ラベル 五輪騒動 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 五輪騒動 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019/05/16

1400【五輪便乗再開発】都市公園としての明治神宮外苑は東京の都市開発圧力に耐えることができるか

久しぶりにオリンピックがらみ記事、つまり新国立競技場騒ぎのつづきを書く。
▼これまでの記事は下記

2019年5月9日に建設業界の新聞に、新国立競技場の南にある、神宮球場とラグビー場更にその南に隣接する民間ビルのある土地について、用地入れ替えと建物の建て替えに関して、環境アセスメントをやることになったと、ネット記事が登場した。
▼建設通信新聞(2019年5月9日)

 そうか、ついに動き出したか。なんとまあ、都市公園指定の土地で、野球場とラグビー場の建て替えついでに、超高層の商業やオフィスなどのビルを、市街地再開発事業制度を使って建てるとのことだ。いやはや面白いことになってきた。
 この計画に関してのわたしの一番の興味は、「都市公園」対「都市再開発」の駆け引きである。つまり、オープンスペースとして公開するべき都市公園指定の土地を、建築敷地としてプライベートに高度に活用する、その手練手管である。そこには法制度をいかにうまく活用するか、あるいはいかにうまく法規制をかいくぐるか、それが問われる。
 これは都市計画のなんともクロート過ぎる、いや邪道とも言うべき手法が登場してくる面白さがある。それを勝手に予想して勘繰り遊びをするのである。

 これについては2013年にその序の口をここに書いているが、
そこでは単純に公園内から公園外に容積移転であろうと思っていて、最後にまさかと思う強引な手法もあると少しだけ書いておいた。それはじつは市街地再開発事業のことである。新聞報道では、本当にこの事業手法を使うとあるから、それで公園指定に対してなにができるのか考えてみよう。

 この件の出だしは、新国立競技場の建て替えのために、その敷地の国有地と隣接する公園や公営住宅の都有地の都市計画及び都市公園の変更をしたが、どういうわけか新国立競技場に関係のない周辺の共同住宅やオフィスビルや宗教法人等の民有地も、これに合せて都市計画変更したのであった。
▼神宮外苑地区地区計画(計画書・計画図)(PDFファイル11,882KB)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/toshi_saisei/data/jinguu_keikaku.pdf

 そこに見えるのは、宗教法人とディベロッパーが共謀して、新国立競技場の都市計画変更に便乗して、広大な都市公園指定用地を高度利用都市開発しようとする動き、策略である。
 現にオリンピックの後に取り掛かる事業というから、どうみても新国立競技場とは無関係のエリアだし、オリンピックのための新国立競技場の都市計画変更時にこちらまでも変更を行う理由はなかった。なぜ便乗を急いでおこなったのか。
▼明治神宮外苑はドサクサ新国立競技場大急ぎ都市計画変更に便乗
http://datey.blogspot.com/2015/11/1149.html

 2013年に内容が決まらないままに再開発等促進区型地区計画の都市計画決定は、その制度から言っても奇妙であり、不審なことであった。いま環境アセスメントにかけると言うから、ようやく内容がきまったのだろう。とすれば、その都市計画変更は今になって独立して行うべきだった。
 勘ぐれば、新国立競技場騒ぎの時にその陰に隠れてこちらの変更をすれば、注目されないだろうと言う密かな陰謀であったのかもしれない、勘ぐれば、。
 なにしろ公園内に超高層建築を建てようというのだから、世の緑好きおば様たちが目の色を変えて抗議に来ることは、目に見えているのだから。

 さて、今回の計画内容を、新聞記事だけをもとにあれこれ考える。
▼日刊建設工業新聞(2019年5月9日)https://www.decn.co.jp/?p=107128
この計画区域の事務所棟(伊藤忠本社)の敷地のほかはすべて都市公園指定されていて、風致地区がかかっているので、そのままでは大きな髙い建物や公園に適する特定用途外の建物は規制されている。それをどうクリアして巨大開発するのか、興味を持っているのである。
k

 今回の新聞記事だけでスッカリ分るのではないが、現都市公園指定区域内に風致地区や都市公園の規制範囲を超える高さの超高層建築計画あるようだ。またオフィスの様な公園内には不適合の用途も書いてある。さて、これをどう考えようか。
  ひとつは風致地区も都市公園も特別に法的緩和を謀ることだが、これだけでは難しそうだから、もうひとつは都市公園と風致地区の指定を一部もしくは全部解除してしまうことだ。
国有地のラグビー場と明治神宮外苑の神宮球場を土地交換
複合棟Aはオフィスと商業、複合棟Bはホテルとスポーツ施設、

新神宮球場の上に超高層ホテルが建つ(らしい)
並木東棟は商業、事務所棟は伊藤忠(と三井不動産らしい)
事務所棟のほかはすべて都市公園指定区域
新聞記事を読めば、事業手法は都市再開発法による市街地再開発事業とあるが、都市公園地区内でこれを適用するとは、はて、この法が予想していただろうか。
 そもそも市街地再開発事業は、土地利用の現状が建物が密集していたり、木造で火災が起きやすいとか、耐震でないビルが多いとか、都心などで容積率は高い指定なのに一部しか利用していないとか、公園や道路が足りないとか、とにかく都市環境が不良な地区に適用するものである(都市再開発法第3条)。
 だが、ここは不良地区だろうか。

 この制度の適用には、例えば、土地が細分化されていることが不良とする条件のひとつだが、ここではラグビー場、明治神宮外苑、伊藤忠等、いすれも大規模な敷地であるから、これに当てはまらない。。
 あるいはまた、現に建っている建物の床面積の合計が、指定容積率の3分の1未満の地区に適用するのだが、青山通り沿いの民有地はしっかり高層ビルが建っているから適用できない。
 ラグビー場敷地や野球場敷地は今の200パーセント指定の3分の1以下のように思えるが、これは施設の性格から言って当然であり、しかも都市公園指定の土地だから、当然の土地利用であり、決して不良ではあるまい。たぶん、青山通り沿いの民有地の高容積率建築と合算しても指定容積率の3分の1に届かないのだろう。

 なお、外苑地区計画の再開発等促進区には、伊藤忠ビル西隣のオフィスビル(青山OMスクエア)も含んでいるが、今回の再開発事業区域から外してあるのは、新しい建築なので建て直しをしないことにしたのであろうか。またテピア(槙文彦設計)も外したのは、これを建て直しするというと、また槙一家に殴りこまれるオソレあるから、かな?、。
 神宮球場もラグビー場も伊藤忠本社ビルも、土地の現状用途は不良ではない。しいて言えば耐用年数を越えているとか、耐震問題があるとかで、不良とは言える。

 どうも私の知識が古すぎて、どうやらいまでは地区計画でとにもかくにも再開発等促進区にしていしてしまえば、都市公園だろうと、良好都市環境だろうと、新建築ばかりだろうと、空き地ばかりだろうと、どんなところでも市街地再開発事業やっていいよって、法がルーズなことに変ったらしい。
 ふ~ん、そうかあ、もう10年も都市計画現場に関わらないからなあ。

 でも、なぜわざわざ面倒な手続きが必要な法定の市街地再開発事業にするのだろうか。大きな土地ばかり、大企業と大法人ばかり、権利関係は明解だろうし、やることは分かっているのだから、常識的には任意事業でやるところだ。
 都市再開発法による市街地再開発事業は、原則として都市計画事業(建築を都市計画事業で建てる)であるが、実はここにその大きな理由がありそうだ。この都市計画で容積率の割増しがあるとか、事業になったら国と都から補助金が出るとか、税制優遇があるとか、いろいろ面倒でもいろいろメリットはあるが、本命は次の件にあるような気がする。

 都市公園法第16条に、「都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合」は、都市公園の一部又は全部を廃止できるとある。
 これを適用するのだろうか。もし全部を廃止して、青山通り沿いと同じ用途容積に変更すると、もうどんなデカいものでもどんな用途でも建築可能となる。伊藤忠三井不動産はもちろん、明治神宮もウハウハ儲かることになる。が、まさか、。

 これまで神宮外苑はいずれは順に開園して都市公園となることを前提にしてこれまでの土地利用が進められてきた(らしい)から、不良な土地利用ではない。
 都有地部分だけが一部開園されているが、明治神宮外苑用地ではどこも開園されていない。今後どのように明治公園を開園していくのだろうか。後楽園や芝公園のように、特許公園とするのだろうか。
 ▼神宮外苑は特許公園で再開発だろうか 
 

