2017/11/29

1304【続々・安藤忠雄展雑感長屋談議】歴史建築段ボール模型迫力に吃驚讃嘆、大仏生き埋めラベンダー山景観に感歎爆笑


●模型の段ボールがよかった

長屋の大工の熊五郎:安藤忠雄展を観てきて、ご隠居は褒める作品は無いんですか。
長屋の隠居徘徊老人:うん、模型という作品なら、パリの「ブルス・ドゥ・コメルス」とヴェネチアの「プンタ・デラ・ドガーナ」の古建築活用計画模型がいいね、特にその模型の段ボールがよかったねえ。
:建築じゃなくて模型を褒めてんですか、それも学生たちの涙の結晶ですね。
:だって模型の作品展なんだもの、これがダンボールで作ってあって、その質感と言い量感と言い、なかなかいいんだねえ。

:あのバサバサの段ボールで、昔の様式装飾の建築模型をつくれるものなんですか。
:段ボールなのに、いや段ボールだからこそ迫力あるね。縮尺模型は現物を忠実に縮尺するものじゃないと知ったね。模型をつくること自体が創作行為だね。
:そうか、そこからまた新たな空間構想が生まれるのでしょうね。忠実に縮尺するなら、立体プリンターでつくれますからね。あ、そうだ、もしもあの光の教会の原寸模型も段ボール製だったら、ご隠居は感心したと思いますか。
:おっ、うまいことに気が付いたねえ、うん、もうひとつ別の光の教会として、大いに感心しただろうなあ。
:じゃあ、安藤ランドにぜひ建ててもらいましょうよ。

●安藤流異種格闘技デザイン術

:この安藤のふたつの仕事は歴史的な様式建築の活用計画で、一方は円筒、もうひとつは直方体の箱をはめ込むんだな。どちらも美術館に改装するらしい。
:そういう幾何学的立体の異物を、まったく別の秩序の空間の中に嵌め込むとか突っ込むって、安藤流建築の常套手段の感がありますね。中之島公会堂の中に卵形ホールを嵌めるし、上野のの子ども図書館では玄関から裏庭までガラスの角筒を斜めに突き刺すとかね、そうだ、住吉の長屋もその手の古長屋への割り込みですね。
国立国会図書館国際子ども図書館 photo:datey

引用元 http://www.tokinowasuremono.com/artist-a01-andou/andou_02_nakano_pro_02.html
:東急東横線の渋谷駅は、地下駅にしたときに安藤さんの計画で卵をはめ込んだみたいだけど、実際に行ってみてもよく分らんね。
引用元 http://ism.excite.co.jp/design/rid_original_01513/
:そう、そのつもりでよく見れば、卵の殻のカケラのようなものがありますけどね。このご隠居がもらってきた展示会場レイアウトを観ると、ここにも卵がありますね。
新国立美術館の安藤忠雄展会場案内図の一部
:そうそう、卵だったよ。とにかく模型は模型としての作品の面白さであり、現物建築とは違うものだね。わたしは安藤の新築ものを見たい気はしないけど、古建築割り込み改造ものを観たいものだと思ったよ。ちょっと異種格闘技の面白さがあるからな。

●大仏生き埋めラベンダー山は良いなあ

:で、展覧会ではそれくらいしか見なかったんですか。
:見物人の頭越しに見るのもシャクだから、混んでない見やすい場所で、しかも面白そうなものしか見なかったよ。それでも気が付くと2時間半も居たからねえ。
:そんなにいても、これは素晴らしいって安藤建築に出会わなかったとすれば、ご隠居には見る目が無いのかもしれませんよ。
:おっ、言ってくれたね、じゃあ発表だ、ついに見つけた安藤の最高傑作!、ジャジャ~ン、「頭大仏」ってのがすごい、ラベンダー山がすごい!!!
:おお、ついに見つけましたか、でも、なんです、そりゃ。
:これもね、安藤流の別の秩序の空間に異形を突っ込むってやつでね、それがなんと、ラベンダーの花咲く小山があってね、その真ん中テッペンに巨大な仏像の頭だけを置いたのだね、大仏様にお参りに行くには山の麓から掘ったトンネルを通って・・・
:ちょ、ちょっと待ってくださいよ、ご隠居、ほらyou tubeにある、これでしょ、山に大仏の頭を置いたのじゃなくて、初めに平地に大仏が座ってて、その周りに井戸側を造り土を盛り上げて小山をつくり、花を植えたんでしょ。
引用元 https://www.youtube.com/watch?v=XU10E7QymFw
:わはは、ばれたか、そうなんだ実は、この動画と同じような建設中の定点観測コマ落し連続画像を会場で映していて、おお、これは面白いと思ったよ。
:知らないで見るとそう思いますね。
:鎌倉大仏みたいな露座の大仏像に、たぶん、最初は屋根のある大仏殿を造りたいって依頼だったろうね、ところが安藤の設計は建築じゃなくて、ピラミッドか古墳のような小山を築く土木設計だよ。明快な空間構成といい伸びやかな景観形成といい、すごく良いなあ、わたしはこれを気に入ったね。
:おお、ご隠居にしては珍しくお褒めだけど、建築を褒めてるんじゃないのかあ。うん、この小山は北海道らしいおおらかな景観ですねえ。でも、この大仏って、首だけ出して生き埋めにされてるって感じませんか。そうだ、鎌倉の長谷大仏は露座のまま、大船観音は胸から下を生き埋めだなあ。
:生き埋めの刑を連想しないで、このように積極的にやったオーナーが偉い。露座の大仏を露座のままなのに、祈りの場を築いて奥の空間に鎮座させ、暗い洞を抜けてぬかずき見上げるお顔の上には紺碧の天蓋、そう、文字どおり天の蓋だよ、たぶん、そこから風に乗って春には花が舞い、冬には雪が舞う、こりゃ安藤でなくてはできない仕業だね。
:東大寺のように大仏殿の中だとお顔が暗いけど、これだと明るいですね。
:ここはどうやらもうひとつの胎内だね。安藤の胎内仏だね。
:このラベンダーの小山が花の季節は美しいけど、維持が大変でしょうねえ。
:いや、信仰の山だから大切にするだろうよ。でもピクニックやは何にはいいだろうなあ。たとえそれが芝生になっても自然の森林にになっても、この安藤がつくった風景は変らないよ。

