2015/05/01

1083【わたしの終活】父の家を売る:日本の空き家問題がひとつ解決したかも

●空き家が増えるのに新築住宅が増えるヘンな日本
 日本の空き家問題がなんだか深刻であるらしい。空き家法なんてできたりして。
 総務省のウェブページには、「2013年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約」としてこう書いてある。
 http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/10_1.htm
・総住宅数は6063万戸と,5年前に比べ,305万戸(5.3%)増加
・空き家数は820万戸と,5年前に比べ,63万戸(8.3%)増加
・空き家率(総住宅数に占める割合)は,13.5%と0.4ポイント上昇し,過去最高
・別荘等の二次的住宅数は41万戸。二次的住宅を除く空き家率は12.8% 
 これを見ると、空き家が増えているのに、住宅の総戸数が増えているという、妙な状況である。更に人口が減少しているのだから、これはどうもヘンである。
●大借金を背負わないと家に住めない変な日本
 日本の住宅政策は、社会政策じゃなくて経済政策だから、なんでもいいから景気対策として新築工事しろ、そうすりゃ金が動くからってことである。
 公共住宅も賃貸住宅も促進政策はなくて、個人の持ち家ばかり優遇する政策だから、庶民は泣き泣き大借金を背負って家を手に入れなければならない。借金できない人はロクな家に住めない。

 どうも、何かがおかしい。
 住むって基本的人権の行使が、大借金をしなけりゃできないなんて、そういうことでいいのか。
 人口が減ってるってわかってても、持ち家優遇策が続くのは、いったいどういうことなんだろうか。

 空き家が増えすぎたので、今度は空き家を壊せという法律が、近ごろできたそうだ。
 なんだかおかしいよ、作れ造れと借金までさせておいて、今度は壊せ壊せとは、いったいどういうことか。
 はは~ん、壊せっていうのも景気対策なんだな、壊すことで金が動くからって、、マッタクモウ。

●いつのまにか空き家問題の渦中に
 さて、わたしは、その日本の空き家問題の渦中に、ながらくあったのだった。
 父から相続した家を20年も空き家の儘にしておいたら、いつのまにか日本の空き家問題の渦中に入っていたのだ。まあ、わたしも時代の先端を行っているってことだな。
 去年、売りに出したが、一向に売れないままに過ぎて行った。

 以前から処分しなければ、ご近所迷惑だと思いつつ、そのままになっていた。不動産屋に知り合いはないし、安心して処分するにはどうればよいのかと、たまには思案しているうちに20年も空き家にしていた。

 2014年春に、岡山市からの固定資産税請求書に同封して、岡山市空き家情報バンク制度の紹介がはいっていた。
 この制度を通じて、地元の不動産屋を紹介されて、3か月間の専属媒介契約をしたのが去年の夏のことだった。売却価格は、不動産屋の助言もあって、固定資産税評価額と同じにした。
 幾人かが見に来たらしいが、3か月間で成約なし、また3か月の契約をしたが、またもやなにもなし。
 ここまでのことは、ここに書いた。
1024・いま日本中で起きている空き家問題にわたしが直面とは、(2014/11/11)
http://datey.blogspot.jp/2014/11/1024.html 

●大値下げしたらやっと売れた空き家
 半年たっても売れないとは、ちょっと思案投げ首状態になった。
 このままでは息子の代まで持ち越すのかなあ、先が思いやられる。そうか、これが、いわゆる空き家問題なんだな。
 不動産屋が言うには、これがいわゆる「旗竿宅地」であることが、売れない理由だそうだ。

 敷地の場所が表通りから巾2mの路地の10mほど奥にあり、表通りから車を入れようにも、隅切りがないため角を曲がれなくて、入れないのが最大の難点だという。
 車を持つ人には住みにくいし、家を壊すにも直すにも、表通りから路地を手運搬しなければならないから、高くつくのだそうだ。
 その分、かなり安くしないと売るのは無理という。

 しょうがない、3度目の媒介契約では、それまでの半額にした。そして1カ月後、ついに買い手が登場して、めでたく売買成立となり、先日、手続きをすべて終えた。
 買主は個人だったが、不動産屋の話では、この方は空き家を買取って、修復して賃貸することを、既に何軒かやっているとのこと。この家もそうするとて、素人が買って住むのではないらしい。

●良い設計きちんと工事安い値段が売れた理由
 なぜ、その方はこれを買ったのか。買主と不動産業者の話を総合すると、価額と古家の質であったらしい
 古家の質については、わたしに買主がこう言った。
 「古家をいくつも見てきたが、50年もたつ家はたいていは傾いたり一部壊れてひどい状態なのに、この家は、外観はともかくとしても、屋根瓦もきれいだし、傾きもないし、床も普通の家よりも高い。内部は50年も経つとは思えないほどしっかりしている」

 まんざら素人でもない人が、既に買ってしまってから言うのだから、たしかだろう。
 わたしの設計は、住宅金融公庫仕様に忠実に従ったし、これを工事した人も真面目にやったのだろう。
 だからこそ、50年の古家でも、修復して賃貸することができるのだろう。よかったのである。いまどきのエコロジー風潮にも対応できる。

2015年4月の姿

2015年4月の姿
1966年建設当初の姿

2015年現在の平面図(1965年設計図面に南と西の広縁増築部分を加筆修正)
父母がこの家に移る前まで住んでいた高梁盆地にある神社境内(わたしの生家)
 価額については、修復に300万円くらいかかるようで、今回の土地代ならばそれに加えても、採算のあう住宅賃貸事業となる、ということらしい。
JR山陽線の駅から歩いて5分の立地だから、すぐ売れるだろうと、わたしは初めには思っていた。しかし地方都市では車社会なので、どうもそうはいかないらしい。
 でも、地方都市こそ高齢化が進むから、このような立地は、車を運転できなくなる高齢者向きと思うのだが、どうだろう。

岡山市空き家バンク制度を不動産業界は活用せよ
 こうして空き家問題として、長年にわたって迷惑をかけた隣の奥方にお詫びをして、帰途へ。
 帰途の大阪で途中下車、空き家問題に共に悩んだ弟たちと、20年忌の父に献杯して、問題脱出の祝杯をあげた。

 というわけで、岡山市の空き家バンク制度利用は、わたしにとって役に立った。
 不動産屋に聞いたら、この制度活用はまだそれほど進んではいないらしい。現に岡山市の空き家情報バンク登録物件紹介ページを見ても、登録数が少ない。
 岡山市も地元不動産業界も、この空き家バンク制度の活用策を積極的にやってほしいと思う。わたしには、こうして役に立ったのだから。

(2016年4月28日追記)
 岡山に遊びに行った弟がここを訪ねて、売却1年後の姿の写真を送ってくれた。リニューアルした家には、大学の美術系の先生が入居しているとか。 

黒くペンキ塗りかえただけでモダンに見えるのがオカシイ

元の形のままにペンキを塗り替えたらしい


庭は賃借入居者の趣味だろうか


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

大変参考になりました。☀