2017/03/18

1256【オペラ見物】モーツアルト「魔笛」を勅使河原三郎演出で観てきたがバレエ・ミュージカルだったなあ

 う~ん、川瀬賢太郎指揮のオーケストラの出来はわからないけど、勅使河原三郎の演出・装置・照明・衣装は、よいともわるいとも、なんとも言い難いなあ。
 今日、神奈川県民ホールでモーツアルトのオペラ「魔笛」を観てきた。忘れぬうちに感想を書いておこう。


勅使河原の演出については、全体にバレー・ミュージカル(というジャンルがあるのかどうか知らないが)だった。つまり舞踏と歌唱がメインで、歌手に演技というか芝居を求めないオペラだったのである。
 だから、歌手に台詞を一言もしゃべらせないで、ダンサーによる日本語ナレーション(佐東利穂子)で繋ぐのであった。
 佐東の語りの発声とダンスはよかったのだが、語り内容そのものがなんともつまらなかった。なんだか高校生に初めてオペラを見せて解説しているいるみたいな内容だった。この支離滅裂オペラには、支離滅裂ナレーションの方がよろしい。
 歌手にセリフを吐かせないから、シチュエーションごとの演技もほとんどなくて、歌うばかりなのであった。見るこちらも不満だったが、オペラ歌手のほうも不満だろう。

 分りやすくしようとてこうしたのなら、これってちょっと違うよなあ。トントンと歌とセリフが勢いよく進むのがモーツアルトオペラだろうに、このナレーションでたびたび一時停止するのが、いらいらする。
 もともとこの魔笛ってオペラは、はっきり言って支離滅裂、コミックもシリアスも、恋愛も憎悪も、宗教もニヒルも、もうなんでもありのパッチワークめちゃめちゃバラエティ番組だから、スジなんかどうでもいいのである。これは見世物つき音楽なのである。
 わたしもそのあたりをどう演出するか見たいとは思わなくて、とにかく魔笛の素晴らしい音楽を聴きたくて行ったのである。
 今回はそれにバレエダンスがついていたので、そこの見世物演出はなかなかよかった。もっともわたしはバレエダンスの上手いも下手も全然わからないので、単に視覚的な興味だけで言っている。

 勅使河原の舞台装置は、巨大な金属質のリングが、舞台の上に吊り下げられて登場する。直径が5m位のが9個、20m位のが1個、状況に応じて出たり入ったり、並んだり重なったり、垂直だったり傾いたり水平だったり、いろいろに変化して登場する。
 舞台に不思議な奥行きを与えて面白く観たが、はじめから終いまでこれだから、そのうちに飽きてきた。
 そのほかは照明によって舞台上に格子や道の形を映し出すだけで、魔笛によくあるおどろおどろしい装置は何もなかった。紗幕への映像投影もなかった。

 おどろおどろしいと言えば、最初に登場してオドロオドロ芝居だぞって見せる大蛇は、灰色のバレエダンサーたちが列になって舞う演出なので、全くオドロしくない出だしであった。まあ、いいでしょう。
 衣装でオドロオドロシかったのは、モノスタトスと神官で、珍妙な着ぐるみで苦笑してしまった。これと3童子が、モーツアルト好みのオドロだった。これらの着ぐるみはどういう意味なんだろうかと、首をかしげつつ苦笑した。
 特にモノスタトスのあの珍妙さは、魔笛芝居のユルキャラ狙いかよ~。
 だのに、タミーノとパミーナは、まったく普通の街着のような衣装、もうちょっとなんとかしたらどうだ~。

 パパゲーノの衣装が、定番のあのモジャモジャバサバサ鳥の羽じゃなくて、なにやらえらく格好のよい真っ白な毛皮のようだった。
 パパゲーナの衣装もそれに対応していたが、それよりも彼女の歌の出番が、パ、パ、パ、パの歌のたったの1回だけ、セリフがないから例の老婆から美女に変身する面白い場面がなくて、つまらん。
 狂言回し役のパパゲーナとモノスタトスからはセリフを奪わないで、しっかり芝居させてほしかった。
 まあ、ゴチャゴチャイチャモン付けているが、全体的には音楽は素晴らしくて、オペラを楽しんだひと時だった。
◆◆◆
神奈川県民ホール3階席から舞台を見る
 今回、はじめて県民ホールの天井桟敷とも言うべき3階の最上部どんつまりの席だったが、音も視野もけっこうよかった。
 舞台装置のリングの変化と人物の動きとが重なって見えるのは、なかなか楽しかった。これからも3000円の最安席に限るなあ。
この前にここに来たのはいつだったかなあ、あそうだ、2年前の「オテロ」だった。

 これまでに劇場で見たモーツアルトの歌劇は「ドンジョバンニ」だけである。魔笛について知ったかぶりして書いているが、実は劇場じゃなくて、TVとyoutubeによるものである。なにしろ西洋オペラは、見物料金が高くて貧乏人にはとても無理だ。
 わたしのオペラ見物は、もっぱら日本伝統オペラ、つまり能楽ばかりで、こちらはこれまで100回以上見ている。もっとも、近ごろは能楽も高価だなあ、いや、こっちが貧乏になって相対的に高価になったか。
  
 これまで観た西洋オペラを思い出してみる。
 ドンジョバンニ(ウィーン・フォルクス・オパー、これは2階の真ん中あたりで3000円ほどだった)、ローエングリン(新国立劇場)、マダムバタフライ(横須賀芸術劇場)、オテロ(神奈川県民ホール)、オルフェーオ(神奈川県立音楽堂、東京北とぴあ)、カーリューリバー(神奈川芸術劇場)、こうもり(2回見てるけど、どこでだったかなあ)、椿姫(神奈川県民ホール)、他にあったかなあ、、少ないなあ。
ウィーン・フォルクス・オパー ドンジョバンニ公演の夜景 1994年 
ついでにミュージカルとバレエも思い出してみるか。
 キャッツ(新橋?キャッツシアター、ニューヨークのどこか忘れた劇場)、ヘア(ニューヨークオフブロードウェイ)、レミゼラブル(帝劇)、42nd Street(帝劇)、、、白鳥の湖(よこすか)、くるみ割り人形(よこすか)、、、、他にあったかなあ、、。
 でもまあ、現代ではありがたいことに、youtubeにほとんどのオペラでもミュージカルでも登場するので、貧乏人には嬉しい時代に人生が間に合ったものである。

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