がないと回答してきたのであった。
 そんなことをもう2度も繰り返した。全くオハナシニならないのである。追い出したいのだろう。言っておくがわたしは家賃はきちんと払っている(いつまで払えることやら)。

 今度の選挙に向って、この住宅政策を転換して社会政策としての居住政策を打ち出している政党は、ない。
 各党の党首でも誰でも、いちどは民間の木造賃貸アパートなるものに住んで見ればよい。日本の住宅政策の至らなさがわかるはずだ。大邸宅に住んでいては本当の居住政策は見えないだろう。
参照◆賃貸借都市の時代へ

2009/08/19

168【世相戯評】新興宗教政党?

 いつもの表が騒がしさに今日から衆議院選挙立候補者宣伝カーが加わった。
 新聞に候補者の届出の一覧表が載っている。単独とか比例とかってわけがわからない。

 政党の名前が一覧表にずらーッと並んでいるが、聞いたことがあるようなないようなものもある。
 諸派という政党名と思ったら、その他の分類に入る雑魚政党らしい。かと思ったら、300人以上も立候補者がいる幸福実現党なる連中もここに含むと書いてある。
 え、人数じゃないのか、そういえば、政党名が堂々と書いてあるのに、立候補者1名という欄もある。では諸派という分類の基準はなんなんだろうか。わからん。(法による政党要件と新聞用語の諸派とは関係ないだろう)

 神奈川の立候補者一覧表の諸派欄に人数が書いてあり、欄外注に「諸派は幸福実現党です」とある。なら諸派じゃなくて党名を書けばよさそうなものを、、。
 念のために言っておくが、その党の肩を持つ気はさらさらない。ただ、「諸」とは複数の意であるから言葉としてヘンであるというのだ。

    ◆◆

 幸福実現党なんて聞いたこともないが、今回始めて登場したのだろう。ほかの新聞記事や広告を総合してみると、幸福の科学なる宗教団体(かしら?)がこれの本家らしい。
 つまり公明党と創価学会の関係と同じらしい。その昔、初めて公明党が出てきた頃の扱いもこうだったのかなあ、。
 ふ~ん、そうなのか、どうも宗教団体が裏にいる政党ってのは、なんだか薄気味悪い。

 それにしても宗教団体ってのは金があるのだなあ、こんなに泡沫候補を立てて、供託金没収額はいくらになるんだろうか。
  300万円×300人として9億円以上だよ、まあ、新聞などもタダで名前を載せてくれて、私でさえも名前を知ったくらいだから、これで布教活動費と思えば安いってところなのかしら、よく分からん。
 なんにしても庶民の身近な生活感覚ではない。

<後日付記090831>選挙が終わった。幸福党は全て泡沫候補ならぬ泡沫政党なみ得票で全滅だった。

2009/08/17

167【都市政策】まったくもって時代遅れそのものの民主党の選挙公約

 8月末の選挙に向って政局があわただしい。この選挙の結果で、もしかしたら民主党が内閣を組織する立場になる可能性もあるとかで、政治にあまり関心のない私も、ひとつだけ気になることがある。
 高速道を無料化するという公約が民主党の目玉らしいが、はっきり言って、これはおかしいと思う。 これまでにもこれがおかしいと言う人は多いようだ。
 その理由は、第1にCO2削減の環境政策に反していること、第2に財源問題の不明確さ、第3に負担の不公平、第4にむしろ渋滞が進む可能性があることなどである。
 ところが、どうもまだ言われていないことで、実は都市計画上での重大な問題があるのだ。
   ◆◆
 民主党ウェブサイトに、政策に関するQ&Aのページ(2003年10月)があり、高速道路無料化についてこんなことが書いてある。

「Q:東京近郊はわかりますが、地域経済はどうなのでしょうか?
A:地域経済も活性化されます。日本の高速道路は、料金が高い、そして出入り口の数が少なかったため、極めて使い勝手が悪かったと思います。ちなみにアメリカの高速道路の出入り口は、約3kmに一ヶ所ありますが、日本は約15kmに一ヶ所です。そこで、料金を無料にするだけではなく、出入り口の数を増やしたいと考えています。高速道路が利用しやすくなる、つまり生活道路になれば、高速道路の出入り口に街ができることになるでしょう。住宅建設だけではなく、商店も進出することになります」 
 また、同じく民主党のウェブサイトに、動画による政策解説があって、そこでこの件に関して、長妻昭政調会長代理がこうしゃべっている。
パーキングエリアなどが誰でも入れるようになるので、例えばそういう土地を使って、工場を誘致するとか産業を誘致する、あるいは遊園地などなど、地域振興の要になる可能性も出てくるし、、、、』 

