本館前の広場には、今を盛りに花を咲かせる枝が広がり、ピンクのドームをかたちづくっている。その下では、新入生とそれを迎える学生たちで、若い生気がみなぎって賑わっている。
わたしのような外部からの花見客は、しなくてもいい遠慮をしながら、花と学生交互に眺めて、楽しんでいる。
花の咲き具合もなかなかのものだが、その花を咲かせる樹木の枝や幹の姿に驚いた。去年も来たのだが、今年は花よりも幹や枝をじっくりと眺めた。なにしろもう70年は過ぎているだろう老木群だから、見ているわたしと同様に老化の度合いが著しい。
地面から立ちあがる幹は、どれも目通り直径1m以上あるだろうが、そのどれもが真っ黒、曲がりくねり、でこぼこ、コブコブ、割れたり裂けたり、ひねくれたり、まさに老木である。工芸品に使うほどのあの美しい桜木の肌はどこに行ったのか。
この木はもう化けることさえできるかも |
花が華麗に咲く枝は、ふつうなら一定の秩序で枝が伸びそうなものだが、あちこちに曲がりくねり、どこかとりとめもない方向に延びている。
もう休ませてくれよ |
それなのになおこれだけ派手な花をつけて咲き誇るものだから、離れてみると花咲く樹冠が大いに乱れているのである。花をかざして踊り狂う狂女たちにも見えてくる。
踊り狂うか桜花 |
この桜の木は、1950年卒業生有志に寄付によるものだそうだ。わたしが学生の頃は、背丈は超えていたがひょろっとしていた。
1960年のキャンパス風景 広場の櫻の木がヒヨロヒョロ(森猛氏撮影) |
だがしかし、あちらはいまだに毎年花を咲かせて待たれるのに、こちらときたらもう花咲かせることもなければ世の中から待たれることもない、う~む、こちらの完敗である。
●参照:大岡山花見2016
https://sites.google.com/site/matimorix/hanami2016
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