去年のはじめに東京駅の八重洲口に行ったら、巨大な真っ白な壁が出現していて驚いた。大丸取り壊し工事のための囲いである。この白い壁の架かる前は、ビルの黒いガラスのカーテンウォールであった。
ごたごたした八重洲駅前に、幅200m、高さ50mくらいの真っ白な壁が立ちあがるのは、クリストのアートかと思わせるようなシュールリアリズムの光景であった。ただ真っ白で、いまどき流行の広告もなくて、潔かった。
ごたごたした八重洲駅前に、幅200m、高さ50mくらいの真っ白な壁が立ちあがるのは、クリストのアートかと思わせるようなシュールリアリズムの光景であった。ただ真っ白で、いまどき流行の広告もなくて、潔かった。
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先日久しぶりに八重洲通りから東京駅を眺めたたら、白い壁は下のほうに一部だけになっていて、丸の内側の高層ビルがいくつも見える。このビルを壊した跡は低層の建物を建てるらしい。新しい八重洲側の顔になるだろうが、上空に見える新丸ビルと丸ビルの超高層風景は、なんだか正面性がなくて中途半端にごたごたしている。
それは八重洲通りと丸の内の駅前通り(通称・行幸通り)とが、軸がずれているからだ。八重洲側から見ると半端に正面に立つ新丸ビルの、これまた半端なデザインが気になる。
丸の内側のビルの建築家は、八重洲から見える景観を考えて丸の内のビルを設計すべきところを、多分、忘れていたのだろう。
同様に今後は、八重洲・京橋側の建築のデザインは、丸の内から見通す景観を考えて設計しなければならない。
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八重洲口から東京駅に入るには、この工事中のごたごたしたところを通り抜けなければならない。
そこを歩いていてふと思い出したのは、あれは1954年だったと思うが、修学旅行で東京に行き従姉にあったときが、まさにこんな工事中の東京駅であった。ごたごたした駅を通り抜けるときに、いま駅ビルを工事中なのだと教えてくれて、どこかのレストランでエビフライをご馳走してもらった。
そのときは、いま壊しつつある駅ビルが完成間近の建設中であったのだ。あれから55年でビルは命を終えた。
わたしより後から生まれてきたあんな巨大で頑丈なものが、わたしよりも先に消えるなんて、なんだかこちらが長生きしすぎているように思えてくる。
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