 あるいは「公園まちづくり制度」をつかうのだろうか。これが本命らしい。
 わたしは都市公園制度のことをよく知らないが、東京都心部にある未供用の都市計画公園に限っての開発利用の緩和制度らしい。この制度は2013年に作られていて、しかも再開発等促進区の区域に適用するとあるから、2013年に神宮外苑地区計画指定と共に作られたようで、つまり神宮外苑再開発のために作られた制度であるらしい。(神宮外苑まちづくり指針
 そうだとすれば、さて、どこを都市公園廃止するのだろうか。たぶん、、ふ~む、、なるほどそういう陰謀であったかあ、フンフン、これを利用するとについては、現在の外苑都市計画公園の内、未供用の4.8ヘクタール分を公園指定解除できて、その6割を緑地等の広場にすれば、大規模再開発ができる、らしい、すごい。
 あの時に新国立競技場ばかりに気をとられて、その関連の立体公園制度に驚いたが、それよりももっとすごい都市公園制度の根幹にかかわるような、ドカンと公園廃止手法が作られたことに気がつかなったなあ、でもなあ、世の公園屋さんたちはそれでいいのかしら。(これについてはここに詳しく書いたので参照)

まちづくり公園制度解説図(東京都)

 公園になることを前提にした土地利用を進めてきた地区を、市街地再開発事業を適用して公園解除するとすれば、それは都市再開発法が本来予想していなかったことだろう。
都市再開発法第4条には、「道路、公園、下水道その他の施設に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合するように定めること」とある。
 もっともこれは、公園を廃止してはいけないという意味ではなく、廃止したいなら都市再開発決定よりも前に廃止しておけということである。法の裏を読むのである。現にそのような事例はある。

 まさか今の都市公園指定を全部廃止することはあるまいとは思う。
 たぶん、高層ビルを建てる敷地を限定してそこだけ公園指定を解除か、いや、再開発事業区域の全部について公園指定を解除するのかもしれない。
 その区域では容積率を使いきれないが、使い切って大儲けしたいから青山通り沿いの伊藤忠本社の用地にも移転するのであろう。

 ではなぜ公園から容積移転するのか。公園指定区域は、ラグビー場は国有地だがそのほかはすべて明治神宮の土地で、宗教法人だから民有地である。公園指定外の土地に容積移転するとは、いわば土地の利用権の一部を売り払うと同じことであり、東京駅赤レンガ駅舎がやった様に、その売却収入で神宮球場の建て替え費用を稼ぐのであろう。
 つまりそこにも明治神宮が都市開発のプロである伊藤忠や三井不動産とともに市街地再開発事業に取り組む理由がある。
 ラグビー場用地は国有地だから、他の民有地に容積移転するとその権利関係の発生が国有財産法に抵触する(だろう)から、容積移転をしないだろう。

 では、なぜラグビー場と神宮球場とを入れ替えるのか。
 これはたぶん、国有地のラグビー場を民有地と合せて一つの施設建築物敷地にして再開発事業に乗せるには、国有財産のあつかいが国有財産法によってあれこれと面倒な手続きがあるし、政治的なちょっかいも入りやすいので、双方で避けたいことなのだろう。そのためには神宮球場用地と青山通り沿い民有地とを隣り合わせにしたいのだろう。
 ラグビー場を北端に寄せて、この部分は再開発事業では土地の入れ替えまで(土地土地権利変換)として、入れ替え後のラグビー場用地の建物は、独立して特定建築者制度をつかって建てるのであろう。
 ただし、民有地側には入れ替えによって大きなメリットがあるが、国有地側にそのメリットがあるのだろうか。入れ替え時にラグビー場を一時閉鎖しなくても済むのだろうか。
建替え段階計画(建設通信新聞から引用)

さてこの後はどのタイミングかわからないが、都市計画の新決定と変更及び都市公園の変更の法的手続きがある。
 都市計画法関連では、明治神宮外苑地区地区計画の変更として今回の再開発区域の地区整備計画を定めること、風致地区を変更すること、そして市街地再開発事業に関する都市計画を新たに定めること、そして都市公園法関連では明治神宮外苑都市計画公園の変更である。
 これらが一連のものとして登場したときに初めて、世間は全貌を知ることができるはずである。

 しかし、当初のこの地区計画の決定手続き時に、その内容のあまりの曖昧さのままに手続きを進めて決めてしまったことからして、今回もあいまいなまま、例えば目に見える完成予想図がないままに都市計画及び都市公園の審議会を通過するかもしれない。
 そしてその審議会に行く前に、世間に内容を問う案の縦覧に対して市民・区民・都民が何も関心を示さず意見提出公聴会もなかったという前回と同じように、この変更にも関心を示さないまま、審議会もあいまいな審議をして、簡単に決まるかもしれない。
 都民が関心を示さなかったのは、曖昧すぎる内容で何もわからなかったからとすれば、事業者の作戦成功であり、今回もそうかもしれない。

 それならそれで仕方ない?のだが、ひとつだけ注意を喚起しておきたいのは、もともとは明治神宮の内苑も外苑も国家神道としての国有地であったが、戦後の政治宗教分離政策施行時に、内苑は無償で外苑は市価の半額で宗教法人明治神宮の所有になったものだということである。つまり土地財産としては国民のものだったのだ。
 そこに民有地でありながら都市公園としての指定の意味があることに、市民も宗教法人も留意するべきだろう。都民の都市公園が東京の都市開発圧力にどこまで耐えることができるか、なかなかの見ものである。

 ここまで駄文を読んでいただいて感謝をするのだが、これを読んだ人は、都市計画素人には何を言っているのかほぼ分らないだろうし、都市計画玄人ならば古い制度の知識を錆びついた頭で書いてピントがオカシイと哂うかもしれない。
 わたしとしては分ってもらわなくても哂われてもよいのである、年寄りのヒマツブシとボケ防止で、思いつくままにグダグダ書いて描いて遊んでいるだけだから。

▼これまでの一連の五輪騒動記事は下記
https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html
(2019/05/16、2019/05/20「公園まちづくり制度」を加筆)




2019/03/21

1393【インポ建築展再訪】ザハ・ハディド案新国立競技場設計図書棺桶と亀甲墓模型の展示を再見してきた

インポ建築展でザハ・ハディド案新国立競技場を見ていて
2013年IOC総会東京オリンピック招致演説を思い出す
インポ建築展】の続き

熊五郎:やあ、ご隠居、風邪の具合はいかかですか。
ご隠居:おお、熊さんかい、ありがとよ、どうやら治ったらしくてね、一昨日は埼玉県立近代美術館に展覧会を見に行ってきたよ。
:そりゃよかった、って、そこ先月に行ったでしょ、まさかボケて忘れててまた行ったとか。
:そう、また行ったんだよ、ボケちゃいなくて、また行きたかったんだよ。
:好きだね、え~っと、建たない建築、そう「インポテンツ建築」の展覧会でショ。
:いや、「インポッシブル・アーキテクチャ」のインポ建築だな。また行ったのは、見たいと言う友人を案内したこともあるけど、もう一度みたい展示物があるからだよ。

:それ、何だかあてましょうか、ザハハディド「新国立競技場案」でしょ。ご隠居のブログにくどくど書いてあったからね。
:そのとおりだよ。インポ建築には違いないけど実現直前で憤死した建築の、あの膨大な量の実施設計図書を眺めたかったんだよ。4000枚以上もある設計図を圧縮コピーして綴じて、A4版40数冊の冊子にしてあるのが、透明アクリル板の箱の中にずらーっと並べてあり、各種の評定書のコピーもある。もう最後の確認申請手続き直前だったというのだよ。
展覧会図録より設計者の言葉の一部
:つまり、建築家のできもしない夢想のインポッシブル建築どころか、実現可能そのものの建築である証拠物件なんですね。じゃあ、インポ建築じゃないのなら、展覧会としては趣旨が違うような。
:いや、そこが面白いところで、インポッシブルとポシブルの境界は実は曖昧なんだね。その曖昧さがポッシブル建築を鋭く批評するってところに、この建築展の狙いがあるらしいのだね。
:ってことは、今年中に完成する“ポシブル”新国立競技場は、この“インポッシブル”新国立競技場から強烈な批評の光を投げかけられるってことですかね、面白いなあ。
:そうだな、今は亡きザハ・ハディドの亡霊がその亡き子の新国立競技場コンペ案を抱いて、隈研吾の新国立競技場に現れて怨みの言葉を吐くんだよ、どんな論争が起きるか楽しみだなあ。
:いや、ザハ・ハディドなんか忘れられて、な~んにも批評なんか起きなくて、日本人たちはオリンピック気分に浮かれるだけですよ。
:う~ん、そうかもしれんなあ、うらめしや~。

