●霞丘都営住宅廃止の不可解
明治公園ことで前々から気になっていたのは、霞ヶ丘都営住宅地を新たに明治公園にしたのは、なぜなのだろうか、ということである。
国立競技場の敷地に明治公園の「霞丘広場」を取り込んだので、開園している明治公園面積が減る、その代りに都営住宅敷地を公園にした、ということなのだろうと、単純に思っていたのだが、よく考えるとどうも、それがオカシイのだ。
オカシイからとて、東京都の都市計画部局のどたかに教えを乞うのも、何の関係もないわたしでは気がひけるし、聞くのもシャクだから、ヒマにまかせて図面をにらみつつ考えてみたのだ。
それで分ったかというと、よく分からないし、関連してもっと不可解なことも発見して、余計に分らなくなった。まあヒマだから、ナンダカンダと考えたこと書く。
前に述べたように、霞丘広場も日本青年館も敷地にとりこんだ国立競技場の全部を、明治公園として開園すれば、霞丘広場の代替地は不要なのである。それをしないで、わざわざ都営住宅敷地を公園代替地にしたのは何故か。
東京都は霞丘都営住宅を潰したかったのか。しかし、東京都の住宅マスタープランには、建て替え事業をここでやると書いてあったのだから、それもおかしい。
●都営住宅廃止はJSC・日本青年館新ビルのトバッチリか
どうも、霞丘都営住宅は、近くに移転してくるJSC本部ビルと日本青年館のトバッチリを食らって、あえなく廃止という犠牲になった様な気がする。
JSC・青年館新ビルの敷地は、都営住宅のすぐ南東の外苑西テニスコートがあった、JSCの土地である。ここに新ビルを合築するとて、すでに工事中である。
都営住宅、外苑ハウス、JSC/青年館新ビルあたり
黄色線内は地区計画の範囲
外苑地区計画全体図
明治公園指定区域全体図
それはなぜか、たぶん、こうだろう。JSC・青年館新ビルは都市公園法からすると、都市公園内には立地できない施設である。将来、ここも明治公園として開園するとなったら違反建築で取り壊しになるおそれがある、あるいは知っていながら既存不適格建築を文科省が建てるわけにはいかないと思ったのか。だから公園を廃止した。
ところが、この廃止をしたままだと、都市公園指定の面積が減少するのだが、都市公園法第16条で、廃止の時は代替公園をつくるように決めている。そこで代替の公園用地として、霞丘都営住宅をそれに充てる都市計画変更したのである(のだろう)。
つまり、このわたしの妄想が事実ならば、都営住宅はJSC・青年館新ビルの犠牲、そのもとは新国立競技場の犠牲、そのもとは東京2020オリンピック・パラリンピックの犠牲になったのだ。
オリンピック敗退者の第1号が、公営住宅であるってところが、なんとも住宅政策のない日本の象徴的な事件である。
●都営住宅と外苑ハウスの不可解かつ不公平
このたびのプロポ案のグランドレベルの図面を見ると、霞丘広場と日本青年館を取りこんで、競技場の前庭は十分に広いように見える。都営住宅跡地にできる公園に、わざわざデッキまで掛けて渡る理由が、どこにあるのだろうか。
都営住宅を新霞丘広場にしなくとも、一向に問題がないように思えるのだ。元に戻しなさいよ。
まあ、でも、そうして元に戻したら、JSC・青年館新ビル用地を公園に戻さなければならないから、困るだろうなあ。
そこで、このあたりの地区計画の図面をにらんでいたら、妙なことに気がついた。霞丘都営住宅の南隣に外苑ハウスなる共同住宅ビルがあり、これが地区計画区域に入っているのである(ここを公園指定すればいいかな)。
このあたりで新国立競技場とは何の関係もない民有地である。地形もゲリマンダーのシッポのように飛び出しているし、まわりは地区整備計画があるのに、ここだけが方針のみである。
ここを地区計画区域に取りいれ、しかも再開発等促進区としているのだが、地区整備計画がないからその開発内容が分らない。
一つの敷地の一棟のビルを都市計画として独立的に定める、しかも緩和型にするのは何故か。こういう都市計画がありうるのか、ヘンでしょ。
都営住宅はあえなく廃止、こちら単独民間共同住宅は容積や高さ緩和して再建築とは、不公平かつ不可解である。
●総合的な再開発計画があるなら地区計画決定の時に出せ
最近のマスメディアの報道によれば、このあたりを土地区画整理事業を行う予定があるとのことである。
その範囲がわからないが、国立競技場、日本青年館、都営住宅、JSC・青年館新ビル用地、外苑ハウス等をその区域として、土地や道路・公園の入れ替えや整形を行うのだろうか。
そうやって総合的に再開発を進めて、明治公園も新たに開園し、都営住宅も外苑ハウスも建て替えをし、JSC・青年館ビルもそれらと一体の景観の中で建てなおすのなら、どのような姿になるかわからないにしても、まあ、理解できなくもない。
でも、それならそうと、地区計画決定の時にそれを組み込むべきである。そもそも再開発等促進区は、そのような具体的な再開発計画がないままに定めるべきではない都市計画なのだ。
周辺に影響が大きい緩和型地区計画の再開発促進区を、方針だけで指定するのはあまりに安易な都市計画である。
それは、外苑地区地区計画全般について言えることだ。どうもオリンピックで大急ぎの新国立競技場ドサクサまぎれにチャッカリ便乗して、内容が決まってもいない外苑ハウスばかりか神宮外苑や隣接民有地までもイイカゲン地区計画に取り込んだ気配が濃厚である。
提案書を作った都市計画家、審査して計画書を作った都や区の行政の都市計画家、それを審議した都市計画審議会の都市計画家、どいつもこいつも恥ずかしくないのかい? (うわ、言いすぎか、天に唾か)
じっと地区計画の図面をにらんでいると、なんともはや外苑地区地区計画全体が不可解なことがたくさんあるのだ。(つづく)
●五輪騒動:新国立競技場と外苑都市計画に関する論考集(まちもり散人)
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