2014/09/22

999【福島核毒被災地徘徊1】当たり前の農家の風景にひそんでいる不気味さに戦慄する

 この一枚の写真は、日本の典型的な農家の風景である。
この何でもない風景に潜む不気味さを観よ
建っている一連の建物は、住居の母屋、車庫、作業場、倉庫などだろう。
 背後にある森は、かつては薪炭や肥料を得るための里山であり、もちろん防風林でもある。今は用材となるスギ林であるが、よく見れば近頃珍しく、下刈りや枝打ちの森林施業がされている。
裏山にズームアップしてみる
家の前には畑があり、作物をつくってはいないが、草取りはきちんとされているようだ。
 そのまた一段下には田んぼがある。今は黄金の穂が広がる実りの秋だから、ここは少し早いが既に稲刈りが終わったらしい。
 乗用車や軽トラックが見えないのは、家族は野良仕事や買い物に出かけているのだろう。

 だが、これは何も知らない人が見たらそう思うであろうと書いたのだが、実はとんでもない大間違い解釈なのである。

 裏山をよく見ると、地肌が見えるほどに下刈りをして、しかも落ち葉まで掻きとっている。いまどき林内低木や草本を伐って薪にするはずはないし、落ち葉を集めて肥料にするはずはない。枝打ちにしてはいい加減すぎる。
 実は、放射性物質を除去する作業の結果なのである。ここは福島県の飯館村の中、そう、あの福島第1原発事故で、東電から大量核毒空襲を受けた核毒被災地である。
 裏山の妙な手入れの姿は、林内の核毒を除去する除染(この言葉はおかしい)なる作業の結果である。造林地の森林施業ではないのであった。

 畑にも田んぼにも作物が見えないのは、田畑で食料となるものをつくっても、食べられないから農作が不可能だからである。
 あれから3年、田畑の耕作を放棄すれば、今や草ぼうぼうの原野になっているはずが、見たところではきれいな草地であるのは、核毒除去のために農地の表土を漉き取ったあとを、草取りをしているからだろう。

 左の方に電柱が立ったあたりの下に、黒い袋が横に並んでおいてある。
たくさん並んでおいてある黒い袋と何も作物のない田畑にズームアップ
この袋の中にらは、裏山から集めた核毒まみれの落ち葉や樹木の切れ端、あるいは畑の草や土が入っているのだろう。いずれ、これは集められて、第1原発近くにできるであろう中間処理場に行くことになる。
 この日本農家の典型的な平和な風景は、実はそのような不気味さを湛えた惨状の風景なのである。

 だから、普通なら必ず庭先に見える乗用車や軽トラックが無いのは、ここには人が住んでいないからである。核毒の地を逃れてどこかで暮らしているのだろう。
 なにも生産できない、だれも居ることができない、東電核毒が創り出した風景である。
 そう思って眺めると、わたしが支払った電気料金で作りだした核毒が降り積もり、わたしが支払った税金でそれを除去する費用が降り積もり、わたしが支払った電気料金による東電補償金が降り積もっているこの風景は、戦慄すべき状況であることに気が付く。
 
 9月20日と21日に機会あって、福島県相双地区視察バスツアー(主催:日本都市計画家協会東日本大震災復興支援タスクフォース福島チーム)に行ってきた。
 この農家の不気味な風景は、その旅の中のほんの一部の不気味さであり、この先いくつもの不気味な風景を見てきた。
 そのうちのひとつ、典型的な不気味な風景を予告的に載せておく。
福島第1原発が見える東電核毒汚染+津波被災地の風景

 福島市から南相馬市へ入り、南へ南へと核毒地帯を縦断して、いわき市から抜け出てきたのであった。かなり放射線量が多いところも通った。
 新聞やインタネットで入ってくる情報で、ある程度は知っても隔靴掻痒の感は免れない。しかし、勝手に入ってみてくるわけにはいかないので、気になっていた。この度、日本都市計画家協会の支援タスクフォースチームが企画してくれたツアーに乗ったのである。

 昨年秋と今年の春に見てきた宮城と岩手の津波被災地の荒れ方はものすごいものだったが、案内がなくても目で見ることで、かなりのことがわかる。
 だが、福島の核毒被災地は、案内がなくて目で見ただけでは、ほとんど本質を理解できないだろう。被災以来現地に入りこんでいる家協会の支援チームメンバーと現地の人たちの案内で、今回は多くのことを知ることができた。核毒被災風景の観方が分った。
 東電原発核毒汚染地帯で観たこと、聴いたこと、考え込んだことを、このブログにしばらく連載する。つづく

家のそばの森はどうやって除染するの?(環境省)
https://josen.env.go.jp/material/pdf/shinrin_20140221.pdf

地震津波核毒オロオロ日録
http://datey.blogspot.jp/p/blog-page_26.html


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