:でもねえ、展覧会再訪してまで、そんな設計図書棺桶を眺めてどうするんです、死んだ子の歳を数えるって、ご隠居が設計したわけじゃなし、バカバカしい。
:その通りでね、設計図書を入れてある透明アクリル箱は棺桶そのものだね、そばにある亀の甲の様な模型は墓石に見えてきたもんだよ。沖縄にある亀甲墓だね。
:おお、埼玉に墓参りにいってきたのですかい、なんの縁もないのに。
:そう言っては身もふたもない、でもね、あれって設計料は税金によるものだから、わたしも熊さんもまるきり無関係じゃないよ。
:あ、そうか、あのザハ・ハディド案白紙撤回事件の時に、それまでかかった費用が65億円と報道されましたよ。その後に設計完了して残金を支払ったでしょうから、もっとかかってますよね。
:その頃わたしがブログに書いてるよ、「これまでかけた設計外注費用が65億円、それにコンペでかかった費用、JSCや文科省の人件費・交通費・光熱費など、世界中からコンペに応募した人たちがかけた費用、なんだかんだとざっと80~100億円の無駄かもよ、もったいないよなあ。」ってね。
:ウワッ、100億円かけたものを白紙撤回とて、首相だからできる無駄遣いですかねえ、すごいなあ。
:その後のやり直しコンペで勝った今の工事中の新国立競技場の設計にも、ザハ・ハディド案実施設計での知見が生かされているだろうから、まるきり無駄ではないがね。
:ということは展覧会にある棺桶の中には、少なくとも60億円の価値がある代物ってことで、それだけでも見に行く価値があるってことですかねえ、でもねえ、これじゃあ美術館に展示って意味不明ですねえ。

:わたしが思うのはね、あのザハ・ハディド案の死の主因は、高額工事費と工学的不可能とされているんだがね、どうもそれにくわえてあの異教徒的形態への日本人の忌避感がボディブローのように効いているんだねえ、あるいは国立施設なら日本人が設計するべきだってザハ・ハディドへの違和感もあったような、ね、そこに美術館でこんなふうに「葬送」する意味があるね。
:そうそう、思い出しましたよ、ザハ・ハディド案反対の声を最初に上げたのは、有名建築家の槙文彦さんでしたね。明治神宮外苑にふさわしくないデザインだってね。
:それに弟子の建築家たちやら歴史景観好き市民たちが付和雷同して、聖徳絵画館の歴史的景観を壊すなの声が上がったね。
:それがいつの間にか工事費のカネメの話に落ち込んで無駄遣い反対となり、景観的反対運動がそっちの反対運動に吸収されてしまいましたね。
:わたしはあの騒動の時には、ザハ・ハディド案であの外苑の帝国主義景観を壊してほしいと思っていたもんだよ。ブログにそう書いてるよ。
:今もそう思いますか。
:ところがね、ザハ・ハディド案は実施に進むにつれて変わって行って、亀の甲みたいなった模型が出てきてビックリしたのは、景観的に反対した槙文彦さんの設計した東京都体育館がザハ・ハディド案新国立競技場に並んでいる姿は、もう親子の様に見事に調和したデザインなんだねえ。
:あ、そうですねえ、ザハ・ハディドの高等作戦だったのでしょうかねえ。
:そうなると景観的におかしいと言う論が成り立ちにくくなり、分りやすいカネメ論議になったのかなあ。なんか反対論の次元が低くなった感があったなあ。

:ご隠居のほかにも、そのアクリルの棺桶を眺めている人がいましたか。
:いや、わたしみたいに前にじっと立って眺めている人はいなかったねえ、だって見ても面白くもなんともない厚い本が並んでいるだけだからね。はたから見ると変な人に見えたかもしれないね。
:そう、それを棺桶に見立て、模型を墓石に見立てることができるのはご隠居だけで、他の人には見えない幽霊みたいなもんですね。
:見えないって言えば、展示してある膨大な紙の設計図書類も、いまどきは全部コンピュータデータをプリントアウトしたものだ、だから実は見えないものが本物なんだ。
:あ、そうか、紙にプリントしてわざわざ見えるようにしてあるんだ、じゃあDVD何枚か展示してもいいかというと、、。
:DVDだけだと棺桶じゃなくて、骨壺になるね。DVDも合わせて展示してあると、インポッシブルからインビジブル建築となって、なんだかもっと意味深いような気分になるかな。
:インポシブル建築からポシブル建築へ、そしてインビジブル建築からビジブル建築へですかね。

:それにしても美術館ってところは、もっとなんとか自由にならんものかねえ。
:え、どうしました?
:触らせろとまでは言わないけど、現物を見ながら批評の言葉をしゃべりたいよね。
:あ、声がでかくて、また叱られたな。
:こういうのは静かに見て鑑賞するような美術品じゃなくて、その制作背景やら意味やらについて独自の論を、数人でガヤガヤと振りかざしながら鑑賞すると面白い代物なんだけどねえ。
:インポッシブルの理由を知って見るのと、なにも知らずに見るのとは大違いのはずですね。
:写真だって、設計図書の棺桶を撮りたかったなあ、あんなの著作権に引っかかることなにもないし、税金でつくったものだしなあ。横浜美術館だったら写真撮影OKだよな。
:埼玉の後で新潟、広島、大阪と巡業する様ですから、そちらでは写真撮影とかお喋り老人につき、なにとぞ良き方向にお取り計らいくださいませって、ここで頼んでおきましょう。

参照:
●「五輪騒動

2017/03/09

1255【五輪騒動】新国立競技場設計騒動が鎮静したら次は絵画館前サブトラック常設でまたひと騒ぎありそうで楽しみだなあ

 おお、これも揉めるぞ、たぶん、景観保存原理主義者たちが、ケシカランと騒ぐだろうなあ、久しぶりにまたヒマツブシにもってこいだな。
神宮外苑創建時の絵画館玄関より見る広場と銀杏並木
現在の絵画館前広場と銀杏並木
●今度は絵画館前広場にサブトラック常設とか?

 2020オリンピックの陸上競技会場になる新国立競技場は、競技期間中に使うサブトラックを絵画館前広場に仮設すると聞いていた。
 昨日の新聞によると、オリンピックばかりか、大きな陸上競技会をやるにはサブトラックが必要なので、陸上業界(というのか?)が言うには、オリンピックが終わってもそのまま常設施設にしてくれと。
サブトラックに?

 そうか、競技する側としてはごもっともである。あんなにでっかい新競技場にサブトラックがない方がオカシイと、わたしも思う。
 建築で言えばオペラハウスを作ったのに、大ホールはあるがリハーサル場がないようなもんで、これじゃあ半端物だな。

 さて常設となると、これまたひと騒ぎありそうだ。陸上業界じゃなくて景観業界(っていうのか?)からイチャモンつける人たち登場するに違いない。
 明治神宮外苑は明治大帝の偉業を顕彰する場であり、聖徳記念絵画館なる聖なる施設の前庭を、騒がしい運動競技の場にするとはけしからん、戦前そうであったように美しい芝生の広場に戻せ、、、とか。

 ようやくあの生ガキデザイン新国立競技場を駆逐して、不十分ながらも日本的デザイン競技場に変えることにしたのに、今度は高層ホテルが建つとて、聖徳絵画館の背景景観が乱れようとするところに、更にまた前面景観も運動場になって乱れるとは、なにごとであるか、、、とか。

 なによりもかによりも明治大帝に申し訳ない、、造園設計者の折下吉延にも申し訳ない、、とか。
 歴史的景観を大切にして、昔の姿に復元するべきだ、あの東京駅のように、、、とか。
 
●さて、これからどんな騒ぎになるか楽しみ

 でもなあ、あの絵画館前広場は敗戦直後に占領軍に接収されて静かな芝生じゃなくなって、今やもう70年以上も経ったのだよなあ。静かな芝生期間の戦前20年よりも、戦後こっちの歴史がはるかに長いよなあ。庶民の運動広場だよなあ。
 おまえはそういうけど、あの東京駅も昔の姿は30年間、戦後の姿は60年間だったのに復元したぞ、外苑だってそうするべきだよ、なんて、おっしゃるでしょうねえ、そうなんです、トホホ、わたしはその復原反対をずっと唱えて来たけど、蟷螂の斧で無視されたんですよ。

 景観も建築もなんでもかんでも最初の姿がいちばん良かった、昔に戻せ復元せよという風潮が世間を風靡しているけれど、これって復元帝国主義といいましょうか、景観原理主義と言いましょうか、なかなか思い切りがスゴイもんですねえ。
 なにしろ、それができてからあとの時代の影響というか要請による変化の歴史を、いっさい無視しようってんですからねえ。
 あ、帝国とか原理とか言ってますが、わたしはレーニンも秋水も読んだことないし、神学にも触れたことなくて、そのお、オチョクリムードで言っておりますです、ハイ。
どうせならなにもかも、ここまで復元しましょうよ、とか
あえて言えばあそこは、キチンとしたスポーツグラウンドになれば、兵士となる青年の体育に熱心であった明治大帝もお喜びでしょう。外苑にスポーツ施設をたくさん作った由縁はそこにあったのですからね。
 さらに言えば、入ってみたい気にならない絵画館だって、これをスポーツマンたちのクラブハウスとして有効に使えばよろしい。今ある絵画はそのまま展示してあれば、歴史文化に無関心なスポーツマンたちも競技会の度に大帝のご聖徳に触れる、、、これも大帝はお喜びか、、タイテイのことはお許しが出るのか、それともタイテイにせいってお叱り受けるのか、、な~んて。
スポーツクラブハウスに?
●立体公園決定を廃止して元に戻せという提言は?

