2014/12/16

1039懐かしや郷土伝統芸能「備中神楽」を東京新橋のビルの中で見てきた

「よいとまあたあ、やあはあ、ドンドン、よいとそうりゃあ、はあ、ドンドドン、ドン、」

 太鼓に乗ったどこか間延びした調子のお囃子が、東京の繁華街のビルのイベント会場に響く。
 わたしは少年時の記憶を少しづつ思い出しながら眺めている。目の前の神楽舞の動きよりも、囃子の音が記憶を引き出す。
 東京・新橋であった「備中神楽」(びっちゅうかぐら)の公演を見てきた。(2014年12月14日)

 わたしは備中地方の高梁盆地にある神社の生れだから、少年時は毎年の夏祭りの夜は、生家の前の広場で行われる奉納神楽を見て育った。
 暗い社叢林の中の境内広場に、その夜のためだけに仮設の神楽舞台が裸電球に照らされて出現する。ここで神楽舞を神に奉納するのである。
 大勢の見物客が取り囲に中で、暗くなるころから始まり夜更けに終了する。
 最後のあたりの演目、大スペクタクル出し物のヤマタノオロチ退治を見たいから、眠いのを我慢したものだ。

 故郷を出てから久しく観る機会はなかったが、十数年前に三宅坂にある国立劇場で備中神楽の公演があり、懐かしく思って観に行った。
 ところが、わたしが少年時に見たことのない神楽だった。調べてみるとそれは「荒神神楽」(こうじんかぐら)と呼ばれていて、神社の祭礼で舞われる「宮神楽」とは、重なりあう演目もあるが、基本的には異なるものであった。
●大蛇退治
http://youtu.be/l9oxzPesw0Y
わたしの少年時に心を躍らせたヤマタノオロチ退治は、荒神神楽にはなくて、宮神楽の出し物だったのだ。
 今回、新橋でヤマタノオロチ公演するときいたので、これは行かねばならない。

 ほかの地域の特徴的な郷土芸能を見たのは、若狭の風祇能、山形の黒川能、宮崎の高千穂夜神楽、福井の池田水海田楽舞である。
 黒川能、高千穂夜神楽、水海田楽舞は、集落をあげての芸能を中心とする神社祭礼である。集落の人たちが演者となって舞うから、まさに地域の人たちの自分たち自身のための芸能である。
 それに対して備中神楽は、備中地方の各所に複数の神楽を舞うプロもしくはセミプロの結社(社中)があり、神社の祭礼や荒神祭りに依頼されて出演するのであるから、住民自身が舞う芸能ではない。だから、その舞は素人ではできない技術を持っている。
 若狭の風祇能も、能舞の結社が行っているから備中神楽と同様である。
 集落民たちが舞う黒川能や高千穂夜神楽には、それなりのひなびた良さがあるのだが、舞にキレがないのは仕方がない。
 備中神楽は修練を経たプロの舞だから、舞のキレは決まっているし、激しい刀剣や長刀による大立ち回りは、まさに迫力満点である。
恵比寿舞

 長い時間がかかる一連の神楽の中で、観客を飽きさせないように途中で道化師が登場する演目もある。ヤマタノオロチ退治のために大蛇に飲ませる毒入り酒を造る場面がその典型であり、新橋でもあった。
 面白おかしいことを、囃子方の太鼓とかけあいながら言うのだが、少年時に頃に聞いたときは、芸能ではよくあることだが、かなりの頻度で卑猥なエロ話があった。もっとも少年にどこまでわかっていたか疑問だが。
 新橋では、エロ話はなかったのは、いまはもうやらないのか、場所柄をわきまえて言わなかったのか、どちらなんだろうか。若干の世相風刺があった。
 ただ、こちらが大人というか年寄りになって、笑いの質を問うようになってしまい、その点ではどうも笑いに乗れなかった。


 今回は抜粋だったが、はじめからしまいまで通しで、いつの日か何時間かかけてみたいものである。
 今では備中神楽も、ウエブサイトで見ることができるが、それでは迫力がない。ネットで石見神楽の大蛇退治を見ると、ド派手なカラー大蛇が何匹も登場して、まったくもって見世物化しているらしい。
 備中神楽はどうなの知らないが、祭礼が減少した現代に郷土芸能が生き残るには、そういうことが必要にもなっているのだろう。
 
 今回の新橋での公演を、主催者の了解を得て動画でも撮ってきたので、その一部をご覧ください。 
●大蛇退治
http://youtu.be/l9oxzPesw0Y
●大黒舞
http://youtu.be/o_NxsfV4WnY

伊達の眼鏡内の関連ページ
◆池田:能楽で地域興し(2001,2003)
https://sites.google.com/site/machimorig0/ikeda-dengakumai
◆高千穂夜神楽(2008)
http://datey.blogspot.jp/2008/12/blog-post.html
◆高千穂夜神楽(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=icokd9I61GY

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