2010/04/20

260【各地の風景】今、甲州は桃源郷

 いま甲州は桃の花の盛りとて、畏友を訪ねて韮崎へ。
 韮崎には新府城跡がある。新府城跡から見下ろす一面の桃の花のじゅうたん、その向うに雪をかぶる八ヶ岳がぎざぎざした山稜の連なりを見せていた。
 おきまりの桃源郷の風景だが、去年は雨で八ヶ岳が見えなかった
 甲斐の武田氏は、ここが滅亡時の最後の城だそうだ。
 周りに土塁や堀を巡らせた小高い丘の上に築いている。中世から近世への過渡期の城郭であろうか。

 城跡には武田氏を祀る藤武神社がある。今日はその祭礼に日とて、神楽の笛の音とカラオケらしい歌声とがこんがらがって聞こえる。
 急な100段以上はありそうな階段を息を切らせて上る。
 社殿そばの舞殿では、いましも神楽が進行中。見れば、翁が鈴を持って舞っている。神楽面ではなくて能面の切り顎の白式尉の翁面である。
 畏友にきけば、神話による神楽を行なうというが、今日は畑仕事が待っている。来年の祭礼にでもまた見にこよう。

 山上の広場にはたくさんの屋台が並び、焼そばやらの匂いが漂う。
 広場の向うには舞台もあって、いましもオバサンがなにやらカラオケ唱歌中である。神楽の笛と音が入り混じるのが困る。
 いつもは禁止だろうが、今日はたくさんの乗用車が登ってきている。松林の中が駐車場となっていて、どうにもこの風景はキライである。

 林の中を下って、観光客が通らない桃畑の道を抜けて歩く。ピンクの花の向うに八ヶ岳や富士山の白い山容をすかし見つつ、桃源郷を堪能する。
 もっとも、桃の花の本質は観光ではないから、これから花を摘んでいくので、桃源郷の風景は一気に褪せてしまう。摘んだ花から花粉を採って、また桃畑の残りの花に吹きかける作業をするのだ。こうして受精させて、果実を実らせるのである。

 ここは八ヶ岳噴火の溶岩台地のうえで、水はけが良いので桃の美味しく実るのだ。
 それでも観光客が通る道筋の桃畑では、道沿いに菜の花を咲かせている。黄とピンクとは取り合わせがなかなか良い。

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