2008/07/26

022【東京駅復原反対】東京中央郵便局の建て替え建築案はパロディとしての文明批評デザインになっている

 東京駅丸の内駅前広場の南にある東京中央郵便局の改築計画を、日本郵政会社が2008年6月25日に発表した。
 1931年に竣工して現在に至るまで使っているビルであり、建築界ではヨーロッパからのモダニズムデザインを正面切って取り入れた最初といってもよい建築で、そのころ逓信省に所属した建築家・吉田鉄郎の名作としている。

 丸の内の隣の日比谷の三信ビルが2008年に壊されて、このあたりの戦前建築の取り壊しと保全が一通りけりがついたあたりで、最後に中央郵便局の改築が登場してきた。
 その背景などは別に記しているので、ここでは発表された改築案(「JPビル」というそうだ)の絵について考えてみたい。

 JPビルは、現在の中央郵便局舎の5階建ての形態はそのままに下層階に保全し、その上にガラス張りの超高層建築が立ち上がっている。全部で地下4階・地上38階にするそうである。
 これは丸ビルよりも一層多い新丸ビルと同じで、丸の内最高の高さになるのだろう。

 この絵をしげしげと見ていて、はっと気がついたのだが、この上部構造の超高層建築のデザインは折り紙飛行機なのである。ガラス板で折ったヒコーキは今、下部構造たる中央郵便局舎に突っ込んできて、まっさかさまにブスリと突き刺さったのだ
 次の瞬間、、、、折りガラスヒコーキは、、、ある幻惑にかられる。21世紀幕開けの年にニューヨークで起こったあの9.11事件、これはそのパロディにちがいない。
 業務中枢のマンハッタンと丸の内、最高に高いWTCとJPビル、そしてガラスに託したヒコーキのメタファー、これはパロディであるとしても、真正面からの文明批評と言わねばなるまい。

 地球の裏側の9.11事件は、日本も巻き込む地球全体の事件となった。WTCのあのあまりにも無残な崩壊は、20世紀工業主義建築の行き着いた先を見せたのであった。だが、かの国はそれを承知できずに、超・超高層建築を拡大再生産している。そして、こちらの地においても、。

 そうしたところに、かの建築家ヘルムート・ヤーンが示したデザインは、9.11事件後の世界の危うさを、この地の象徴的な場所において、ガラスと折り紙ヒコーキというもろく儚ない象徴で表現して見せてくれたのである。これを文明批評と言わずしてなんであろうか。

 日本の建築界は今や、西欧から移入した技術を素朴に表現する赤レンガ東京駅舎(1914年)と中央郵便局(1931年)を従え、その克服を超えて文明批評にまで昇華する段階に至ったのである。慶賀すべし。

 とは言っても、このようなパロディも文明批評も、かの地ではなりたつまい。ひとつにはそのような批評を受け入れる土壌がないだろうこと、そして二つ目に、折り紙ヒコーキの日本では誰もが知る遊びの知識の素地が、かの地にはないからだ。

 こうして日本だからこそ成立する文明批評をもって、文明批評という普遍性を持つだろうかと、言い出しっぺながらも、疑問も出てくるのである。さりとて、このパロディを捨て去るのももったいない。(080726)

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