花見には絶好の本館正面広場は、いつもの春のように花見客が大勢すわりこんでいいる。特に走り回る幼児を連れた母親たちが多くいのが目立つのは、ここが飲酒禁止のキャンパスだからだろう。わたしたちのような年寄りもいる。子どもにも老人にも好かれる花見の場である。なかなかよろしい。
花は美しいが、その花を咲かせる桜の木が、黒々とした太い幹、あちこちにコブや穴があり、枝はよじれて地を這うよう。昔々この庭で山岳部トレーニングしたころは、細くて背丈ほどだったのになあ。
人の少ない桜を求めて、キャンパスを貫通する呑川河畔は満開の花、そこにかかる木橋の上にちょうどよい枝が伸びている。
天気よし、花よし、酒よし、仲間よし、酒と肴に花びらが散りこむ。
宴半ばにガードマンらしき二人の男がわきを通る。もしもし、構内は飲酒禁止です、あー、はいはい、ご忠告ありがとう。でも宴会は続く。
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本館前の新図書館の横、この場所には名建築家・谷口吉郎設計の出世作「水力実験室」が建っていた。
今は取り壊されて空き地である。実験のために使った水銀汚染が残るので、取り壊さざるを得なかった。
でも、わたしはそこにあった実験用のプールで泳いだよなあ、いいのかなあ、ここまで元気に生きたのは、水銀のせいかもなあ、やっぱりよくないか。
水力実験室はなくなったが、そこから本館寄りには、谷口設計の70周年記念講堂が建っている。そして本館そのものも、若い時の谷口が関わったデザインで健在である。
桜名所の本館前広場には、谷口吉郎の一番弟子の建築家・清家清設計の大学本部や、その弟子の篠原一男の設計になる百年記念館もある。
更にその篠原の弟子である安田幸一設計の新図書館が最近の広場の建築であるが、それは一部しか地上に顔を出さずに、多くを広場地下にいれている。
こうして花見で師弟四代にわたる建築を見ることができるのである。
参照:1183【花見と老木】願わくば花の下にて春死なむ卯月朔日想い出の地に
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