●仏像の名が頭大仏なら小山の名は

:これってどんな環境だろうかとgoogle earthで見たら、札幌郊外の森林を丸裸にした墓地ですよ。

:え、なんだよ、森林破壊の墓地造成かい、砂漠の中の丸型ピラミッドかい、こりゃ気にくわない。なんで元の森の木々を活かした緑の墓地にしなかったのかねえ、六甲での緑破壊の反省をしているらしいような、今の安藤さんらしくないなあ。
:いや、安藤さんは墓地計画全体をやったんじゃなさそうですよ。このラベンダーの山のほかに、ふたつのおっぱいみたいな丘もあるけど、これも安藤でしょうね。
:そうか、その横長の池と丸い二つの建物は、それと3つの小山が安藤デザインか。
:墓地全体のネットサイトを見ると、そのほかの建物もあるけど、全然安藤らしくないデザインですよ。墓地の一角にはモアイ像が何体も立ち並ぶって妙に卑俗なのも、まさか安藤さんのデザインじゃないでしょう。そのブロックだけが安藤によるみたいです。
:そうか、展覧会場では、あの頭大仏が潜ってるラベンダー山の映像ばかり見せてたから、いいなあと思ったけど、そのおっぱい丘や池やらも合わせてみると、どうにも生硬な配置だなあ、安藤流のスクエアな中にも巧みなひねり、つまり異種格闘技だな、その空間構成がどうも見えないなあ。
:せっかく褒めてたのにやっぱりケチつけるんですね、ご隠居は。いや、もしかして小山の中に隠れた斜めトンネルがあるかも。
:これが何百年か後にまた深い森林に戻っていて、その密林山中から遺跡発見、大石像発掘なんて騒ぎになるかもしれないねえ。わたしは安藤の建築を「あらかじめ発掘された遺跡」って書いたことがあるので、そんなこと夢想するよ。
:大仏殿をあきらめてこれにしたオーナーもなかなかのものですね。でも、そのうちに、やっぱり屋根をかけたいなんて、大仏の天蓋に開閉式ドームとか瓦葺木造屋根をつくったりして、ハハ、えー大仏様、墓地屋さんの気が変らぬようにご指導くださいませ。
:盛り上げて作った山全体に植えたラベンダーも、大仏の頭の螺髪みたいで、これって大仏の頭の中つまり胎内に、また大仏がはいった入れ子構造だよ。
:自分の頭の穴に自分が嵌まりこんでる。でも、この石造の仏像彫刻は安藤さんの設計じゃないでしょうね。
:そうだろうなえ、仏像を『頭大仏』と名付けたのなら、安藤設計のラベンダー山の名は『頭山』とでも呼ぶのかな、、ア~ッ、、。
(同時に口々に):えっ『あたま山』って~、ワッ・ハ・ハッ・そりゃいい、ワッハハハ、ハハ、うぅ、くるしい、。

 ブログ著者注釈:ふたりとも笑い転げてしまい、この後の長屋談議記録作成は不能になりました。なお、この談議の最後が“考えオチ”になっているお方は、you tubeでこちら⇒落語『あたま山』桂枝雀をお聴きくださいということで、安藤建築ナナメ観察雑感はこの辺でお後がよろしいようで。

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