2014/09/04

994【横浜都計審傍聴6】都市再生特区って都市計画で災害を増加する仕掛けのような

前回からの続き)

・こんなことを都市計画で規定するほど危険なのか

 横浜駅西口駅ビルに関する二つの都市計画、都市再生特別区地区計画について、文を読み絵を眺めていて、都市計画は都市防災について何ができるのだろうかと考え込んだ。
 この二つの都市計画の特徴を簡単に言えば、都市再生特別地区では容積率を800%を1240%に緩和したこと、地区計画では建築の中身をこまごまと決めたことである。
 
 地区計画を読んでみて、さすがに3・11以後のことであるためか、防災についての記述が、目標のお題目だけでなく、いろいろ多いことに気がつく。
 最近は、こういうことを書くようになったのか。
 例えば、地区施設の「歩行者通路は災害時に来街者を安全に避難させるための避難経路としても活用する」、建築物には「地震や津波発生等の災害時に、来街者の滞留や避難が可能となるスペースや帰宅困難者の受け入れスペースを確保し、滞留者・避難者・帰宅困難者の対応を積極的に行う」、そのほか、地域防災対策拠点、防災備蓄庫、耐震トイレ、雨水流出抑制施設などを設けろとある。

 その具体的な場所は、都計審の資料に書いてあり、滞留者10000人と帰宅困難者3000人分の受け入れ場所を建物の中と屋上広場に、地域総合防災拠点を建物の地上階の中に、雨水貯留ピット200トンを地下の奥底に、それぞれ計画している。
 それはそれで災害対応施設を設けるのは、まことに結構なことである。
 とは思えども、一方で、こういう防災施設の設置を都市計画で法的に担保しなければならないほど、つまり建築に任せておけないほどに、ここは危険なのか、とも思わせられる。


・建築は壊れないという神話があるのか

 本当にこれでよいのかと疑う気持ちを否めないのは、それらのいずれも建築物の中に設けることである。
 大地震で大都市の都心で建物群が壊れ、上下水も流れず、電力も絶えるという状況は、阪神淡路震災のときに行った神戸で、惨状にじっくりとお目にかかってきた経験がある。
 滞留者や帰宅困難者を受け入れる建築物が、大地震で壊れ、水も電気もないことが起きると、どうなるのか。防災拠点が建物の中にあるのも大いに気になる。

 つまり、リスク低減策を、リスク発生源の巨大建築の中に取り込んでいるのだ。リスクなるものは分散するべきであろうと思うのだが、どうか。
 特に、建物だけにに頼るのは危険である。災害時には公園広場道路などの公共公開空地が災害低減に大きな役割を果たすことは、これも阪神淡路震災でけ経験済みである。
 この西口駅ビル建築は、どんな大地震でも壊れないという前提に立っているらしいが、関連してすぐに思い出すのは原発安全神話である。

 ここはやっぱり、建築は壊れるものという前提に立つべきであると思うのだ。
 その点で、この地区計画には、公共公開空地が地上部にはほとんど無いのは、かなり危ないような気がする。西口地区を見回しても、広い空地は道路くらいしかない。まさか新田間川の中に避難もできないだろう。あ、高速道路が壊れて、川もだめかも知れない。

 「エキサイトよこはま22」を見ると、横浜駅西口地区を超高層建築街にしたいらしい。だが、大災害に備える大公園がない。
 例えば、東京駅丸の内には旧江戸城、西新宿には新宿公園があるが、横浜西口地区には、それらしい公園はどこにも見当たらない。

 以下に、いずれも同じ高度(127km)からの撮ったグーグルアース空中写真を並べる。比べてみると、横浜駅西口地区が過密でありながら、公園はひとつも見当たらないことがわかる。
新宿駅西口地区 (以下同じスケールでの比較)
横浜駅西口地区
東京駅丸の内地区
 わたしが知っていた都市計画は、これだけの大容積緩和をするなら、それに見合う公共公開空地を地上部に提供することと引き換えであった。公園、緑地、広場、公開空地などである。
 ところが、近頃はこういう引き換え無しの、太っ腹大盤振舞緩和都市計画をするようになったらしい。
 大盤振る舞いをすればするほど、災害リスクが高まることは、誰でもわかることだ。
 なにしろ、「災害」は人間が居るから起きることである。人間がいなければ、地が揺れようと火が吹こうと海が来ようと、災害ではないのである。
 災害は人間が創り出すものである。


・都市計画が災害を促進しているような

 太平洋戦争末期に、アメリカ空軍は日本全国の主要都市を空襲して焼き払った。山や田圃は空襲しなかったのは、それでは敵国に損害を与える規模が小さいからである。
 あのころは、まるで、いまの海から大地震がやってくるという恐怖を、空から火が降ってくる恐怖と言い換えると、時間を縮めた早回しのような災害頻発時代だった。
 だから、大都市は疎開をやった。建物疎開では都市の建物を壊して空間を開けること、人間疎開は子ども、老人、女性たちを都市から田舎に避難させた。
 そう、都市の空間も人口も密度を下げて、災害リスクを分散したのである。あのころのことが今の教訓になるとは、皮肉なものである。

 都市計画で容積率を高め、それに応じた建築が建つと、それだけ多くの人間が集まってくる。例えば、土地だけなら100人も集まれば満員の広さのところを、1240%もの建築を建てると1240人が入ることになる。つまり災害リスクも12倍余にもになる。
 特に鉄道駅では人は集まってくるし、そこにさらに超高密超高層建築を建てると、いったいどうなるのか、寒気がするほどだ。リスクを増大させている。
 人間を集めれば集めるほど、災害リスクは増加する。その建築内に防災施設をつくっても、量的にイタチゴッコだし、建築が壊れたら使いものにならない。とにかく横浜駅西口地区には、災害時に最も役立つ公園緑地が全くない。

 そのあたりの心配は、横浜市都市計画審議会の委員の方々は、お感じならないのであろうか。委員のおひとりが洪水対策の質問をなさっただけで、簡単に審議終了した。
 都市再生特区なんて言って、なんだか都市計画が災害を増加する仕掛けになっているような気がする。
 今や、太平洋戦争末期のように、建物も人も疎開させる時が来ているような気もする。人口減少時代になっているから、ちょうどよいとも思いますがねえ。
 どうでしょ、都市疎開特区っての作っては、、。

 と言いながら、これからもわたしは、あの駅を使い、駅前で呑んだりするだろうが、まあ、わたしは先が短いからどうでもよいのだ。若い人たちが気の毒である。
 でもまあ、こうやって、都市計画が建築の中に入り込んで法的規制をするんだから、横浜は安心な街ができるんでしょうね。そうか、横浜は事実上、許可制の建築制度になるんだな。

参照→993【横浜都計審傍聴5】横浜駅西口駅ビルはどんなエキサイトなデザインだろうか

参照→これまでの横浜都計審イチャモン弧乱夢

参照→●あなたの町の都市計画はこんな会議で決めている(要約版)  ●本文版
https://sites.google.com/site/matimorig2x/essay-cityplanning
https://sites.google.com/site/matimorig2x/tokeisin

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