 ところで、これは若干旧聞になったが、去年5月、新国立競技場と緑の環境のあり方について日本学術会議からイチャモンが出された。これはその後どうしてるんだろ?
 参照「神宮外苑の環境と新国立競技場の 調和と向上に関する提言
  http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t211-1-1.pdf
 ザハ案に合わせるために立体公園制度の趣旨に反して無理矢理公園変更したのを、白紙見直し案に沿って元に戻せ、更に渋谷川を復活せよ、と言うのである。
 ごもっともである。

 わたしはやり直しコンペに応募した2案を眺めていて、どちらも立体公園にしなくても済むような配置に気が付いて、そうか、立体公園をやめるだと思った。
 てっきり当然そうするのかと思ったら、なぜだかそうしなかった。
 白紙見直しの看板を掲げながら、新競技場のために新規や変更決定した公園計画や都市計画は一切見直さないという、実に奇妙な白紙見直しだった。白紙じゃなくて灰紙だな。

 この公園緑地系の学者たちの異議申し立ては当然であるが、さて、事業者がそれを受けてどうするのか、その後はなんにも聞かないから、言いっぱなし、言われっぱなしなんだろうか。
 設計者としてしゃしゃり出る隈研吾さんも、大学の学者建築家なんだから、何とか言うとかなんとかするべきだろうに、だんまりを決め込んでいるのは何故か。工事はどんどん進む。

 さてさて、これらばっかりじゃなくて、近いうちに青山通り沿い大企業用地に外苑容積移転で超高層開発騒ぎが起きるんだろうなあ、神宮球場と秩父宮ラグビー場の土地交換も面白そうだなあ、超高層ホテルつき神宮球場ができるかもなあ、当分まだまだ楽しみがあるなあ。
最も景観が変りそうなラグビー場とその隣の青山通り沿い
 オリンピックにゃ興味はないけど
便乗騒ぎにゃ興味津々

参照記事●五輪騒動瓢論集:新国立競技場と外苑再開発
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html

2016/08/06

1207【オリンピック騒ぎ】観戦スポーツ競技こそが大衆ドーピングポピュリズムの源泉か

 朝日新聞、いつからスポーツ新聞になったんだよ、野球やオリンピック記事はスポーツ専門紙にまかせときなさいよ。

 8月6日、広島原爆投下から71年目の日である。
 ところがその日の夕刊は、第1面は地球の裏側で始まったオリンピックの記事ばかり、広島の記事を探せば、最終ページの片隅に、、。
2016/08/07朝日新聞夕刊 第1面と最終面
 そして8月7日の朝刊もかくごとく、スポーツ新聞状態。
2016/08/08朝日新聞朝刊もこの扱い!
ところが、おなじ8月7日の東京新聞、こっちに替えようかな。

そして8月10日もこの有様


観戦スポーツ嫌いの私は、読むページがどんどん減少する。その上、休刊日も増えるばかり。でも購読料はちっとも下がらない。もう購読をやめようっと、ネットで十分だよ、。

 毎朝夕に新聞という屑紙がドサッと配達されてくる。オリンピックだの高校野球だの広告だの、読まない屑ページばかり増えてくる。
 昨日の朝刊なんて、全40ページのうち、スポーツが9ページ、広告が10ページだから、半分は読まないでゴミに直行するページである。他のページも、バカな記事やら広告やらで、読まないところが多い。読んだところを正確に計算すると、2ページ分くらいかもしれない。でも、怖いから計算しない。そんなもの買い続けているのは、もう惰性でしかない。ああ、金がもったいない。

 それに折り込み広告もあるから、新聞が発する紙ゴミの量は大量資源浪費である。われながらエコな生活ではない。
 そこで罪滅ぼしに、手軽にできるエコ生活として冷房しないで暮らすことにした。今年はまだ一回もエアコンをつけていない。今日は暑かったなあ。
 そのうちに熱中症でポックリ逝くだろうが、それは朝日新聞のせいである。まあ、ポックリ逝っても惜しくないし、それがいいなとも思っているから、新聞屋に感謝するか。

 わたしはスポーツをやることを嫌いではないが、他人がやるのを見る、特にプロとかセミプロがやるのを見るなんて観戦ポーツには、全くなじめない。観戦者一同声をそろえて応援なんて、大いに気持ちが悪い。
 昨夜、横浜中華街を歩いていたら、YOKOHAMAとある青シャツ若者の大群が歩いてきた。どうやら横浜球場のナイトゲームからの流れらしいが、同じ格好で街中をうろうろして、恥ずかしいよなあ。

 どうしてこんなにも観戦スポーツ記事が多いのだろうかと、ずーっと不思議でならない。観戦スポーツ嫌い論が新聞にもTVにも登場しないが、だれもが好きなんだろうか。
 オリンピックとなると、だれもかれもが国粋主義に陥るのが不思議だ。国旗振り回し、国家歌って、気持ちが悪い。
 もっと気持ちが悪いのは、ドーピングである。大資本商業主義と偏狭ナショナリズムに堕落しきったスポーツ界から、魑魅魍魎がどす黒いウンコとヘドになって噴出してきた。

 こんなニュースを読めば、みんないい加減うんざりしそうなものを、オリピックだの高校野球だのって、トップ記事にする新聞屋を不思議に思う。まあ、それを喜んで読むやつが多いから仕方ないか。TVを見ないから知らないが、そっちも酷いことになっているのだろうなあ。
 どうもそれは、トランプ大統領候補とか、EU離脱国民投票とか、小池百合子ブッチギリ当選とか、ついでに右翼言動防衛大臣登場とか、近ごろ妙なポピュリスム現象が流行するのと通底するところがありそうだ、なんてつい思っちまうよ。

 ところでドーピング問題である。ここまで根深くスポーツ界に浸透してるのなら、いっそのことすべてドーピング解禁しなさいよ。ドーピングで他人に迷惑がかかることもない。禁酒法と同じで、禁止すればするほど犯罪者をつくる。裏で儲けるやつが出てくる。
 ドーピングでアスリートが体を壊すのは、それで成績よくなって儲けることとバーターである。オープンにすれば身体に良くない薬は、自然に淘汰されるだろう。

 そもそもスポーツ用の特別の靴なんてものもドーピングでしょ。裸足でやりなさいよ、初期のアベベみたいに。
 棒高跳びを竹の竿でやりなさい。昔の弓矢の競技が今は鉄砲撃ちになるなんて、最悪のドーピングでしょ。
 早く泳げる水着なんてのもいつか問題になったとき、水泳競技を全裸でやれと、わたしはこのブログに書いた。あ、そうだ、古代オリピックは全裸でやったらしい。
http://datey.blogspot.jp/2008/06/blog-post_10.html
 
 考えてみると、観戦スポーツは大衆ドーピングそのものである。4年もかけてじわじわと観戦スポーツというヤクを打ち続けて中毒患者をつくり、4年目ごとに一気にカラ騒ぎオリンピック大会でヤク中毒症状の極に達する。
 それは広島の原爆忌記事さえも片隅に押しやってしまう強烈なヤク中毒であることを、今日の朝日新聞夕刊が示している。多分、この後の長崎原爆忌も敗戦記念日もそうなるだろう。

 まあ、テロ事件とか、スキャンダルのドーピングとか八百長事件なんて、起きないことを期待するが、いっぽうで、そのたぐいの事件が起きてくれると、わたしもスポーツ記事を読むことができて、いくぶんかゴミじゃない新聞が来るかもなあと、不謹慎な期待もある。

 ところで、南半球は今は冬だからいいけど、4年後の東京でもこの時期にオリンピック大会をやるのだろうか。
 わたしは興味ないからどうでもいいようなもんだけど、まあ、観戦スポーツ好きな方も競技に出る方も、このくそ暑い中を物好きなことよ

参照 2008/06/10水着で水泳競技記録が左右されるのが問題なら全裸で泳げ

2016/04/20

1188【五輪騒動】神宮外苑地区計画の変更原案を東京都で縦覧中、その内容から妄想する都市計画の公益性とは?

