横浜で徘徊老人をやっていて、伊勢佐木町商店街に「肉屋の正直な食堂」なる看板を掲げた店があることを書いた。→横浜ご近所探検・伊勢佐木町
書いただけでは申し訳ないので、今日、夕食をそこで食ってきた。カウンター席だけしかなくて、そのカウンターに電磁誘導加熱装置(induction Heating)がずらりと並んではめ込まれていて、客はそこに置かれた鍋物を煮ながら食うのであった。
牛、豚、鳥の肉のいろいろな鍋料理がある。しかし、鍋だからとて大勢で囲むのではなく、小さな鍋にご飯と味噌汁がついていてひとりで喰う。要するに肉鍋定食屋である。
蓋をした鍋物が出てきて、砂時計が落ちるまで待つと煮えるから、それから食い始めろという。
さてそうして食っていたが、鍋の中が焦げ付くのである。鍋料理ってのは普通はワリシタとかの汁や水で煮るのだが、ここでは鍋蒸し焼きなのかと思いつつポン酢で食っていた。
するとカウンターの中の女性がやってきて、鍋を指し示して「ミズイレマスカ、アリマスカ、、」みたいなことを言っている。「エッ、なに?」と問い返してもさっぱり要領を得ない。
別の男性がやってきて、「水入れるのを忘れてました、ごめんなさい」という。どうやら、厨房から出すときに、あらかじめ入れておく水を入れ忘れたってことらしい。 だから焦げている。
このあたりで私は気がついたのだが、顔は日本人と同じだが言葉から判断してこの二人とも外国人らしい。
厨房にいる間違えた張本人を見ると、これは立派なインドアーリアン系の外国人顔である。
その厨房の黒い顔も出てきて、「すみません。鍋と料理をとり換えて持ってきます」と流暢にいうのだが、もう半分も食っている。
そんなに食えないから、いいよいいよ、と言うと、「すみません、ではコーラを飲みますか」といって、気を使ってくれる。「年寄りはそんなに飲み食いできないから、いいよ」とやさしく断る。
「ねえ、君たち、どこなの、コーリア?」と聞けば、初めの男女は中国、厨房の男はバングラデシュだという。
この外国人3名で日本鍋料理屋をやっているのかしら、そんなわけはなかろうと、インタネットで調べるとやっぱりチェーン店であった。
マニュアルどおりにやれば外国人でも日本式肉鍋料理屋ができるってことである。 ただ、食べつけない料理には、料理人もちょっとマニュアルを間違えるってことか。
「肉屋の正直な食堂」は、こうしてそれなりに“正直”ではあった。だが、 「正直な食堂」であって、「正直な肉屋」ではない看板は、いまどきはどうも気になる。
参照→横浜ご近所探検隊が行く
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