2014/03/30

913【横浜都計審】北仲通北再開発の地区計画変更の基本的問題はなぜ審議されないのか

◆北仲通り地区の開発事業をようやく始めるらしい

 横浜市庁舎が移転するあたりの、北仲通地区の開発事業が動き出したらしい。横浜市都市計画審議会(2014年3月28日)で、その地区計画変更議案が出てきた。
 審議会は、変更案を原案通りに可決した。審議会の委員さんたちは、事前によく勉強をなさったので、内容に関する審議らしい審議もなく簡単に可決なさったにちがいない。
 しかし、傍聴席ではじめて聞いた私には、その変更内容がどうも釈然としないので、ここに書いておくことにした。

 北仲通再開発地区の場所は、わたしの日常徘徊エリアだからよく知っている。もともとは横浜港の一部であり、輸出する生糸の検査所や倉庫あるいは船舶関係の施設があったところである。
 その一部は既にUR都市機構の共同住宅と政府の合同庁舎になっているが、残る広大な空き地を含めて約7.8ヘクタールの区域を、計画的に開発をするのである。




その空地部分には10年ほど前までは、日本の近代化時代を支えた生糸貿易関係の倉庫と事務所建築(1926年)が6棟建っており、横浜の歴史的風景があった。
 そこを12年くらい前だったか、東京のデベロッパーの森ビルが買った。開発をするとて2004年に地区計画、更に2008年には事業内容にに合わせて再開発等促進区を決めて容積率や高さ制限を緩和した。
 わたしは徘徊のたびに、どんなものが出現するのか見ていてが、一向に動き出さない。どうやらリーマンショックに出くわして、ずっと足踏みしていたらしい。

◆巨大開発都市計画変更は要するに住宅容積増加

 今、アホのミックス景気でまた動き出したらしいが、これまでの事業の内容を変更したい、それには現決定の地区計画に抵触するとなったようだ。
 そこで事業者の森ビルと丸紅が都市計画提案制度を使って、地区計画の変更案を横浜市に提案して、それがこの度の都市計画審議会で通ったのである。
 事業者の提案発表はここに書いてある。
http://www.mori.co.jp/img/article/131021.pdf

 場所は横浜の新都心地区の「みなとみらい21」の超高層街と、おなじく伝統的都心地区である関内との間にある運河沿いの広大な空き地である。
 ここに都心にふさわしい内容の超高層街を森ビルにつくらせ、道を隔てた隣の空き地に市庁舎を移転して、業務中心を形成して、横浜駅-みなとみらい21-北仲通-関内へと新旧都心を結びつけようというのが、横浜市の魂胆である。
 そこで約7.8ヘクタールのところに地区計画を定めて、容積率が400%のところを600パンセントに、高さも200mまで緩和したのであった。
 業務、商業、文化、観光、共同住宅などの入った、31mから200mまで9棟の建物を取りそろえ立ち並ぶことになっていた。

 それを変更するのが今回の都計審の議題で、変更の記述はあれこれ書いてあるのだが、しげしげと見たところ、要するに当初計画にあったホテルをやめて共同住宅に置き換えたいというのである。
 ホテルを住宅に置き換えると、現地区計画で決めてある住宅部分の容積率の上限400%をオーバーして450%になる。これでは地区計画違反になるので、住宅上限を400%から450%に変更したいというのである。
 そしてそのとおりにすんなりと変更案が通った。委員の誰もその肝心のところについて質問も意見もなかったのが不思議だった。分っているからか、分らないからか。

◆北中通り地区開発による横浜都心強化の方針は

 わたしがこの変更議題の内容で、引っかかったことを書いておく。
 横浜都心エリア(横浜駅周辺地区と関内地区)には、横浜市が都市計画の特別用途地区指定をしている。そこでは都市計画の用途地域の商業地域のままではなく、「都心機能誘導地区」として積極的に業務や観光や文化の機能を整備するとして、住宅(いわゆるマンション)の建設にタガをはめている。
 住宅の容積率を、横浜駅と関内の駅前ではゼロ(住宅禁止)、そのほかでは例えば指定容積率600%の地区では住宅を300%までとし、文化・商業・業務系の施設(誘導用途)を入れるなら、それと同等容積まで住宅をプラスできるが、上限は450パーセントとしている。
 
 北仲通りのこの地区は特別用途地区外であるが、地区計画によって「都心機能誘導地区」なみの指定をしている。
 住宅の容積率の上限を400%に厳しく定めて、全体の容積率は600%が上限としているから、残り200%は誘導用途であることになる。横浜駅周辺や関内地区と比べて、都心機能誘導を積極的に行おうとしている。

 ここの指定容積率は400%だから、これに200%のボーナスをつけた根拠には、オープンスペース確保や歴史的建造物保存のほかに、住宅の上限を400%として、特別用途地区に定める規模以上の誘導機能の整備があったに違いない。
 ここを横浜の業務系都心として、減少しつつある就業人口の回復に向けて、再開発をするのだというのが、「都心機能誘導地区」の基本的な方針であるはずだ。

