2012/02/29

589ふたつのキャンドルナイト

大震災1年目の3月11日が来ようとしており、各地でキャンドルナイトとかローソクナイトと称して、あのときの停電を再現して、ローソクの灯でしばらく過ごす体験の催しがあるらしい。
 それはそれで記憶を風化させないために良いことだが、なんだか違和感もある。
 イベントという一過性でよいのか、ローソクを使うから節約にはならないし、あまりたくさん燃やすとけっこう煤が出るしなあ、。
 どこかに集まってやると、けっこうなエネルギー消費になりそうだよなあ。

 どうせやるなら、全国一斉、各家庭もホテルも事業所も、そのまま真っ暗闇の夜を一晩過ごすってのはいかが? 
 日本真っ暗ナイトである。
 むかし、ニューヨーク大停電てのがあった。
 その夜に仕込まれた子がたくさんできたというから、真っ暗ナイトは少子日本にまことに有効なるイベントになるかもね。

 わたしには、1945年からの数年間は、毎日停電していた体験がある。
 まだ幼年だったからよく知らなかったが、あれは計画停電だったのだろうか。
 いや、どうも、突然だったような気がする。でも大人たちは特に困った様子もなかったなあ。
 もしかして、戦後ベビーブームの原因のひとつだったかもなあ。
 
 じつはいまでも、毎日毎晩キャンドルナイトの国や地域があるのだ。一時のイベントではなくて、それが日常である。
 わたしが昨年春に訪ねたネパールがそうであった。
 今、ネパールの日本大使館のサイトを見たら、ネパール全土の地域をグループに分けて、曜日ごとに何時から何時まで停電の一覧表がある。
 http://www.np.emb-japan.go.jp/jp/pdf/powercut27feb12.pdf

 なんだか懐かしくなったなあ、去年の計画停電といいながら、どうも計画的でない日本の騒ぎのときも、TVにこんな表が映っていたもんだ。
 なになに、カトマンズ盆地のパタンでは、月曜日は4時から9時と13時から18時とあるから、なんとまあ10時間停電だよ~。
 水曜日は9時から13時と17時から23時だよ、夕飯食べるときから夜中まで真っ暗。
 
 でも、わたしは現地に行ったから知っていますが、停電だとて誰もドタバタしていませんでしたね。
 日本が計画停電のちょうどそのときに、わたしは停電の国・ネパールに遊びに行っていたのだ。
 レストランで夕飯を食おうとすると、パッと停電、アレ~っというのは外国人ばかり。
 店の人は、おもむろにその辺にあるローソクに灯をつけて、しばらくすると必要な範囲の電灯がつく。どこの店でも自家発電気があるのだ。
 あちこちからブンブン発電機が回る音がして、あたりが排気ガスくさくなる。

 停電の原因は単純で、発電力が不足しているからである。 
 ヒマラヤの氷河や雪の水源が豊富だから、水力発電をいくらでもできそうなものだが、それに投資する金がない貧乏国だし、その水がすべて流れていくインドとの水利権関係も複雑らしい。もちろん原子力発電はできっこない。
 だから工業は育たないから、工業製品はインドから陸路のトラックでやってくる。タタのトラックがブンブン走っていた。

 今、日本のキャンドルナイトイベントには、あの不安の思い出とそれをひきずりつつも平和な現在がない交ぜとなっている微妙な心地がこめられているだろう。
 一方、政情と経済の不安の中にあるネパールの毎夜のローソクナイト、、う~む、日本とネパールの二つのキャンドルは、ひとつの灯になることはなさそうだ。

関連→ネパール逍遥・異文化への旅
http://homepage2.nifty.com/datey/nepal/index.htm

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