2023/05/11

1685【飲料屋は道端自動販売機で丸儲け】コーラ買おうと160円入れたが瓶が出てこない顛末記

 さわやか季節になって、街なか徘徊で定点観測の裏道や坂道の変化を楽しむ。1時間ばかり歩いて喉が渇いたので神社境内で一休みしようと、道端の飲料自動販売機に160円を入れた。
 銭は箱に入ったが、瓶が出てこない。コカ・コーラボトルが出てくるはずだ。取り出し口の蓋を開けてしげしげと眺め、指を突っ込んで撫でまわした。なにもない。返金レバー回しても赤い箱は平然としている。

 この自販機は駐車場ビルの前にあるのだが、問うべき人がいない。しょうがないなあ、160円あきらめるか、いや、このままだと癪だし、どうせ暇だし、まだ日は高いから、ちょっと遊んでみよう。

160円丸儲けのコカ・コーラ自販機
 自販機の表面に、こういう時の連絡先電話番号を記した紙が貼ってあるので電話した。コカ・コーラ屋関連企業らしい機械音声の反応があり、番号を次々と告げて用件に対応する番号を押せという。めんどくさい。
 で、3番を押したらこういう時の対応係らしい女性らしい声の人間が出てきた。

「どんなご用件でございましょうか」
「自販機でコーラを買おうとしたら、お金だけとられてど品物が出てこないんです」
「どうも申し訳ございません、お買い求めの商品は何でしょうか」
「コカ・コーラの瓶1本のはずが、空気だけでで160円だったね」

「まことに申し訳けございません。恐縮ですがその自販機の番号をおっしゃてていただいてよろしいでしょうか」
「え?、通りすがりのわたしにそんな質問をなさっても、この番号を君に教えて良いのか悪いのか、判断できません」
「あ、失礼しました、その番号をおしえて下さい」
「●●●●●と書いてあります」
「ありがとうございます、今調べます、、、その自販機は横浜市日ノ出町2丁目の○○駐車場の前にあるでしょうか」
「ああ、ここが2丁目かどうか知らないが、近くに日ノ出町駅はあるね、このビルには大きな看板に○○と書いてある」

「ありがとうございます。お金をお返しいたします。ご自宅に160円を現金書留で送りたいのですが、よろしいでしょうか」
「あのねえ、それじゃあ160円よりもはるかに多くの費用が掛かるでしょ、そんなこと要求したらこちらが理不尽になるでしょ」
「はあ、いえ、それでもお返ししたいのですが、いかがでしょうか」
「それよりもこうしなさいよ、自販機設置しているこの駐車場ビルと君のところとは設置の契約してるでしょ、ビルの人にそちらから今直ぐ連絡して、外の自販機の前で待つ人に160円を持って行けと言いなさいよ、それが一番手っ取り早いでしょ」
「すみません、それはできないのです。スマフォをお持ちでしょうか」
「なんでできないんだよ、ああスマフォ持ってるよ、今かけているこれですよ」
「そのスマホにナントカカントカカントカナントカシテ、自販機から飲み物を1本差し上げるようにしたいのですが、いかがでしょうか」

 このスマフォ利用弁償方法とは、さすがに今の時代であると思った。だが、言ってることを理解できない。わたしのスマフォ利用はSNSとブログを読む専用なのだ。金銭を伴うアプリケイションは全くない。

「おお、さすが今どきだなあ、電話とネットを使って弁償か、いいねえ、でもね、わたしは90歳近い爺さんだよ、若者の様にスマホでそんな芸当できないんですよ、ダメですね」
「はあ、そうですか、では、電話番号を教えていただき、後ほど担当の者から直接に電話を差し上げて、お返しする方法を相談させていただきますが、よろしいでしょうか」
「はあ、しょうがないですね、そうしましょうかね」

 実のところ、わたしはもうどうでもよくなってきた。だが、ここで引き下がっては、160円と言えども何の関係もないコーラ屋に、この貧しいわたしが丸儲けをさせるのが癪だ。こちらは暇だから、この事件を面白がることにして、次の展開を期待して電話を切った。
 徘徊をふらふらと続けても、電話はかかってこない。あのまま逃げるのかな、まあいいけど、なんて思っていると、1時間半ほどたって男の声の電話が来た。

「お金をどうしてもお返ししたいのです。どちらにお伺いすればよろしいでしょうか」
「おお、今すぐなんだね、さっきの自販機から200mほどのところだよ」
「あ、すみません、今わたしは遠くにいるのです」
「なんだい、それじゃあしょうがないでしょ」
「後日お宅に伺うのはいかがでしょうか」
「あのね、どこから来るのか知らないけど、160円持って横浜都心くんだりまで来るのかい、交通費も人件費もムダすぎることだねえ」

「いえ、はあ、では、現金をご自宅に送付させて下さい」
「実はね、10年ほど前にも同じようなことが田舎の畑の中の道にあった自販機で起きてね、その時に電話したら120円の現金を郵送してきたね、それを受け取って考えたねえ、わたしはなんという馬鹿な要求をしたものか、いくらなんでもこんな無駄をさせるなんてねえ、と、後悔しましたよ、自分が嫌になりましたよ、今回もそんなことしたくないですね」
「はあ、すみません、でもお返ししないわけにはいきませんので、なんとか、、」

 話は堂々巡りする長話の気配になってきた。もうケリを付けよう。

「あのね、君のところの自販機は日本中にものすごい数があるでしょ、そしてこのような事件は日常茶飯事でしょ、そのほとんどの被害者はめんどくさくてあきらめて何も言わないでしょうね、少額でも積み上げると膨大な金額でしょうね、コカ・コーラ屋さんはそれで丸儲けしているんですよね、そうでしょ」
「はあ、いや、分かりませんが、そうでしょうね」
「それは自販機と言うもの宿命というか、それも企業の商売方法だろうが、それでいいと思ってるのかい?、コカ・コーラってそんな企業かい?、イメージ悪いよ、何とかしなさいよ」
「いやあ、はあ、あの、すみません」
「もうわたしはこれでおしまいにしたい、だから君は上の人にわたしの話をきちんと伝えなさい、企業イメージにかかわることだ、何とかせよと言われましたと。いいですね、それを条件にして、こうやって電話をかけてきた貴方の誠意に免じて、これでおしまいにします、電話切ります、さようなら」

 結局は、コーラ屋の作戦に引っかかったのかもしれない。ヒマツブシにはなった。
 家に戻る途中にコカ・コーラ配達用の真っ赤なトラックを見つけた。そうだ、このような車があちこちにいるよなあ、これに連絡して160円返済させると簡単なのになあ、。

 ということで五月晴れの街で、徘徊中のヒマツブシでした。

(20230511記)


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