   ◆◆
 21世紀の日本の都市計画は人口減少社会に向けて、20世紀の人口増加時代に拡大拡散した生活圏を、コンパクトにまとめて再編成し、都市の適切なる縮退をすすめることが主流になっている。
 民主党の言う「高速道路の出入り口に街ができ、、、住宅建設だけではなく、商店も進出することになります」とは、都市郊外に拡散している産業施設や都市施設を、高速道路インターチェンジ付近で更に拡大増設して、郊外開発を進める20世紀型の都市計画そのものである。

 いまごろ「地域振興の要」などとインターチェンジを持ち上げるなんて、時代遅れもは甚だしい。
 郊外のインターチェンジ付近の山林田畑をつぶして大規模商業施設を立地させる都市計画が、都市の中心市街地の衰退を招いて、都市住民の生活の不便さをもたらしいることは周知のことである。

 なかでもイオングループがその最大の元凶である(ちなみに、イオンの社長は民主党岡田幹事長の兄である)。
 高速道路が無料化するということは、これらの商業施設の市場エリアが広がることであり、この政策で民間企業としてもっとも利益を受けることになるはずである。それは今の都市問題の深刻さを更に推し進めるだろう。

 空洞化した中心市街地の再編成をどう考えているのだろうか。わたしは商業政策には興味はないが、それにしても自民党と公明党という今の与党公約の中には、商店街振興について言及しているのに、民主党にはそれさえない上に郊外開発促進とは、いったいどういうわけだろうか。

 思い出したが、民主党には知人の都市計画家・若井康彦さんがいるはずだが、彼はなにをしているのだろうか。
 政治に興味のないわたしにも、民主党のこの政策だけは、その基本的考えが気に入らないから、政権とるならぜひとも改めてほしい。

 ついでに言うが、インタチェンジは街への玄関口でもあるはずだが、どこのインタチェンジ付近も醜い商業建築と汚らしい看板だらけで、これがこの街の玄関の風景かと嘆かわしいばかりである。(090816)

参照・怖いぞ、郊外開発は生活圏を破壊する

2009/08/15

166【ふるさと高梁】夏の日の鎮守の森で

 ふと目覚めて見上げる窓ガラスの外の空には、樅と杉の大木の枝と葉が黒々と張りめぐらされている。
 枝と葉とが空を覆いつくさないあいまには、未だ薄暗い空を背景にして自然の自在な影絵の造型が見える。
 幼児の眼には、人の顔、動物の頭、怪物の形も見えて、はっと怖くなり布団にもぐりこんでまた眠りにおちる。
    ◆◆
 街の鎮守の神社は、盆地の東の山腹の森にある。
 道から石段を40段も登りつめたところに、南北30m、東西15mほどの平地が造成されて広場となっており、その片隅にわが家が社務所にくっついている。
 3方を樅、杉、松、檜、銀杏等の大木がある森がとりかこみ、もう一方の斜面には竹林がある。そこからまた20段ほど階段を登ると、社殿のある30m角ほどの平地があり、ここも森で囲まれ、背後は山林になっている。
 この境内地は、夏は蝉時雨に溢れて、慣れないと耳が痛いほどである。アブラゼミ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ヒグラシなど、初夏から真夏そして初秋へと、蝉の声はしだいに主流が移り変わる。森の中に縁台を出して、その上で蝉の声を枕に昼寝をする。
    ◆◆
 ある晴れた夏の日のこと、社務所の玄関先に近所の人たち10人くらいと、疎開児童の小学生たちが集まった。
 疎開児童引率の教師が持っていたラジオを、ここでこれから聴くのである。その頃、社務所には兵庫県の芦屋市の小学生1クラスが、アメリカ軍の空爆を避けて集団疎開してきて寝泊りしていた。
 8歳の少年のわたしもそこにいた。ただし、疎開児童たちを受け入れた側である。
 雑音の多いラジオからの言葉を、大人はどう聞いていたのだろうか。少年の耳には内容はわからなかったが、鮮明な記憶がある。
 それは、放送を聞き終えた大人たちが一列になって、社務所から広場へそして石段へと、一様に黙りこくってとぼとぼと歩く風景である。
 暗い鎮守の森から明るい太陽の下の街へ、それは時代の変わり目の象徴的風景として、思い出のなかの64年前の8月15日であった。
 父は月末に戻ってきた。彼の3回も兵役についた長い十五年戦争の日々が、ようやく終わった。
    ◆◆
 その夏休みが終わった日から、国民学校の教壇にある教師たちの戸惑いと転向を、少年ながらに目の当たりにした。
 教室机の並べ方が毎週のように変ったのは、民主教育実験だったのか。
 もっていた教科書に墨をぬった。なぜそれを塗るべきなのか、不思議だった。
 新教科書だといって、8ページ分を1枚に刷った新聞様の紙束が配布されて、裁断して本の形に綴じた。
 教師が黒板に書いたことを、いや、こういうことはいけなんだと、つぶやくのも聞いた。
 まったくもって、ひもじい毎日だった。少年は遊ぶのに夢中になってしまうから、気がついて突然に飢餓に陥り、母親に食い物をねだるが、なにもない。あの頃の親は実につらいものだったろう。
 学校給食のコッペパンと脱脂粉乳ミルクがおいしかった。家の前の境内広場は芋畑になり、人糞肥料の匂いが漂っていた。
 幼児の眼に怖かった樅や杉の大木も、沢山の実を降らした銀杏の大木も伐られてしまった広場は、今は駐車場となっている。耳を圧する蝉時雨は、今も降っているだろうか。
●参照→・戦後60年目の靖国(2005) 
    →少年の日の戦争ー母のための小さな自伝

