2015/01/26

1052【横浜都計審傍聴③】この住宅過剰時代に公有地を使って大規模開発をする意義はどこに?

横浜都計審傍聴②】からの続き

・花月園競輪場跡地の住宅計画地に入る
 横浜都計審で原案通りに承認になった花月園等の地区計画の中身を、ほとんど理解できないので、現地を見ればわかるだろうとやって来ている。
 線路際の社宅跡地を観たので、次は右からまわりこんで、花月園競輪場跡地を見ることにする。
 
都計審に出てきた地区計画の都市計画の全体像を示す資料は、これだけ
住宅街区ごとの建築髙さ制限 
C地区は戸建て住宅、そのほかは共同住宅ビルらしい
現況空中写真 google earth

昔からのアプローチであった道路をダラダラと登ると、道は西向きに曲がり、スリバチ状の地形の中に入っていく。
 右のスリバチ南斜面地には、びっしりと住宅が立ち並んでいる。一戸建ても共同住宅の入り混じっていて、冬日に照らされて明るい。
 地形はこんな様子。
地形高低差状況(都計審資料)
元花月園競輪場のアプローチ道路から入口方向
駐車場と尾根上の競技場跡

・ここは歴史的に遊山の地だったがついに途絶える
 一方、スリバチ左手の北斜面地は暗い。アプローチ道路沿いには斜面緑地が石垣の上にあり、sそこに花月園の由緒を書いたパネルがあった。
 ここには戦前はかなり有名な遊園地であり、その名を花月園と言った。戦後に閉園してその跡地に開設した競輪場も、その名を受け継いだのだそうである。
 まあ、遊園地も競輪も遊びの場には違いないが、戦前は子供や家族向け、戦後は大人向けとなるところが面白い。

 その遊園地になる更に前には、ここは東福寺の境内地だったそうだから、信仰の場であった。
 昔から寺社参詣はまた物見遊山でもあるのだから、伝統は引き続いていたといえるが、ついに現代のここにきてその伝統は途絶えることになったと言えよう。
 いや、半分が新たに公園になるらしいから、遊山の場の伝統は継続すると言えるか。もっとも防災公園とか広域避難場所という目的がつくと、遊山もせちがらい現代になったと思う。

・現況の道路や地形は活用しないで大造成するらしい
 さて、競輪場跡地に入ると、まず広い駐車場跡地の平地がある。この駐車場の平地部分は戦前の花月園遊園地時代から広場だったようだが、尾根の裾を大きくえぐりこんで造成したらしい。
 駐車場の周りの斜面地には桜の木が立ち並び、向うの木立の上に尾根上の平地にある競輪場だった巨大な建物が姿を見せている。

 競技場の尾根上から続く左には、JFE社宅の裏山の裏側が見えていて、その斜面に沿って尾根上部に登る道がついている。
 こちら側の斜面地は、ほとんど人工的な緑地であるという特徴がある。これは多分、遊園地時代も競輪場時代も来客を楽しませる風景を見せる場であった名残ということだろう。

駐車場入り口から競輪場跡のパノラマ 地区計画の道路の引き方を見ると、
見えている尾根は切り崩されて、こちらと同じ平地になるのかもしれない
 地区計画では、このあたりが新たな住宅地になるゾーニングをされている。共同住宅ビルが立ち並ぶらしい。
 地区計画の図面を見ると、この駐車場入り口あたりから、緩やかなカーブながらも、ほとんどまっすぐに尾根の上に登る新設道路をつけている。駐車場面よりも道路が高く上がっていくから、たぶんそれに合わせて盛り土をして宅地造成をするのだろう。

いや、そうではなくて、尾根上には登らないで、ほぼ水平に突き抜けるのかもしれない。そうなると尾根を15mほども切り崩すことになる。つまり、今見えるおねはなくなって、その向こうの線路のほとり、あるいは山向うの住宅地まで、ず~っと平らな土地ができるのかもしれない。それはすごいことだ。
 どちらにせよ、イメージが湧かなくて、どうもよくわからない。
 新設道路は現在の地形の高低差や土地利用には無関係に引いてあるので、地形を見るだけでは頭が混乱するばかりである。
現況写真の上に地区計画による道路と緑地などを書きいれてみた
左右の端っこの「樹林地・草地等」指定地のほかは切り崩して造成するらしい