●新国立競技場がらみの都市計画変更原案がでてきた

 新国立競技場がらみの都市計画の変更原案が、東京都と関係3区で縦覧に出ている。5月6日までに、意見書を出すことができる。
 新国立競技場がらみの都市計画である、外苑地区地区計画が決まったのは、2013年6月のことであった。そのときは誰も意見書を出さなかったので、原案通りに決まった。
変更計画の新旧比較一覧
色つきの3地区が今回変更あり、その他は変更なし
 ザハハディドの案がなんだか問題になってから、あの都市計画はオカシイ、高さを高くし過ぎたとか、霞ヶ丘都営アパートを廃止して公園にしたのがケシカランとか、いろいろな人が騒いだ。
けれども、法律上の手続きはとっくに終ってしまっていたから、いくら言っても後の祭りであった。なんであの時言わなかったのか。
 それに懲りて、こんどこそはこの変更案に、誰か意見書を出すのだろうか、どうだろうか。都民なら意見書だす資格がある。

 この前のときに、新国立競技場に関係する国や都、区の土地ばかりか、神宮外苑やその周囲の一部の民有地までも、一つの地区計画に含まれていた。
 オリンピック主会場として建設するために急いでいる新国立競技場関係の土地のところは、内容を決めて都市計画決定したが、そのほかのところは、どさくさまぎれにかどうか知らないが、内容は決まらないがとにかく地区計画の区域に入っておこうということだったらしい。
 
 そのときは内容が決まらず形式的に区域に入っていただけの外苑ハウス部分が、実体的に内容が決まったことと、JOC・日本青年館敷地の北隣の三角公園跡地あたりの既に決めたところも変更があるとて、その内容を書き込んだ地区計画の原案を作ったので、変更の都市計画決定をしたいというのである。

 三角公園あたりは、地区施設の広場に設定されており、そことJOC・日本青年館敷地との間には、外苑ハウスの敷地の一部が挟まっている。
  この縦長にまとまった土地を、JSC・日本青年館とJOC・岸記念会館の2つのビル敷地にするように変更するそうだ。地区施設の三角公園広場も、敷地の一部であるらしい。
2016年4月に縦覧の外苑地区計画変更原案の変更対象地区

●外苑ハウスの地区計画の詳細が決まったらしい
 
 新国立競技場とは関係ない民間共同住宅の外苑ハウスは、これまでは詳細が決まっていなかったのを、追加変更した。
 現在の容積率は200%、これが400%に倍増する。現在の高さ制限は30m、これを80mにするとあるから3倍近い。かなりの緩和である。
 計画では、敷地の一部であるスタジアム通りに通じる通路状の部分(図の)が、上記2ビルの敷地に取り込まれたので、その分の敷地面積(400㎡程か)が減少するようだ。土地売買があるのだろうか。

 敷地がスタジアム通りに面しなくなって、裏の狭い幅4mの区道に接するだけとなり、そのままでは建替えが不可能となるはずである。どうするか。
 その対策であろうが、外苑西通りから入ってくる区道を、4mから12mに拡幅するとしている。拡幅るための用地は、都営住宅跡地の明治公園である(図の)。その長さは80mとあるから、640㎡、つまり都市公園の面積がそれだけ減少するのである。
 
 敷地内の北境界沿いに幅6mの歩行者通路、同じく南境界沿い幅4m以上の緑道、西の道路沿いに幅4mの歩道状空地、敷地西寄りに1000㎡の広場、同じく南寄りに400㎡に広場を、それぞれ設けることとしている(図の緑色部分)。
 つまり、容積と高さの緩和は、これらの地区施設となる空地を敷地内に設けて、これを一般に公開することと引き換えになるのであろう。

●外苑ハウス建替えで街の環境が大きく変わる

  ここまでは外苑ハウスがらみの地区計画変更の中身を紹介したが、ここからわたしの個人的コメントを書く。
 念のために書いておくが、わたしはこの地区のあたりにも、ましてや外苑ハウスにも、何の関係もない。単なる都市計画フリークの閑な老人のボケ遅延防止策として、なにやかにや勝手に考えて書いているだけであることを、おことわりしておく。
 ただし、公益的な都市計画であるから、関係のない一般市民がそれについて書いても、許されるであろうと思っている。

 外苑ハウスの容積率や高さの規制緩和は、敷地内に設ける二つの広場や緑道、歩行者通路、歩道状空地という公開しなければならない地区施設と引き換えであろう。それらが相互に引き換えに相当する価値があるのかどうかは、わたしは分らない。
 しかし、そのその地区施設によって、この地区及び周辺市街地環境がかなり変化することは確実だろう。
 現在の外苑ハウスは、表通りからは奥まったところにあり、まわりを金網で囲ってあって、近寄りにくい建物だった。いわばゲーティッドコミュニティである。
右が現・外苑ハウス、この狭い裏の区道は拡幅しないが、
右の敷地側に4mの歩道状の空地を作るから広くなる
地下鉄外苑前駅に抜けるこの狭い裏道は人通りが大幅に増えるだろう
ところが建て替えると、建物外部の敷地の大半は、公開しなければならない地区施設になるので、敷地の多くは広い開放空間となる。
 しかも、一階には住宅以外の賑わい交流施設も導入するとあるから、建物への一般の人の出入りも多くなるのだろう。
 北隣りは公園だから人の出入りは自由、東隣のJOCやJSCなどのビルの敷地もまわりに緑道や歩道上空地の地区施設をめぐらすし、西からの区画道路を拡幅するなど、この外苑ハウス敷地にまわりから流れて込む人の動線はかなり太いものになりそうだ。

 とくに新国立競技場から地下鉄外苑前方面へ流れる観客の動線が、こちらに大量に入ってくることだろう。ここから南へと区道も人通りが多くなり、これまでの静かな裏町ではなくて、かなり賑わうことになるだろう。
 このさき、都営霞ヶ丘住宅跡地に新霞ヶ丘広場ができて、外苑ハウスまわりの広場や緑道が整備されて、狭い道路が広くなると、この裏道がどう変わっていくか、おおいに興味がある。
外苑西通りから外苑ハウスへのこの区道は左に拡幅して3倍の広さになる
左は廃止されて公園になる都営住宅、正面に現・外苑ハウス

●オリンピックは公益に寄与するのか

 一民間施設である外苑ハウスという共同住宅が、なぜ新国立競技場がらみの都市計画にはいっているのか、わかりにくいのである。実は今もわからないので、そこを考えてみる。
 外苑ハウスに再開発等促進区をかけてまで、その建て替えを都市計画で応援する公益的意味があるのか。
 都市計画とは、公益のために行うものであるから、それによって私権への優遇をするなら、かならずその公益的見返りが必要である。つまり、建築の規制緩和は、その規制強化と対になるものである。これを通称「アメとムチ」という。

 外苑地区計画の区域を見ると、外苑ハウスの敷地は半島状に突出していて、不自然なゲリマンダーに見えるのである。ここだけがなぜ飛び出し半島状に指定するのはどうしてか。
 その隣の学校や、裏道の向うの寺院や住宅地は、なぜ地区計画の区域に入っていないのか、整備しなくてもよいのか、
 これが提案型都市計画だから、提案する地権者に入っていなかったからだろうけれども、提案を受けて都市計画を定めるのは東京都である。提案のままでよいのか。
 なぜ外苑ハウス建て替えに、都市計画という公益性が賦与されるのか。

 そこでわたしは思案したのだ。オリンピックは公益に寄与する事業だから関連する事業も公益であるのであろう、たぶん、そのように一応の仮定をするしかないのである。
 JOCや岸記念会館ビルは、オリンピック推進に関係が深いらしい。そのビルを建てる用地を確保するために、外苑ハウスのスタジアム通り側の一部(図の)を必要とする。外苑ハウス側としても、ちょうど建て替え時期が来ていたので、それにひっかけたい。そして交渉の末に、その提供と確保が成立した、のであろう、たぶん。
 これが公益的必要性の理由だろう、たぶん。

 で、その敷地減少に見合うように、容積率をかさ上げしたのだろう、たぶん。いや、敷地を売った土地代が入っているハズから、それもおかしいなあ。
 でも、それだけでは外苑ハウスが納得しなかったのだろうなあ、たぶん、だから地区施設の整備も合わせ技にて、容積率も高さもかなりの緩和をして、それで手を打ったのであろう、たぶん。と、これが公益的理由かもしれない。でも、、、

外苑ハウスは都市公園法も許す公益上特別必要か

 ところで、外苑西通りから入ってくる区道を、幅4mから12mに拡幅しているのはどうしてだろうか。
 これは、たぶん、前面道路幅が狭い4mでは外苑ハウスの建替えが法的に不可なので、取り付け道路として12mに拡幅するのであろう。
 だが、その拡幅用地として公園用地の一部(図の)を充てたことについては、どう解すればよいのだろうか。
 一民間共同住宅の建替えのために公園用地をつぶすのだから、その土地代と道路工事費を、外苑ハウスが負担することになっているのだろう、たぶん。

 そしてまた気になるのだが、都市公園面積の減少を禁止する都市公園法16条にいう例外措置「その他公益上特別の必要がある場合」に該当するのだろうか(参照:追記2)
 だって、外苑ハウスって一民間共同住宅の建て替えのためですよ、これが「公益上特別必要」かなあ、でもまあ、なんせオリンピックの日本総本山JOCビル建設のためだもんなあ、ってことかしら。
 そして、都市公園の都市計画変更も必要なように思うが、なぜその変更原案が、今回だされていないのだろうか。
 
 なお、外苑ハウスを地区計画に入れて、建て替えを促進している理由のひとつに、オリンピック競技場まわりのテロ対策があるかもしれないって、わたしの妄想については既に書いたから、ここで繰り返さない。
http://datey.blogspot.jp/2016/04/1185.html