2009/08/13

165【くたばれ乗用車】下種のマヌケフェスト

 選挙に行かない主義だが、今度の選挙はもしかしたら民主党がトップになるかもと、世の中が騒がしいように、新聞に書いてある。テレビ番組を見ないから、そっちはなんと言っているか知らない。
 そこで、政党の公約(最近ではマヌケフェストとかいうらしい)をウェブサイトで読んでみることにした。殊勝な心がけだと自分でも思うが、実はこれが結構手間がかかる。さっと出てこないのであるし、出てきてもこれが実に読みづらいのである。
 書きぶりも読みづらいが、見開き印刷用の原稿をそのままPDFにするものだから、画面では右左とスクロールが面倒なことおびただしい。html版でも、レイアウトが悪いから、途中でいやになる。他人に読ませようって努力がなっていない。どの政党もである。
    ◆◆
 全部を読むのがめんどくさくなったので、住宅・都市政策と高速道路料金問題だけ拾い読みした。
 公明党が住宅・都市政策について言及した文字数がいちばん多かった。コンパクトシティとかモーダルシフトとかトランジットモールとか、まあ、専門語というかオタク言葉でも書いてあって、ここは都市計画関係者が書いたらしい。
 もっとも、内容はプロからみると目新しいことは何もない、ただの羅列である。
 民主党の住宅・都市政策記述は、都市政策はなくて住宅政策についてちょっとだけある。
 わたしが注目したのは、「多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する」ことで、やってもらいたいが、具体的になにをするのかしら。
 「定期借家制度の普及を推進する」なんて書いてあるが、元はといえば借家人追い出しのためにできた制度であるだけに、これを使ってなにをしようというのか、貧乏賃借人には不気味である。
 自民党の住宅・都市政策記述は、民主党よりは行数が多いが、たいしたことは書いてない。
 「特に子育て世帯や高齢者等が安心して生活できるよう、子育て支援施設やケア施設の併設された住宅等、良質な賃貸住宅を供給する」のところに注目するが、具体的になにをするのだろうか。
    ◆◆
 さて高速道路路料金問題である。
 自民党は触れず、公明党は現政策を恒久化するとのこと。
 で、無料にする民主党である。こう書いてある。
===引用===
「30.高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る
【政策目的】
○流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる。
○産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する。
○高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの 経済的損失を軽減する。
【具体策】
○割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していく。
【所要額】1.3 兆円程度
===引用終り===
 その一方で、「CO2等排出量について、2020 年までに25%減(1990 年比)、2050 年までに60%超減(同前)を目標とする」と書いている。
    ◆◆
 民主党ウェブサイトに一問一答の動画がある。そこでこの件について長妻民主党議員が言っているのは、経済効果が大きい、特にインターチェンジ付近の開発を誘導するので工場や産業や遊園地を誘致することができる、とある。
 おい、語るに落ちたとはこのことだぞ。高速道路IC付近でいちばんの産業は、郊外型ショッピングセンターなのである。そして現在それをいちばん抱えているのが、ジャスコのイオングループである。無料化するといちばんうまい汁を吸うのがイオンである。
 巷の噂では、イオン社長は岡田さんといい、民主党の岡田幹事長と兄弟だそうである。まさかと思うが利益誘導ではあるまいなあ、。
 それはともかく、これじゃあコンパクトシティ時代に郊外開発を賞賛していて、公明党にも劣るじゃないか。自民党だって商店街振興策を言っているぞ。都市問題に弱い民主党である。
    ◆◆
 そしてまた、環境政策との矛盾について動画では、渋滞が減る可能性があるから、総合的に見てCO2はそれほど増えないように思う、と、あやふやなことを言っている。おい、大丈夫か。
 そもそも道路の渋滞なんて、朝から晩まで365日やっているのじゃないのだ。多分、1年の時間のうちの数パーセントに過ぎないだろう。それくらいなら我慢しなさいよ、1.3兆円だよ、これでほかにやることがいっぱいあるでしょ。
 これについては、NGOがしごくもっともな共同声明をだしている(12日現在で21団体)。
「高速道路無料化・自動車関連諸税の暫定税率廃止に、反対します~ 高速道路無料化・割引は撤回し、暫定税率は炭素税などにシフトを ~」
http://www.kikonet.org/iken/kokunai/2009-08-05.html
 政治の流れが変るのは何かに期待したいが、タダだからいいだろうって下種の人気取りマヌケフェストで、こちとら車に乗らないものにも1.3兆円と排気ガスを負担させるなんて、気に食わない。
 え、なに、流通費が下がるから車に乗らないものも恩恵を受けるって?、、、それなら、流通業トラックや乗合バスだけ無料にすればよろしい。遊び乗用車はど~ンと高額にしてね、。1.3兆円もあるなら、CO2削減に寄与する鉄道や路線バスなど公共交通に投資しなさいよ。

