2016/07/19

1205【名ばかりマンション広告】高層区分所有共同住宅いわゆるマンションの新聞折り込み販売宣伝を読んであれこれ思った

●え、7月18日が祭日って?

 今日は新聞が休みである。なぜだろうと聞けば、なんと昨日が祝日だったからだそうである。
 え、7月18日が祝日???、初めて聞いたぞ、なんだよそれ、え、「山の日」だって?、、そんな日がいつできたか知らぬが、そのうちに川の日とか畑の日とか、365日が祝日になるだろう。まあよろしい。
 新聞休刊日が増えても新聞代が下らないのが不思議だし、高校野球とか隣の東京都知事選挙とか、読みもしない記事ばかりのゴミを買う日が続く。

 で、しょうがないから新聞のかわりに、昨日の新聞折り込み広告を読むことにした。いつもは読まずに廃棄紙になる代物である。けっこう枚数があるが、買い物しないから、興味を惹く広告がなにもない。
 しょうがないから美麗なる広告として、新築区分所有共同住宅販売広告、早く言えば「いわゆるマンション」の広告を読むことにした。昔は仕事で読む必要があった時に読んだことはあるが、もともと買う気も金もないので読みたくて読んだことは全くない。

 なになに、熱海の「温泉付きマンション」かい、桜木町の「ファミリーマンション」ってか、武蔵小杉の「カスタムオーダーマンション」、あれ、もうひとつも武蔵小杉で「ツインタワー」かい、ムサコがどうしてそんなにいいんだろ。

●「名ばかりマンション」なるもの

 わたしは世にいう「マンション」なる言葉を大嫌いである。昔の不動産屋の誇大広告でつかった言葉がいつの間にか世間に通用して、あげくのはては「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」(マン円法?)なんてものができた。
 mansionのことをマンションというのは和製英語であり、標準英語ではcondominiumという。では標準英語のmansionとはなにか。アメリカ人に聞いたら、大統領公邸のホワイトハウスのような大邸宅のことだそうである。ウサギ小屋をマンションとは言わない。
 そこらあたりにできる「マンション」は、「名ばかりマンション」である。
アメリカ大統領が住むホワイトハウスのような豪壮大邸宅をマンションという
ついでに、その名ばかりマンションの一戸一戸を「邸宅」と、広告には書いてある。
 あのなあ、「邸宅」ってのは「低い家」って意味なんだよ、ほら、邸のヘンと低のツクリが同じでしょ、わかるかい。超高層の邸宅なんて超誇大広告してはいけませんよ。
 ついでに、刑法での邸宅の意味は「空き家」のことで、19世紀日本の西洋法典翻訳言葉がいまだにそのままだそうである。不動産屋が売るのは原則として「空き家」だから、あながち間違いではないけど、、。
http://style.nikkei.com/article/DGXNASDB05004_V01C13A1000000
 
 というわけで、ここでは「区分所有型共同住宅」のことを「分有アパート」ということにする。
 アパートとは、apartment〈米〉「共同住宅の一世帯分の区画のこと」で、建物全体は apartment houseである。
 今の日本でアパートとは、2階建て貸借型共同住宅を言うらしいが、昔は日本でも中高層共同住宅ビルを、アパートメントハウスと言っていたものだ。例えば同潤会アパートがその典型。
山口文象設計「アパートメントハウス青雲荘」1936年
なんだか広告の内容よりも、その言葉にひっかかって前に進めないなあ。

●ゴーストタウン熱海はタワマンタウンになるのか

 さて、では広告を読むことにする。まずは熱海駅前に建つ「温泉付きマンション」、29階建て、335戸、超高層分有アパートビルである。
 熱海では建築高さ制限をしていて、この場所も31mまでしか建てられないはずだ。広告には高さを書いてないが、29階なら100mくらいはあるだろう。ってことは、これはその制限適用以前の申請建築なんだろう。

 わたしがこの広告の絵で注目したのは、その左にある建物である。これは市街地改造事業による再開発で、1962年に完成したビルである。
 市街地改造法による再開発地区は、16地区しかないが、そのうちのひとつである。しかも2番目にできた歴史を持つ。再再開発時代になっているが、今も健在らしい。これの再再開発と一緒にする案を考えなかったのだろうか。

 さて、熱海は温泉旅館の衰退で空き地だらけゴーストタウンになる様子だが、どうやらこんどはタワマンタウンになるらしい。
 旅館なら廃業して壊せるが、超高層共同住宅となるとゴーストタワーになるおそれがある。これは怖いよなあ。
 1976年と2014年の熱海の空中写真があるが、昔は旅館が密集して建っていた海岸沿いのあたりに、大きな空き地が見える。これらがどうなるのだろうか。
1976年の熱海 海沿いに旅館街が密集
2014年の熱海 海沿い旅館街は空き地だらけ

●横浜野毛は今やMM21イメージで売るのか

 次は横浜桜木町の「ファミリーマンション」で「桜木町駅近レジデンス」である。 
 桜木町駅徒歩3分で、この広告写真(桜木町の海側駅前広場)なら、MM21地区に建つビルだろうと、わたしは思った。
 いや、最初は3階建ての共同住宅ビルかと思った。広い所にゆったり建つんだなあって、、でも実は10階建て28戸と書いてあるからペンシルビルである。

で、実際に建つ所番地を読んだら、この写真の裏側の旧市街地の中、つまりガチャガチャした野毛の街中なのである。2つの信号に引っ掛からなくて走れば3分で行けなくはないが、かなり苦しいと思うよ。
 ガチャガチャした街なかが悪いというのではない。MM21の中よりもはるかに住みやすいだろうし、超高層よりもはるかに安全である。
売るのは3階建て共同住宅かと思ったらこれは桜木町駅
売る共同住宅が建つのは野毛の街なか
この左の駐車場がその建つ場所らしい(google street)
  面白いのは、不動産屋の販売作戦が、桜木町周辺は今や「みなとみらい21」のイメージで売ろうとしていることである。実際は野毛の方が住みやすいだろうに、、。
 昔々、MM21開発が見えてきて、桜木町駅に東急が来なくなるとなったとき、野毛の街が凋落するとて大反対運動があった。東急が大金を積んで、野毛振興策への基金にしたことがある。
 かつて桜木町は元祖横浜駅であり、野毛の街は駅前に広がる横浜の玄関だった。その海側は港湾用の貨物駅がある裏だったのだが、今や裏表が逆転してしまったらしい。
 さて、今の野毛はMM21の添え物に凋落したのだろうか、このような広告を見るとね。

 (つづく、次はムサコ超高層分有アパート広告) 

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