ご隠居:おお、熊さん、おはいりよ、うん、今、徘徊から戻ってきたところだよ。
熊:健康のために歩いてるんですね、徘徊ってのは目的もなく歩くことでしょ、ご隠居は健康って目的があるから徘徊じゃないでしょ。
隠:いやいや徘徊だよ、健康のために歩いてるんじゃないよ、徘徊してたらなりたくもない健康になっちまうってんで、大きなお世話で困るんだな。
熊:ケッ、かわいげがないね、ま、いいでしょ。今日はどこらあたりを徘徊ですかい。
隠:うん、寿町ドヤ街だよ。
寿町ドヤ街風景 |
隠:いや、好きってもんでもないけど、何だか気になるんだね、だって貧困層が増えて超高齢化した日本の縮図の街だもんねえ。それに有名な観光地の港方面や山手など見ても、たいして面白くもないし、そちらはSNSに書き込む人がわんさといるからね。
熊:あ、そうですね。都市デザインのお手本ですって自慢したりしてね。その寿町って調べたらね、6ヘクタールに6000人も住む超過密の街で、その高齢化率は51パーセント、9割が男、生活保護受給者率がなんと86パーセントだし、身障者も多いそうですね。
寿町ドヤビル分布状況 |
熊:へへへ、実はご隠居がつくったB級横浜ガイドブックを読んだら、書いてあった。
隠:なんだ、でも勉強してるからえらい。今日も歩いてみて、やっぱりこの街は規模拡大しているね。
熊:へええ、どこの街も空洞化とか人口減少とか商売衰退とか言ってるのに、寿町は繁盛ですか。
隠:繁盛というか、ドヤ街を構成するドヤビル、つまり簡易宿所が増えてきてるんだね。老朽化した中層ドヤビルを壊して高層ドヤビルに建て直すのをあちこちでやってるね。
新ドヤビルは新春営業開始 |
こんなモダンデザインドヤビルも |
旧ドヤビルが撤去されたので新ドヤ建設か |
熊:つまり需要が増えているってこと、ますます貧乏老人たちがここに集まって来てるんですね。そんなに安い宿ですかねえ。
隠:新ドヤビルの客引き看板に1泊1700円と書いてあるのを読んでいたら、この街の住民だという中年男がそばにきてこれに300円とか500円とか水道光熱費を要求されるって教えてくれた。
近代設備が整うドヤ |
一泊1700円かと思ったら小さな字で 「管理費等諸経費として別途500円を頂きます」 |
熊:おお、親切な人、今日泊るところがなくて困っている仲間と思われたのですね。
隠:どうもそうらしい、この人の今いるドヤの環境やら隣人の愚痴なども聞かされたよ。熊:よかったですね、今後の人生の参考になったでしょ。
隠:う~ん、まあね。でも本当に安いのかねえ、街の中に貸間のビルもあって、6畳で月66000円と表示してあったから、特にドヤが安いってのでもないね。まあ、宿賃のその日払いができるってことが、貧乏人向きなのかねえ。
熊:ところで、高齢者や障害者が多いのなら、福祉関係施設はどうなんですかね。
隠:横浜市の立派な福祉施設を集めたビルがあるし、介護施設やデイサービス施設もあちこちにあるな。
熊:じゃあ、ドヤもバリアフリーでしょうかねえ。
隠:古いものは5階建てでもエレベータはないけど、新ドヤビルにはあるね。介護部屋ありって看板もあるな。そうそう、新しいドヤビルは「引き戸部屋率95%」と宣伝文句に書いてあるけど、これは車いす対応だろうね。
隠:簡宿専門の管理会社の宣伝ポスターも見たから、この貧困ビジネスは繁盛しているらしいねえ。
熊:さて、このような街が繁盛するって、これは良いことなのか、困ることなのか、はてさてわからん。
隠:でもまあ、このような安宿があるのは、うちに入れてもらえないことが起きても、とりあえずは泊るところがあるから安心で、よいことだよなあ。
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