2009/08/11

164【父の15年戦争】石原莞爾の「世界最終戦論」を古本屋で見つけて買ったら

 野毛坂の古本屋で変な本を見つけて、つい、買った。
 石原莞爾著「世界最終戦論」(第一改定版1940立命館出版部発行)である。
 父の十五年戦争を追っていて、満州国に興味が深まった。満州というキメラには前から興味はあったのだが、そこに身内が命を懸けたとわかると、それなりに興味の湧き方も深まるものだ。

 徘徊老人のいつものコースの横浜ご近所古本屋探検は、ちかごろは105円棚の充実する伊勢佐木町ブックオフで思いがけない掘り出し物に凝っているのだ。
 特にこのところの十五年戦争関係資料の掘り出し物は、「日中戦争」児島襄の第1巻と2巻であったが、この類はブックオフにはめったに出ない。

 やはりブックオフでは奥が浅いので、古典古本屋にも回帰しつつあり、今回の石原莞爾である。
 ときには古典的な紙魚の香りがする古本屋さんにもいかないと、禁断症状が出る、ということもある。
 満州のことについてなにを読んでも教祖様の如く石原莞爾が出てくるし、とくにその「世界最終戦論」は、彼の満蒙植民地化論のバイブルみたいに書いてある。その後の世界の構造を予言したとも書かれている。

 気になっていたが特に探す気もなかったのに、偶然にその論の本に出会ったのだ。四六判、100ページ足らずで定価40銭、古本価格は1000円であった。
 1940年9月10日初版5000部発行、すぐに20日には増刷5000部、更に重ねて買った改訂版まで合計3万1千部発行である。
 大ベストセラーである。時代の空気をどう読むべきなのだろうか。

 たまにこのような戦前戦中の古い本を買うことはあるが、これまではほとんど建築か都市系の本であった。
 いよいよ老人趣味になってきたか、、、もっとも、初版本や稀覯本をあさるような古書趣味は全くない。

追記:その後、青空文庫に「世界最終戦論・戦争史大観」という石原の著書があるのを見つけた。買わなくてもよかったのだ。インタネット時代はすごい。