 最後に、まだ詳細が分らないが、ここで土地区画整理事業を行うそうだ。区画整理とは、土地の入れ替えをしたり、道路や公園をつくる都市計画事業である。

 でも、都市公園用地の確保と言ったって、都営住宅跡地をそっくり移管するだけのことだ。
 土地の入れ替えがあるのは、図ののところだけである。
 道路を作るのは図ののところだけだが、これも都営住宅跡地の一部を移管するだけだ。ほかには区画整理するべきところがない。
 まあ、工事をするってことはあるが、それをわざわざめんどうな区画整理事業にとりこんでやる必要はないだろう。
 事実上たった一か所の土地移動だけのために、シチメンドクサイ手続きのある土地区画整理事業を施行するのは、なぜだろうか。
 まあ、その理由についてある程度は想像はつくが、どうもオカシイ。
 
●話を簡単にまとめるとこうなる
 
 地区計画と土地区画整理事業という都市計画を使って、ひとつの民間共同住宅ビルの建替え事業を行う。
・外苑ハウスが敷地の一部(図の)を、JOCビルの敷地に譲ることにした。
・そうすると外苑ハウスの前面道路幅員が4mになって建て替えが不可能となる。
・そこで外苑西通りから入る区道を都市公園用地(図の)を充てて12mに拡幅する。
・外苑ハウス敷地内に広場や緑道を設けて容積率と高さを大幅に緩和する。
  
 これを外苑ハウス建て替えに関する公益と私益で考える。
・公益に資する件は、外苑ハウス敷地のなかの地区施設である緑道や広場である。これは私益にも資する。
・私益に資する件は、容積率と高さの大幅な緩和である。
・公益を私益のために資する件は、の道路拡幅である。

 普通の共同住宅建替え(通称マンション建て替え)は、その敷地が未利用分の容積率を使うことで事業採算を成り立たせる。
 ところが外苑ハウス建て替えは、容積率も道路も建替え不可能な条件にあるところを、都市計画を使って可能にする。ものすごい荒技で、さすがにオリンピック便乗はスゴイ。
 これを前例にして、このあたりは次々に地区計画の範囲をゲリマンダーに拡大して行き、どんどん都市計画変更して容積率や高さを緩和していくのだろう。うまいことやるものだ。
 このような都市計画を都や区の都市計画審議会が、どう審議するか楽しみである。
  
 このあたりで妄想をいったんおしまいにする。
 この神宮外苑あたりの都市計画に、わたしは何の関係もないのに、その一部分の外苑ハウス地区だけでも、いろいろと分らないことがあって、実に楽しく妄想できる。
 老人のボケ遅延策になってありがたい。これからも続けたい。

(追記1 2016/04/21)
 念には念を入れて書き添えておきますが、上の一文は、この都市計画について、わたしが疑問に思ったことを、ひまにまかせて書き連ねているだけのことです。これをお読みの方は、わたしが外苑ハウス建替え反対運動をしていると解されたら、それはまったくの誤解です。それについては賛成とか反対とかいう立場にありません。そのための都市計画の公共性を懸念しているだけです。念の為。(まちもり散人=伊達美徳

(追記2 2016/05/25) 
 フェイスブックでAtsumiさんという方が教えてくださったのですが、(図の)の部分は実は公園用地指定になっていませんでした。都営霞ヶ丘アパート用地を公園に指定するとき、予めこの部分を除外してあったのでした。都市計画決定の図が小さくて、その部分を判別できなかった、わたしの判断の誤りでした。したがって、都市公園法上の問題はないのでした。
 

●参照:五輪騒動まちもり瓢論
 http://datey.blogspot.jp/2016/04/1185.html


2016/04/08

1185【五輪騒動】オリンピックという怪物がテロ対策という鎧をまとって日本に攻めてくるらしい

●新国立競技場当初案の建築家ザハ・ハディド女史が死亡
熊五郎:こんちわ、ご隠居、お元気ですかい。
ご隠居:おや、熊さん、いらっしゃい、花見の帰りかい。
:えへへ、そうでさ、ご隠居は花見は済ませましたか。
:ああ、先日、母校のキャンパスに行ってみて来たよ。
:久しぶりにオリピック騒動の話をしに来ましたよ。白紙撤回になった新国立競技場案の建築家ザハ・ハディドが死んだらしいですよ。
:あ、そうそう、気の毒にねえ、あの案にさんざんケチ付けられて、突然の白紙撤回、そのあとでてきたA案が自分の案の模倣だと抗議したりしてるうちに、ぽっくり。
:もしかしてあの騒ぎが元になった心労で発作を起こしたのかもねえ、彼女の命を縮めたのは白紙撤回事件かもしれませんね。ウラメシヤ~新国立競技場って、外苑の樹林に中に化けて出るかなあ。
:わたしはザハ案でできると、外苑のあの天皇制賛美景観をぶち壊してくれると期待していたんだけどねえ、残念。
白紙撤回された恨みのザハ・ハディド案
:で、コンペやり直しで決まったのが大成・隈組のA案、「早い・安い」てんで当選なんでしたね。
:そうそう、そいつに「拙い」ってのも付け加えたいね。
やり直しコンペででてきた二つの応募案
:ハハ、竹中・伊東組のB案の方がはるかに上手いですよね。なんでも都市計画変更を伴うんで、メンドクサイって落ちたとか。
:そうそう、ザハ案に合わせるために、明治公園「四季の庭」を都市計画変更して人工土地の上に押し上げたのを、またもとのように地上に戻す変更を嫌がられたとかって噂だね。
B案はデッキをやめて「四季の庭」を復元
:でもねえ、そのほかのところにいろいろ都市計画変更が必至なのに、何故これだけはやりたくないんでしょうねえ。
:なんだかアヤシイね。

●オリンピックがテロを連れて来るかも
:ところで、今日の新聞に載ってるんですが、オリンピックの2020年5月から11月まで、神宮球場をオリンピック専用に使いたいって、JOCが持ち主の明治神宮と交渉中とか。
:メイン会場の新国立競技場の隣だから、何か競技をするのかい。
:いえね、いろいろ準備やら事務的な場所やら物資置き場やら、いわば後方支援用らしいですよ。それで困るのが試合に使えなくなる大学とプロの野球です。
新国立競技場と神宮球場あたりの様子
:わたしは野球に興味ないからどうでもいいけどね、あ、そうだ、それって、本当はテロ対策かもしれないよ。
:え、オリンピックを狙うテロ対策ですか、あ、そうか、隣で野球やらなにやらで大勢の人集めされたら、そこにテロ屋が混じってきてしまうってんですね。
:そうだよ。そうでなくても警備が大変なのに、近くで余計なことをやってほしくないって警察が思うのは当然だな。あれは40年ほども前だったか、ミュンヘンオリンピックで大変なテロ事件があったよ。
:特に今はヨーロッパや中東でテロが大々的に進行中で、2020年よりまえに収まりそうもないですね。オリンピックでテロやると世界中に宣伝効果が絶大だ、う~む、オリンピックがテロを連れてくるかもなあ。

●テロ対策視点から都市計画を考えるなんて
:朝日新聞が隔週日曜発行のグローブって新聞を見ていたら、『五輪も舞台、「軍事化」する都市』なる見出しの記事があり、ロンドンオリピックでの警備担当幹部の話が載ってるんだよ、ほれ、ここ(右図)を読んでご覧よ。
:どれどれ、う~む、会場周辺の住民全部を調べたって、これはひどい、そこまでやるんだ。外苑のまわり住んだり働く人たちは、警察にプライバシーを丸裸にされるかもね。
:記事に曰く、テロ対策に「立ちはだかったのは都市化だった」、そして「次々に建つ高層ビルや商業施設が条件を複雑にした」のだそうだよ。
:東京はまさにその条件を複雑極まるように、日々再開発の渦の中ですよ、どうするんですかね。
:こうなれば今の都市計画の段階から、建築も街も公園もテロ防止対策プランにしておかなければならないねえ、そこまで考えてやってるのかなあ。
:ご隠居は考えたんですか。
:いやいや、新国立競技場関係の都市計画についてこれまであれこれ書いてきたのだけど、その視点から考えたことは全くなかったね。ま、わたしは善人だからね、うん。

●樹林や丸い競技場はテロ対策に邪魔かも
:新国立競技場の建物とその敷地は、テロリストが隠れる空間や、爆発物を隠し置いたりできる空間があってはダメなんでしょうね。
:そうなると、できるだけ見通しのよい、なにも置いてない、デコボコのない真直ぐな空間がいいのだろうね。あの丸い外周の競技場は、視線が通らないからダメだな。
:じゃあ、樹林や植栽なんてのは大問題ですね、今の競技場案は各階の外廊下のようなところに植え込みがあるから、あそこに爆弾を隠し置くには絶好ですよ。
緑を建物の中や外までいっぱい画いてあるけど、、
:物騒なこと言うね、競技場外の樹林や植え込みがあるけど、全部切り倒すのかね。明治神宮外苑の中の樹林も、見通しが良く灌木を伐リ払い、繁る枝葉も坊主にするかな。
:あ、そうか、「四季の庭」の都市計画変更も、実はテロ対策だったかもねえ。
:なんにしても、なんとも殺風景になるんだろうかねえ。

