2010/09/05

313【言葉の酔時記】ヘンな「させていただく」の大流行

これほどまでになっているのかと、驚いた。2010年9月4日の朝日新聞(Be on Sunday)にあるアンケート結果である。
「させていただきます」がヘンであるか、ヘンでないか4202人の読者に聞いたところ、変だ54%、変でない45%だというのである。
 おおそうか、これほどにも「させていただく」が、変でない言葉として普及しているのか。

 世の中の言葉はこうやって、正反対の方向に変わっていくのだろうか。
 とにかくわたしは「させていただきます」を聞くと、背筋がムズムズするので、できるだけ聞きたくない。珍妙な遣い方だとふきだしてしまう。
 アンケート回答にもその例があり、不動産屋にこのあたりの道は渋滞するかと聞いたら、「朝はかなり渋滞させていただきます」と答えたという。読んで吹きだした。

 ある会社に電話をして知人につないでもらおうとしたら、本日お休みをいただいておりますとか、お休みさせていただいておりますなんて答えがあった。
 ほかでも一度ならずそれがある。おいおい、おれは休ませろなんて言った覚えはないぞといいたくなる。

 もちろん使って良いときもあるのだが、ほとんど正しい使い方であることはないのが原状だ.。これほどの割合で正しいと信じている人がいるとはねえ。

(追記)9月6日朝刊に小澤征二さんが「ひとこと謝らせていただきます」といったとある。腰痛で予定していた指揮ができなくなった音楽会でのこと。
 小澤さんはわたしと同じ年齢であるはずだ。う~む、困ったもんだ。間違って遣ったのでないとすれば、謝れといった人がいたのであろう。
   ◆
 この言葉については既に別に書いているが、ここに全文掲載しておく。

●イチャモンコラム8月号●させていただきたくない
 「作業スタッフ4~5名で伺わせていただきまして、お部屋の中からお部屋の中までお運びさせていただきまして、インターネット割引をさせていただきまして、できるだけお勉強させていただきたいもので、上司に交渉させて いただきましたところ、100,000~120,000円(税別・保険代(1,000円))まで、何とかOKを、取らせていただいたのですけれども・・・」(原文のまま)

 これは最近、引越し見積もりをインターネットで取ったら、ある業者からの返答メイルの一部である。オオ、6回も「させいてたただく」の大インフレ。全文この調子で、目が引っかかってチカチカイライラする。

 この10年くらいだろうか、「させていただき」大流行、挨拶なんぞで舌を噛みながら言っているやつもいる。
 元来「させていただく」の意味するところは、「あなた様のご意思に従ってそのようにいたします」という謙譲言葉とわたしは解釈しているので、こちらがそうは思っていないのに勝手にそう思わせられては困るし、腹も立つのである。

 「お疲れさま」とか「ご苦労さま」とか、若いやつから言われるとムカッとする。
 言うほうは無邪気なもんだろうが、元来はねぎらいの言葉は上から下に言うものである。お前にねぎらわれるほどもうろくしてないよ。

 居酒屋で注文すると「それでいいですか?」、ムカッ、そんな安物注文で悪かったよなあ、俺はそれいいから注文したんだっ。

 電車で「お忘れ物ございませんようにご注意を、、」と放送、おいおい、車掌の荷物までオレが知るかよー、「ございます」は自分のことに使うもんだよー、・・なさいませんようにって言え。

 故障の時など「ご迷惑をおかけしました」といって、それでおしまいの放送がよくある。迷惑かけた認識はあるらしいが、だからといって「お詫びします」とは言わないから、詫びないのである。

 この暑いときに、どうか日常語くらいは、いらいらさせていただきたくないものである。年とると骨が折れることが多くなるもんだなあ。(020722) 

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