2012/08/03

649歴史とは継続する文化の重層であるはずだが突然百年飛ぶ東京駅

今朝の新聞の広告に、東京駅の写真が出ている。こう書いてある。

100年の歴史に、
新しい100年が積み重なる。

Over The century
東京の玄関として歴史を歩んできました。数えきれない思い出を見つめてきました。
戦災で姿を変えていた東京駅丸の内駅舎が、世紀を越えこの秋ついに創建時の姿によみがえります。
それは、残っている部分を活かしながら原形に戻す「復原」。
これまでの100年に積み重ねられた歴史と文化を、これからの100年へ。

この広告文については、わたしは異議がある。なんだ歴史認識がおかしいよ。

「これまでの100年に積み重ねられた歴史と文化」のなかで、もっとも重要なことは「戦災で姿を変えていた」ことである。
その変えていた姿こそが、現代に生きている私たちの世代が見詰めてきて、ここで再会や離別の人生模様があった空間であった。


それよりも重要なことは、その姿こそがあの日本の悲劇であった太平洋戦争による破壊と、その後の復興の姿を象徴する記念碑であったことだ。
西の広島原爆ドームに匹敵する、東の東京駅丸の内駅舎という、人間の愚行と再生の記念碑であったのが、それがまったくなかったの如くにきれいに消え去った。

あの「戦災で姿を変えていた」姿は、下半身が第1次大戦の戦勝記念碑、上半身は第2次大戦の敗戦記念碑であり、まさに「これまでの100年に積み重ねられた歴史と文化」を表現していたのであった。
「戦災で姿を変え」る前の姿は、1914年から1945年までの31年間に対して、「戦災で姿を変え」た後の姿は、1947年から2007年までの60年間であった。



   その長い歴史の重層する姿を消し去ったのが、この「復原」工事の結果である。うっかりすると美名に聞こえる「復原」だが、そこには戦争と復興の歴史的証人の抹消という、負の事実もあるのだ。

この日本の悲劇のシンボルを消し去ったという新たな歴史も、決して忘れないように、後の時代に伝えてほしいものである。
もうすぐ8月15日がやってくる。
こうやって、次の時代へと歴史は歩んでいく。

東京駅復元反対論集(伊達美徳「まちもり通信」内)
まちもり通信(伊達美徳アーカイブズ)

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