2023/07/28

1697【醜い風景コレクション】日本の郊外風景を形成する自動車屋「枯葉作戦」という景観感覚


 この暑いのに、わたしの住まいの近所の立派に繁っていた街路樹が20本も100mの区間にわたって切り倒されて、暑いこと暑いこと。
 横浜市の道路管理者が、今年の冬は寒そうだからと、沿道や近所の歩行者に陽射しを十分になるようにと、親切心から切り倒したに違いない。そう思わないと市民としては救われない。まだ冬が来ない夏の今から陽射しを浴びて通り、熱中症になろうとしている。

 ところが企業としてもそのような考えを実行しているという新聞記事やネット書き込みを見て、暑苦しいことである。
 ビッグモーターなる中古車販売やら修理やら検査やらしている全国的展開の企業が、長期にわたって大規模な保険金詐取をしていることがバレて大騒ぎ、そのビッグモーターは、店舗前の街路植栽を積極的に枯らせることも全国的に展開したらしいというのである。

 店に日照りをよくしたいのだろうか。郊外の大きな通りに面して自動車をずらーっと並べている殺風景極まる景観を自慢したいのか。


 実はビッグモーターときたら、その殺風景さを目立たせるために、店の前の道路の植栽を、薬剤を使って枯れさせ、道路管理者に切り倒させているらしいのである。
 何しろビッグモーターの店の前だけ、道路植栽が枯れている風景が、全国各地のその店舗前に起きている現象だそうだ。薬剤を撒いていることを店員が証言しているのだから、確信犯としての「枯葉作戦」(ベトナム戦争でUSA軍による大量薬剤散布ジャングル植生枯死作戦)である。社長の言ではそれは「環境整備」なのだそうだ。確かに販売促進環境の整備ではあるが、公のものを無断で滅失させる罪の意識がない。

Googleストリートに撮影されてしまった枯葉作戦

 風景も醜いが、心も酷いもんだ。
 「ビッグモーター 街路樹」で画像をネットで検索すると、あるはあるは日本全国のビッグモ-ター店舗前だけ植樹が枯れた風景が無限のごとく登場する。
 でも思うに、ビッグモーターばかりか、その他の郊外沿道店舗はどこもかしこも枯葉作戦をやっているに違いない。そうでなければ日本の郊外沿道風景が、どこもかしこもあんなにも醜いわけがない。

 わたしの仕事は都市計画家であったから、全国各地に行きあちこちを見てまわることが多かったが、郊外道路沿いの風景のあまりの醜さに気が付いたのは、1995年に静岡県の掛川市でのことだった。
 掛川の中心部は城下町として、そのころからなかなかに良い景観づくりを目指して整備していた先進地である。それを見たあとで郊外の国道1号の沿道風景を見て愕然とした。立ち並ぶ店舗のあまりの乱雑さに驚いたのだ。

 それからは地方都市に行くごとに,郊外の主要道路沿いを探訪して、醜い風景のレクションをやっていた。とくに掛川のような歴史的な都市の都心部と郊外部の風景の大きな落差を探したものであった。その思いつく地方都市を挙げると、掛川、松江、倉敷、熊本、七尾、松本、新発田、半田などなど。

 とくに自動車関係の店舗と郊外型ショッピングセンターが、百鬼夜行のデザイン店舗を競い、樹木のない広大な野外駐車場の車の洪水、その周りに色とりどりにはためくバナーの類、全くどこに美的感覚があるのだろうと呆れるしかない。

 20年も前に集めたそれらを見ていて、どれにも自動車関係らしい巨大看板が派手な色で立っている。その醜さを和らげてくれるのが、街路植栽であるから道路関係者の道路植栽への力を入れることを望んでいたのだ。
 ところがなんとまあ、沿道店舗群はそれを積極的に枯れさせて、わざわざ醜い風景を露出させようとしていたのであったか。自動車産業は世も末である。

 以下に昔に(といってもこの30年ほど)撮影した日本醜い風景コレクションの一部を載せておく。とくとご覧あれ、なにが起きているか、誰がやっているか、。



この八ヶ岳が見える醜い風景について、もしも広告がなかったらどう見えるか
景観戯造遊びをしてみたのでこちらクリックをどうぞ

松江

松本

熊本






 もう長らく地方都市の郊外に足を延ばしていないから、今では美しい風景に代わっているに違いない、ビッグモーターは例外と思おう。(20230727記)

参照景観戯造





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