街を徘徊していたら映画館の前にでて、ものすごい岩壁にクライマーがいる写真ポスターを発見、ちょうど上映開始時刻、昔山岳部員だった記憶に背中を押されて、フラフラと入った。映画館なんて3年ぶりか。
映画「MERU]は、なかなか良いできだった。
製作・監督ジミー・チンが、クライマー、スキーヤー、写真家そして映像作家であり、メルー登攀チームのメンバーだから、長い歳月をかけて多くの撮影をしてきたらしく、入念に編集してある。
3人の登攀者の葛藤を、単に山岳登攀劇としてではなく、人生の目的追及とその転機を見事に撚り合わせるドキュメンタリー映画だった。
何も予備知識ないままに観はじめた。
初めのうちは、登攀者たちやその関係者たちが、幕間の解説みたいに何度も登場してきて、うるさいなあ、はやく登攀の現場を見せろと思ったものだ。
そのうちに、この映画は登攀を見せるには、そこに至るまでの登攀者やその関係者の人生と、登攀に関連して起きたいくつかの事件を見せるのだと気が付いた。
普通の山岳映画のように、登攀の技術的苦労を見せようとする映画ではないらしい。
コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークという、3人のクライマーたちの過去の人生と山での事件を克明に描く。
巨大雪崩に巻き込まれて友を失いつつも生き残って長く悩みぬくジミー、親友だった山仲間を遭難で失ってその家族を支えるコンラッド、頭がい骨が露出する瀕死の重傷から驚異的なリハビリで復帰するレナン、それぞれの映像が劇的である。
もちろんMERU登攀場面はすごいのだが、劇映画のような俗っぽい悲劇やら失敗が起るのではないから、山岳登攀の手法を知っているとそのテクニックなどが実に面白いが、そうでないと映像は美しいと思っても登攀の苦労はそれほどでもないと思うかもしれない。
それにしても現代の登攀用具は、岩場に吊りさげるテントといい、各種道具類と言いすごいものである。ただ、生身の人間だけは変わりようがない。
登攀者本人が持つカメラ撮影だから、当然のことに劇映画のように、トップをいくクライマーが登ってくるところを待ち構えて撮った映像は無い。あるいは岸壁に取り付くクライマーをヘリコプターで撮ることもない。
しかし、プロの映像作家が登攀者本人であり、そのプロによる撮影だから、ドキュメンタリーとして劇映画にはない現実的迫力がある。変りゆくMERUの姿の長時間露出映像が美しい。
それにしても映画館はなんてさびしいのだろ。まあ、平日の昼間だからなあ、年寄りの男ばかり、、でも若い女性がちらほらいたのは、山好きなんだろうか。
●参照
http://meru-movie.jp/
http://eiga.com/official/meru/
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