どうやら、現在ある尾根上に登る現道を活かして使うとか、現在の土地の造成レベルを活かすとか、そういうことはしないらしい。現在の地形や現在の植生に大幅に手を加え、大規模に土を動かす宅地造成をして、新たな平地をつくりだすようだ。
 それがいいとか悪いとか言っているのではなくて、ようするに地区計画を決めたのに、それが分らないのが気持ちが悪いのである。でも、都計審の委員の方々は分ったのだろう。

・結局現地を見ても具体的な市街地像は分からない
 地区計画の緑地指定の図を見ると、現存の緑地がこれだけ多いのに、林地・草地等(都市計画法第12条の5第7項3号)という保全緑地指定の区域はごく狭い。
 現存緑地とは関係ない新緑地の指定、あるいは現存斜面緑地を保全緑地ではなくて単なる緑地指定するなどしているのは、現存緑地の土地の造成を行うからであろうか。造成後にその指定位置に芝生緑地をつくるのでも、緑地には違いない。

 こうなると現在の標高20m近辺の下段の平地と、標高35m近辺の上段の平地という現在とは無関係な造成地が出現し、そこに共同住宅がたち並ぶのだろう。
 住宅戸数は、全部で約700戸だそうだから、JFE社宅跡地にその半分が建つとしても、こちらの谷間にも沢山の棟がたち並ぶだろう。

 そもそも地区計画は、「街区単位でのきめ細かかな市街地像の実現していく制度」(都市計画運用指針)であるが、ここではそれがどのような市街地像なのか、わたしの頭では想像できないのが、ちょっと情けなかった。
 わたしもボケたものである。現地を見ないでも、この資料だけでも判断できる、都計審の委員の方々の能力に敬服するばかりである。

・この住宅過剰時代にどのような新住宅地をつくろとするのか
 ところで、今は空き家の激増が問題になっている人口減少y時代に突入しているのに、ここにこのような大規模造成工事をしてまで、新たに住宅供給をする意義はどこにあるのだろうか。
 民有地のところにまたまた大規模マンション開発も、おかしいと思う。区分所有型の大規模共同住宅に持つ根本的な問題もあるのだ。わたしは「名ばかりマンション」と言っている。
 そして公有地である県有地への住宅建設である。県有地を半分は災害時にも備える地区公園にするのは分かるとして、新たに住宅地開発をするのがよく分らない。

 県有地が結局は民間住宅デベロッパーにわたって、ここにも(名ばかり)マンションが建つとしたら、政策的に明らかにおかしいと思う。
 URが開発事業者になるのだから、作るなら賃貸住宅にするべきである。それは災害時に避難する住宅にもなりうる。
 周辺はミニ開発の斜面地住宅が多いから、大規模地震時は問題が大きい。それらの住み替え対応の住宅も必要だろうが、そのようなことを考えているのだろうか。

 ここは神奈川県の公有地なのだから、その跡地開発を民間デベロッパーに売り渡して、名ばかりマンションを建てればよいのではない。
 住宅過剰時代に住宅を建てるとしてら、これからの社会を考えた政策的な住宅供給をするべきだが、事業者も公的機関の都市再生機構なのに、それがどうも見えてこないのが、気になる。
 都市計画審議会では、そのようなことも質疑してほしかったが、委員はご存じらしく、何も出なかった。

 尾根上の競輪場跡には立ち入り禁止なので、下から眺めるだけで退散。
 次は花月園敷地の周りをぐるりとまわってみよう。なんだかすごい斜面地にミニ開発住宅地が連なっているようで、それはそれで面白そうだ。  (つづく)
 
参照
1051【横浜都計審傍聴②】JFE社宅跡地には超幅広超高層のものすごい壁状建築が出現するのだろうか
http://datey.blogspot.jp/2015/01/1051.html
1050【横浜都計審傍聴①】地区計画議案の公的大規模開発の内容がさっぱり分らない
http://datey.blogspot.com/2015/01/1050.html

●都市計画審議会を改革せよ
https://sites.google.com/site/machimorig0/#tokeisin

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

深い洞察が入った本記事を楽しく拝見しました。本文最後に記載されているつづきを是非アップしてもらえないでしょうか。

匿名 さんのコメント...

近隣住人です、何時のまにか京浜急行の名前も連記された工事計画表が現地に設置されています。