70人ほどが集まって、建築や運動競技の専門家を招いて、こんどの公募の結果に関しての自主勉強である。熱心なことで頭が下がる。
わたしはオリンピックにも競技場そのものにも、ほとんど興味はないのだが、こういう場外乱闘には興味がある。JSCの発表を読むのがメンドクサイので、他人から聞こうとの魂胆である。
「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会 緊急勉強会
原っぱ組の岡目八目・・・新国立競技場二案をどう読むか」
司会の方が見せてくださった、この一枚のAB両案の比較表が面白い。
このたびの二つの応募案に対する、審査員たちの評価点を並べたのものである。こうやって点数をつけて、客観的(なふりして)評価をしたらしい。
結果は合計点が多かったA組の勝ちだが、詳細を見るとこうなのであったらしい。
新国立競技場再公募2案の審査員による評価点一覧
工期短縮でブッチギリの差をつけてA組の勝ち
勝ち点のほうに赤丸を、わたしが今ここでつけたのだが、要するに、「早い・安い・ヘタ」A組、「遅い・髙い・うまい」B組ってわけである。
これには笑ってしまった。
吉野家って牛丼ファストフード屋の宣伝文句が、「うまい やすい はやい」といったが、実体は「まずい やすい はやい」である。まさにそれである。思い出したが、糸井重里がこれをもじって「はやい、うまい、いとい、よろしく」と言っていた。
B組は「うまい」だけじゃあ勝てなかったんだ。ワンマン宰相の白紙撤回騒ぎの結果が、「はやい、やすい、まずい、クマ」かよ~、
会は2時間もすすんで、年寄りは寝る時間が近づいたし建築家たちのお話にも飽きたので、中座して帰ろうと会場の外に出たら、司会者が追いかけてきて、何かしゃべって行けとのこと。
建築のことじゃなくて都市計画のことでもよいかと聞くと、それで良いとて引き返して、10数分しゃべった。時間がなくてうまくしゃべれなかったのが残念、ここに発言要旨を書いておく。
=========
●発言要旨 2015/12/23 伊達美徳
わたくしは、一介の都市建築ディレタントの都市徘徊人です。オリンピックにもラグビーにも、サッカーにも全く興味がありませんが、このような場外騒動には大いに興味があります。
ザハ・ハディド案(コンペ応募案)が実現したら、この大嫌いな神宮外苑の国家権威主義的な景観をブチ壊してくれるだろうと、大いに期待していました。
しかし今回きまったのは、ベランダで盆栽を楽しむ「名ばかりマンション」の広告の絵のような軟弱な姿のものとて、実に残念です。ワンマン宰相がまた白紙撤回を白紙撤回してくれることを期待しています。
都市計画の面から意見を申し上げます。
まず最初に、世間に流布しているらしい、本件の都市計画に関する情報の間違いを指摘しておきます。
ひとつは、神宮外苑の地が日本で最初の風致地区指定されたという風説が間違いであることです。1926年9月14日内務省告示第134号において、東京都市計画風致地区を指定しましたが、この場所は神宮外苑の中ではなく、その外の街でした。外苑も内苑も風致地区ではありませんでした。外苑の全部を風致地区指定したのは1970年のことです。内苑も同じです。
もうひとつは、都市計画である地区計画を、コンペの結果を見て決めたのは、順序を間違っているという風評ですが、これも誤りです。
地区計画は、その計画する地区の特性によって、どのような建築や景観を作り、守るかという具体的な計画を前提として、それが適切であり悪影響をもたらさないと評価したうえで、その具体的計画を確実に実現させるために、強制力を持つ都市計画によって担保するものです。異なる形の建築計画等を禁止していると言ってもよろしい。
したがって、ザハ・ハディド案を的確な計画と評価したからこそ、それを実現するための地区計画を定めたのです。
結果として、白紙撤回になったのは、的確な計画でなかったことになるのですが、それは都市計画のせいではなく、カネメのせいという奇妙なことでした。
ということで、今回はザハ・ハディド案とは異なる、このA組の案が登場したのですから、その名のごとく、Aクラスの計画であると都市計画的に評価をして、その上でこれを的確に実現するための地区計画・再開発等促進区の地区整備計画に、変更をするべきでしょう。
また、都市公園の都市計画変更も行うべきです。ザハ・ハディド案をムリヤリ納めるために、都市計画公園の明治公園・四季の庭を立体公園にするという、ウルトラCの奥の手の離れ業をやりました。今回それを元に戻すように、新国立競技場の外郭を調整し、変則極まる立体公園を廃止するべきでしょう。コンクリ床の上に、本物の森は育ちません。ついでに言えば、建築のバルコニーに森はできません、名ばかりの杜です。
そして提案ですが、新国立競技場の敷地全部を、明治公園として新たに開園するべきでしょう。
もちろんそこにはこの地に適した樹種、つまり潜在自然植生種の樹木等の苗木を植えて、時間をかけて本物の森を作ることにしましょう。市民参加で植えると、かつての「勤労奉仕」ですね。
神宮外苑も、東京都体育館も、ラグビー場もこのあたり全部が都市計画公園の明治公園なのです。ただし開園しているのはそのうちの1割ほどです。新国立競技場ができた暁には、開園公園をできるだけ広くしたいものです。
都市計画に関しては、さらに国立競技場の南にある、都営住宅、三角公園、テニスコート跡地、外苑ハウス等のエリアについても、変更すべきでしょう。
このことに関しては、ここでは時間的に述べきれませんので、わたくしのウェブサイト
に、提案を書いておきましたので、ご覧ください。
たぶん新国立競技場とこのあたりを含めて、地区計画の変更、地区整備計画の変更と追加が、今後の都市計画手続きに乗ってくるはずです。東京都民は注意深くこれを監視して、手続きに積極的に参加しましょう。
さらに今後の都市計画で大きな問題は、現段階では地区整備計画がないままに、地区計画の再開発等促進区に位置付けられている、神宮外苑とそれに隣接するラグビー場や青山通り沿いの民間ビルのある地区です。
そもそも、地区計画の再開発促進区で、地区整備計画がないのが非常に不思議と、私は思っています。具体的な計画なしに、あるいはそれを見せないで、都市計画決定するのは、法的には違反しなくとも、なぜそれで再開発等促進区を定めるのか、行政当局、都市計画審議会、そして手続き中に何も意見書を出さない東京都民に、わたしは不審を抱くものです。
この議案を審議した新宿区の都市計画審議会の議事録に、専門家の委員から、具体的な開発計画の絵がないから内容が分らないと、指摘されています。
審議会にも構想図を見せていなのです。よくまあ、それで都計審は承認したものです。多分、無いのではなくて、隠しているのでしょう。
これから、新国立競技場周辺と神宮外苑周辺の、地区整備計画が都市計画手続きに出されるでしょうから、東京都民はしっかりとそれをチェックされるように、神奈川県民のわたくしは要望しておきます。
都市計画と並んで、都市公園のことも留意する必要があります。公園は都市計画法ではなくて都市公園法によって律するので、緩和の考え方が異なります。
今後、都市計画公園の開園に向けての手続きがどう進むのか、もしかして明治公園計画を廃止とか縮小するのかもしれないから、それが決まってから騒ぐのでは、行政手続等の段階からしっかり見守る必要があります。
以上、都市計画の面からのコメントでした。ご清聴を感謝します。
==========
ということで、発言の機会をいただいた主催者にお礼を申しあげます。(つづく)
●五輪騒動:新国立競技場と外苑都市計画に関する論考集(まちもり散人)
0 件のコメント:
コメントを投稿