4月5日にネパールから横浜の自宅に戻ってきて、家人に揺れはどうだときけば、その後はないよという返事にひと安心。
ところが、わたしの帰国を待ち受けていたように、大きな余震が続いておきている。また毎日が酔っ払いになる。
◆
調べたら、ネパールは日本と肩を並べる地震大国であるらしい。
5000万年前に、ユーラシア大陸の南の海岸にあったネパール(その頃まだネパールはないのだが)の、ずっと海の向うに離れていたインド亜大陸が押し寄せてきてぶつかってきた。
そのプレートはちょうど太平洋プレートが日本列島の下にもぐりこむように、ユーラシア大陸の下にもぐりこんで押し上げてできたのがヒマラヤ山脈である。
現在も押され続けているから、日本と同じように地震が頻発する地帯なのだ。1934年にはカトマンズ盆地で大震災で、5000人近くも死んだそうだ。だが、その頃はラナ専制下の鎖国時代で、いまとは人口とは大違いであった。
ネパールの全人口は2300万人、一極集中カトマンズ首都大都市圏エリアはこの20年でも倍増の勢いでその13パーセントの300万人が住み、カトマンヅ盆地には100万人近くも住んでいる。
ここで大地震が起きると大変なことになりそうだ。海からの津波はないが、ヒマラヤの氷河湖が決壊したら、山の上から津波がやってくる。
一方、原子力発電所はないから、その点での危険性はない国である。水力発電所だけだそうで、乾季には需要に対応する発電ができなくて、わたしが行ったこの3、4月は夕方から夜中は計画停電が毎日であった。しかし、どこにも自家発電機がそなえてあるらしくすぐに切り替わり、誰も騒がない。
◆
そのカトマンズ盆地の三大都市であるカトマンヅ、パタン、バクタブルの市街中心部を歩いてきたのだが、ここの建築は地震にまったく無防備としか思えない怖いところであった。
あそこで地震にあったら、建物の下敷きになって死ぬことは確実である。
まず基本がレンガ造建築なのがそもそもの問題だが、古いものはもちろんだが、新しいものでも見れば見るほどそれは地震で倒れるに違いないように見える。
古いもので現に倒れかけているもの、傾いているもの、レンガ壁がはらんでいるものが街なかのあちこちにある。
新しい建築も鉄筋コンクリートの細い柱と梁の間に、レンガを積上げて壁を作っているが、工事中を見てもどうもその壁には鉄筋補強がないようなのだ。
コンクリート耐震壁らしいものはなく、壁という壁は全部レンガ積み、少ないけれどコンクリートブロック積みもあるようだ。
古いレンガ造建物でも上に上にと増築を重ねているし、1階は店舗で開口を取るために木柱だけで、木材の梁で上の何層ものレンガ壁を支えている。偏芯荷重で柱列が明らかに傾いているものも多い。
古い建物はレンガ造らしいが、よく見るとレンガと木材の混合構造で、レンガ積みを木材で補強してるらしい。このことは王宮や寺院の塔を調査した、日本工業大学の報告書にも記してある。
開口部のマグサは木材であるらしく、美しい歴史的建築の開口部の上には細かい彫り物をした木のマグサがかかっていて、そこから上にある何層ものレンガ壁を支えているように見える。
修復した建築は壁の中の見えないところで補強してあるのかもしれないが、一般にはそんなことはないらしくて、なんだかかなり怖いのである。
地震があるとそんな建築の中の住民はもちろんのこと、狭い道路にひしめく観光客も崩れてきたレンガでつぶされるに違いない。
世界文化遺産の古都は、世界でも有数の危険都市である。
参照
0 件のコメント:
コメントを投稿