●テロ対策にかこつけて奇妙なことも起きるか
:あ、そうだ、JSC新ビルの隣にある共同住宅の外苑ハウスの建て替えも、もしかしてテロ対策かもしれませんね。今は誰が住んでいるか分らなくても、建て替えすればきっちりと把握できますね。
:おお、建替え事業で入居者ロンダリングをやるんだ。まさにテロ対策だ。ホントかね。
共同住宅ビルの外苑ハウス
都営住宅、外苑ハウス、JOC新ビル、JSC新ビルあたりの配置計画図
:そしてね、建て替え後に販売する住宅の全部を、JOCが買うか借りるかして、競技関係者の宿舎や事務所に使えば、テロ対策とオリンピック裏方利用の一挙両得。
:あの外苑ハウスは、もともとが1964年オリンピックの報道関係用に建てたから、それなりに由緒があるな。今ではオリンピックと無関係の民間ビルなのに、たまたま隣にあるというだけで、どうして地区計画の範囲に入っているのか、どうして区画整理区域に入ってるのか、実に不思議に思ってるんだけど、今になって理由がやっとわかったよ。
:だから一民間共同住宅の建て替えなのに、オリピック関係で確保する室数を多くするために、わざわざ容積割増をして優遇策をとるのでしょうね。なにしろオリピック誘致者の東京都が都市計画行政当局だから、そこはお手の物ってね。
:まあ、そういう実に奇妙な、正当かどうか首をかしげる仕掛けが裏があるのかもなあって、あくまで妄想で勝手に面白がってるにすぎないけどね。
:都営霞ヶ丘アパートを立ち退かせて跡地を公園にするのも、あの住宅がテロリストの巣窟になるおそれがあるってことかなあ。これも妄想ですがね。
都営霞ヶ丘アパート
:オリンピックって、たしか真夏にやるんだよね、それってやっぱりテロ対策かな。だって、熱帯の東京で厚着して武器や爆弾を隠すなんて、かなり難しいもんね。
:テロリストも大変だ。
:テロ対策にかこつけて、妙な再開発やら、個人プライバシー侵害やら、いろいろわけのわからんことが起きるかもなあ。オリンピックそのものがソフトなテロに見えてくる。
:う~む、オリンピックって怪物が、テロ対策って鎧を着て攻めてくる、そうなりゃなんでもゴリ押し「五輪押し」ってね。


●参照:「五輪騒動瓢論集」(まちもり散人)

2016/02/12

1173【五輪便乗都市計画】岸体育会館と外苑ハウスの計画が分ったがなんで土地区画整理事業なんだろうか


【1172五輪騒動】の続き
http://datey.blogspot.jp/2016/02/1172.html

 ネット社会で趣味の都市計画ゴタクを並べていると、さすがにネット時代はすごいもので、たちまち疑問を解く情報提供のお方たちがでてきた。ありがたいことだ。
 昨日の五輪騒動ブログで、外苑ハウスや新岸体育会館(正しくは「(仮称)日体協・JOC新会館」というらしい)のあたりが、どうもよく分らないことを書いたら、それらの地元説明会の資料を教えてくださったお方がいた。 
岸体育会館説明資料の一部
外苑ハウス説明資料の一部
そこでこれら3図を合成してみたら、こうなるのかとよく分かった。

  外苑ハウスは、原則的には現在の敷地の中で建て替えるらしいが、スタジアム通りからのアクセス通路部分を、新岸体育会館敷地の一部に入れるらしい。
 外苑ハウスはスタジアム通りからの車アクセスはなくなって、外苑西通りのみからアクセスにする、というわけか。
 土地区画整理事業をやるそうだから換地するのであろうが、北側の都営住宅が無くなって公園になって環境が断然よくなるから、外苑ハウスの土地評価はぐんと上昇するだろう。とすればそのアクセス部分の土地は減歩対象か。

 新岸体育会館の説明資料に、計画地10000㎡と書いてあるのは、地区施設の三角広場1000㎡とJSC新ビル敷地も含むのであろう。
 これら3つの施設(三角広場、JSC新ビル,岸体育会館)をひとつの敷地にして、岸体育会館はJSCビルの増築扱いにするのか、それとも敷地は別だけど計画は一体ということか。三角広場は敷地か敷地外か、そこのところがわからない。

 なんにしてもこうなると、地区計画のAー3及びAー4地区の変更が必要である。
 Aー3とA-4の間の外苑ハウスアクセス通路部分をA-4に組み入れ、元こもれび広場部分をA-3から切り離して、A-4に組み入れて、面積変更をすることになるだろう。
 先の都市計画公園の変更の時に、こもれび広場部分を都市公園から除外した理由が分らなかったのだが、そこを新岸体育会館の敷地に組み込みたかったのが、その理由らしい。今になってようやくその下心と言うか”陰謀„の意図が分かった。

外苑ハウスの土地については、新たに再開発等促進区と地区整備計画の記述が必要になる。
 しかし、再開発等促進区のような緩和型地区計画で、最初にその内容がないままに再開発等促進区のみを定める地区計画ってのは、違法ではないが不適切であると、わたしは思う。これはこれから出て来るであろう神宮外苑と青山通り沿いの土地についても同じである。
 つまり、緩和するってだけ決めて、なぜ緩和するのか、緩和に見合う地域貢献は何かについてきめるのは後回しってのは、都市計画の決め方として、オカシイでしょ。

 ところで、どうして土地区画整理事業なのか、いまだにわからない。
 土地区画が変るのは、外苑ハウスのスタジアム通りからのアクセス通路が、岸体育会館敷地に組み込まれるだけである。
 これだけのために土地区画整理事業ということは、なにか税務上の都合でもあるだろうか。

 まあ、わたしとしては、遠くの街の、なんの関係もない、どうでもいいことに、自分の都市計画趣味で、なんの役にも立たないことを言っているのだが、唯一役に立つのは、わたしのボケ進行の遅延策にはなることだ。まことにありがたいことだ。


(追記1 2016/06/16)
 右のような図を東京都から情報公開によって手に入れた方(Masazumi Atsumiさん)がおられて、ネット公開されたので、その図を引用します。
 これを見て、なぜ土地区画整理事業とするのか、その理由を次のように推測します。
外苑ハウスの敷地は、東側の接道がスタジアム通からできなくなって、西側の区画道路が前面道路になるのだけど、建て替えのためにはこの狭い区画道路の幅を広げる必要がある。
 それには、現在都市計画公園決定している都営霞丘住宅の土地の一部を、拡幅道路として取り込む必要がある。
 そうすると都市公園の一部廃止が必要になる。しかし都市公園法第16条は、公園の廃止を禁止している。
 そこで同条第1項を適用、つまり都市計画事業としての土地区画整理事業を行うことで、例外措置により一部廃止をする。

●都市公園法第16条 
 公園管理者は、次に掲げる場合のほか、みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならない。
1 都市公園の区域内において都市計画法 の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合
2 廃止される都市公園に代わるべき都市公園が設置される場合

(追記2 2016/05/25)
Masazumi Atsumiさんのフェイスブック経由情報によれば、区道拡幅部分は都市公園指定範囲外とわかった。予め拡幅予定部分を外して公園指定してあった。だから都市公園法上の問題はないと分かった。都市計画決定時の図が小さくて、それを判別できなかったわたしの誤りでした。
 土地区画整理事業とする理由を推測すると、換地によることで、外苑ハウスの土地に関する負担をなくするためでしょう。

新国立競技場建設と神宮外苑再開発・2020五輪運動会騒動瓢論集(まちもり散人)
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html

2016/02/10

1172【五輪騒動】新国立競技場に便乗の周辺開発計画が動き出して都市計画変更や区画整理事業をやるらしいがなんだか不可解

●岸体育会館がやってくるので地区計画変更だろうか

 どうやら新国立競技場場騒動が一段落したからだろうか、こんどはその南あたりに建築を建てる計画が動き出しているらしい。
 南あたりとは、都市計画変更前の都営霞丘住宅地、明治公園こもれびテラス、そして外苑ハウスの土地である。
 都営住宅地は、都市公園の変更で新たに明治公園に都市計画決定されたから、多分、ここには建築計画は無いだろう。(ここでは「新霞ヶ丘広場」と言うことにする)

 角地の三角の明治公園こもれびテラスは、同じく変更で明治公園から除外して、新たに地区計画の地区施設として「広場」の指定となった。(ここでは「三角広場」と言うことにする。)
 このあたりで最近になって知った建築計画のひとつは、代々木にある岸体育会館を移転して、この三角広場に建てるというニュースである。それを読んで勝手に考えることにする。