◆誘導機能減少して住宅増加しても容積ボーナスは既得権か

 それなのに、誘導機能のホテルをやめて住宅に置き換えるだけでは、地区計画変更は難しいかもしれないと、事業者は考えたらしい。
 そこで、ホテルに替わって作る住宅は、「高規格の居住機能」の「十分な階高(3.5m以上)」をもった「国際的な高度人材の多様なニーズや業務形態に応えられる住宅」の整備をすると、変更地区計画に書いている。
 
 同じ住宅では気がひけるとて、住宅に色を付けたらしい。これって、要するに金持ちを住ませますってのを別の言い方をしているだけのようだ。
 一般に近ごろ、こういう時は子育てとか高齢者対応とかの色をつけるのに、ここでは全くそれを言わないところが、なんだかいさぎよいような気がしてくる。
 3.5mというハードウエァは分かるとしても、そのほかのソフトウェアについては、地区計画でどのようにして担保できるのだろうか。誰が入居して、どんな仕事をしているのか、行政当局が毎年調べるのだろうか。

 横浜駅周辺や関内地区も都心機能誘導地区であるが、横浜駅周辺は住宅は禁止となる厳しい規制、関内地区は北仲通り地区よりは緩い住宅制限でである。
 つまり、北仲通地区は新旧都心の中間にあって、関内地区よりも積極的に商業業務文化等を誘導する位置づけであったのだ。それなりの都心形成の理念の表れだろう。だから容積率も5割アップのボーナスを出したのだろう。
 それが、今回の地区計画の住宅用途450パンセント上限に変更で、関内地区や横浜駅周辺と同じになってしまった。誘導機能施設が減少しても、なぜ元のままの容積ボーナスなのか。既得権の擁護か。

◆5割増し容積ボーナスと過密住宅地

 ついでに言えば、生糸倉庫と事務所の2棟を歴史的建造物として修復保存することになっていたのが、今回の審議会で分かったことは、1棟は現物保存するが、もう一棟はこわしてしまって現存部材を一部使って復元保存だそうである。現物保存でなくてコピー再現に変更しても、容積率ボーナスは減少しないのか。

 となると、たぶん、これら二つの地域貢献は、容積ボーナス算定に入っていなかったのだろう。
 つまり、地区施設等のオープンスペース整備だけで、指定容積率に5割増しの200%もの大盤振る舞い容積ボーナスが出たに違いない。
 でもなあ、もともと運河という大きなオープンスペースに沿っているのだから、そこに更にオープンスペースを造ってボーナスよこせと言われてもなあ。元が過密居住地だったのならともかくとしても、オープンスペースばかりの空き地だったしなあ。
 オープンスペースが要るのは新たな過密空間をつくるから、内部的に必要なんだろう。それに容積ボーナスをあげるって、なにかが違うような気がする。

 ところで、ここでこんなにでかい共同住宅ビルを何棟も建てて、その合計戸数が何戸なのか資料を見てもわからない。
 URと森ビルを合わせて2000戸以上になるとすれば、約4000人が住むことになるのか。合同庁舎のところを除くと約6ヘクタールだから、670人/ha!、これはなかなかものすごい高密度である。住宅だけじゃないから実態は香港並みの過密状態かもしれない。
 この過密さは、運河の開放空間によってある程度は救われるだろうが、内部不経済を外部経済に頼って緩和するようなものである。

 それにしても、人口減少時代にそんなに住宅を建てて、どうするんだろう。さらにここは海辺の埋め立て地だから、地盤は悪いし、津波はやって来るし、どうするんだろう。
 実は、わたしもご近所で同じ運命にあるので、他人事ではないのである。
 とにかく、あとあと困る各戸分譲の区分所有共同住宅ビル(これを名ばかりマンションという)にはしないで、できれば全部URか公社の賃貸借住宅にしてほしいものだ。

ちょっとパロディいたずらしてみた


◆都計審委員はわたしの疑問点を審議してくれない

 ここまではわたしの疑問点を述べてきたが、横浜都計審の委員の方たちは、これを審議してくれたかというと、実はまったくなにも触れていいただくとこはなかった。
 ひとうだけ、帝蚕倉庫の遺構建物の保存について質問があり、以前は2棟とも現物保存の計画だったのを、一棟は現物保存だが、もう1棟は取り壊しコピー再現に変更することが分かった。でも、だからどうするという追求はなかった。
 ほかには、巨大開発なので周辺への周知、交通混雑対策、防災対策へのコメントがあり、発言者は20人中の4人だけだった。

 ということで、肝心の変更のポイントである住宅容積の増加と誘導機能の減少という基本的な問題については、どなたもご発言がなかった。
 あれだけ多くの識者のだれ一人も、この基本的な問題点が分らなかった、ということはあるまい。
 多分、事前にご勉強されていてご承知で、これで良しとのことだったのだろう。こう、善意に解釈することにした。
 (もしかして、わたしがボケていて、これを疑問とすること自体がおかしいのかもしれない)

 でも、審議会は役所の機関ではなくて、識者と議員と市民からなる第3者機関として(法的には別としても)、ここに諮問している都市計画決定権者(市長)には、市民の疑問に答えさせるように審議をするべきであると思う。
 どうぞこれからは、委員の方々はよく御存じのことでも、質問し意見を言ってくださるように、ひとりの市民としてお願いする。

 さて、別の議題の審議についても、明日の続編でいちゃもんつけるかなあ、、。

<参照>    


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