 日刊建設工業新聞http://www.decn.co.jp/?p=59995にそのニュースが出ている。
「日本体育協会(張富士夫会長)は、老朽化が進む岸記念体育会館(東京都渋谷区神南1の1の1、同協会の本部が入居)を神宮外苑地区に移転新築する。新会館の名称は「日本体育協会・日本オリンピック委員会新会館(仮称)」。東京都新宿区霞ケ丘町4丁目の都立明治公園こもれびテラスと民有地を都が土地区画整理した敷地(約3300平方メートル)に建設する。新会館の規模は地下1階地上14階建て延べ約1万9500平方メートル。建物の最高高さは60メートル。」(2016年2月4日)
 ニュースの通りだとすると、都市計画決定している地区施設の広場に、建築を立てることはできないはずだから、これから地区計画の都市計画変更を行う必要がある。
日刊建設工業新聞記事2016年2月4日
地区計画で三角広場は地区施設の広場指定

どのように変更かわからないが、まずは再開発等促進区の土地利用基本方針の変更が必要である。現在のそれは、新霞ヶ丘広場と三角広場をまとめてAー3地区として、その土地利用方針は次のとおりである。
「国立霞ヶ丘競技場の建替えに合わせて、外苑前駅方面からの新スタジアムへのバリアフリールートの整備を図るとともに、公園・広場等として整備を図る。」
 これだと、建物を立てることはできないだろう。「公園・広場等」の「等」のなかに岸体育館も含まれるとは、まさか言うまい。この文面の変子が必要だろう。

 更に地区整備計画の変更も必要である。
 広場を廃止するか縮小するとすれば、地区計画で決めた地区施設広場は、なんだったのか。これに替わる広場をどこかにつくるのか。その南のJSCビル敷地と調整して、広場を確保するか。
 ニュースによると計画では建築高さ60mとある。現在は高さ制限は高度地区規制の30mだから、2倍以上に緩和する必要がある。ただし、Aー3地区全部を緩和すると、公園も緩和に入るから、Aー3地区から3角広場部分を分離するのだろうか。
 緩和に対応するためには、地区への貢献が必要だが、そのための新たな地区施設等の指定も必要になるだろう。
 そのほか現在は何も書いていない用途制限も、新たに書き込む必要があるだろう。容積率の緩和は必要なさそうだ。

●外苑ハウス建替え地区整備計画追加か

 新霞ヶ丘広場の南にぶら下がる「外苑ハウス」の建て替え計画について、地元に説明会があったそうだ。その資料がネットに載っていたので、それを見て勝手に考えることにする。
 地区計画が決定した当初から気になっているのだが、この一民間共同住宅ビルの外苑ハウス敷地だけが、どうして都市計画の地区計画区域に入っているのだろうか。
 このあたりの寺院や学校住宅地などが広く入っているならわかるが、外苑ハウスだけが入っているは、地形的にも土地利用的にも、そして都市計画的にも、どうにも不可解である。

 不可解と言えば都営住宅用地が入っているのもそうだが、そこは新国立競技場がらみということで百歩譲るとしても、どうみても外苑ハウスは新国立競技場に何の関係もない。
 地区計画でここだけ地区整備計画が抜けているのは、新国立競技場には何の関係もないという証明のようなものである。つまり地区整備計画を定めるに至るほどには多数の地権者の合意ができていないということだろうから、ドサクサまぎれにとにかく地区計画に入っておこうと、強引に再開発等促進区はめ込んだように見える。


 さて、その外苑ハウスを建て替えする地元説明の資料によると、建替え建築の規模は、敷地約9千㎡にたいして、延べ床約6万㎡、高さ80mだそうである。
 となると、どうしえも容積率は現行300%を500%に、高さは現行40mを60mに緩和が必要になりそうだ。今はまだ定めていない地区整備計画を、新たに制定する必要がある。
外苑ハウス建替え計画の地元説明資料の一部(ネットより)
だが、これだけ大きく規模的緩和をするべき都市計画的理由は何だろうか。それに見合う社会的貢献が必要だが、それは何か。
 地元説明資料を見る限りでは、単純に現在の敷地の中で大規模化高層化して建て替えるだけで、道路や公園を提供するような特別に地域に貢献する施設はなさそうである。
 子育て支援施設とか災害対策施設とか書いてあるけど、まあ、この規模なら当たり前のようなものである。店舗を設けるから、競技場の観客を相手にひと儲けするらしい様子もある。

 敷地内に広場を設けているのが貢献のつもりだろうが、そもそもすぐ北隣が広い新明治公園公園だし、南東隣は高等学校、西隣りは寺院と墓地だから、周りに十分オープンスペースがあって、いまさらここに広場を設けてもさほど地域貢献にならないだろう。要するに共同住宅住民のための施設にしかならない。
 どうも現在のビルを巨大なものに建て替えるだけとしか思えないのだが、それでも都市計画の緩和がありうるのだろうか。
 ここのような低層市街地に接して道路幅も広くないアンコ部分に、大規模高層ビルが建つのは、都市計画的には好ましくないだろう。
 せっかく都営住宅をつぶして作る公園が、このビルのおかげで日陰になってしまう。

 わたしは外苑ハウスの建て替えがいけないと言っているのではなく、老朽化したのなら建て替えするべきだと思うのだが、一民間ビルの建設を公共的な意義がある都市計画として、その敷地だけを規制緩和して支援する理由が、どうも見つけにくいと言っているのだ。
 これが建て替えられても、今よりも市街地環境がよくなるとは思えないのだ。ここの都市計画には、何か特別のなことでもあるのだろうか。

 今後、この周辺の民有地が、うちも再開発促進区に追加したいと言うと、その都度敷地毎におなじように追加して緩和するのか。外苑ハウスができて他ができない理由がない。でもそれでは都市計画はめちゃめちゃである。
 念の為に書いておくが、わたしは外苑ハウスにはなにの関係もなく、眼に敵にしているのでもなくて、都市計画一般論として不可解と言っているのであるから、誤解しないでもらいたい。

●やるならもっと根本的な整備をやれ
 
 このあたりを土地区画整理事業で整備するというニュースがあるが、本当だろうか。
 土地区画整理事業は広い範囲の土地を入れかえて、道路、公園、宅地を使いやすく良い環境に仕立て直す事業である。
 上に見たように、三角広場も外苑ハウスもその土地のままで、建物を建てるらしい。新明治公園とあわせてこのあたりを入れ替え整備はしないらしい。
 道路や公園があらたにできるのでもないらしい。土地区画整理事業で何をやるのだろうか。
 
 わたしは以前に、このあたりを土地区画整理事業で整備するならば、このようにやるといいだろうねと、勝手に提案をしたことがある。http://datey.blogspot.jp/2015/12/1156.html

 その骨子は、都営霞丘住宅用地の西の外苑西通り沿いに外苑ハウス(図の④)と岸体育館(図の③)の敷地を持っていき、その東の範囲(図の④)に都営霞丘住宅の建て替えをし、外苑ハウスの跡を公園(図の③)とするのである。
 こうすれば広い道路に面して高層建築群が建ち、街区のアンコ部分は中低層住宅と公園となるのである。

 このように外苑ハウスも入れて全体を揺さぶって整備するならば、外苑ハウスが都市計画に入っていても不思議ではない。
 なお、新国立競技場敷地は、建物の外部を全て明治公園として開園する。これによって、明治公園の面積問題はなくなるはずである。
 もちろん、現在の都市計画公園や地区計画の変更をしなければならない。

 と提案を書いてきたが、まあ、どの方面からも一顧だにされないでしょうな、犬の遠吠え、蟷螂の斧、ごまめの歯ぎしり、馬耳東風、猫に小判、蛙の面に小便、、、いいんだよそれでも、こちとらは趣味で言ってるんだからね、。

●次の便乗本命都市計画変更がもうすぐ出てくるだろう

 まあ、なんにしても、外苑ハウスや岸体育会館のために、そして便乗大本命の神宮球場などの神宮外苑の中の都市計画追加変更案が、近いうちにでてくるにちがいありません。
この次の都市計画大本命の神宮球場やラグビー場等の再開発は?
  あ、そうだ、忘れそうになったが、大大本命の新国立競技場の敷地そのものの地区整備計画の変更案も、新案に決まったので変更があるに違いない。
 もしも変更が無いなら、新案はザハ案を踏襲したことになる。

 東京都民のお方たちは、都市計画行政の動きに注意しておきましょうね。
この前みたいにも、決まって締まってから、知らない間に決まってたなんてブツブツ文句を言うのじゃなくて、都市計画手続きの素案段階でも原案段階でも縦覧の時がきたらすぐさま、意見があるならばきちんと意見書を出し、意見公述しましょうね。
 意見書を出しても、意見が取り入れられるかどうかわからないけど、すくなくとも都市計画審議会の委員たちが、この前みたいにイイカゲンじゃなくて、こんどは真面目に審議するように、その言動に注意して精神的圧力をかけましょうね。

 わたしは現地の事情もオリピック事情もインサイダー情報は何も知らないし、東京都民でもないから、ナンダカンダと言っても、ヒマ老人が机上で頭をひねって、ボケ防止に遊んでいるだけである。
 無責任なものであることを承知しているが、都市計画を専門としていたものとして、ちょいと気になるからときどきこうやって書くのである。

新国立競技場建設と神宮外苑再開発・2020五輪運動会騒動瓢論集(まちもり散人)
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html